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土星の輪はいつか消える?「輪の雨」が降り続けている、という観測

土星の輪はいつか消える?「輪の雨」が降り続けている、という観測

読む前に予想してみよう!

土星の輪は、土星が生まれたときから今の姿のまま変わらない

研究カード(どんな研究?)
対象
土星の輪
規模
探査機カッシーニ・地上望遠鏡の観測
研究の種類
観測研究+数値シミュレーション
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

土星の輪の氷は「輪の雨」として土星に降り続け、NASAは1億年以内に消える可能性を示した。一方で「輪は意外と古い」という反論も出て、年齢をめぐる議論は続いている。

ひとことで言うと土星の輪の氷は、少しずつ土星に落ちているよ。いつか消えるかもしれないんだ。

もくじ
  1. 輪は「巨大で、うすい」
  2. 氷が「雨」になって土星に落ちている
  3. 輪は「恐竜時代」生まれ?
  4. どんでん返し:「若く見えるだけ」説
  5. まとめ

土星といえば、あの美しい輪。でも、その輪がいつか消えてしまうかもしれない、と言われたらどうでしょう?

じつは土星の輪の氷は、いまこの瞬間も、少しずつ土星に降り注いでいます。NASAはこれを「輪の雨(リング・レイン)」と呼んでいます。

ところが最近、「いや、輪は見た目よりずっと古いのかも」という研究も登場しました。土星の輪をめぐる、ちょっとしたミステリーを追ってみましょう。

01輪は「巨大で、うすい」

NASAによると、土星の輪は土星から最大約28万kmも広がっています。地球から月までの距離の、7割以上です。

ところが、厚みはびっくりするほどうすい。主な輪の厚さはふつう10mほど。ビルの3階くらいしかありません。

輪をつくっているのは、ほとんどが氷のつぶです。細かいちりのような粒から、家ほどの大きさのかたまりまでさまざま。それが土星のまわりを、ものすごい数で回っています。

土星の輪は、幅は約28万kmなのに厚さは10mほど
土星の輪は、幅は約28万kmなのに厚さは10mほど

02氷が「雨」になって土星に落ちている

輪の氷のつぶは、太陽の紫外線や微小な隕石がぶつかることで電気を帯びることがあります。すると土星の磁力線にとらえられ、それに沿って土星の大気へと落ちていきます。

さらに探査機カッシーニは、最後のミッション(2017年)で土星と輪のすき間に飛び込み、赤道に直接落ちていく物質も見つけました。これを合わせると、NASAの研究者は輪の寿命を「1億年もない」と見積もっています。

03輪は「恐竜時代」生まれ?

輪が消えていくなら、輪は昔からずっとあったわけではないのかもしれません。

カッシーニの重力の測定から、イタリアのイエスらは2019年に輪の重さを見積もり、輪は1000万〜1億年ほど前にできた若いものではないか、と論じました。氷がとてもきれいで、宇宙のちりであまり汚れていないことも、その根拠のひとつです。

もし本当なら、土星に輪ができたのは、恐竜が地球を歩いていた時代か、恐竜が絶滅した後ということになります。私たちは、土星の一生のうち「たまたま輪がある時期」に生まれ合わせた幸運な世代、ということになります。

04どんでん返し:「若く見えるだけ」説

ところが2024年、東京科学大学(旧・東京工業大学)の兵頭龍樹さんらが、学術誌『Nature Geoscience』で反論を発表しました。

コンピューターで計算すると、輪にぶつかる微小な隕石はものすごい速さのため、ぶつかった瞬間に蒸発してしまいます。蒸発した物質は電気を帯び、土星に落ちたり宇宙へ飛び去ったりして、輪にほとんど残らないというのです。

つまり、輪が汚れていないのは「若いから」ではなく、汚れがつきにくいからかもしれない。そうだとすると、輪は土星と同じくらい古い可能性も出てきます。

05まとめ

  • 土星の輪の氷は、輪の雨として土星に降り続けている
  • NASAの見積もりでは、輪は1億年もしないうちに消えるかもしれない
  • ただし「輪は若く見えるだけで、本当は古い」という反論もあり、決着はまだ

いつか消えるかもしれない輪を、いま私たちは見ることができる。そう思うと、望遠鏡でのぞく土星が、少し特別に見えてきます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSaturn's rings are huge, stretching up to about 280,000 kilometers from the planet, but they are usually… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Saturn's rings are huge, stretching up to about 280,000 kilometers from the planet, but they are usually only about 10 meters thick. They are made mostly of ice particles. Some of these particles become electrically charged, get caught in Saturn's magnetic field and fall into the planet. NASA calls this "ring rain."

In 2019, a NASA team estimated that between about 430 kilograms and 2.9 tons of material falls every second. If you add the material that the Cassini spacecraft saw falling directly onto Saturn's equator, the rings could vanish within 100 million years. Scientists disagree about how old the rings are. A 2024 study from Japan suggested that they only look young and may in fact be much older.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

土星の輪は巨大で、土星から最大約28万キロメートルまで広がっていますが、厚さはふつう約10メートルしかありません。輪はおもに氷のつぶでできています。そのつぶの一部は電気を帯び、土星の磁場にとらえられて土星に落ちていきます。NASAはこれを「輪の雨」と呼んでいます。

2019年、NASAの研究チームは、毎秒約430キログラムから2.9トンの物質が落ちていると見積もりました。探査機カッシーニが観測した、土星の赤道に直接落ちていく物質を加えると、輪は1億年以内に消えるかもしれません。輪がどれくらい古いのかについては、科学者の意見が分かれています。2024年の日本の研究は、輪は若く見えるだけで、実際にはずっと古いのかもしれないと示唆しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. How thick are Saturn's main rings usually?

Q3. What does the passage say about the age of the rings?

重要単語

  • ring rainB2
    名詞(句)輪の雨(輪の物質が惑星に降ること)Ring rain slowly drains Saturn's rings. NASA が広めた比喩的な呼び名。実際の水の雨ではなく、帯電した氷のつぶが磁力線に沿って落ちる現象。
  • ionosphereC1
    名詞電離圏Ring rain changes Saturn's ionosphere. ion(イオン)+sphere(球・圏)。atmosphere(大気圏)、biosphere(生物圏)と同じ作り。
  • micrometeoroidC1
    名詞微小隕石Micrometeoroids constantly hit the rings. micro-(微小)+meteoroid(流星物質)。宇宙を飛ぶ砂粒ほどの小さな固体。
  • ephemeralC1
    形容詞はかない、短命のSaturn's rings may be ephemeral. ギリシャ語の「1日だけの」が語源。難関大の長文や英検1級で見かける語。
  • pristineC1
    形容詞汚れていない、元のままのThe rings look pristine and bright. pristine nature「手つかずの自然」の形でよく出る。
  • debateB1
    名詞・動詞議論(する)The age of the rings is still under debate. under debate「議論中で」、a heated debate「白熱した議論」。
  • mutually exclusiveC1
    形容詞(句)互いに相いれないThe two ideas are not mutually exclusive. not mutually exclusive で「両立しうる」。論説文で筆者の主張を示す定番表現。

4コマでわかる

土星の輪はいつか消える?「輪の雨」が降り続けている、という観測の4コマ漫画
土星の輪の氷は、毎秒何百kg〜何トンという勢いで土星に降り注いでいるらしい。NASAの研究では、30分でオリンピックのプール1杯分。このままだと輪はいつか消える…と思いきや「輪は意外と古いかも」という反論も出ている。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. O'Donoghue et al. (2019) Observations of the chemical and thermal response of 'ring rain' on Saturn's ionosphere, Icarusdoi.org
  2. Iess et al. (2019) Measurement and implications of Saturn's gravity field and ring mass, Sciencedoi.org
  3. Hyodo, Genda & Madeira (2024) Pollution resistance of Saturn's ring particles during micrometeoroid impact, Nature Geosciencedoi.org
  4. NASA, NASA Research Reveals Saturn is Losing Its Rings at "Worst-Case-Scenario" Rate (2018)nasa.gov