睡眠・休息

怖い夢をよく見る人ほど、感情を整える上手な方法を使っていた。536人の「毎朝の夢の記録」から

怖い夢をよく見る人ほど、感情を整える上手な方法を使っていた。536人の「毎朝の夢の記録」から

読む前に予想してみよう!

怖い夢を見た翌朝は、気分が少し良くなる傾向があった

研究カード(どんな研究?)
対象
一般の成人(約86%が女性・平均39歳)
規模
536人・のべ4,715日
研究の種類
毎日のオンライン調査による観察研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

怖い夢の翌朝は気分が少し沈む。でも怖い夢が多い人ほど、感情を上手に整える方法を使っていた。怖さと喜びが同時に強い夢の翌朝は嫌な気分ゼロになりやすい。

ひとことで言うと怖い夢は、心が「こわさの練習」をしているのかもしれない!

もくじ
  1. 536人が、毎朝「ゆうべの夢」を記録した
  2. 「翌朝は沈むのに、心は強い」というねじれ
  3. 脳は夢の中で「こわさの練習」をしている?
  4. どんでん返し:「悪夢が多いほど良い」わけではない
  5. まとめ

追いかけられる、高いところから落ちる、試験に遅刻する。怖い夢から飛び起きた朝は、なんだか1日がどんよりしますよね。

「怖い夢をよく見るのは、心が弱っているサインなのでは?」と心配になる人もいるかもしれません。ところが2026年、睡眠研究の専門誌『SLEEP』に、ちょっと意外な結果が出ました。

怖い夢をよく見る人ほど、ふだん感情を上手に整える方法を使っていたのです。

01536人が、毎朝「ゆうべの夢」を記録した

02「翌朝は沈むのに、心は強い」というねじれ

ここが一番のふしぎなところです。

1晩ごとに見ると、怖い夢はやっぱり翌朝の気分を下げていました。夢の気分が起きたあとまで続く「地続き」の関係です。

ところが人ごとに比べると、怖い夢の多い人ほど、感情を整える上手な方法を使っていた。研究チームはこれを、夢の感情は、その翌朝の気分は下げても、人単位で見ると心の調整にかかわっているのかもしれないと読み解いています(どちらが原因かはまだわかりません)。

ちなみに「感情をうまく整える方法」とは、一般に心理学では、出来事を別の角度からとらえ直したり、気持ちを言葉にしたりといった、心の負担を軽くするやり方のことです。

夢の中の怖さは、心のバランスをとる仕組みの一部なのかもしれない
夢の中の怖さは、心のバランスをとる仕組みの一部なのかもしれない

03脳は夢の中で「こわさの練習」をしている?

この結果は、以前の研究ともつながります。

スイス・ジュネーブ大学などのチームが2019年に発表した研究では、ふだん怖い夢が多い人ほど、起きているときに怖い画像を見ても、扁桃体などの恐怖に関わる脳の反応が小さかったのです。代わりに、感情のブレーキ役とされる前頭葉の一部がよく働いていました。夢の中で怖さを体験することが、現実の怖さへの「予行演習」になっている可能性があります。

さらに2025年には、つらい感情が夢の中で表に出たあと、やわらいでいく「カタルシスの夢」という考え方も提案されました。今回の「怖さと喜びが混ざった夢の翌朝は、嫌な気分ゼロになりやすい」という結果は、これと通じるところがあります。

04どんでん返し:「悪夢が多いほど良い」わけではない

ただし、「じゃあ悪夢はたくさん見たほうがいい」と考えるのは早すぎます。

今回の研究は、一般の人(コミュニティ・サンプル)の夢を調べたもので、悪夢障害の患者を対象にしたものではありません。眠るのが怖くなるほどの悪夢が何度もくり返される「悪夢障害」は別の話。専門家のまとめでは、慢性的な悪夢には、心と体が興奮しすぎた状態や、怖さを「もう大丈夫」と学び直す働き(恐怖の消去)がうまくいかないことが関わると考えられています。

また、今回は観察研究なので、「怖い夢が感情の力を育てた」のか、「感情を扱うのが上手な人が怖い夢を見やすい」のかは、まだ区別できません。

05まとめ

怖い夢を見た朝は、気分が少し沈む。それは事実でした。でも、怖い夢が多いこと自体は「心が弱いサイン」とは限らず、脳が感情を整える練習の一部なのかもしれません。

明日の朝、怖い夢で目が覚めたら、「いま脳がこわさのリハーサル中だったのかも」と思ってみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWaking up from a frightening dream can ruin the start of a day. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Waking up from a frightening dream can ruin the start of a day. A team at the University of Kansas wanted to know whether those dreams do us any good. They asked 536 adults to report their dreams and their mood online every day, and collected data from more than 4,700 days. A computer program rated how much fear and joy each dream contained. After a frightening dream, people woke up with about seven percent more negative feelings.

But people who had scary dreams more often also tended to use healthier ways of handling their emotions in daily life. And when a dream was full of fear and joy at the same time, the next morning was more likely to be completely free of bad feelings.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

怖い夢で目が覚めると、1日の始まりが台無しになることがあります。カンザス大学のチームは、そうした夢が私たちに何か良いことをもたらすのかを知りたいと考えました。彼らは536人の大人に、毎日オンラインで夢と気分を報告してもらい、4,700日分を超えるデータを集めました。コンピュータープログラムが、それぞれの夢にどれくらいの怖さと喜びが含まれているかを評価しました。怖い夢のあと、人々は約7パーセント多い否定的な気分で目覚めました。

しかし、怖い夢をより頻繁に見る人は、日常生活で感情を扱うより健全な方法を使う傾向もありました。そして、ある夢が怖さと喜びで同時に満ちていると、翌朝は嫌な気分がまったくない朝になりやすかったのです。

4択リーディングクイズ

Q1. How did the researchers measure fear and joy in dreams?

Q2. Which statement is true according to the passage?

Q3. What can we infer about dreams that mix fear and joy?

重要単語

  • nightmareB1
    名詞悪夢She woke up from a nightmare at 3 a.m. mare は古い英語で「夜に胸の上に乗る魔物」。比喩で「最悪の出来事」の意味にもなる(a traffic nightmare)。
  • frighteningB1
    形容詞怖い、ぞっとするThe movie was too frightening for children. frighten(怖がらせる)の -ing 形。人が「怖がっている」は frightened。-ing / -ed の区別は文法問題の定番。
  • emotion regulationC1
    名詞(句)感情調整(気持ちを整えること)Good emotion regulation helps us calm down after a fight. regulate(調整する、規制する)の名詞形。心理学の長文で頻出。
  • moodA2
    名詞気分He was in a good mood this morning. be in a good/bad mood の形でよく使う。in no mood to ~ は「~する気分ではない」。
  • adaptiveB2
    形容詞適応的な、うまく働くTalking to a friend is an adaptive way to handle stress. adapt(適応する)の形容詞。adopt(採用する)とのつづりの違いは入試頻出。
  • oddsB2
    名詞見込み、オッズ(起こりやすさ)The odds of rain are high today. 常に複数形。against all odds は「あらゆる困難にもかかわらず」という熟語。
  • observationalC1
    形容詞観察によるAn observational study cannot show what causes what. observe(観察する)から。experimental(実験的な)と対で覚えると研究の長文が読みやすくなる。

動画でもっと知る

怖い夢をよく見る人ほど、ふだん感情を上手に整える方法を使っていたらしい。536人の夢を毎朝記録した研究。怖い夢の翌朝は気分が少し沈むけど、怖さと楽しさが混ざった夢の翌朝は「嫌な気分ゼロ」になりやすかったという話。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Baber et al. (2026) Testing affect regulation theories of dreaming, SLEEPdoi.org
  2. Sterpenich et al. (2019) Fear in dreams and in wakefulness: Evidence for day/night affective homeostasis, Human Brain Mappingdoi.org
  3. Perogamvros et al. (2025) The cathartic dream: Using a large language model to study a new type of functional dream in healthy and clinical populations, Journal of Sleep Researchdoi.org
  4. Gieselmann et al. (2019) Aetiology and treatment of nightmare disorder: State of the art and future perspectives, Journal of Sleep Researchdoi.org