睡眠・休息

レム睡眠中の脳は「燃料が届いているのにエネルギー不足」? 東北大がマウスで発見

レム睡眠中の脳は「燃料が届いているのにエネルギー不足」? 東北大がマウスで発見

読む前に予想してみよう!

この研究では、レム睡眠中にマウスの神経細胞のATP(エネルギー)が増えていた

研究カード(どんな研究?)
対象
マウス
規模
小規模(動物実験)
研究の種類
動物実験(脳の広域蛍光イメージング)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

東北大学がマウスの脳を頭蓋骨ごしに観察。レム睡眠中は血液も燃料の材料も増えるのに、神経細胞のエネルギー(ATP)はむしろ急に減っていた。

ひとことで言うと夢を見るころの脳は、ごはんが届いているのに、エネルギーの使い方がふだんと大きく変わっているのかも!

もくじ
  1. 頭蓋骨ごしに「脳のエネルギー」を見る
  2. ノンレム睡眠では「前から後ろへ」速い波
  3. レム睡眠では「燃料満タンなのにガス欠」
  4. なぜ脳はそんなに「燃費が悪い」状態に?
  5. まとめ

眠っている間、脳は休んでいる——そう思っていませんか?

実は、夢を見ることが多い「レム睡眠」の間、脳は起きているときに近いくらい活発に働いています。では、そのエネルギーはどうやってまかなわれているのでしょう。

2026年7月、科学誌『Communications Biology』に、東北大学の研究チームがこの謎に迫る論文を発表しました。マウスの脳を観察したところ、レム睡眠中は燃料がどんどん届いているのに、神経細胞のエネルギーはむしろ急に減っていたのです。

01頭蓋骨ごしに「脳のエネルギー」を見る

ATPは、細胞が動くための電池のようなもの。この3つを同時に見ることで、「燃料の供給」と「エネルギーの消費」のバランスが分かります。

02ノンレム睡眠では「前から後ろへ」速い波

まず、深い眠りを含むノンレム睡眠。このときは、脳波(シータ波)の活動が、その後の血液量の変化を予告するように動き、血流の波が脳の前から後ろへ素早く伝わっていました。

03レム睡眠では「燃料満タンなのにガス欠」

ところがレム睡眠に入ると様子が一変します。

  • 脳の血液量が大きく増加(脳の後ろ側から始まり、ゆっくり全体へ広がる)
  • アストロサイトのピルビン酸も増加
  • それなのに、神経細胞のATPは急激に低下

ガソリンスタンドから燃料がどんどん運ばれてくるのに、車のメーターはガス欠に向かっている。そんな「エネルギーの逆説」が起きていたのです。

研究チームは、原因として、神経細胞でのエネルギー消費の増加、アストロサイトから神経細胞への受け渡しの低下、ミトコンドリアでのATP産生の低下などを挙げています。ただし、消費の増加だけでは説明しきれないかもしれない、とも述べています。

燃料はたっぷり届いているのに、神経細胞のエネルギーは減っていく
燃料はたっぷり届いているのに、神経細胞のエネルギーは減っていく

04なぜ脳はそんなに「燃費が悪い」状態に?

レム睡眠は1953年に、眠っている人の目が素早く動く時間帯として発見されました(Aserinsky & Kleitman)。以来、記憶の整理や感情の処理に関わるのではないかと考えられてきましたが、その役割はまだ完全には分かっていません。

今回の結果について研究チームは、ATPの一時的な低下は、記憶の再編成や感情の処理を優先するためのエネルギー配分なのかもしれない、と推測しています(まだ仮説の段階です)。ノンレムとレムで、脳がエネルギーの配り方を切り替えていることも見えてきました。

05まとめ

眠っている脳は、休むどころか、エネルギーの使い方や配り方を大きく切り替えているのかもしれません。夜中にたくさん夢を見た朝、なんだか頭が疲れている……そんな感覚とつながるかどうかは、まだ分かりません。睡眠のリズムについてはレム睡眠とノンレム睡眠の記事もどうぞ。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerYou might think the brain rests during sleep. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

You might think the brain rests during sleep. In fact, it is very active during REM sleep, the stage when most dreaming happens.

Researchers at Tohoku University in Japan wanted to know how the brain gets enough energy at this time. They used glowing markers to watch the brains of naturally sleeping mice, without removing the skull. They measured three things at once. The first was blood volume in the brain.

The second was pyruvate, a material for making energy, inside support cells called astrocytes. The third was ATP, the energy that nerve cells use. During REM sleep, blood volume and pyruvate both went up. But ATP in the nerve cells dropped sharply. The researchers say nerve cells may use more energy, or may get less from support cells.

129 words ・ CEFR B1

和訳を見る

睡眠中、脳は休んでいると思うかもしれません。実は、ほとんどの夢を見る段階であるレム睡眠の間、脳はとても活発です。

日本の東北大学の研究者たちは、このとき脳がどうやって十分なエネルギーを得ているのかを知りたいと考えました。彼らは光る目印を使い、頭蓋骨を取り除かずに、自然に眠っているマウスの脳を観察しました。3つのことを同時に測定しました。1つ目は脳の血液量です。

2つ目は、アストロサイトと呼ばれる支持細胞の中にある、エネルギーをつくる材料のピルビン酸です。3つ目は、神経細胞が使うエネルギーであるATPです。レム睡眠中、血液量とピルビン酸はどちらも増えました。ところが、神経細胞のATPは急激に低下しました。研究者たちは、神経細胞がより多くのエネルギーを使っているか、支持細胞から受け取る量が減っているのかもしれないと言っています。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the researchers want to know?

Q2. Which of the following increased during REM sleep?

Q3. What do the researchers think explains the result?

重要単語

  • paradoxC1
    名詞逆説、矛盾して見えることIt is a paradox that more fuel leads to less energy. para-(反して)+dox(意見)。「常識に反する考え」。形容詞 paradoxical、副詞 paradoxically(逆説的に)も長文頻出。
  • metabolismC1
    名詞代謝The brain has a very high metabolism. 形容詞 metabolic。metabolic syndrome(メタボリックシンドローム)の metabolic。
  • astrocyteC1
    名詞アストロサイト(脳の支持細胞の一種)Astrocytes help supply energy to neurons. astro(星)+cyte(細胞)。星のような形をしていることから。astronaut の astro と同じ。
  • propagateC1
    動詞伝わる、広がるThe wave propagated slowly across the brain. もとは「(植物を)繁殖させる」。そこから「(波・情報が)広がる」。名詞 propagation。propaganda も同語源。
  • declineB2
    動詞・名詞低下する/低下The energy level declined during REM sleep. 「断る」の意味もある多義語。decline an invitation(招待を断る)。
  • supplyB1
    名詞・動詞供給(する)The supply of fuel could not keep up with demand. supply and demand(需要と供給)は日本語と語順が逆。supply A with B「AにBを供給する」。
東北大学の研究で、マウスのレム睡眠中、脳に流れこむ血液もエネルギーの材料も増えるのに、神経細胞のエネルギー(ATP)は急減していたらしい。「燃料満タンなのにガス欠」みたいな逆説。眠る脳のエネルギー、どこへ消えた?

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Takahashi, Ikoma & Matsui (2026) Energy paradox in REM sleep: balancing supply and consumption in brain metabolism, Communications Biologydoi.org
  2. Aserinsky & Kleitman (1953) Regularly Occurring Periods of Eye Motility, and Concomitant Phenomena, During Sleep, Sciencedoi.org
  3. Xie et al. (2013) Sleep Drives Metabolite Clearance from the Adult Brain, Sciencedoi.org