2024年秋、地球に「2つ目の月」が2か月だけいた。しかも正体は“月のかけら”だった

読む前に予想してみよう!
2024年に話題になった「ミニムーン」2024 PT5は、地球のまわりを何周もした
地球の重力にとらえられたのは約2か月で、そのあいだに地球を1周もしていない。
- 対象
- 小惑星2024 PT5
- 規模
- 1天体
- 研究の種類
- 軌道計算+分光観測
- 確かさ
- ★★★☆☆
2024年秋、小惑星2024 PT5が約2か月だけ地球の重力にとらえられ「ミニムーン」に。ただし地球を1周はしていない。正体は月から飛び出したかけららしい。
ひとことで言うと2024年、小さな石が2か月だけ地球のそばにいたよ。正体は月のかけらかも。
「地球に2つ目の月ができる!」2024年の秋、こんなニュースが世界をかけめぐりました。
主役は、2024 PT5という名前の小さな小惑星。幅はおよそ10m、バスくらいの大きさです。この小惑星が、2024年9月29日から11月25日までの約2か月間、地球の重力に一時的にとらえられたのです。
でも、このニュースには続きがありました。じつは「月」と呼ぶには少し無理があり、しかもその正体は、なんと月のかけらだったのです。
01「ミニムーン」ってなに?
地球の近くを通る小さな小惑星が、ゆっくりしたスピードで近づくと、地球の重力につかまって、しばらく地球のそばにとどまることがあります。これをミニムーンと呼びます。
ミニムーンは、たいてい数日〜数か月で地球から離れ、また太陽のまわりを回る旅にもどっていきます。2020年にも、2020 CD3という数mの天体が、数年ものあいだ地球にとらえられていたことが見つかっています。
02どんでん返し1:じつは地球を1周していない
ここがポイントです。2024 PT5は、地球の重力にとらえられていたものの、地球のまわりをぐるっと1周はしなかったのです。
研究者のことばを借りれば、「一時的にとらえられたまま通り過ぎた」というイメージ。ニュースの「2つ目の月」という表現は、ちょっと言いすぎだったわけです。
しかも幅10mほどと小さく暗いので、肉眼はもちろん、ふつうの天体望遠鏡でも見えませんでした。

03どんでん返し2:正体は「月のかけら」
もっと驚きだったのは、その正体です。
人工物(ロケットの部品)の可能性も検討されましたが、太陽の光に押される動き方が人工物にしては小さすぎることから、自然の岩だと判断されました。
04「月のかけら」は、ほかにもあった
月から来たと考えられている小惑星は、じつは2つ目です。
1つ目は、2016年に見つかったカモオアレワ。地球と同じような軌道で太陽を回り、地球から見るといつも近くにいる「準衛星」です。アメリカ・アリゾナ大学のシャーキーらは2021年、その光が月の岩に似ていると報告しました。中国の探査機「天問2号」が、この天体の砂を持ち帰ることを目指して2025年に旅立っています。
カレタらは「1つなら例外かもしれないが、2つなら、月から来た小惑星のグループがありそうだ」という趣旨を述べています。
05まとめ
- 2024年秋、小惑星2024 PT5が約2か月間、地球の重力に一時的にとらえられた
- ただし地球を1周はしておらず、「2つ目の月」は言いすぎだった
- 光の分析から、正体は月から飛び出したかけららしい
月から飛び出したかけらが、長い時間、宇宙を旅して、ふるさとの近くに帰ってきた。そう考えると、小さな岩にも物語があります。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn autumn 2024, headlines announced that Earth would have a "second moon." The object was 2024 PT5, a small…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In the fall of 2024, a small asteroid called 2024 PT5 stayed near Earth for about two months. Earth's gravity held it for a short time, so news reports called it a "second moon."
But it never went all the way around Earth. It was only about 10 meters wide, so people could not see it. Scientists later found that it was probably a piece of our Moon.
68 words ・ CEFR A2
和訳を見る
2024年の秋、2024 PT5という小さな小惑星が、約2か月間地球の近くにとどまりました。地球の重力が短いあいだそれをつかまえていたので、ニュースは「2つ目の月」と呼びました。
しかし、それは一度も地球をぐるりと1周しませんでした。幅は約10メートルしかなかったので、人々には見えませんでした。科学者たちはのちに、それがおそらく私たちの月のかけらだとわかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
小惑星2024 PT5が約2か月だけ地球の近くにいた話なので C。
Q2. How long did 2024 PT5 stay near Earth?
stayed near Earth for about two months とあるので D。
Q3. In this passage, "held" means Earth's gravity ...
hold(つかんでおく)の過去形。重力が小惑星を近くに「とどめた」という意味なので B。
In autumn 2024, headlines announced that Earth would have a "second moon." The object was 2024 PT5, a small asteroid about 10 meters wide. From September 29 to November 25, Earth's gravity temporarily captured it, so it became what scientists call a mini-moon.
However, according to Spanish researchers who calculated its path, it did not complete even one full orbit around Earth, so calling it a second moon was an exaggeration. Even more surprising was its origin. When American astronomers studied its light, they found it matched rocks brought back from the Moon, not any known type of asteroid. They concluded that 2024 PT5 is probably a fragment thrown off the Moon by an impact.
115 words ・ CEFR B1
和訳を見る
2024年の秋、ニュースの見出しは地球に「2つ目の月」ができると伝えました。その天体は、幅約10メートルの小さな小惑星2024 PT5でした。9月29日から11月25日まで、地球の重力がそれを一時的にとらえたので、科学者がミニムーンと呼ぶものになったのです。
しかし、その軌道を計算したスペインの研究者たちによると、それは地球のまわりを1周すらしなかったので、「2つ目の月」と呼ぶのは大げさでした。さらに驚きだったのはその起源です。アメリカの天文学者たちがその光を調べると、それは既知のどのタイプの小惑星とも違い、月から持ち帰られた岩と一致していました。彼らは、2024 PT5はおそらく衝突で月から飛び出したかけらだと結論づけました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
一時的なミニムーンとなった2024 PT5と、それが月のかけらだったという起源の話なので A。
Q2. Why was calling 2024 PT5 a "second moon" an exaggeration?
it did not complete even one full orbit around Earth, so calling it a second moon was an exaggeration とあるので C。
Q3. How did scientists learn where 2024 PT5 came from?
studied its light, they found it matched rocks brought back from the Moon とあり、光の特徴を月の岩と比べたので D。
In autumn 2024, headlines announced that Earth was about to gain a "second moon." The object, 2024 PT5, is a roughly 10-meter asteroid whose orbit around the Sun closely resembles Earth's, which lets it drift slowly past us. Two researchers in Madrid calculated that from September 29 to November 25 its energy relative to Earth was negative. That means it was temporarily captured, but it never completed a single loop around the planet.
Calling it a second moon was an overstatement. What it is made of turned out to be more interesting. A team at Lowell Observatory observed the object in August 2024 and published its results in 2025. The spectrum closely matched lunar samples brought back by the Apollo missions and did not fit any known asteroid type.
The team concluded that the object was probably ejecta from an impact on the Moon, although one spectrum cannot settle the question completely. They also considered an artificial origin, such as a rocket part, but rejected it because sunlight affected the object's motion too little. It is the second known asteroid with a Moon-like spectrum, after Kamo'oalewa, so there may be many more fragments of the Moon out there.
198 words ・ CEFR B2
和訳を見る
2024年の秋、報道は地球が「2つ目の月」を得ようとしていると伝えました。その天体2024 PT5は幅およそ10メートルの小惑星で、太陽のまわりを回る軌道が地球の軌道とよく似ているため、地球のそばをゆっくりと通り過ぎることができます。マドリードの2人の研究者の計算によると、9月29日から11月25日まで、地球に対するその天体のエネルギーはマイナスでした。つまり一時的にとらえられていたのですが、地球のまわりを一度も1周しませんでした。
「2つ目の月」と呼ぶのは誇張でした。むしろ興味深かったのは、それが何でできているかです。ローウェル天文台のチームは2024年8月にこの天体を観測し、2025年に結果を発表しました。そのスペクトルはアポロ計画で持ち帰られた月の試料とよく一致し、既知のどのタイプの小惑星にも当てはまりませんでした。
チームは、この天体はおそらく月への衝突で飛び出した噴出物だと結論づけましたが、1つのスペクトルだけで問題を完全に決着させることはできません。ロケットの部品のような人工物である可能性も検討されましたが、太陽光がその動きに与える影響が小さすぎたため、否定されました。これはカモオアレワに続いて2つ目に見つかった、月に似たスペクトルをもつ小惑星なので、月のかけらはほかにもたくさんあるのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the author's overall view of the "second moon" headlines?
Calling it a second moon was an overstatement と述べたあと、What it is made of turned out to be more interesting と続けているので B。
Q2. Why was the idea that 2024 PT5 is a rocket part rejected?
rejected it because sunlight affected the object's motion too little とあるので A。人工物なら軽くて太陽光の影響を受けやすいはず、という理屈。
Q3. What does the mention of Kamo'oalewa suggest?
月に似たスペクトルの小惑星が2つ目であることから so there may be many more fragments of the Moon out there と述べているので C。
重要単語
- mini-moonB2名詞ミニムーン(一時的に地球にとらえられた小天体)The mini-moon stayed near Earth for two months.
正式な天文学用語というより通称。temporarily captured object(一時的捕獲天体)とも言う。 - captureB2動詞・名詞とらえる/捕獲Earth's gravity captured the small asteroid.
capture the moment「瞬間をとらえる」、capture attention「注目を集める」など比喩でも頻出。 - ejectaC1名詞噴出物The rock may be ejecta from a lunar impact.
eject(はじき出す)から。衝突や噴火で飛び散った物質。複数扱いが基本。 - spectrumB2名詞スペクトルIts spectrum matches lunar samples.
光を色(波長)ごとに分けたもの。物質ごとに特徴が出るので「光の指紋」と呼ばれる。 - quasi-satelliteC1名詞準衛星Kamo'oalewa is a quasi-satellite of Earth.
quasi-(準~、ほぼ~)。地球と同じような軌道で太陽を回り、地球の近くにいるように見える天体。 - horseshoe orbitC1名詞(句)馬蹄形軌道The asteroid follows a horseshoe orbit.
地球から見ると軌道が馬のひづめ(horseshoe)の形に見えることから。 - exaggerationB2名詞誇張、大げさCalling it a second moon was an exaggeration.
動詞 exaggerate。g が2つ続くつづりに注意。It's no exaggeration to say ~「~と言っても過言ではない」は入試頻出。
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
2024年秋、地球に2か月だけ「2つ目の月」がいた。幅10mほどの小惑星2024 PT5が地球の重力に一時的にとらえられたのだ。ただ実は地球を1周もしていない。しかも光を調べたら、正体は“月のかけら”らしい。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(4件)タップで表示
- de la Fuente Marcos & de la Fuente Marcos (2024) A Two-month Mini-moon: 2024 PT5 Captured by Earth from September to November, Research Notes of the AASdoi.org
- Kareta et al. (2025) On the Lunar Origin of Near-Earth Asteroid 2024 PT5, The Astrophysical Journal Lettersdoi.org
- Sharkey et al. (2021) Lunar-like silicate material forms the Earth quasi-satellite (469219) 2016 HO3 Kamoʻoalewa, Communications Earth & Environmentdoi.org
- de la Fuente Marcos & de la Fuente Marcos (2020) On the orbital evolution of meteoroid 2020 CD3, a temporarily captured orbiter of the Earth–Moon system, MNRASdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












