日食は千年先まで予報できる。なのに「どこで見えるか」は少しあやしい。犯人は地球の自転

読む前に予想してみよう!
日食がいつどこで見えるかは、1000年後でもメートル単位で正確にわかる
月と太陽の動きは正確に計算できるが、地球の自転のゆらぎは予測しきれず、遠い未来ほど場所がずれる。
- 対象
- 日食・月食・星食の記録
- 規模
- 紀元前720年〜2015年の記録
- 研究の種類
- 歴史記録と天体力学の解析
- 確かさ
- ★★★★☆
日食は千年単位で予報できる。ただ地球の自転が不規則に遅れるため、遠い過去や未来ほど見える場所がずれる。古代の日食記録が自転の歴史を教えてくれた。
ひとことで言うと日食は何百年も先まで予想できる。でも見える場所は少しずれるかも。
天気予報は、1週間先でもよく外れます。ところが日食は、何百年、何千年も先まで予報されています。
NASAは、紀元前2000年から西暦3000年までの5000年分の日食を一覧にしたカタログまで公開しています。宇宙の予報は、とんでもなく正確なのです。
でも、実はひとつだけあやしいところがあります。それは「地球のどこで見えるか」。その原因は、なんと私たちの足もと、地球の自転にありました。
01月と太陽の動きは「ほぼ完ぺき」に計算できる
日食は、太陽・月・地球が一直線に並び、月が太陽を隠す現象です。
月と地球の動きは、ニュートン以来の力学で計算できます。しかも、アポロ計画で月に置かれた反射鏡にレーザーを当てることで、月までの距離は今ではミリ単位の精度で測れます。だから「いつ、宇宙で3つが一直線に並ぶか」は、とても正確にわかります。
02ずれの犯人は「地球の自転のゆらぎ」
問題は、日食の影が地球のどこに落ちるかです。
地球は自転しているので、影が落ちる場所は「その瞬間に地球がどれだけ回っているか」で決まります。ところが地球の自転は、一定ではありません。
- 月の引力による潮の満ち引きが、ブレーキをかけて自転を少しずつ遅くする
- 氷河期の厚い氷がとけたあと、地面がゆっくり持ち上がる動きや、地球の中心の核の動きが、自転を速めたり遅くしたりする
正確な時計で測った時刻と、地球の回り方をもとにした時刻のずれをΔT(デルタT)といいます。NASAによると、このずれは2000年ごろには約1分でしたが、西暦0年ごろには約3時間にもなります。
地球の表面は、赤道では1秒間に約460mも動いています。つまりΔTを1秒見誤ると、影の場所は数百mずれます。もし西暦0年ごろの日食で、約3時間のΔTを計算に入れなければ、日食の見える場所は数千kmも外れてしまいます。
もちろん、計算ではΔTを見込んでいます。それでも、NASAの表では西暦0年ごろのΔTに約260秒(4分あまり)の不確かさが残っています。赤道付近なら、見える場所が東西に100km余りずれうる計算です。

03古代人の日食メモが「地球の自転計」になった
逆に言えば、昔の人が「この日、この町で日食が見えた」と書き残していれば、当時の地球の自転のずれを逆算できます。
古代バビロニアや中国の天文官が残した記録が、何千年後の地球物理学の貴重なデータになったのです。
04未来の日食は「場所だけ」ずれるかも
では、未来の日食はどうでしょう?
近い将来の日食なら、ΔTのずれは小さいので、場所も時刻もかなり正確に予報できます。国内では、2035年9月2日に北陸から北関東にかけて皆既日食が見られると予報されています。
ただし何百年も先となると、NASAも「ΔTの将来の変化は確実には予測できない」としています。日付と「起きること」はほぼ確実、でも見える場所は少しずれるかもしれない——これが、日食予報の正直なところです。
05まとめ
- 日食は、月と太陽の動きから何千年分も予報できる
- でも地球の自転は不規則にゆらぐので、遠い過去・未来ほど見える場所がずれる
- 古代の日食の記録から、1日が100年で約1.8ミリ秒ずつ長くなることがわかった
月と太陽の動きは、とても正確な時計のようなもの。少しだけ気まぐれだったのは、私たちが立っている地球の回り方のほうでした。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWeather forecasts are often wrong even a week ahead, but solar eclipses can be predicted thousands of years…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Scientists can predict solar eclipses thousands of years into the future. They know very well how the Moon and the Sun move.
But there is one small problem. Earth does not spin at exactly the same speed all the time. So for eclipses far in the future, scientists know the day, but they are not completely sure where people will see them.
62 words ・ CEFR A2
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科学者は、何千年も先の日食を予報することができます。月と太陽がどう動くかをとてもよく知っているからです。
しかし、1つだけ小さな問題があります。地球はいつもまったく同じ速さで回っているわけではないのです。そのため、ずっと先の日食については、科学者は日付は分かっても、人々がどこでそれを見られるかは完全には分かりません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
日食を何千年も先まで予報できること、ただし場所には不確かさがあることを述べているので B。
Q2. What is the small problem with predicting eclipses?
Earth does not spin at exactly the same speed all the time. とあるので D。日付は分かるので C は誤り。
Q3. In this passage, "predict" means ...
thousands of years into the future(何千年も先)の日食について使っているので「予報する・予測する」。C が正解。
Weather forecasts are often wrong even a week ahead, but solar eclipses can be predicted thousands of years in advance. NASA has even published a catalog of eclipses covering 5,000 years. This is possible because the movements of the Moon and Earth can be calculated very precisely.
However, where an eclipse can be seen depends on how far Earth has rotated at that moment, and Earth's spin is not perfectly steady. Tides caused by the Moon slowly slow it down, while other changes inside Earth can speed it up or slow it down. As a result, for eclipses far in the past or future, the date is almost certain, but the exact location may shift.
115 words ・ CEFR B1
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天気予報は1週間先でもよく外れますが、日食は何千年も前もって予報することができます。NASAは5000年分の日食をまとめたカタログまで公開しています。これが可能なのは、月と地球の動きをとても正確に計算できるからです。
しかし、日食がどこで見えるかは、その瞬間に地球がどれだけ回っているかによって決まり、地球の自転は完全に一定ではありません。月が引き起こす潮の満ち引きが自転を少しずつ遅くし、一方で地球内部のほかの変化が自転を速めたり遅くしたりします。その結果、遠い過去や未来の日食では、日付はほぼ確実でも、正確な場所はずれるかもしれないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
最終文 the date is almost certain, but the exact location may shift が要点なので C。
Q2. According to the passage, what slowly slows down Earth's spin?
Tides caused by the Moon slowly slow it down とあるので B。
Q3. Why might the location of an eclipse 1,000 years from now be uncertain?
見える場所は地球の回り具合で決まり、その自転が一定でないと述べているので D と推測できる。
A NASA catalog published in 2006 lists 11,898 solar eclipses, from 2000 BC to AD 3000. The orbits of the Moon and Earth are known so precisely that the timing of each alignment is highly reliable. The uncertain part is where the Moon's shadow falls. That depends on how far Earth has turned, and Earth does not turn at a perfectly steady rate.
Tidal friction slowly brakes it, while the rebound of land after the ice ages and motions in Earth's core can speed it up or slow it down. The gap between clock time and time based on Earth's rotation is called Delta T. It was about one minute around 2000 but roughly three hours around AD 0.
Because the equator moves at about 460 meters per second, ignoring hours of Delta T would shift an eclipse path by thousands of kilometers. Astronomers have turned this weakness into a tool. In 2016, researchers at Durham University analyzed eclipse records going back to 720 BC. They found that the day has lengthened by about 1.8 milliseconds per century. That is less than tides alone would predict, so other forces must also be acting on Earth's spin.
196 words ・ CEFR B2
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2006年に公開されたNASAのカタログには、紀元前2000年から西暦3000年までの1万1898回の日食が載っています。月と地球の軌道は非常に正確にわかっているので、それぞれが一直線に並ぶタイミングはきわめて信頼できます。不確かなのは、月の影がどこに落ちるかです。それは地球がどれだけ回ったかによって決まりますが、地球の回転の速さは一定ではありません。
潮汐による摩擦が自転を少しずつ遅くし、一方で氷河期のあとの地面の戻りや地球の核の動きは、自転を速めたり遅くしたりします。時計の時刻と地球の自転にもとづく時刻との差は、ΔT(デルタT)と呼ばれます。2000年ごろには約1分でしたが、西暦0年ごろにはおよそ3時間でした。
赤道は秒速約460メートルで動いているので、数時間ものΔTを計算に入れなければ、日食の帯は何千キロメートルもずれてしまいます。天文学者たちは、この弱点を道具に変えました。2016年、ダラム大学の研究者たちは紀元前720年までさかのぼる日食の記録を分析しました。その結果、1日の長さは100年あたり約1.8ミリ秒ずつ長くなっていることがわかりました。これは潮汐だけから予想される値より小さいので、ほかの力も地球の自転に働いているはずです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
前半で日食の場所が不確かになる原因(自転の不規則さ・ΔT)、後半で古い記録から自転の変化を調べた研究を述べているので D。
Q2. What was Delta T around AD 0?
roughly three hours around AD 0 とあるので A。約1分は2000年ごろの値。
Q3. What does the author mean by saying astronomers have "turned this weakness into a tool"?
直後に、古代の日食記録を分析して1日の長さの変化を求めた研究が続くので B。予報の弱点が、逆に自転を調べる手がかりになった。
重要単語
- eclipseB2名詞食(日食・月食)A total solar eclipse is a rare event.
solar eclipse「日食」、lunar eclipse「月食」。動詞で「~の影を薄くする」の意味もある。 - predictionB1名詞予報、予測Eclipse predictions are very accurate.
pre-(前に)+dict(言う)。make a prediction「予測する」。dictionary も dict(言う)の仲間。 - rotationB2名詞自転、回転Earth's rotation is slowing down.
自転は rotation、公転は revolution。in rotation「交代で」の意味もある。 - irregularB2形容詞不規則なThe changes in Earth's spin are irregular.
ir-(否定)+regular。irregular verbs「不規則動詞」でおなじみ。 - recordA2名詞・動詞記録(する)Ancient eclipse records are valuable data.
名詞は前にアクセント(RE-cord)、動詞は後ろ(re-CORD)。break a record「記録を破る」。 - uncertaintyB2名詞不確かさThe uncertainty grows over time.
un-(否定)+certain+-ty。科学文では誤差の幅を表す重要語。 - millenniumC1名詞千年(間)Eclipse predictions extend across millennia.
複数形は millennia。mille(千)+annus(年)。century(百年)、decade(十年)とセットで。
公式・一次情報をチェック
- Five Millennium Catalog of Solar Eclipses(NASA)eclipse.gsfc.nasa.gov
- Delta T(NASA)eclipse.gsfc.nasa.gov
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日食は何千年分も予報されていて、NASAは5000年分のカタログまで公開している。でも遠い未来ほど「どこで見えるか」はあやしくなる。犯人は地球の自転。古代の人が残した日食の記録から、1日の長さの変化まで測れたらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Stephenson, Morrison & Hohenkerk (2016) Measurement of the Earth's rotation: 720 BC to AD 2015, Proceedings of the Royal Society Adoi.org
- Espenak & Meeus (2006) Five Millennium Canon of Solar Eclipses: -1999 to +3000, NASA Technical Publication TP-2006-214141eclipse.gsfc.nasa.gov
- Morrison et al. (2021) Addendum 2020 to ‘Measurement of the Earth’s rotation: 720 BC to AD 2015’, Proceedings of the Royal Society Adoi.org
- NASA, Delta T (ΔT)eclipse.gsfc.nasa.gov
- 国立天文台, 日食とはnao.ac.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










