宇宙・NASA

1977年に旅立ったボイジャー1号は、いま太陽系の“外側”で何をしているのか

1977年に旅立ったボイジャー1号は、いま太陽系の“外側”で何をしているのか

読む前に予想してみよう!

ボイジャー1号から地球に電波が届くまで、20時間以上かかる

研究カード(どんな研究?)
対象
探査機ボイジャー1号
規模
1機(1977年から運用中)
研究の種類
探査機による直接観測
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

1977年打ち上げのボイジャー1号は2012年に太陽風の届かない星間空間へ。電力を節約しながら、いまも観測データを地球へ送っている。

ひとことで言うと50年近く前のたんさ機が、いまも宇宙の遠くから声を送ってくるよ。

もくじ
  1. 太陽の「泡」を突き抜けた
  2. 電波が届くまで、ほぼ丸1日
  3. 電力は毎年少しずつ減っていく
  4. 「黄金のレコード」を抱いて
  5. まとめ

あなたが生まれるより、たぶんずっと前。1977年、ひとつの小さな探査機が地球を飛び立ちました。名前はボイジャー1号。

木星と土星をめぐって数々の発見をしたあと、ボイジャー1号は帰ることなく、ひたすら太陽から遠ざかり続けました。そして2012年、人類の作ったものとして初めて、太陽系の“泡”の外側へ飛び出したのです。

半世紀近くたったいま、ボイジャー1号はどこで何をしているのでしょうか。

01太陽の「泡」を突き抜けた

太陽からは、太陽風と呼ばれる電気を帯びた粒の流れが、ものすごい速さで四方八方に吹き出しています。この太陽風が届く範囲は、宇宙に浮かぶ巨大なシャボン玉のような形をしていて、太陽圏(ヘリオスフィア)と呼ばれます。

シャボン玉の膜にあたる境目がヘリオポーズ。その外側は、ほかの星々から来たガスや粒子が満ちる星間空間です。

その後も観測は続き、2021年にはアメリカのオッカーらが学術誌『Nature Astronomy』で、ボイジャー1号が星間空間のガスのかすかで途切れない“ハミング”のようなプラズマ波をとらえ続けていることを報告しました。

太陽風がつくる「泡」の外に出たのが、ボイジャー1号
太陽風がつくる「泡」の外に出たのが、ボイジャー1号

02電波が届くまで、ほぼ丸1日

ボイジャー1号は、いまも秒速約17kmで遠ざかっています。地球との距離は、2020年代半ばの時点で約250億kmに達しました。

光の速さ(電波も同じ速さ)でも、片道20時間以上。地球から「こんにちは」と送っても、返事が来るのはほぼ2日後です。そしてNASAによると、2026年11月18日には、光で丸1日かかる距離(1光日=約259億km)に到達する見込みです(執筆時点の予測)。人工物として初めての記録になります。

それだけ遠いと、届く電波は信じられないほど弱くなります。NASAは、オーストラリア・スペイン・アメリカに置かれた直径数十メートルの巨大アンテナ網(ディープ・スペース・ネットワーク)で、そのかすかな声を拾い続けています。

03電力は毎年少しずつ減っていく

ボイジャー1号には太陽電池がありません。太陽から遠すぎて役に立たないからです。かわりに積んでいるのは、プルトニウムが自然に崩れるときの熱を電気に変える電池(原子力電池)。

ただしこの電池は、年を追うごとに少しずつ出力が落ちていきます。そのためNASAのチームは、観測装置やヒーターを1つずつ止めて、残りの電力をやりくりしています。

2023年末には、データを整える装置の一部が故障し、意味不明なデータしか届かなくなるトラブルも起きました。チームは、50年前の設計図を読み解き、壊れた部分を避けるようにプログラムを書き換えて復活させています。

04「黄金のレコード」を抱いて

ボイジャー1号には、黄金のレコードが積まれています。地球のさまざまな音や音楽、あいさつの言葉、写真のデータなどが記録された、宇宙人へのタイムカプセルです。

電力が尽きて交信できなくなっても、ボイジャー1号は飛び続けます。何万年もたって、どこかの星の近くを通ったとき、だれかがこのレコードを拾うかもしれません。

05まとめ

  • ボイジャー1号は1977年に出発し、2012年に星間空間へ
  • 電波は片道20時間以上。もうすぐ1光日の距離に
  • 電力をやりくりしながら、いまも観測データを送り続けている

半世紀前の技術が、人類のいちばん遠い「目」として働き続けている。それ自体が、とんでもない「マジか!?」です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Sun constantly blows out a stream of charged particles called the solar wind. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The Sun constantly blows out a stream of charged particles called the solar wind. The area it reaches forms a huge bubble called the heliosphere, and its edge is the heliopause. Beyond it lies interstellar space, filled with gas and particles from other stars. In 2013, scientists reported that Voyager 1, launched in 1977, had crossed this edge around August 2012. It was the first human-made object to do so.

The probe is still moving away at about 17 kilometers per second, and its radio signals now take more than 20 hours to reach Earth. Because the nuclear battery that powers it grows weaker every year, NASA engineers have been turning off instruments and heaters one by one to save energy.

121 words ・ CEFR B1

和訳を見る

太陽は、太陽風と呼ばれる電気を帯びた粒子の流れを絶えず吹き出しています。太陽風が届く範囲は太陽圏(ヘリオスフィア)と呼ばれる巨大な泡になっていて、その境目がヘリオポーズです。その外側には、ほかの星々から来たガスや粒子で満ちた星間空間が広がっています。2013年、科学者たちは、1977年に打ち上げられたボイジャー1号が2012年8月ごろにこの境目を越えていたと報告しました。そうしたのは、人類が作ったものとして初めてでした。

この探査機は今も秒速約17kmで遠ざかっており、その電波が地球に届くには今では20時間以上かかります。探査機に電力を供給する原子力電池は年々弱くなっているので、NASAの技術者たちはエネルギーを節約するため、観測装置やヒーターを1つずつ止めてきました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the heliopause?

Q2. How fast is Voyager 1 moving away?

Q3. Why have NASA engineers been turning off instruments and heaters?

重要単語

  • interstellar spaceC1
    名詞(句)星間空間Voyager 1 entered interstellar space in 2012. inter-(~の間)+stellar(星の)。映画『インターステラー』のタイトルもこの語。
  • heliosphereC1
    名詞太陽圏The heliosphere is a bubble made by the solar wind. helio-(太陽)+sphere(球)。元素ヘリウム helium も太陽で発見されたことから名づけられた。
  • solar windB2
    名詞(句)太陽風The solar wind blows charged particles into space. solar は「太陽の」。solar panel, solar system などでおなじみ。
  • probeB2
    名詞探査機The probe is farther away than any other spacecraft. 動詞では「詳しく調べる」。probe into ~「~を徹底的に調べる」は入試でも頻出。
  • light-dayC1
    名詞光日(光が1日に進む距離)Voyager 1 will soon be one light-day from Earth. light-year(光年)と同じく「距離」の単位。約259億km。
  • persistentB2
    形容詞持続的な・しつこいVoyager 1 detected a persistent hum in interstellar gas. persist(持続する・固執する)の形容詞形。a persistent cough「しつこい咳」。
  • reviveB2
    動詞復活させる・生き返らせるEngineers revived the old probe. re-(再び)+vive(生きる)。vivid, survive も同じ語源。名詞は revival。

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4コマでわかる

1977年に旅立ったボイジャー1号は、いま太陽系の“外側”で何をしているのかの4コマ漫画
1977年に打ち上げられたボイジャー1号は、2012年に太陽の風が届かない「星間空間」に突入した。いまや電波が届くのに丸1日近くかかる距離。それでもまだ地球と交信している。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Gurnett et al. (2013) In Situ Observations of Interstellar Plasma with Voyager 1, Sciencedoi.org
  2. Stone et al. (2013) Voyager 1 Observes Low-Energy Galactic Cosmic Rays in a Region Depleted of Heliospheric Ions, Sciencedoi.org
  3. Ocker et al. (2021) Persistent plasma waves in interstellar space detected by Voyager 1, Nature Astronomydoi.org
  4. NASA, Where Are Voyager 1 and 2 Now?, NASA Sciencescience.nasa.gov