燃えつきた星に、鉄の見つからない不思議な材料が降っていた。星が死にぎわに生んだ惑星から?

読む前に予想してみよう!
燃えつきた星(白色矮星)に降ってくる惑星の材料は、どれも地球や小惑星に似ている
白色矮星HS 0209+0832には、鉄が見つからずケイ素もわずかで、亜鉛・銅・ニオブが多い、太陽系のどの天体とも違う材料が降っていた(2026年、英国ウォーリック大学など)。
- 対象
- 白色矮星HS 0209+0832
- 規模
- 星1つ(1999〜2023年の観測データを分析し直し)
- 研究の種類
- 観測研究(紫外線の光の分析と、明るさの変化の分析)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
燃えつきた星(白色矮星)に、鉄が見つからず、亜鉛・銅・ニオブが多い材料が降っていた。その星が死にぎわに出したガスから生まれた「2代目の惑星」の候補が、大気を蒸発させて落としているらしい。惑星はまだ見えていない。
ひとことで言うと死にぎわの星が吐いたガスから、新しい惑星が生まれたのかもしれない!
もくじ
燃えつきた星に、鉄の見つからない「惑星の材料」が降りそそいでいました。かわりに多かったのは、亜鉛、銅、ニオブという、鉄より重い金属です。ニオブは、カルシウムとの割合で比べると、太陽の1000倍以上ありました。
地球の重さのおよそ半分(約48%)は、ケイ素と鉄です。太陽系の内側にある岩の惑星や小惑星でも、この2つが主な材料です。ところがこの星では、ケイ素もほんのわずかでした。
英国ウォーリック大学などのチームは2026年10月、この材料は「2代目の惑星」から来ていると考えられる、と学術誌『Nature Astronomy』に発表しました。星が死にぎわに出したガスから生まれた、巨大なガス惑星の候補です。地球も木星も、太陽が生まれたときに一緒に生まれた「1代目」です。2代目の惑星は、パルサー(星が爆発したあとに残る、高速で回る星)のまわりでは考えられてきました。でもチームによると、燃えつきた星「白色矮星」のまわりでは、これまで見つかっていませんでした。ただし惑星そのものはまだ見えておらず、あくまで候補です。
0127年前のハッブルの記録に、正体不明の光の線が約100本
白色矮星は、太陽くらいの星が一生を終えたあとに残る、地球ほどの大きさの星です。重力がとても強く、表面に落ちた重い元素は奥へ沈んでいきます。今回の星では、沈むまで数日ほどです。それでも表面に金属が見えるなら、今まさに何かが降ってきていることになります。
こわれた惑星のかけらが降りそそぐ白色矮星は、たくさん見つかっています。その材料はこれまで、全体として太陽系の天体とよく似ていました。
今回の主役は「HS 0209+0832」という白色矮星です。表面温度は約3万6000ケルビンです。ケルビン(K)は温度の単位で、これほど高い温度ならセ氏とほぼ同じ数字になります。白色矮星になってから約500万年しかたっていない、若い星です。
1999年、ハッブル宇宙望遠鏡がこの星の紫外線をくわしく調べました。星の光を色(波長)ごとに分けると、元素ごとに決まった場所に暗い線が出ます。線の場所から、どの元素があるかが分かります。このときは炭素、ケイ素、ニッケル、亜鉛などが見つかりました。でも、約100本の線は、どの元素のものか分かりませんでした。
02手がかりは、死にぎわの巨星が作る重い元素
チームは、この星に降っている材料を、ほかの白色矮星の例や太陽系の隕石と比べました。一致するものはありませんでした。地球ではニッケルより鉄のほうがずっと多いのに、ここではニッケルが鉄の2倍以上です(原子の数で比べて)。窒素や硫黄など、氷の天体に多い成分も少ないので、ほうき星などの氷の天体でもなさそうです。
手がかりは、亜鉛・銅・ニオブといった鉄より重い元素でした。年老いて大きくふくらんだ星(巨星)の内側では、原子が中性子という粒を1つずつゆっくり取りこみ、重い元素ができます。これをs過程といいます(sはslow=ゆっくりの頭文字)。宇宙にあるs過程の元素の大部分は、死にぎわの巨星が作ったものです。その巨星は最後に、外側のガスを宇宙へ吹き出します。
巨星が吹き出すガスについて、138通りの計算があります。それを見ると、ニオブは大きく増えることが多く、炭素も多くなりやすい。ニッケル・銅・亜鉛はやや多くなります。この星の材料で炭素とニオブが多いのは、この「死にぎわのガス」から来たと考えれば説明できる、とチームは見ています。巨星の中ではニッケルが鉄より多く作られるので、ニッケルが鉄の2倍以上という点の説明にもなりそうだといいます。
同じ日に同じ学術誌に載った解説記事の題名は「自分の灰で汚れた白色矮星」です。

034.4日ごとに、明るさが0.12%だけ上下する
降っている材料にはヘリウムも入っていました。この温度の白色矮星では、ヘリウムは数か月で沈むはずです。つまり、今も補給されています。岩のかけらには、ヘリウムはほとんど入っていません。そこでチームは、ガス惑星の大気が、星の強い光で蒸発して落ちてきていると考えました。
TESSの記録では、星の明るさが4.399日ごとに0.12%だけ上下していました。白色矮星が自分で回っている(自転している)せいでしょうか。白色矮星の自転は1.25日前後のものが多く、ケプラー衛星で調べた20個のうち、4日より長かったのは1個だけです。星の自転だけで説明するのは考えにくそうです。
チームの見立てでは、星から約0.04天文単位(地球と太陽の距離の25分の1、約600万km)のところを、巨大なガス惑星が回っています。明るさが変わる理由には2つの案があります。1つは、惑星がいつも同じ面を星に向けていて、焼けた昼側が見えたり隠れたりするたびに明るさが変わる、という案。もう1つは、蒸発したガスが長い尾になって、星の前を横切っている、という案です。
計算では、木星くらいの惑星なら、1秒に約100万トンの大気が逃げ出します。白色矮星に降っている量は、測れた金属だけで1秒に400トン以上です。水素やヘリウム、見えていない成分は数に入っていません。逃げたガスの多くは星に落ちずに飛び去ると考えられるので、量の上では矛盾しません。
実は2019年にも、ゲンシケさんたちは、蒸発する巨大惑星の大気が降りそそいでいるとみられる白色矮星を見つけています。そのときのガスは水素・酸素・硫黄が中心で、氷の巨大惑星の深い層に似ていました。今回の材料は酸素や硫黄が少なく、中身がまったく違います。
04注意点:惑星はまだ見えず、元からいた惑星がガスをまとった案も
まず、惑星そのものは見えていません。降ってくる材料と、明るさのわずかな変化からの推理です。明るさの変化は、TESSの観測期間4回分を合わせると見えます。でも1回ずつでは、はっきり見えたのは2回だけでした。記録のばらつき(約2.1%)は、変化の大きさ(0.12%)よりずっと大きいものです。そのため1回分では見のがしてもおかしくない、とチームは説明しています。
ニオブと一緒に増えるはずのストロンチウムも見つかっていません。チームは、ニオブの多いタイプの巨星だった、または惑星の中で成分の割合が変わった、と考えています。
星が1つだけなら、ガスはまわりに均等に飛び散り、惑星を作る円盤はできにくいはずです。チームは、そばに相棒の星がいて、ガスを円盤にまとめたと考えています。
惑星の生まれ方には2通りの案があります。1つは、円盤の中で巨大なガス惑星が一気に生まれたという案。もう1つは、1代目の小さめの惑星(地球より大きく海王星より小さいくらい)が円盤に飛びこみ、2代目のガスを大気として取りこんだという案です。後者なら、惑星の本体は1代目で、大気だけが2代目です。
05太陽が燃えつきたあとにも、新しい惑星は生まれる?
太陽も約50億年後に赤色巨星になり、最後は白色矮星になると考えられています。HS 0209+0832のもとの星は、太陽の約1.3倍の重さだったと見積もられています。太陽と大きくは変わりません。
ただし今回の筋書きでは、ガスを円盤にまとめる相棒の星がかぎでした。太陽には、そばを回る相棒の星がありません。太陽が死んだあとに2代目の惑星が生まれるかどうかは、今回の結果だけでは決まりません。
チームによると、炭素とs過程の元素が多い白色矮星を紫外線で探せば、2代目の惑星の候補をもっと見つけられるはずです。
06まとめ
星の死は、まわりの惑星にとって終わりだと考えられがちです。ところがHS 0209+0832では、死にぎわの星が出したガスから、新しい惑星が生まれたのかもしれない。手がかりは、25年以上前のハッブルの記録に残っていた、正体不明の線でした。
まだ候補です。次は、炭素とs過程の元素が多い白色矮星がほかにも見つかるか、そして惑星そのものの姿をとらえられるかが問われます。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1999, the Hubble Space Telescope looked at a white dwarf called HS 0209+0832.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When a star like the Sun dies, it leaves a small, hot star called a white dwarf. Bits of old planets often fall onto them, and they usually look like Earth rock, with lots of iron.
But one white dwarf shows no iron. Instead, it has zinc, copper and niobium. Scientists think a new planet may have grown from gas the dying star threw out, and that it is now losing its air. Nobody has seen the planet yet.
79 words ・ CEFR A2
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太陽のような星が死ぬと、白色矮星と呼ばれる、小さくて熱い星が残ります。こうした星には古い惑星のかけらがよく落ちてきて、たいていは鉄の多い、地球の岩のような材料です。
ところが、ある白色矮星には鉄が見つかりません。かわりに、亜鉛、銅、ニオブがあります。科学者たちは、死にかけた星が吹き出したガスから新しい惑星が育ったのかもしれず、その惑星が今、大気を失っていると考えています。この惑星はまだだれも見ていません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
鉄がなく亜鉛・銅・ニオブがある白色矮星と、それが新しい惑星から来たかもしれないという話なので、正解は B。
Q2. Which metal was NOT found on this white dwarf?
「one white dwarf shows no iron」とあるので、正解は D。亜鉛・銅・ニオブは見つかっている。
Q3. In the passage, what does "dying" mean?
the dying star は「死にかけている星」。第1文の When a star like the Sun dies とつながるので、正解は A。
In 1999, the Hubble Space Telescope looked at a white dwarf called HS 0209+0832. Its light showed about 100 dark lines that nobody could match to any element.
An English-led team went back to those old records with better data on atoms. They found that most of the lines came from copper and niobium. The star also has zinc, but no sign of iron and very little silicon, the main materials of rocky planets.
No object in our solar system has this mix. The team thinks it comes from a giant planet made from gas the dying star blew off. The star's strong light is boiling the planet's air away, and some of it falls onto the star. The planet itself has not been seen yet.
126 words ・ CEFR B1
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1999年、ハッブル宇宙望遠鏡がHS 0209+0832という白色矮星を観測した。その光には、どの元素とも結びつけられない暗い線が約100本あった。
英国の研究者が率いるチームは、原子についてのより良いデータを持って、その古い記録を調べ直した。すると、線の多くは銅とニオブのものだと分かった。この星には亜鉛もあるが、岩の惑星の主な材料である鉄の形跡はなく、ケイ素もごくわずかだ。
太陽系にこの組み合わせを持つ天体はない。チームは、死にかけた星が吹き飛ばしたガスからできた巨大惑星から来ていると考えている。星の強い光がその惑星の大気を蒸発させ、ガスの一部が星に落ちている。惑星そのものはまだ見えていない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
1999年の古い記録を調べ直し、死にかけた星のガスから生まれた惑星の可能性が見えてきたという話なので、正解は B。
Q2. What did the team find when they looked at the old records again?
「most of the lines came from copper and niobium」とあるので、正解は A。
Q3. What can we infer from the last sentence?
最後の文で惑星そのものはまだ見えていないと述べているので、存在はまだ確かめられていない(候補)と分かる。正解は C。
Most planets form alongside their star, out of the same cloud of gas and dust. A team led by the University of Warwick now reports a possible exception. The white dwarf HS 0209+0832 has zinc, copper, niobium and helium in its atmosphere, but no sign of iron and only a trace of silicon.
On a star like this, heavy elements sink out of view within days, so the material must be arriving right now. Niobium gives the strongest clue. Measured against calcium, it is over a thousand times more common than in the Sun.
Elements of this kind are built slowly inside aging giant stars, so the team argues the source is a second-generation planet that grew from gas the star shed near the end of its life. Satellite data add a faint signal.
The star's brightness rises and falls by 0.12 percent every 4.4 days, which could come from the hot day side of a giant planet on a tight orbit. The case has gaps. The signal was clear in only two of four observing periods. Strontium, which usually comes with niobium, was not found. And nobody has seen the planet directly.
193 words ・ CEFR B2
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ほとんどの惑星は、同じガスとちりの雲から、星と一緒に生まれる。ウォーリック大学が率いるチームが、その例外かもしれないものを報告した。白色矮星HS 0209+0832の大気には亜鉛、銅、ニオブ、ヘリウムがあるが、鉄の形跡はなく、ケイ素もほんのわずかだ。
このような星では重い元素は数日のうちに沈んで見えなくなるので、材料は今まさに降ってきているはずだ。最大の手がかりはニオブだ。カルシウムとの割合で比べると、太陽の1000倍以上も多い。
この種の元素は年老いた巨星の中でゆっくり作られるため、チームは、星が一生の終わり近くに放ったガスから育った「2代目の惑星」が出どころだと主張している。衛星のデータも、かすかな信号を加える。
星の明るさが4.4日ごとに0.12%上下していて、これは星のすぐ近くを回る巨大惑星の熱い昼側から来ている可能性がある。ただし、この説には穴もある。信号がはっきり見えたのは4回の観測期間のうち2回だけだった。ふつうニオブと一緒に増えるはずのストロンチウムは見つからなかった。そして、その惑星を直接見た人はいない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
2代目の惑星を示す証拠(ニオブ、明るさの変化)と、その説の穴(信号、ストロンチウム、直接見えていない)を述べているので、正解は B。
Q2. How much does the star's brightness change every 4.4 days?
「The star's brightness rises and falls by 0.12 percent every 4.4 days」とあるので、正解は C。
Q3. Why does the writer say the material "must be arriving right now"?
直前で「heavy elements sink out of view within days」と述べ、だから今も降っているはずだと推論しているので、正解は B。
重要単語
- white dwarfB2名詞白色矮星(太陽くらいの星が燃えつきた後に残る、地球ほどの大きさの星)The Sun will become a white dwarf in the far future.
dwarf は「小人・小さいもの」。red giant(赤色巨星)とセットで覚える - candidateB1名詞候補For now, it is only a planet candidate.
選挙の「候補者」もこの語。a candidate for ~ で「~の候補」 - elementB1名詞元素、要素Iron and zinc are both elements.
the periodic table of elements(元素の周期表)。「要素」の意味でも入試頻出 - evaporateB2動詞蒸発するStrong light can make a planet's air evaporate.
e-(外へ)+vapor(蒸気)。名詞は evaporation - orbitB2動詞・名詞(星のまわりを)回る/軌道The planet may orbit the star every 4.4 days.
in orbit で「軌道に乗って」。名詞と動詞が同じ形 - shedB2動詞(外側のものを)脱ぎ捨てる、放出するNear the end of its life, the star shed its outer gas.
shed-shed-shed と形が変わらない。shed tears(涙を流す)、shed light on ~(~を明らかにする)
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燃えつきた星「白色矮星」に、亜鉛や銅、ニオブなど鉄より重い元素が降りそそいでいた。岩の材料の鉄は見つからない。星が死にぎわに吐いたガスから生まれた「2代目の惑星」の大気が、蒸発して落ちているのかもしれない。まだ候補。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Williams, Gänsicke, Stone, Koester et al. (2026) Discovery of a second-generation planet candidate accreting onto a white dwarf, Nature Astronomydoi.org
- Lin (2026) A white dwarf polluted by its own ashes, Nature Astronomy(News & Views)doi.org
- Gänsicke, Schreiber, Toloza et al. (2019) Accretion of a giant planet onto a white dwarf star, Naturedoi.org
- Vanderburg et al. (2020) A giant planet candidate transiting a white dwarf, Naturedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












