宇宙・NASAホント

1859年、太陽の大爆発で電信線から火花が出た。「キャリントン・イベント」がいま起きたら

1859年、太陽の大爆発で電信線から火花が出た。「キャリントン・イベント」がいま起きたら

読む前に予想してみよう!

太陽の爆発(フレア)は、地球の電気や通信に影響することがある

研究カード(どんな研究?)
対象
1859年の磁気嵐と極端な宇宙天気
規模
歴史記録・磁場記録・樹木年輪
研究の種類
歴史資料の解析+統計モデル
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

1859年、観測史上最大級の太陽フレアと磁気嵐が起き、低緯度でもオーロラが見え、電信設備が乱れた。同規模の嵐が10年以内に起きる確率は約12%という試算もある。

ひとことで言うと1859年に太陽が大ばくはつして、世界中で電信がおかしくなったよ。

もくじ
  1. ハワイでもオーロラ、電信線から火花
  2. どれくらい「最強」だったのか
  3. いま起きたら何が困る?
  4. 「10年以内に約12%」という試算
  5. まとめ

1859年9月1日、イギリスの天文学者リチャード・キャリントンは、望遠鏡で太陽の黒点をスケッチしていました。すると突然、黒点のあたりに、まぶしい白い光が2つ現れたのです。光は5分ほどで消えました。

これが、記録に残る最初の太陽フレア(太陽表面の大爆発)の観測です。そして翌日、地球では、近代の観測史上最大級の磁気嵐が起きました。この一連の出来事を「キャリントン・イベント」と呼びます。

01ハワイでもオーロラ、電信線から火花

太陽フレアのあと、太陽からは電気を帯びたガスのかたまりが猛スピードで飛び出しました。これが地球にぶつかると、地球の磁場が大きく乱れます。これが磁気嵐です。

キャリントン・イベントの磁気嵐では、ふだんは北極や南極の近くでしか見えないオーロラが、ハワイやパナマ、チリのサンティアゴなど、赤道に近い場所でも見られました。夜空があまりに明るく、朝だと思って起きだした人もいたと伝えられています。

当時の最先端の通信網だった電信にも、異変が起きました。電線に余計な電流が流れ、火花が散ったり、電池を外しても通信できてしまったりしたという記録が残っています。

太陽から飛び出したガスのかたまりが地球の磁場を大きく乱す
太陽から飛び出したガスのかたまりが地球の磁場を大きく乱す

02どれくらい「最強」だったのか

日本の研究者も、この嵐を調べています。京都大学などのチーム(早川尚志さんらによる2016年の研究)は、東アジアの古い記録を調べ、キャリントン・イベントのあとの嵐で、ふつうの低緯度オーロラの現象よりも、オーロラの帯がさらに広かったことを示しました。

03いま起きたら何が困る?

1859年には、電気を使う機械は電信くらいしかありませんでした。でも、いまは違います。

  • 送電網:1989年3月、カナダのケベック州では、磁気嵐で送電網が止まり、約9時間の大停電が起きた
  • 人工衛星:2022年2月、打ち上げ直後の通信衛星スターリンクが、小さな磁気嵐で大気の抵抗が増え、最大40機が落下した
  • GPSや通信:電波の通り道が乱れ、位置情報や無線通信に誤差が出る

キャリントン・イベントは、これらの例よりはるかに強い嵐でした。もし同じ規模の嵐がいま起きれば、影響はずっと大きくなるおそれがあります。

04「10年以内に約12%」という試算

では、そんな嵐はどれくらいの確率で起きるのでしょう?

アメリカの研究者ライリーは2012年、過去の磁気嵐の強さと回数の関係から、キャリントン級の嵐が10年以内に起きる確率は約12%と見積もりました。ただしこれは、「大きな嵐ほど少ない」という関係が、データの少ない極端な嵐にもそのまま当てはまると仮定した計算です。研究者自身も、この方法の限界を認めています。

さらに上がいることもわかっています。名古屋大学の三宅芙沙さんらは2012年、日本の屋久杉の年輪を調べ、西暦774〜775年に、宇宙から来た放射線が急増した跡を見つけました。その後の研究で、これはキャリントン・イベントをはるかに上回る太陽の大爆発だった可能性が高いと考えられています。

05まとめ

  • 1859年のキャリントン・イベントは、記録に残る最大級の太陽フレアと磁気嵐
  • 赤道近くでもオーロラが見え、電信に火花や障害が出た
  • 同規模の嵐が10年以内に起きる確率は約12%という試算もあり、電気に頼る現代社会の備えが課題

太陽は、私たちに光と熱をくれる星。でもときどき、地球の暮らしを揺さぶるほどのくしゃみをします。その「宇宙の天気」を知ることも、これからの時代の大切な防災なのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerOn September 1, 1859, the British astronomer Richard Carrington was drawing sunspots when he saw two bright… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

On September 1, 1859, the British astronomer Richard Carrington was drawing sunspots when he saw two bright white lights appear on the Sun. This was the first solar flare ever recorded. The next day, the strongest geomagnetic storm in modern records hit Earth. Auroras, which are usually seen only near the poles, appeared as far south as Hawaii and Panama. Telegraph lines also had problems: some gave off sparks, and some could even send messages after their batteries were disconnected.

Today, a similar storm could damage power grids and satellites. In 1989, a much smaller storm caused a nine-hour blackout in Quebec, Canada. One study estimated a 12 percent chance of a Carrington-level storm within ten years.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1859年9月1日、イギリスの天文学者リチャード・キャリントンが太陽の黒点をスケッチしていると、太陽に2つの明るい白い光が現れるのが見えました。これは記録に残る初めての太陽フレアでした。次の日、近代の観測記録で最も強い磁気嵐が地球をおそいました。ふつうは極の近くでしか見られないオーロラが、南はハワイやパナマにまで現れました。電信線にも問題が起き、火花を出すものもあれば、電池を外したあとでも通信できてしまうものさえありました。

今日、同じような嵐が起きれば、送電網や人工衛星が被害を受けるかもしれません。1989年には、それよりずっと小さな嵐で、カナダのケベック州で9時間の停電が起きました。ある研究は、キャリントン級の嵐が10年以内に起きる確率を12パーセントと見積もりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What happened in Quebec in 1989?

Q3. Why does the writer mention the 1989 blackout?

重要単語

  • solar flareB2
    名詞(句)太陽フレアA solar flare is a sudden burst of energy on the Sun. solar(太陽の)+flare(ぱっと燃え上がる)。強さは C, M, X などの等級で表す。
  • geomagnetic stormC1
    名詞(句)磁気嵐The geomagnetic storm caused bright auroras. geo-(地球)+magnetic(磁気の)。地球の磁場が大きく乱れる現象。
  • space weatherB2
    名詞(句)宇宙天気Space weather can affect satellites and power grids. 太陽活動による地球周辺の環境の変化を「天気」にたとえた言葉。space weather forecast「宇宙天気予報」。
  • telegraphB2
    名詞電信Telegraph lines sparked during the storm. tele-(遠く)+graph(書く)。telephone(遠くの音)、television(遠くの映像)と同じ tele-。
  • probabilityB2
    名詞確率The probability of another extreme storm is not small. 形容詞 probable(ありそうな)、副詞 probably。in all probability「十中八九」。
  • power gridB2
    名詞(句)送電網A storm in 1989 knocked out a power grid. grid は「格子・網の目」。off-grid は「電力網から独立した」。
  • vulnerableC1
    形容詞弱い、被害を受けやすいModern society is more vulnerable to solar storms. be vulnerable to ~「~に弱い」。ラテン語 vulnus(傷)から。入試の論説文で頻出。

4コマでわかる

1859年、太陽の大爆発で電信線から火花が出た。「キャリントン・イベント」がいま起きたらの4コマ漫画
1859年9月、太陽で観測史上最大級のフレアが起き、翌日には地球で巨大な磁気嵐。ハワイやパナマでもオーロラが見え、電信の設備が火花を散らしたという記録も。同規模の嵐が10年以内に起きる確率は約12%という試算もある。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Cliver & Dietrich (2013) The 1859 space weather event revisited: limits of extreme activity, Journal of Space Weather and Space Climatedoi.org
  2. Riley (2012) On the probability of occurrence of extreme space weather events, Space Weatherdoi.org
  3. Hayakawa et al. (2016) East Asian observations of low-latitude aurora during the Carrington magnetic storm, Publications of the Astronomical Society of Japandoi.org
  4. Miyake et al. (2012) A signature of cosmic-ray increase in AD 774–775 from tree rings in Japan, Naturedoi.org