旅先で眠れないのは、脳の左半分が「見張り番」をしているからだった

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初めての場所で寝ると、脳の片側が見張り番のように警戒している
2016年の研究で、旅先の初日の夜は左半球の眠りが浅く、物音に反応しやすいことがわかった。
- 対象
- 健康な若年成人
- 規模
- 各実験11〜13人程度
- 研究の種類
- 実験室での脳画像・睡眠ポリグラフ研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
初めての場所で眠ると、脳の左半分が浅い眠りのまま物音を警戒していることがわかった。イルカや鳥の「半分だけ眠る」仕組みに似ている。
ひとことで言うと旅先では、脳の片っぽが「見張り役」で起きている!
修学旅行、合宿、出張先のホテル。1日目の夜だけ、なぜかうまく眠れない。2日目になると嘘のようにぐっすり――。
この現象、睡眠研究の世界では昔から「第一夜効果(ファースト・ナイト・エフェクト)」と呼ばれていて、1960年代にはすでに知られていました。実験で初日の睡眠データを使わないのが定番になるほど、よくある現象なのです。
でも「なぜ」そうなるのかは、長いあいだ謎でした。その答えのひとつを見つけたのが、日本人研究者を中心としたチームです。
01脳の「左半分」だけが浅く眠っていた
つまり、慣れない場所では、脳の左半分が「夜警(ナイトウォッチ)」として、ちょっとだけ起きた状態で見張りをしている。研究チームは、これが第一夜効果の正体のひとつだと考えています。

02イルカや鳥の「半分だけ眠る」ワザに似ている
実は自然界には、脳の半分ずつ交代で眠る動物がいます。たとえばイルカは、泳ぎ続けて呼吸するために、片方の脳を眠らせながら、もう片方で起きていることが知られています。一部の鳥も、群れの端にいる個体が、外側の目を開けたまま片方の脳だけで眠ることがあります。
これを「半球睡眠」と呼びます。人間の第一夜効果は、そこまで極端ではありませんが、危険かもしれない知らない場所で、完全に無防備にならないための“小さな半球睡眠”と考えることもできます。
ご先祖さまが洞窟や森で野宿していた時代、初めての場所でぐっすり眠りこけるのは、命取りだったのかもしれません。
03なぜ「左」なの?
今回の研究では、見張りをしていたのは左半分でした。理由はまだはっきりしていません。論文では、左半球のほうが、デフォルトモードネットワークと他の領域とのつながりが強いことなどが可能性として挙げられています。ただ、なぜ片側だけが見張り役になるのか、いつも左なのか、夜のあいだに左右が交代するのかは、今後の研究で調べる必要があります。
04この研究の「限界」も知っておこう
ワクワクする発見ですが、気をつけたい点もあります。
- 実験はいくつかに分かれていて、それぞれの参加者は十数人程度と少人数
- 左右差が見つかったのは脳全体ではなく、一部のネットワーク(ぼんやりしている時に働く「デフォルトモードネットワーク」)
- 「見張り番として働いている」というのは、データと矛盾しない研究チームの解釈であり、別の研究室で同じ結果が確かめられた例はまだ多くない
つまり「第一夜効果の正体を完全に解明した」というより、有力な仕組みのひとつを示した研究と考えるのが正確です。
05まとめ
旅先の初日に眠れないのは、あなたの脳が「ここは大丈夫か?」と見張りをしているせいかもしれません。少し寝不足になるのは、脳の“防犯システム”が働いているからかもしれないのです。
次に修学旅行やホテルで眠れない夜が来たら、「お、今オレの左脳が見張ってるな」と思ってみてください。少しだけ、気が楽になるかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people sleep badly on their first night in a hotel or on a school trip, but sleep well on the second…
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Have you ever had trouble sleeping on the first night of a school trip? Scientists call this the first-night effect. In 2016, a research team in the US found a reason.
On the first night in a new place, the left side of the brain slept less deeply. It reacted quickly to strange sounds, like a guard at night. On the second night, this difference was gone. Dolphins and some birds also sleep with half of their brain.
78 words ・ CEFR A2
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修学旅行の1日目の夜に、なかなか眠れなかったことはありますか?科学者はこれを「第一夜効果」と呼びます。2016年、アメリカの研究チームがその理由を見つけました。
新しい場所での最初の夜、脳の左側は眠りが浅くなっていました。それは夜の見張り番のように、聞き慣れない音にすばやく反応しました。2日目の夜には、この違いはなくなっていました。イルカや一部の鳥も、脳の半分で眠ります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
新しい場所の初日の夜に眠れない「第一夜効果」の理由を説明しているので B。
Q2. Which side of the brain slept less deeply on the first night?
the left side of the brain slept less deeply とあるので C。
Q3. In this passage, a "guard" is a person who ...
guard は「見張り番、警備員」。場所を見張って安全を守る人なので D。
Many people sleep badly on their first night in a hotel or on a school trip, but sleep well on the second night. This first-night effect has been known since the 1960s, but its cause was a mystery. In 2016, a research team at Brown University in the US measured the brain activity of young, healthy people sleeping in a laboratory on two nights, a week apart.
On the first night, part of the left side of the brain slept less deeply than the right side during deep sleep. When unusual sounds were played, the left side reacted strongly, and people woke up faster. The researchers think the left side works as a night watch in an unfamiliar place, much like dolphins that sleep with half of their brain.
129 words ・ CEFR B1
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多くの人は、ホテルや修学旅行の最初の夜にはよく眠れないのに、2日目の夜にはよく眠れます。この第一夜効果は1960年代から知られていましたが、その原因は謎でした。2016年、アメリカのブラウン大学の研究チームは、実験室で1週間あけて2晩眠る若い健康な人たちの脳の活動を測定しました。最初の夜、深い眠りの間、脳の左側の一部が右側よりも浅く眠っていました。
いつもと違う音を流すと、左側は強く反応し、人々はより早く目を覚ましました。研究者たちは、見慣れない場所では左側が夜の見張り番として働くと考えています。それは、脳の半分で眠るイルカによく似ています。
4択リーディングクイズ
Q1. Since when has the first-night effect been known?
has been known since the 1960s とあるので D。2016年は原因の一つが見つかった年。
Q2. What happened when unusual sounds were played on the first night?
the left side reacted strongly, and people woke up faster とあるので B。
Q3. Why does the writer mention dolphins?
脳の半分で眠るイルカと、左半分が見張り番をする人間の脳を比べるために挙げているので A。
Sleeping poorly on the first night in an unfamiliar place is so common that sleep researchers have long discarded first-night data from their experiments. The phenomenon, known as the first-night effect, was described in the 1960s, but its mechanism remained unclear. In 2016, a team at Brown University recorded the brain activity of healthy young adults over two nights, a week apart, in a laboratory. During deep sleep on the first night, part of the left hemisphere showed shallower sleep than the right.
When irregular sounds were presented, the left hemisphere responded more strongly and participants woke more quickly; by the second night, this asymmetry had disappeared. The researchers interpreted the finding as a night watch system that keeps one side of the brain vigilant, resembling, on a much smaller scale, the half-brain sleep of dolphins and some birds. However, each experiment involved only around a dozen participants, the asymmetry was limited to one brain network rather than the whole hemisphere, and the night-watch explanation remains an interpretation that has not yet been widely confirmed by other laboratories.
178 words ・ CEFR B2
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見慣れない場所での最初の夜によく眠れないことはとても一般的なので、睡眠研究者たちは昔から実験の初日の夜のデータを使わずにきました。第一夜効果として知られるこの現象は1960年代に報告されていましたが、その仕組みははっきりしないままでした。2016年、ブラウン大学のチームは、健康な若い成人の脳活動を実験室で1週間あけて2晩にわたって記録しました。最初の夜の深い眠りの間、左半球の一部は右半球よりも浅い眠りを示しました。不規則な音を聞かせると、左半球のほうが強く反応し、参加者はより早く目を覚ましました。
2日目の夜までに、この左右差は消えていました。研究者たちはこの結果を、脳の片側を警戒状態に保つ「夜警」システムだと解釈しました。それは、ずっと小さな規模ではあるものの、イルカや一部の鳥の半球睡眠に似ています。しかし、各実験の参加者はそれぞれ十数人程度にすぎず、左右差は半球全体ではなく一つの脳ネットワークに限られており、夜警という説明は、ほかの研究室でまだ広く確認されていない一つの解釈にとどまっています。
4択リーディングクイズ
Q1. Why have sleep researchers often discarded first-night data?
第1文で、初日の夜の睡眠不良がとても一般的なので初日のデータを捨ててきたと述べているので B。
Q2. What happened by the second night?
by the second night, this asymmetry had disappeared とあるので D。
Q3. Which of the following is a limitation mentioned by the author?
the asymmetry was limited to one brain network rather than the whole hemisphere とあるので A。
重要単語
- hemisphereC1名詞(脳の)半球、(地球の)半球The left hemisphere stayed more alert on the first night.
hemi-(半分)+sphere(球)。the Northern Hemisphere「北半球」でも使う。 - vigilantC1形容詞警戒している、用心深いGuards must stay vigilant all night.
名詞 vigilance。vigil(寝ずの番)と同語源で「眠らずに見張る」イメージ。 - unfamiliarB1形容詞見慣れない、なじみのないIt is hard to relax in an unfamiliar room.
be unfamiliar with ~「~をよく知らない」、be unfamiliar to ~「~に知られていない」の前置詞の違いが頻出。 - asymmetryC1名詞非対称、左右差The researchers found an asymmetry in sleep depth.
a-(否定)+symmetry(対称)。形容詞 asymmetric(al)。 - predatorB2名詞捕食者Sleeping with one eye open helps birds spot predators.
対になる語は prey(獲物)。生物系長文の必須語。 - phenomenonB2名詞現象The first-night effect is a common phenomenon.
複数形 phenomena が文法・語法問題で問われる。
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修学旅行やホテルの1日目に眠れないアレ、科学的な理由があった。初めての場所では、脳の左半分が浅い眠りのまま「見張り番」をしていて、物音にすぐ反応できる状態らしい。イルカみたい。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Tamaki et al. (2016) Night Watch in One Brain Hemisphere during Sleep Associated with the First-Night Effect in Humans, Current Biologydoi.org
- Agnew et al. (1966) The first night effect: an EEG study of sleep, Psychophysiologydoi.org
- Rattenborg et al. (2000) Behavioral, neurophysiological and evolutionary perspectives on unihemispheric sleep, Neuroscience & Biobehavioral Reviewsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












