保護者が知りたいのは「何をすればいいか」
保護者からの相談の多くは、つまるところ「家で何をすればいいか」です。ところが、先生が教育理論や授業の方針を詳しく説明しても、それだけでは家庭での行動につながりません。
保護者に伝える時は、次の3点を意識するとわかりやすくなります。
- 授業で何を大切にしているか(一言で)
- お子さんの今の様子(よい点と課題を具体的に)
- 家庭でお願いしたいこと(1〜2個に絞って)
特に3つ目は、「毎日30分勉強させてください」のような漠然としたお願いより、「教科書の音読を1日1回、聞いてあげてください」のように、具体的で保護者が取り組める内容にします。
ポイント:保護者には「方針・様子・お願い」の3点セットで。お願いは多くても2つまでに絞ります。
授業の方針をわかりやすく説明する
今の英語の授業は、保護者が学んだ頃と比べて、話す・書くといった発信の活動が多くなっています。その違いに不安を感じる保護者もいるので、方針を簡潔に説明しておくと安心につながります。
保護者会での説明例
「英語の授業では、教科書の内容を理解するだけでなく、習った表現を使って自分のことを話したり書いたりする活動を大切にしています。例えば、過去形を習ったら、週末の出来事をペアで話し合う活動をします。文法や単語の知識は、使うことで定着しやすくなるからです」
評価についての説明
評価の観点(知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度)についても、「テストの点数だけでなく、授業での取り組みやスピーチ、提出物なども評価に含まれます」と具体的に伝えておきます。どんな課題が評価の対象になるかを示しておくと、家庭でも声をかけやすくなります。
専門用語を避ける
「パフォーマンス課題」「ルーブリック」などの言葉は、保護者にはなじみがないことがあります。「スピーチなどの発表」「評価の基準表」のように、わかりやすい言葉に置き換えましょう。
家庭でできる英語学習のアドバイス
保護者が英語を得意でなくても、家庭でできることはたくさんあります。むしろ「教える」必要はなく、「関心を持って見守る」ことが大切だと伝えましょう。
保護者に伝えたい家庭でのサポート
- 音読を聞く
教科書の本文を子どもが音読するのを聞く。英語がわからなくても、「すらすら読めるようになったね」と声をかけるだけで励みになります。
- 学習の時間と場所を一緒に決める
「夕食の後の15分」「リビングのテーブルで」など、いつどこでやるかを決める手助けをする。
- 小さな成長を認める
小テストの点数が上がった、単語を覚えた、といった小さな変化に気づいて声をかける。結果だけでなく、「毎日続けているね」と努力を認める。
- 英語に触れる機会をつくる
英語の歌や、字幕付きの映画・動画を家族で楽しむ。勉強としてではなく、楽しみとして。
- 比べない
きょうだいや友達と比べるのではなく、本人の以前と比べる。
避けてほしいこと
- 間違いを厳しく指摘する(英語を話すことが怖くなる)
- 保護者自身の「英語が苦手だった」経験を強調しすぎる(「英語は難しいもの」という印象を与える)
- 長時間の勉強を強制する(短時間でも毎日のほうが効果的)
面談での伝え方:場面別フレーズ
成績が伸び悩んでいる生徒の保護者に
「単語の小テストでは、準備してきた回はしっかり点が取れています。覚える力は十分あるので、家で単語練習をする時間を毎日少しでも確保できると、定期テストにもつながると思います。家では、練習したかどうかを一言聞いていただけると助かります」
英語が得意な生徒の保護者に
「授業では、発展的な課題にも積極的に取り組んでいます。さらに伸ばすなら、英語の本を読んだり、スピーチコンテストに挑戦したりするのもよい経験になると思います。ご本人の興味を大切にしてください」
英会話教室や塾について聞かれた時
「通われるかどうかはご家庭のご判断ですが、どちらにしても、学校の教科書の内容を確実にすることが土台になります。まずは教科書の音読と単語練習を習慣にされると、どんな学び方にもつながると思います」
特定の教室やサービスの良し悪しを先生が判断するのは避け、学校でできることと、家庭でできることを中心に伝えます。
よくある相談とその答え方
保護者からよく寄せられる相談と、答え方の方向性をまとめます。
「小学校の英語は得意だったのに、中学で急に苦手になった」
小学校では聞く・話す活動が中心で、中学校では読む・書く、文法の学習が本格的に始まります。「環境の変化でつまずく生徒は少なくありません。特に単語の綴りと語順が最初の壁なので、そこを家でも一緒に確認していただけると助かります」と伝えると、保護者も状況を理解しやすくなります。
「スマホばかりで勉強しない」
スマホを取り上げる話にするより、使い方を一緒に考える提案をします。「英語の歌を聞く、学習アプリで単語を5分練習するなど、スマホを英語に使う時間を決めるのも一つの方法です。使う時間のルールは、ご家庭で話し合って決めていただくのがよいと思います」
「宿題を見てあげたいが、答えが合っているかわからない」
答え合わせは学校でするので、家庭では「やったかどうか」「どこが難しかったか」を聞くだけで十分だと伝えます。「難しかったところを聞いてあげると、お子さんが自分の課題を言葉にする練習にもなります」
どの相談でも、まず保護者の心配を受け止め、「学校でしていること」と「家庭でお願いしたいこと」を分けて伝えるのが基本です。
学年通信・学級通信の文例
保護者全体に伝えたいことは、通信を使うと効率的です。短い文例を紹介します。
例:テスト前の家庭学習について
「来週から定期テスト前の期間に入ります。英語では、教科書の本文を繰り返し音読することと、新出単語を書いて覚えることが基本の学習です。ご家庭では、お子さんが音読している時に少し耳を傾けていただいたり、『今日は単語練習した?』と声をかけていただいたりするだけで、大きな励みになります」
例:スピーチ発表会について
「英語の授業で、『将来の夢』をテーマにしたスピーチ発表を行います。ご家庭で練習を聞いていただける場合は、内容や発音を直すよりも、『話し方が堂々としてきたね』など、よいところを伝えていただけるとうれしいです」
書く時のポイント
- 1つの通信で伝えることは1つか2つに絞る
- 具体的な行動を書く
- 保護者の負担にならない範囲のお願いにする
よくある失敗と今週のアクション
よくある失敗
- 課題ばかり伝える:面談で「できていないこと」だけを伝えると、保護者は家で叱るしかなくなります。必ずよい点も具体的に伝えましょう
- お願いが多すぎる:5つも6つもお願いすると、どれも実行されません
- 専門用語で説明する:保護者にわかる言葉に言い換えます
- 家庭の事情を考慮しない:共働きや介護などで時間がとれない家庭もあります。「無理のない範囲で」と添え、学校でできることも伝えます
今週のアクション
- 次の面談に向けて、担当クラスの生徒について「よい点」と「課題」を一つずつメモする
- 家庭へのお願いを「音読を聞く」「単語練習を一声かける」など、2つに絞った文を用意する
- 次の学年通信に載せる英語の短い記事を1つ書いてみる
ポイント:保護者は英語の先生の「応援団」になってくれる存在です。具体的で、無理がなく、前向きなメッセージを届けましょう。



