イギリス英語のスラングは「親しみのサイン」
イギリス英語のスラングと聞くと、難しい隠語のように感じるかもしれません。でも実際によく使われるのは、相手との距離を縮めるための、あたたかい日常語がほとんどです。
たとえば、お店で商品を受け取るとき、日本語なら「どうも」と軽く言いますよね。イギリスではそこで「Cheers!」がよく使われます。「ありがとうございます」ほどかしこまらず、でも失礼でもない、ちょうどいい温度の言葉です。
ここで大事なのが register(レジスター)、つまり「どのくらいフォーマルか」という感覚です。この記事では、次の3段階で目安を示します。
- フォーマル:面接、ビジネスメール、目上の人への手紙
- ニュートラル:店員さんとの会話、クラスメイトとの普通の会話
- カジュアル:友だち同士、家族、SNS
イギリスのスラングの多くは「ニュートラル〜カジュアル」に入ります。つまり、日常会話で使っても大丈夫だけれど、エッセイや試験の英作文には書かない言葉です。
ポイント:スラング=悪い言葉ではない。「話し言葉専用の、親しみのある言葉」と考えると覚えやすくなります。
まず覚えたい定番5語:mate・cheers・brilliant・fancy・sorted
mate(友だち、きみ)
もともとは「仲間」という意味。今では友だちへの呼びかけとして「Thanks, mate.」「Alright, mate?」のように使います。知らない人にも気さくに使われることがありますが、目上の人やビジネスの初対面には避けましょう。
cheers(ありがとう/じゃあね/乾杯)
乾杯の意味は有名ですが、イギリスでは 「ありがとう」 や 「じゃあね」 の意味でも日常的に使われます。メールの最後に「Cheers, Ken」と書く人も多く、ややカジュアルな結びの言葉です。
brilliant(すばらしい、最高)
アメリカでは「天才的な」という強い意味で使われがちですが、イギリスでは 「いいね!」「助かる!」 くらいの軽さでも使われます。「I'll bring the snacks.」「Brilliant!」のような感じです。
fancy(〜したい気分?)
動詞として「〜が欲しい、〜したい」の意味。「Do you fancy a cup of tea?」は「お茶でもどう?」という、やわらかい誘い方です。
sorted(片づいた、解決した)
「問題が解決した」「準備ができた」の意味。「The tickets are sorted.」で「チケットはもう手配済みだよ」となります。
気持ちを表すイギリス英語:knackered・chuffed・gutted
感情を表す言葉にも、イギリスらしいものがたくさんあります。
- knackered:くたくたに疲れた(very tired のカジュアル版)
- chuffed:うれしい、得意な気分(pleased よりくだけた言い方)
- gutted:すごくがっかりした(very disappointed)
- skint:金欠の(have no money のくだけた言い方)
- cheeky:ちょっと図々しいけど憎めない、茶目っ気のある
特に cheeky は日本語にしにくい言葉です。「最後のクッキー、もらっちゃおうかな」のような、軽いいたずら心を表します。「a cheeky snack(ちょっとだけのおやつ)」のように、「ついつい」のニュアンスで使われることもあります。
会話例:部活のあとに
- A: How was practice?
- B: I'm absolutely knackered. We ran for two hours.
- A: Did you win the match last week, though?
- B: No, we lost 2-1. I was gutted.
- A: Oh no. Well, fancy getting some chips?
- B: Brilliant. Cheers, mate.
この会話は友だち同士ならとても自然ですが、先生に対して「I'm knackered.」と言うと少しくだけすぎに聞こえることがあります。先生には「I'm really tired.」が安全です。
アメリカ英語とくらべると違いが見える
イギリス英語とアメリカ英語では、同じものを別の言葉で呼ぶことがよくあります。スラングとは少し違いますが、会話で混乱しやすいので一緒に覚えましょう。
- トイレ:イギリス loo(くだけた言い方)/アメリカ restroom, bathroom
- ポテトフライ:イギリス chips/アメリカ fries
- ポテトチップス:イギリス crisps/アメリカ chips
- お金(ポンド):イギリス quid(例:five quid=5ポンド)
- 大学:イギリス uni/アメリカ college
特に chips はよく混乱します。イギリスで「chips」を頼むと、薄いポテトチップスではなく、太めのフライドポテトが出てくる可能性が高いです。
また、イギリスでよく聞く「Alright?」は、「大丈夫?」ではなく「やあ、元気?」くらいのあいさつとして使われることがあります。返事は「Yeah, alright. You?」のように軽く返せばOKです。心配されていると思って体調を説明し始めなくて大丈夫です。
ポイント:イギリス英語の言葉を覚えるときは、「アメリカではどう言う?」もセットでメモすると、両方の英語に強くなれます。
よくある失敗と注意点
イギリスのスラングを覚えたての人がやりがちな失敗を3つ紹介します。
- どこでも mate を使ってしまう
面接官や先生に「Thanks, mate.」は親しすぎます。初対面や目上の人には「Thank you very much.」を使いましょう。
- 作文や試験に書いてしまう
英検やIELTSのライティングで「It was brilliant, cheers.」のように書くのはNGです。書き言葉では「It was excellent.」「Thank you.」を使います。
- 発音やアクセントまでまねしすぎる
言葉を覚えるのは良いことですが、特定の地域のアクセントを大げさにまねすると、からかっているように聞こえることがあります。まずは言葉の意味と使いどころを理解することを優先しましょう。
また、イギリスには地域によって違う言葉も多くあります。ロンドン、北イングランド、スコットランドなどで表現が違うので、「イギリス人は全員これを言う」と決めつけないのも大切です。
1週間で身につける練習メニュー
イギリスのカジュアル表現を、無理なく使えるようにする1週間メニューです。1日10分でできます。
- 1日目:この記事の5語(mate, cheers, brilliant, fancy, sorted)をノートに書き、自分で例文を1つずつ作る
- 2日目:感情の言葉(knackered, chuffed, gutted)を、今日の自分の気分に当てはめて言ってみる
- 3日目:イギリスが舞台の動画やドラマを10分見て、cheers や brilliant が何回出てくるか数える
- 4日目:アメリカ英語との違い(chips / crisps など)を表にまとめる
- 5日目:「Do you fancy〜?」で誘う文を3つ作って音読する
- 6日目:会話例を声に出して、A役・B役を両方やってみる
- 7日目:1週間で覚えた言葉を何も見ずに書き出し、フォーマルな言い換えも添える
最後の「フォーマルな言い換え」が特に大切です。「knackered → very tired」のように、カジュアルとフォーマルをセットで覚えると、場面に合わせて使い分けられるようになります。



