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時差ボケは「東へ飛ぶ」ほうがつらい。メジャーリーグの成績にも表れた体内時計の科学

時差ボケは「東へ飛ぶ」ほうがつらい。メジャーリーグの成績にも表れた体内時計の科学

読む前に予想してみよう!

時差ボケは、西へ飛んでも東へ飛んでも同じくらいの日数で治る

研究カード(どんな研究?)
対象
プロ野球選手・旅行者など
規模
20シーズン分の試合データ+複数の研究
研究の種類
観察研究+レビュー
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

人の体内時計は24時間より少し長めで「後ろにずらす」のは得意だが「前にずらす」のは苦手。だから東向きの移動ほど時差ボケが長引きやすい。

ひとことで言うと体内時計は「夜ふかし」は得意、「早起き」は苦手。だから東へ行くとつらい!

もくじ
  1. メジャーリーグの成績にも表れた「東向き」の影響
  2. 体内時計は「夜ふかし」が得意
  3. 時計の針を動かす最強の道具は「光」
  4. まとめ

ハワイ旅行の帰り、日本に着いてからの数日間、昼間は眠くて夜は目がさえる……。海外旅行で時差ボケを経験した人は多いでしょう。

実は時差ボケには「行きと帰りで、つらさが違う」という性質があります。日本からヨーロッパへ行くより、ヨーロッパから日本へ戻るほうがつらい、と感じる人が多いのです。

この差は、プロスポーツの成績にまで表れていました。

01メジャーリーグの成績にも表れた「東向き」の影響

1995年にも、米国の研究者が『Nature』に「時差ボケに負けた野球チーム」という短い論文を発表し、東向きに移動した直後のチームは不利になりやすいことを報告しています。

もちろん野球の勝ち負けには、多くの要素がからみます。それでも、何万試合ものデータから「向き」の違いが浮かび上がってきたのは興味深い点です。

02体内時計は「夜ふかし」が得意

なぜ東向きの方がつらいのでしょうか。カギは体内時計のクセです。

人の体内時計の1周期は、多くの人で24時間より少しだけ長いことがわかっています。そのため、時計を後ろにずらす(遅らせる)のは比較的かんたんですが、前にずらす(早める)のは苦手です。

  • 西へ飛ぶ(例:日本→ヨーロッパ):現地の夜が「いつもより遅く」来る → 夜ふかしと同じで、合わせやすい
  • 東へ飛ぶ(例:ヨーロッパ→日本):現地の夜が「いつもより早く」来る → 早寝早起きを強いられ、合わせにくい

一般には、体内時計が新しい時刻に合うまで1時間の時差あたりおよそ1日かかると言われますが、東向きではもっと時間がかかりやすいとされています。

体内時計は「遅らせる」のは得意、「早める」のは苦手
体内時計は「遅らせる」のは得意、「早める」のは苦手

03時計の針を動かす最強の道具は「光」

体内時計を調整するいちばん強い合図は、光です。ただし、浴びる時刻を間違えると逆効果になることもあります。

ざっくり言うと、体内時計にとっての「早朝」に光を浴びると時計は早まり、「夜」に浴びると遅れます。

東向きの移動では、現地の朝の光を味方につけ、夜は明るい光を避けるのが基本です。ただし大きな時差では、体にとってはまだ真夜中にあたる時間帯の朝日が逆効果になることがあり、専門家は移動の数日前から寝る時刻を少しずつ早める方法なども提案しています。

また、時差ボケ対策としてメラトニンを使う方法も研究されていますが、日本では医薬品成分の扱いです。使う場合は医師に相談しましょう。

移動中の過ごし方もポイントです。飛行機に乗ったら、時計を到着地の時刻に合わせ、到着地が夜の時間帯なら眠る、昼の時間帯なら起きておく、というように意識するだけでも、体を新しい時刻に慣らす準備になります。機内での飲酒は眠りを浅くしやすいので、ほどほどにしましょう。

04まとめ

時差ボケが東向きでつらいのは、気のせいではありませんでした。体内時計が「早める」のが苦手だからです。

次の海外旅行では、飛ぶ方向を確かめて、光と時刻を味方につけた作戦を立ててみましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany travelers notice that jet lag feels worse in one direction. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many travelers notice that jet lag feels worse in one direction. For example, returning to Japan from Europe is often harder than flying from Japan to Europe. The reason lies in the body clock. For most people, it runs slightly longer than 24 hours, so delaying it, like staying up late, is fairly easy, while advancing it is difficult.

When you fly west, night comes later than usual, which is easy to adjust to. When you fly east, night comes earlier, and you are forced to sleep and wake early. A 2017 study of 20 seasons of Major League Baseball found that the effects of jet lag were more noticeable after teams traveled east.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの旅行者は、時差ボケが一方の方向でよりつらく感じることに気づきます。たとえば、ヨーロッパから日本へ戻るほうが、日本からヨーロッパへ飛ぶよりもつらいことがよくあります。その理由は体内時計にあります。ほとんどの人では、体内時計は24時間より少し長く動いているので、夜ふかしのように時計を遅らせるのはかなり簡単ですが、早めるのは難しいのです。

西へ飛ぶと、夜がいつもより遅く来るので、慣れやすいです。東へ飛ぶと、夜が早く来るので、早く寝て早く起きることを強いられます。メジャーリーグ20シーズン分を調べた2017年の研究では、チームが東へ移動した後に時差ボケの影響がより目立っていました。

4択リーディングクイズ

Q1. Why is it easier to fly west?

Q2. How many seasons of Major League Baseball were studied?

Q3. Which trip would probably cause worse jet lag?

重要単語

  • jet lagB1
    名詞(句)時差ボケI had terrible jet lag after flying to New York. lag は「遅れ」。suffer from jet lag / get over jet lag「時差ボケを克服する」。
  • time zoneB1
    名詞(句)時間帯(時差の区分)We crossed seven time zones on the flight. cross time zones「時間帯をまたぐ」が定番のコロケーション。
  • advanceB2
    動詞前に進める、早めるMorning light helps advance your body clock. 名詞で in advance「前もって」も頻出。advanced「進んだ、上級の」。
  • delayB1
    動詞・名詞遅らせる/遅れEvening light tends to delay your sleep. without delay「遅れずに、すぐに」。be delayed「(電車などが)遅れる」。
  • adjustB2
    動詞慣れる、調整するIt took me a week to adjust to the new time. adjust to ~「~に順応する」。adapt to とほぼ同義。名詞 adjustment。
  • symmetricalC1
    形容詞対称的なJet lag is not symmetrical. 名詞 symmetry。反意語は asymmetrical(非対称の)。
  • rule of thumbC1
    名詞(句)経験則、おおよその目安A rule of thumb is one day per hour of time difference. 親指で長さを測った昔の習慣から。厳密ではない目安という意味。

動画でもっと知る

時差ボケは東へ飛ぶほどつらい。体内時計は「遅らせる」のは得意でも「早める」のは苦手だから。メジャーリーグ20年分の試合データでも、東向きの移動のあとに成績への影響が目立ったらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Song A, Severini T, Allada R (2017) How jet lag impairs Major League Baseball performance, PNASdoi.org
  2. Recht LD, Lew RA, Schwartz WJ (1995) Baseball teams beaten by jet lag, Naturedoi.org
  3. Waterhouse J et al. (2007) Jet lag: trends and coping strategies, The Lancetdoi.org
  4. Eastman CI, Burgess HJ (2009) How to Travel the World Without Jet Lag, Sleep Medicine Clinicsdoi.org
  5. Sack RL (2010) Jet Lag, New England Journal of Medicinedoi.org