記憶の宮殿(場所法)とは?
記憶の宮殿は、よく知っている場所の順路を思い浮かべ、そこに覚えたいものをイメージとして1つずつ置いていく方法です。思い出すときは、頭の中でその順路を歩き、置いたものを順番に拾っていきます。
この方法が古くから伝わっているのは、人間が「場所」や「絵」を覚えるのが得意だからだと説明されることが多いです。文字の並びはすぐ忘れても、「玄関に何があったか」は意外と思い出せますよね。その得意分野を暗記に利用するのが場所法の考え方です。
ポイント:記憶の宮殿は特別な才能ではなく、手順どおりに練習すれば誰でも試せる技術です。
ただし、どんなものでも魔法のように覚えられるわけではありません。英単語なら「意味と結びつけにくい単語」「何度やっても忘れる単語」に使うと効果を感じやすいでしょう。
ステップ1:自分の宮殿を作る
まずは宮殿、つまり順路のある場所を1つ決めます。おすすめは自分の家です。
- 玄関から始まるルートを決める(玄関→靴箱→廊下→トイレ→リビング…)
- 目印になる場所(ロケーション)を10か所選ぶ
- 紙に番号つきで書き出す
例:①玄関のドア ②靴箱 ③傘立て ④廊下の電気のスイッチ ⑤洗面台 ⑥お風呂 ⑦冷蔵庫 ⑧ソファ ⑨テレビ ⑩窓のカーテン
大事なのは、順番がいつも同じで、一つひとつがはっきり区別できることです。「リビングの床」のようなあいまいな場所より、「ソファの右端」のように具体的なほうがイメージを置きやすくなります。
家のほかに、通学路、学校の校舎、よく行くコンビニなども宮殿になります。宮殿を複数持っておくと、単語のグループごとに使い分けられます。
ステップ2:単語をイメージに変えて置く
次に、覚えたい単語を意味がわかる派手なイメージに変えて、ロケーションに置いていきます。イメージは、大げさで、動きがあって、少しおかしいほど記憶に残りやすいと言われています。
例として、5つの単語を置いてみましょう(イメージはすべて一例です)。
- ①玄関のドア:fragile(壊れやすい) → ドアがガラス細工でできていて、触るとピキッとヒビが入る
- ②靴箱:abundant(豊富な) → 靴箱を開けると靴があふれ出して止まらない
- ③傘立て:reluctant(気が進まない) → 傘たちが「外に出たくない」としがみついている
- ④電気のスイッチ:illuminate(照らす) → スイッチを押すと家中がまぶしく光る
- ⑤洗面台:vanish(消える) → 鏡に映った自分がスッと消える
置くときは、英単語をつぶやきながらイメージを作るのがコツです。イメージだけ覚えて英語のつづりや発音を忘れては意味がありません。
ステップ3:歩いて思い出し、単語帳で仕上げる
置き終わったら、頭の中で玄関からもう一度歩いてみましょう。「ドアにヒビ…fragile」「靴があふれる…abundant」と、イメージから単語を取り出します。
思い出せなかったら、イメージが弱かったサイン。もっと大げさにするか、別のイメージに作り直します。
単語帳と組み合わせる
記憶の宮殿は「きっかけ」を作る方法です。最終的には、イメージがなくても意味がすぐ出てくる状態を目指します。
- 宮殿で覚える
- 翌日、単語帳やアプリで確認する
- 例文の中で使ってみる(The vase is fragile, so please be careful.)
- 数日後にもう一度宮殿を歩いて確認する
何度か使ううちに、宮殿を通らなくても意味が出てくるようになります。そうなったら、そのロケーションは別の単語に使い回して大丈夫です。
応用編:フレーズや文法ルールも置いてみる
単語に慣れてきたら、記憶の宮殿をフレーズや文法のルールにも使ってみましょう。
熟語・フレーズを置く
たとえば、句動詞を宮殿に置く例です。
- 冷蔵庫:put off(延期する) → 冷蔵庫に「明日やる」と書いた紙がどんどん貼られていく
- ソファ:look after(世話をする) → ソファで子犬を抱いて、じっと見守っている
- テレビ:give up(あきらめる) → テレビの中の選手が両手を上げて降参している
動きのある熟語は、イメージにしやすいので宮殿と相性が良いです。
不規則動詞や文法ルールの「順番」を置く
順番が大事な情報も、宮殿の得意分野です。たとえば、英作文でよく使うつなぎ言葉を「最初に・次に・さらに・最後に」の順でロケーションに置けば、スピーチやエッセイの構成を思い出す助けになります。
ポイント:宮殿を「単語用」「熟語用」「スピーチ用」と用途別に分けておくと、混乱せずに使い分けられます。
ただし、文法は理解してこそ使えるもの。宮殿は、理解した内容を思い出すための補助として使いましょう。
1週間の実践メニュー
まずは1週間、次のメニューで試してみましょう。
- 1日目:家の中に10か所のロケーションを決めて紙に書く
- 2日目:苦手な英単語10個を選び、宮殿に置く。すぐに1回歩いて確認
- 3日目:前日の10個を思い出しテスト。忘れた単語のイメージを作り直す
- 4日目:通学路で2つ目の宮殿を作り、新しい10個を置く
- 5日目:2つの宮殿を歩いて20個を確認
- 6日目:20個を使って英作文を5文作る
- 7日目:単語帳で20個をテスト。覚えた単語は宮殿から卒業させる
1回に置く単語は10個程度にとどめましょう。慣れないうちに量を増やすと、イメージ作りに時間がかかりすぎてしまいます。
慣れてきたら、宮殿を歩くスピードを上げてみましょう。最初は1周に数分かかっても、くり返すうちに短時間で10個を取り出せるようになります。通学中や寝る前など、手ぶらでできる復習になるのも場所法の良いところです。
よくある失敗と対策
- 失敗1:イメージが地味すぎる → 「ドアの前に壊れ物が置いてある」では弱い。大きさ・動き・音を足して、思わず笑うくらいにしましょう。
- 失敗2:イメージ作りに時間をかけすぎる → 1単語に何分もかけるなら本末転倒です。30秒程度で思いつかない単語は、例文で覚えるなど別の方法に切り替えましょう。
- 失敗3:すべての単語を宮殿で覚えようとする → 意味がわかりやすい単語や、すでに何度も見ている単語は、ふつうに読んで使うほうが効率的です。
- 失敗4:一度置いて終わり → 記憶の宮殿でも、復習しなければ忘れます。翌日・数日後に歩き直す習慣をつけましょう。
記憶の宮殿は、苦手な単語に使う「特別な道具」だと考えるとちょうどいいバランスです。
動画で「実演」を見てみよう
記憶の宮殿は、文章で読むより実際にやっている様子を見るほうがイメージしやすい方法です。STUDY HACKの「記憶術」の動画コーナーでは、場所法の解説アニメや、記憶力の大会に出た人たちの講演を集めています。英語で解説を聞けばリスニングの練習にもなるので、まずは短い動画を1本見てから、自分の宮殿づくりに取りかかってみましょう。
ポイント:動画を見るときは「手順」をメモしながら見ると、そのまま自分の練習メニューになります。



