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宇宙・NASA

2024年春、月に直径222mのクレーターが誕生。最近できたと確認されたクレーターとしては、太陽系で発見された最大のもの

2024年春、月に直径222mのクレーターが誕生。最近できたと確認されたクレーターとしては、太陽系で発見された最大のもの

読む前に予想してみよう!

月はもう新しいクレーターができない「止まった世界」だ

研究カード(どんな研究?)
対象
月面の新しいクレーター1個(2024年春にできた)
規模
月を回る探査機LROの写真(1か所あたり、衝突前に約540回・衝突後に約60回撮影)と、でこぼこの測定
研究の種類
観察研究(宇宙から撮った写真の見比べと測定)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

月の周りを回るNASAの探査機の写真を見比べたら、2024年春、月に直径222mのクレーターが新しくできていた。最近できたクレーターでは、太陽系で見つかった中で最大。

ひとことで言うと2024年、月に幅がサッカー場2つ分もある新しい穴が開いていた!

もくじ
  1. 毎月の月の写真で「間違い探し」をした
  2. 月でのこれまでの記録は70m。今回は幅が3倍以上
  3. 「約132年に1度」はどういう意味?
  4. 120km先まで、地面の様子が変わっていた
  5. まとめ

月の表面は、クレーター(隕石などがぶつかってできた丸いくぼみ)だらけです。ただ、そのほとんどは何百万年、何億年も前にできた古い傷。新しい穴が開いたところを確かめられることは、めったにありません。

ところが、月の周りを回るNASAの探査機が撮った写真を見比べたら、2024年の春に、直径222mのクレーターが月に新しくできていたことが分かりました。サッカー場を2つ並べたくらいの幅で、深さは43mあります。2026年9月、米国の科学誌『Science Advances』に、このクレーターについての論文が2本載りました。

最近できたと分かっているクレーターの中では、太陽系で見つかったうちで一番大きいものです。ただし、あくまで「これまでに見つかった中で」の話です。また、この大きさの衝突は月のどこかで平均約132年に1度、という数字があります。これは実際に数えた回数ではなく、計算による見積もりです。

01毎月の月の写真で「間違い探し」をした

NASAの探査機「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」は、2009年から月の周りを回り続けています。広い範囲を写すカメラ(広角カメラ)は、2010年から毎月、月の全体を撮ってきました。写真の点1つが、地面のおよそ100m四方にあたります。

同じ場所を、同じような日の当たり方で撮った写真を比べると、変わったところだけが浮かび上がります。月全体を使った「間違い探し」です。

NASAの発表によると、見つけたのは2025年10月24日です。カメラの写真の処理を担当するロバート・ワグナー(Robert Wagner)さんが、いつものデータの点検をしていました。写真の変わった所を示す地図に、白く明るい点と、それを囲む黒っぽい輪があったのです。ワグナーさんはほかの作業をすべて止めて、この点を調べ始めたといいます。

そこで、別のカメラ(狭角カメラ)を向けました。狭い範囲を、1mほどの細かさで写せるカメラです。すると、まだ新しいクレーターがはっきり写りました。昔の写真と見比べた結果、できた時期は2024年4月11日から5月22日のあいだだと分かりました(NASAの発表)。

02月でのこれまでの記録は70m。今回は幅が3倍以上

LROが月を回り始めてから見つかった新しいクレーターで、それまで一番大きかったのは、2012年ごろにできた直径70mのものでした。今回は幅が3倍以上あります。

ぶつかったときのエネルギーも、桁違いです。70mのクレーターができたときの10倍以上と見積もられています。直径10mのクレーターができるときと比べると、1万倍以上です。

太陽系のほかの場所で見つかったものと比べても最大です。火星では2021年の後半に、直径130mを超える新しいクレーターが2つできました。火星の周りを回るNASAの探査機が撮影したものです。今回の222mは、それを大きく上回ります。

ぶつかったのは、小惑星(宇宙をただよう岩のかたまり)か、彗星(氷とちりのかたまり)のかけらです。NASAの発表は、その大きさを「3〜6階建てのビルくらいかもしれない」としています。ただし、論文にはまだ大きさの見積もりは載っていません。詳しい見積もりは、これからの論文で出る予定です。

月には空気がないので、小さな石も燃えつきずに地面にぶつかります(地球なら流れ星になる大きさでも)。NASAによると、LROのチームはこれまでに少なくとも1,000個の新しいクレーターを見つけています。

この衝突で、周りにあった古い小さなクレーターは、ほとんど消されました。クレーターのふちから150mほどまでは、飛び散った土がすき間なく積もっています。その範囲にあった直径6〜12mの古いクレーター103個のうち、形が残っていたのは5個だけでした。ふちには、長さ13mほどの大きな岩が乗っています。

クレーターの名前は「マクゲッチン・クレーター」です。アポロ計画(人を月に送ったアメリカの計画)のころに月を研究した、トーマス・マクゲッチン(Thomas McGetchin)さんにちなみます。マクゲッチンさんらは1973年に、飛び散った土の厚さを見積もる式を発表しました。この式は、今回の論文の計算にも使われています。

03「約132年に1度」はどういう意味?

論文は、この大きさのクレーターができる衝突は、月全体で平均すると約132年に1回しか起きない、と見積もっています。もとにしたのは、今の計算モデルです。計算モデルとは、どのくらいの大きさの衝突がどれくらいの割合で起きるかを、数式で見積もる方法のことです。

これは「132年ごとに必ず起きる」という時刻表ではありません。「100年に1度の大雨」と同じで、長い目で見たときの平均の間隔です。次がいつかは分からず、来年起きることもありえます。また、月全体のどこかで、という数字です。同じ場所に落ちるという意味ではありません。

この計算の予想が、実際に見つかった数とずれることもあります。2016年に同じカメラチームが発表した研究では、直径10m以上の新しいクレーターが、同じ計算の予想より33%多く見つかりました。予想が100個なら、実際は133個だった、という差です。「132年」は、目安の数字と受け取るのが正確です。

それでも、LROが月を回っている17年あまりのあいだに、この大きさの衝突が起きたのは幸運でした。カメラチームの解説も、これほど大きなクレーターが観測中にできるとは思ってもみなかった、と書いています。

同じ場所の「衝突前」と「衝突後」のイメージ。写真を見比べると、新しいクレーターと飛び散った土が浮かび上がる
同じ場所の「衝突前」と「衝突後」のイメージ。写真を見比べると、新しいクレーターと飛び散った土が浮かび上がる

04120km先まで、地面の様子が変わっていた

衝突の影響は、穴の周りだけではありませんでした。衝突の前と後の写真を何百枚も重ねて比べると、明るさがほんの1%ほど変わった場所が見つかりました。その場所は、120km以上先まで広がっていました。東京から富士山まで(約100km)より遠い距離です。クレーターの半径(約111m)の1,000倍を超えます。

ぶつかった最初の瞬間に、細かい粒が地面すれすれに、ものすごい速さで吹き出したと考えられています。その粒が、遠くの地面を荒らしたというわけです。

ところが、クレーターの西8kmには、クレーターより700m高い尾根(山の背)があります。その向こう側も、同じように変わっていました。これまでの考え方では、粒は地面から2度もない低い角度で飛ぶはずです。ほとんど地面と平行です。でも尾根を越えるには、7〜13度以上の角度で飛ぶ必要があります。論文は理由の候補として、ぶつかった物が細長かった可能性など、いくつかの説明を挙げています。

もう1本の論文は、夜の地面の温度を調べました。すると、クレーターの周り幅約7kmの範囲が、周りより8〜9℃冷たくなっていました。衝突で、表面の砂がふかふかにほぐれたためと考えられます。ふかふかの砂は熱をためにくいので、夜に冷えやすいのです。

LROで見つかった直径30m以上の新しいクレーターには、どれもこうした「冷たい場所」ができていました。アポロ16号の宇宙飛行士は、昔の衝突でできた同じような「冷たい場所」に降りています。そこでは、足跡がほかの場所より深く沈んでいました。

カメラチームは、月に長く置く設備についても書いています。遠くの衝突から飛んでくる、小さくて速い粒にも耐えられるように作る必要がある、というのです。NASAも、ほぐれた地面は、月面を走る探査車の車輪の進み方に影響するかもしれない、としています。

05まとめ

月は、もう何も起きない止まった世界に見えます。でもLROのカメラは、月を毎月見張っていました。そのおかげで、2024年に新しい大きな穴が開いたことが分かりました。その影響は、120km以上先まで広がっていました。

2012年にできた70mのクレーターでは、遠くの地面の明るさの変化が年々薄れています。50年ほどで見えなくなるかもしれない、と見積もられています。マクゲッチン・クレーターの周りの「冷たい場所」も、長い時間をかけて消えていくはずです。論文は、ほとんど手つかずの大きな「冷たい場所」を調べられる、これまでで最高の機会だと書いています。次の大きな衝突がいつ来るかは、誰にも分かりません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerNASA's Lunar Reconnaissance Orbiter has circled the Moon since 2009, and one of its cameras photographs the… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

NASA's Lunar Reconnaissance Orbiter has circled the Moon since 2009, and one of its cameras photographs the whole surface every month. In October 2025, Robert Wagner, who processes the camera's images, used software to compare older and newer maps. Places that had not changed looked gray. One place showed a bright spot circled by a dark ring.

Sharper photos then revealed a fresh crater 222 meters across and 43 meters deep. By checking earlier pictures, the team learned that it formed between April and May 2024. Before this, the largest new crater seen on the Moon during the mission was 70 meters wide. Models suggest that, on average, an impact this big happens on the Moon only about once every 132 years.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

NASAのルナー・リコネサンス・オービターは2009年から月のまわりを回っており、そのカメラの1つは毎月、月の表面全体を撮影している。2025年10月、このカメラの画像を処理するロバート・ワグナーさんが、ソフトウェアを使って古い地図と新しい地図を比べた。変化のなかった場所は灰色に見えた。ある1か所には、黒っぽい輪に囲まれた明るい点が出ていた。

そこでもっと細かい写真を撮ると、幅222m、深さ43mのできたてのクレーターが写っていた。以前の写真を調べて、チームはそれが2024年の4月から5月のあいだにできたことを突き止めた。これまで、この探査の期間に月で見つかった新しいクレーターで最大のものは、幅70mだった。計算モデルによると、これほど大きな衝突は月全体でも平均で約132年に1度しか起きない。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What did Robert Wagner first notice on the map?

Q3. What can we infer about craters as big as this one?

重要単語

  • craterB1
    名詞クレーター(ぶつかってできた丸いくぼみ)The new crater is about as wide as two soccer fields are long. ギリシャ語の「混ぜる鉢」から。火山の噴火口も crater と呼ぶ。impact crater で「衝突クレーター」
  • impactB1
    名詞・動詞衝突/影響The impact changed the ground more than 120 kilometers away. 「物理的にぶつかること」と「影響」の両方の意味がある。have an impact on ~(~に影響を与える)は入試頻出
  • orbiterC1
    名詞周回機(星のまわりを回る探査機)The orbiter has circled the Moon since 2009. orbit(軌道・回る)+ -er。着陸機は lander、走り回る探査車は rover
  • debrisB2
    名詞飛び散ったかけら、破片Bright debris lay around the edge of the crater. フランス語から来た語で、最後の s は発音しない(デブリー)。数えられない名詞なので a debris とは言わない
  • fragmentB2
    名詞かけら、破片A fragment of an asteroid or comet hit the Moon. fract-(壊れる)は fracture(骨折)や fraction(分数)と同じ語源
  • on averageB1
    副詞句平均するとOn average, an impact this big happens about once every 132 years. 「必ずその間隔で起きる」ではなく、長い目で見たときの平均を表す。average は名詞・形容詞・動詞で使える
  • loosenB2
    動詞ゆるめる、ほぐすThe crash loosened the top layer of soil. loose(ゆるい)+ -en(~にする)。発音は「ルースン」。lose(失う)とつづりを混同しやすい

4コマでわかる

2024年春、月に直径222mのクレーターが誕生。最近できたと確認されたクレーターとしては、太陽系で発見された最大のものの4コマ漫画
月を回るNASAの探査機の写真を見比べたら、2024年春、月に直径222mのクレーターが新しくできていた。最近できたクレーターでは、太陽系で見つかった中で最大。この大きさの衝突は、月のどこかで平均約132年に1度と計算で見積もられている。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Robinson et al. (2026) A new 222-m diameter lunar crater, Science Advancesdoi.org
  2. Powell et al. (2026) New lunar crater reveals extensive distal regolith modification, Science Advancesdoi.org
  3. Speyerer et al. (2016) Quantifying crater production and regolith overturn on the Moon with temporal imaging, Naturedoi.org
  4. Posiolova et al. (2022) Largest recent impact craters on Mars: Orbital imaging and surface seismic co-investigation, Sciencedoi.org
  5. NASA Science: NASA's Moon Orbiter Spots New, 'Once-in-Century' Moon Craterscience.nasa.gov