はやぶさ2が持ち帰った5.4gの砂に、生命の“部品”が入っていた

読む前に予想してみよう!
リュウグウの砂からは、アミノ酸が見つかった
生命の体を作るタンパク質の材料であるアミノ酸が、複数の種類見つかっている。
- 対象
- 小惑星リュウグウの砂(はやぶさ2帰還試料)
- 規模
- 約5.4gのうち分析用のごく一部
- 研究の種類
- 帰還試料の化学分析
- 確かさ
- ★★★★☆
はやぶさ2が持ち帰ったリュウグウの砂約5.4gから、アミノ酸やRNAの部品ウラシル、さらに5種類すべての核酸塩基が見つかった。
ひとことで言うと小わく星の砂から、生き物の体のもとになる材料が見つかったよ!
2020年12月、オーストラリアの砂漠に、小さなカプセルが落ちてきました。中に入っていたのは、地球から約3億km離れた小惑星リュウグウの砂。日本の探査機はやぶさ2が、6年がかりの旅で持ち帰った「宇宙のおみやげ」です。
その量は、約5.4g。1円玉5枚ちょっとの重さしかありません。ところが、このわずかな砂の中から、生命の“部品”が次々と見つかったのです。
01なぜ小惑星の砂がそんなに大事なの?
小惑星は、約46億年前に太陽系ができたときの材料の残りだと考えられています。地球のような大きな惑星は、熱や火山活動で中身がすっかり変わってしまいましたが、小さな小惑星には昔の情報がそのまま残っている可能性があるのです。
いわば、小惑星は太陽系のタイムカプセル。とくにリュウグウは、炭素を多く含むC型小惑星で、有機物(生き物の体を作る炭素の化合物)が見つかるのではと期待されていました。

02見つかったもの①:アミノ酸
九州大学の奈良岡らのチームは2023年、学術誌『Science』で、リュウグウの砂からアミノ酸をはじめ、約2万種類ともいわれる多様な有機分子が見つかったと報告しました。
アミノ酸は、私たちの体を作るタンパク質の材料。筋肉も、髪の毛も、体の中で働く酵素も、アミノ酸がつながってできています。
03見つかったもの②:RNAの部品「ウラシル」
さらに2023年、北海道大学の大場らは学術誌『Nature Communications』で、リュウグウの砂からウラシルを見つけたと発表しました。
ウラシルは、RNA(遺伝情報をコピーしたり、タンパク質を作ったりするときに働く分子)の部品になる核酸塩基のひとつ。同時に、ビタミンB3の仲間(ナイアシン)も見つかっています。
04見つかったもの③:5種類の塩基がすべて
そして2026年には、古賀らの研究チームが学術誌『Nature Astronomy』で、リュウグウの砂からDNAとRNAに使われる5種類の核酸塩基すべて(アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル)が見つかったという研究が発表されました。
生命の設計図を書く「文字」が、すべて宇宙の石の中にそろっていたことになります。
05「地球の汚れ」がついていないのがすごい
これまでも、地球に落ちてきた隕石から有機物が見つかったことはありました。でも隕石は、大気圏を通るときに焼かれたり、地上で長い間雨風にさらされたりして、地球の物質が混ざっている心配がつきまといます。
リュウグウの砂は、宇宙で採取されて密閉されたまま地球に届きました。だからこそ、「この分子はもともと宇宙にあったもの」と、自信をもって言えるのです。
06まとめ
- はやぶさ2は、小惑星リュウグウから約5.4gの砂を持ち帰った
- その中からアミノ酸、ウラシル、そして5種類すべての核酸塩基が見つかった
- 生命の材料が宇宙から地球に届けられたという説の大きな手がかりに
1円玉5枚分の砂が、「私たちはどこから来たのか」という人類最大の問いに迫っている。日本の探査機がつかんだ、とんでもない「マジか!?」です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAsteroids are thought to be material left over from when the solar system formed about 4.6 billion years ago.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In December 2020, a small capsule landed in a desert in Australia. Inside was sand from an asteroid called Ryugu. The Japanese spacecraft Hayabusa2 brought it back after a six-year trip. There were only about 5.4 grams of sand.
But scientists found amino acids in it. They also found all five of the building blocks used in DNA and RNA. They did not find life, but they found some materials for life.
72 words ・ CEFR A2
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2020年12月、小さなカプセルがオーストラリアの砂漠に着地しました。中に入っていたのは、リュウグウという小惑星の砂でした。日本の探査機はやぶさ2が、6年間の旅の末に持ち帰ったものです。砂はわずか約5.4gしかありませんでした。
しかし科学者たちは、その中からアミノ酸を見つけました。さらに、DNAとRNAに使われる5種類の部品もすべて見つけました。生命が見つかったわけではありませんが、生命の材料の一部が見つかったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
リュウグウの砂から生命の材料が見つかった話なので B。C は They did not find life と矛盾。
Q2. How much sand did Hayabusa2 bring back?
There were only about 5.4 grams of sand. とあるので D。単位(グラム)に注意。
Q3. In this passage, "building blocks" means ...
building blocks はもとは「積み木」だが、ここでは比喩で「(何かを作る)基本的な部品・材料」の意味なので A。
Asteroids are thought to be material left over from when the solar system formed about 4.6 billion years ago. Unlike the Earth, they have not been changed much by heat or volcanoes, so they work like time capsules. Japan's Hayabusa2 brought back about 5.4 grams of sand from Ryugu, a carbon-rich asteroid, in 2020. In 2023, researchers reported amino acids, which make up proteins, along with a huge variety of other organic molecules.
Another team found uracil, one of the parts of RNA. Then in 2026, a study reported that all five nucleobases used in DNA and RNA were present. Because the samples were sealed in space, scientists can be confident that these molecules did not come from Earth.
119 words ・ CEFR B1
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小惑星は、約46億年前に太陽系ができたときに残った材料だと考えられています。地球とは違って、熱や火山によってあまり変化していないので、タイムカプセルのような役割を果たします。日本のはやぶさ2は2020年、炭素を多く含む小惑星リュウグウから約5.4gの砂を持ち帰りました。2023年、研究者たちは、タンパク質を作るアミノ酸を、非常に多様なほかの有機分子とともに報告しました。
別のチームは、RNAの部品のひとつであるウラシルを見つけました。そして2026年には、DNAとRNAに使われる5種類の核酸塩基がすべて含まれていたという研究が発表されました。試料は宇宙で密閉されていたので、科学者たちはこれらの分子が地球由来ではないと自信をもって言えるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. Why are asteroids described as "time capsules"?
熱や火山であまり変化しておらず、太陽系誕生時の材料が残っているからタイムカプセルと呼ばれているので C。
Q2. What did the 2026 study report?
all five nucleobases used in DNA and RNA were present とあるので A。
Q3. Why can scientists be confident that the molecules came from space?
Because the samples were sealed in space ... did not come from Earth とあるので D。
Asteroids are regarded as leftovers from the birth of the solar system some 4.6 billion years ago, and because they never underwent the heating and geological activity that reshaped the Earth, they can preserve a record of that era. Ryugu, a carbon-rich asteroid, was therefore a promising place to look for organic compounds. In 2020, Hayabusa2 delivered about 5.4 grams of its material to Earth, and the results have kept coming.
One analysis showed that the samples' composition closely resembles that of the Sun's atmosphere. In 2023, researchers identified amino acids among a vast range of organic molecules, and another team detected uracil, a component of RNA. A study published in 2026 went further, reporting all five nucleobases used in DNA and RNA. Unlike meteorites, which are scorched in the atmosphere and weathered on the ground, these grains were collected and sealed in space, greatly reducing concerns about terrestrial contamination.
Even so, the findings do not mean that life exists on Ryugu, and the molecules occur in extremely small amounts, so careful contamination checks remain essential. Nor do they rule out the possibility that the same molecules also formed on the early Earth.
193 words ・ CEFR B2
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小惑星は、約46億年前の太陽系誕生の名残とみなされています。地球の姿を変えてきたような加熱や地質活動を経験していないため、その時代の記録を保存している可能性があるのです。そのため、炭素を多く含む小惑星リュウグウは、有機化合物を探すのに有望な場所でした。2020年、はやぶさ2はその物質約5.4gを地球に届け、次々と結果が出ています。
ある分析では、試料の組成が太陽の大気の組成とよく似ていることが示されました。2023年、研究者たちは非常に多様な有機分子の中からアミノ酸を特定し、別のチームはRNAの構成要素であるウラシルを検出しました。2026年に発表された研究はさらに進んで、DNAとRNAに使われる5種類の核酸塩基すべてを報告しました。大気中で焼かれ、地上で風化する隕石とは異なり、これらの粒は宇宙で採取され密閉されていたため、地球の物質による汚染の心配が大幅に減っています。それでも、これらの発見はリュウグウに生命が存在することを意味するわけではありません。
また、分子はきわめて微量なので、慎重な汚染チェックが引き続き欠かせません。さらに、同じ分子が初期の地球でも作られた可能性を否定するものでもありません。
4択リーディングクイズ
Q1. Why was Ryugu a promising place to look for organic compounds?
加熱や地質活動を経ておらず記録を保存していること、炭素に富む小惑星であることが理由として書かれているので B。
Q2. How do the Ryugu samples differ from meteorites?
Unlike meteorites ... these grains were collected and sealed in space, greatly reducing concerns about terrestrial contamination とあるので A。
Q3. Which statement would the author most likely agree with?
生命の存在を意味しない、微量なので汚染チェックが必要、地球で作られた可能性も否定しない、と慎重に述べているので C。
重要単語
- asteroidB2名詞小惑星Ryugu is a carbon-rich asteroid.
aster(星)+-oid(~のようなもの)。望遠鏡で星のように見えたことから。 - sample returnC1名詞(句)試料の持ち帰り(サンプルリターン)Sample return missions bring space rocks to Earth.
sample は「試料・見本」。はやぶさシリーズは日本が誇る sample return mission の代表例。 - amino acidB2名詞(句)アミノ酸Amino acids are the building blocks of proteins.
acid は「酸」。反対の性質は alkali / base。the building blocks of ~「~の構成要素」とセットで覚える。 - nucleobaseC1名詞核酸塩基Uracil is a nucleobase found in RNA.
nucleo-(核)+base(塩基)。nucleus(核)、nuclear(核の)と同じ語源。 - contaminationC1名詞汚染・混入The capsule protected the sample from contamination.
contaminate(汚染する)の名詞形。pollution より「異物が混じる」ニュアンスが強く、実験・食品の話でよく使う。 - organicB2形容詞有機のScientists found many organic molecules in the sand.
化学では「炭素を含む化合物の」。日常では organic food「有機栽培の食品」。反対は inorganic。 - terrestrialC1形容詞地球の・陸上のThe samples were free from terrestrial contamination.
terra(大地)から。extraterrestrial は「地球外の(生命)」=E.T.。territory(領土)も同語源。
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動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
公式・一次情報をチェック
- 小惑星探査機「はやぶさ2」(JAXA宇宙科学研究所)isas.jaxa.jp
- JAXA Hayabusa2 Project(JAXA)hayabusa2.jaxa.jp
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はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った砂は、たった約5.4g。その中から、アミノ酸やRNAの部品「ウラシル」、さらにDNAとRNAの材料になる5種類の塩基すべてが見つかったらしい。生命のタネは宇宙から来た?
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Yada et al. (2021) Preliminary analysis of the Hayabusa2 samples returned from C-type asteroid Ryugu, Nature Astronomydoi.org
- Naraoka et al. (2023) Soluble organic molecules in samples of the carbonaceous asteroid (162173) Ryugu, Sciencedoi.org
- Oba et al. (2023) Uracil in the carbonaceous asteroid (162173) Ryugu, Nature Communicationsdoi.org
- Koga et al. (2026) A complete set of canonical nucleobases in the carbonaceous asteroid (162173) Ryugu, Nature Astronomydoi.org
- Yokoyama et al. (2023) Samples returned from the asteroid Ryugu are similar to Ivuna-type carbonaceous meteorites, Sciencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












