一夜漬けの詰め込みが続かない理由
テスト前夜に教科書を必死に詰め込んで、なんとか点数を取った。でも1週間後にはほとんど覚えていない……。こんな経験はありませんか?
学習法の分野では、短い時間に集中して詰め込むより、時間をあけて何度か復習するほうが長く記憶に残りやすいことが、よく知られています。いわゆる「間隔反復」の考え方です。
一夜漬けが長続きしにくいのは、次のような理由が考えられます。
- 復習の回数が少なく、思い出す練習が足りない
- 睡眠時間を削ることが多く、定着の時間が短くなる
- 「テストが終わったら忘れていい」という意識で覚えている
ポイント:一夜漬けは「その場をしのぐ」ことはできても、英語のように積み重ねが大切な科目では、後で必ず苦労します。
英語は、中学で習った単語や文法が高校、大学、社会人になっても使われ続ける科目です。だからこそ、長持ちする覚え方が大切なのです。
記憶術が向いているもの・向いていないもの
記憶術は、得意なことと苦手なことがはっきりしています。
向いているもの
- 順番やリストの暗記:50州、曜日、不規則動詞の3つの形など
- 意味と結びつけにくい単語:何度やっても覚えられない英単語
- スピーチや暗唱の流れ:段落の順番やキーワード
向いていないもの
- 文法のしくみ:なぜ現在完了を使うのか、関係代名詞がどう働くのか、といった理解が必要なもの
- 自然な言い回しや感覚:コロケーション(make a mistake など)や、場面に合った表現の選び方
- リスニング・スピーキングの力:たくさん聞いて、たくさん話す経験の中で伸びていくもの
ポイント:記憶術は「暗記しなければならないもの」を効率よく覚えるための道具です。理解や経験が必要なものまで、記憶術で片付けようとしないことが大切です。
迷ったときの判断基準
「これは記憶術を使うべき?」と迷ったら、次の質問を自分にしてみましょう。
- 理由を説明できる内容か? → 説明できるなら、まず理解を優先
- 決まった順番や組み合わせを覚えるだけか? → それなら記憶術が役立つ
- 何度やっても忘れるか? → 苦手なものにだけ記憶術を使う
この3つの質問を習慣にすると、勉強時間の使い方にメリハリがつきます。理解に時間をかけるべきところと、記憶術でさっと片付けるところを分けることで、全体の効率が上がります。
「理解して覚える」とはどういうことか
理解して覚える、とは、なぜそうなるのかを自分の言葉で説明できる状態で覚えることです。
例1:不規則動詞
- 丸暗記:go-went-gone を呪文のように覚える
- 理解して覚える:過去形 went は「過去の一時点」、過去分詞 gone は「現在完了や受け身で使う形」だと理解したうえで、I went to Kyoto last year. と He has gone to Kyoto.(彼は京都に行ってしまって、今ここにいない)のちがいを例文で確認する
例2:前置詞
- 丸暗記:in the morning / on Monday / at 7 o'clock とセットで覚える
- 理解して覚える:at は「点」、on は「接触・特定の日」、in は「広がりのある期間や空間の中」というイメージをつかみ、ほかの表現にも応用する
理解して覚えた知識は、初めて見る問題にも応用できるのが大きな強みです。丸暗記した知識は、覚えた形のままでしか使えません。
記憶術と理解を組み合わせる勉強の流れ
では、記憶術と理解をどう組み合わせればいいのでしょうか。おすすめの流れは次のとおりです。
- 理解する:まず意味やしくみを理解する。わからないところは先生や参考書で確認する
- 覚える:どうしても覚えにくい部分にだけ、記憶術(語呂・イメージ・歌など)を使う
- 思い出す:何も見ずに思い出す練習をする
- 使う:例文を作る、英作文や会話で使う
- 間隔をあけて復習する:翌日・数日後・1週間後などに、もう一度思い出す
ポイント:記憶術は2番目のステップで使う「補助の道具」です。1番の「理解」と、4番の「使う」を飛ばさないことが大切です。
この流れで勉強すると、覚えた知識が「使える知識」に変わっていきます。
例3:英単語
- 丸暗記:「important=重要な」と訳語だけを覚える
- 理解して覚える:im-(中へ)+ port(運ぶ)という語源に触れつつ、It is important to ~ の形や、an important meeting のような組み合わせを例文で確認する
1週間の実践メニュー
今の勉強を「理解+記憶」の形に変えていく1週間メニューです。
- 1日目:今覚えようとしている範囲を、「理解が必要なもの」と「暗記するしかないもの」に分ける
- 2日目:「理解が必要なもの」を1つ選び、自分の言葉でノートに説明を書く
- 3日目:「暗記するしかないもの」のうち、苦手なものにだけ記憶術を使う
- 4日目:1〜3日目の内容を、何も見ずに思い出してみる
- 5日目:覚えた単語や文法を使って、英作文を5文書く
- 6日目:家族や友達に、覚えた文法を説明してみる(説明できるか確認)
- 7日目:1日目の内容をテスト。忘れていたものは、次の週にもう一度
6日目の「人に説明する」は、とても効果的な確認方法です。うまく説明できないところは、まだ理解があやふやなサインです。
よくある失敗と対策
- 失敗1:記憶術の準備に時間をかけすぎる → 語呂合わせやイメージ作りに夢中になって、肝心の復習時間がなくなる。記憶術は「苦手なものだけ」に使いましょう。
- 失敗2:覚えたことに満足して使わない → 単語や文法は、使ってみて初めて本当に身につきます。例文作りや音読を必ずセットに。
- 失敗3:「記憶力がないから」とあきらめる → 忘れるのは誰にでも起こる自然なことです。忘れたら、もう一度思い出せばいいだけ。復習の回数が記憶をつくります。
- 失敗4:「短期間で劇的に覚えられる」という話を信じすぎる → 記憶術は便利ですが、努力なしで何でも覚えられる方法ではありません。地道な復習とセットで使いましょう。
忘れることを前提に、復習の予定を最初から組んでおくと、気持ちもぐっと楽になります。
まとめ:記憶術は「上手に使う道具」
記憶術について、この記事のポイントをまとめます。
- 一夜漬けの詰め込みは長続きしにくい。間隔をあけた復習が基本
- 記憶術は順番・リスト・覚えにくい単語に強い
- 文法のしくみや自然な表現は、理解と経験で身につける
- 勉強の流れは「理解→覚える→思い出す→使う→復習」
記憶術は、上手に使えば暗記の負担をぐっと軽くしてくれる便利な道具です。でも、主役はあくまで理解と、くり返しの練習です。道具に振り回されず、道具を使いこなす意識で、英語の勉強を楽しんでいきましょう。
ポイント:「この単語、なぜこの意味なんだろう?」と一瞬考えるだけでも、丸暗記より記憶に残りやすくなります。



