宇宙・NASAホント

NASAは小惑星に宇宙船を体当たりさせ、本当に軌道を変えてしまった

NASAは小惑星に宇宙船を体当たりさせ、本当に軌道を変えてしまった

読む前に予想してみよう!

DART実験でぶつけた小惑星は、地球に衝突するおそれがあった

研究カード(どんな研究?)
対象
二重小惑星ディディモス/ディモルフォス
規模
1回の衝突実験(地上・宇宙望遠鏡で追跡)
研究の種類
探査機による実験+観測
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

2022年、NASAの探査機DARTが小惑星ディモルフォスに体当たり。公転周期が約32〜33分短くなり、人類が初めて意図的に天体の軌道を変えた。

ひとことで言うと宇宙船をぶつけて、小わく星の通り道を本当に変えることができたよ!

もくじ
  1. 作戦名は「DART」
  2. 時速2万km超で「ドカン」
  3. 公転周期が約32〜33分短くなった
  4. 「爆破」ではなく「ちょっと押す」が正解
  5. 続きはヨーロッパの探査機が
  6. まとめ

もし、巨大な小惑星が地球にぶつかりそうになったら?映画なら、ヒーローたちが宇宙に飛び立って、小惑星を爆破して終わり。

でも現実の人類は、もっと地道で賢い方法を本当に試しました。宇宙船をまるごと小惑星にぶつけて、進む向きを少しだけ変えるという作戦です。

そして2022年、それは見事に成功しました。

01作戦名は「DART」

この実験の名前はDART(ダート)。「二重小惑星の進路を変える実験」という意味の英語の頭文字で、ダーツの矢にもかけた名前です。

ターゲットに選ばれたのは、ディディモスという小惑星と、そのまわりを回る小さな衛星小惑星ディモルフォス。

  • ディディモス:直径約800m
  • ディモルフォス:直径約160m(サッカー場の長さの1.5倍ほど)

このペアは、地球にぶつかる心配がないことが分かっていました。そのうえで、「小さいほうにぶつかったら、親のまわりを回る時間がどれだけ変わるか」を測れば、作戦の効果が正確に分かる。だから実験にぴったりだったのです。

小さいほうの小惑星にぶつけ、親のまわりを回る時間の変化を測った
小さいほうの小惑星にぶつけ、親のまわりを回る時間の変化を測った

02時速2万km超で「ドカン」

2022年9月26日(日本時間27日)、DARTは時速約2万2000kmというスピードでディモルフォスに突入しました。

探査機は、最後の瞬間まで小惑星の写真を地球に送り続けました。アメリカのデイリーらが2023年に学術誌『Nature』で報告した分析によると、DARTは狙った地点からわずか数十メートル以内に命中していました。画面いっぱいに岩だらけの表面が迫り、そして映像が途切れる──その瞬間、管制室は歓声に包まれました。

衝突の様子は、DARTに同行していたイタリアの小型衛星リシアキューブや、ハッブル宇宙望遠鏡、ウェッブ宇宙望遠鏡なども観測していました。

03公転周期が約32〜33分短くなった

では、結果はどうだったのでしょう?

さらに、チェンらの研究では、衝突で小惑星の表面から大量の岩くずが噴き出し、それがロケットのように小惑星を押し返したことで、探査機がぶつかった勢い以上の効果が生まれたと分析されています。

04「爆破」ではなく「ちょっと押す」が正解

映画のように小惑星を爆破すると、大きな破片がバラバラに地球に降ってくるおそれがあります。

DARTの考え方は違います。早めに見つけて、ちょっとだけ押す。宇宙では、ほんのわずかな軌道の変化でも、何年もたつと大きなずれになります。だから、地球にぶつかる何年も前に発見できれば、小さな「ひと押し」で地球を守れるかもしれないのです。

05続きはヨーロッパの探査機が

この実験には続きがあります。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機ヘラが2024年10月に打ち上げられ、ディディモスとディモルフォスを詳しく調べに向かっています(執筆時点では、2026年末ごろに到着する予定)。DARTがぶつかった跡がどんなクレーターになったのか、現場検証が行われる予定です。

06まとめ

  • 2022年、NASAのDARTが小惑星ディモルフォスに体当たり
  • 公転周期が約32〜33分短くなり、人類が初めて天体の動きを意図的に変えた
  • 地球防衛のカギは、早く見つけて、ちょっと押すこと

恐竜は小惑星から身を守れませんでした。でも人類は、その方法を手に入れはじめています。これは、地球の歴史の中でも大きな一歩なのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn NASA's DART mission, a spacecraft was deliberately crashed into an asteroid to see whether its path… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In NASA's DART mission, a spacecraft was deliberately crashed into an asteroid to see whether its path could be changed. The target was Dimorphos, a moonlet about 160 meters wide that orbits a larger asteroid, Didymos. The pair posed no danger to Earth, and measuring how long Dimorphos takes to circle Didymos made it easy to judge the result.

On September 26, 2022, DART hit Dimorphos at about 22,000 kilometers per hour. Ground-based observations later showed that its orbit, originally about 11 hours and 55 minutes, had become about 33 minutes shorter. NASA had hoped for a change of at least 73 seconds. Rock thrown off by the impact pushed the asteroid even more, like a rocket.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

NASAのDARTミッションでは、小惑星の進路を変えられるかどうかを確かめるため、宇宙船をわざと小惑星に衝突させました。標的は、より大きな小惑星ディディモスのまわりを回る、直径約160mの衛星小惑星ディモルフォスでした。この2つは地球に危険をもたらすものではなく、ディモルフォスがディディモスを1周するのにかかる時間を測れば、結果を判断しやすかったのです。

2022年9月26日、DARTは時速約2万2000kmでディモルフォスに衝突しました。後の地上観測によって、もともと約11時間55分だった公転周期が、約33分短くなったことが分かりました。NASAは少なくとも73秒の変化を期待していました。衝突で噴き出した岩が、ロケットのように小惑星をさらに押したのです。

4択リーディングクイズ

Q1. Why was the Didymos–Dimorphos pair a good target?

Q2. How much did Dimorphos's orbit change?

Q3. What can we infer about the result of the mission?

重要単語

  • asteroidB2
    名詞小惑星The asteroid was about 160 meters wide. aster(星)+-oid(~のようなもの)。asterisk(*)や astronomy(天文学)も同じ「星」の仲間。
  • planetary defenseC1
    名詞(句)惑星防衛Planetary defense aims to protect Earth from asteroids. planetary は planet の形容詞。defense はアメリカ式、defence はイギリス式のつづり。
  • kinetic impactC1
    名詞(句)運動エネルギーによる衝突A kinetic impact can push an asteroid off course. kinetic は「運動の」。kinetic energy「運動エネルギー」は物理の基本語。cinema と同じく「動き」が語源。
  • orbitB2
    名詞・動詞軌道/周回するThe moonlet orbits a larger asteroid. 動詞は他動詞で orbit the Earth(around 不要)。in orbit「軌道上で」もよく使う。
  • deflectC1
    動詞(進路を)そらすScientists hope to deflect dangerous asteroids. de-(離れて)+flect(曲げる)。reflect(反射する)、flexible(曲げやすい)と同じ仲間。
  • deliberatelyB2
    副詞わざと・故意にThe spacecraft was deliberately crashed into the asteroid. on purpose と同じ意味。形容詞 deliberate は「故意の」「慎重な」の2つの意味があるので注意。
  • momentumC1
    名詞運動量・勢いThe debris gave the asteroid extra momentum. 物理の「運動量」のほか、gain momentum「勢いを増す」のように比喩でもよく使う。

動画でもっと知る

4コマでわかる

NASAは小惑星に宇宙船を体当たりさせ、本当に軌道を変えてしまったの4コマ漫画
2022年、NASAは探査機を小惑星に時速2万km超で体当たりさせた。結果、小惑星の公転周期が約33分も短くなった。人類が初めて天体の動きを意図的に変えた瞬間。小惑星から地球を守る話は、もう映画だけじゃない。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Daly et al. (2023) Successful kinetic impact into an asteroid for planetary defence, Naturedoi.org
  2. Thomas et al. (2023) Orbital period change of Dimorphos due to the DART kinetic impact, Naturedoi.org
  3. Cheng et al. (2023) Momentum transfer from the DART mission kinetic impact on asteroid Dimorphos, Naturedoi.org
  4. NASA, Double Asteroid Redirection Test (DART), NASA Sciencescience.nasa.gov