睡眠・休息ウソ

寝酒で「ぐっすり」は錯覚だった。4000人の心拍データが示したお酒と睡眠の関係

寝酒で「ぐっすり」は錯覚だった。4000人の心拍データが示したお酒と睡眠の関係

読む前に予想してみよう!

寝る前にお酒を飲むと、眠りの質が上がる

研究カード(どんな研究?)
対象
働く成人(実生活)+健康な成人の実験室研究
規模
4,098人+多数の実験の総説
研究の種類
観察研究+レビュー
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

お酒を飲むと寝つきは早くなるが、夜の後半の眠りが浅くなる。少量でも睡眠中の体の「回復度」が下がっていたという約4000人の実生活データもある。

ひとことで言うとお酒は「ねむらせる」けど、体をちゃんと「休ませて」はくれない!

もくじ
  1. 前半は「深く」、後半は「ボロボロ」
  2. 4000人の「寝ている間の心拍」を見たら
  3. 毎晩続けると「効かなくなる」
  4. まとめ

「一杯飲むと、すぐ眠れるんだよね」。大人からよく聞くセリフです。

たしかにお酒を飲むと、まぶたが重くなってスッと眠りに落ちます。だから「寝酒=よく眠れる」と思っている人は少なくありません。

でも、睡眠の研究者たちの答えは「寝つきは良くなる。でも眠りの中身は悪くなる」。しかも、ほんの少しの量でも体には変化が出ていました。

01前半は「深く」、後半は「ボロボロ」

なぜ前半と後半で逆になるのでしょう。

アルコールは脳の働きをしずめる鎮静作用を持っています。飲んで数時間は、この作用で深い眠りが増えやすくなります。

ところが、体がアルコールを分解して血中の濃度が下がってくると、今度は反動のように脳が目覚めやすい状態になります。夢を見ることが多いレム睡眠も前半では遅れて現れ、多くの研究で一晩全体のレム睡眠が減っていました。

さらに、お酒には尿を増やす作用もあります。夜中にトイレで目が覚めるのも、後半の眠りが乱れる理由の一つです。

024000人の「寝ている間の心拍」を見たら

実験室だけでなく、ふだんの生活ではどうなのでしょうか。

フィンランドの研究チームは2018年、働く大人4,098人に心拍を測る機器をつけてもらい、「お酒を飲んだ日」と「飲まなかった日」の睡眠を同じ人どうしで比べました。

注目したのは、心拍のゆらぎ(心拍変動)から計算した「体の回復度」です。リラックスして体を休ませるモードがどれくらい働いているかの目安になります。

結果、寝てから最初の3時間の回復度は、

  • 少量(体重1kgあたり0.25g以下)で平均9.3ポイント低下
  • 中くらいの量で24.0ポイント低下
  • 多い量で39.2ポイント低下

と、量が増えるほど下がっていました。体重60kgの人なら、0.25g/kgはビール中瓶1本弱ほどの量です。

お酒を飲んだ夜は、寝ている間も心臓が「休みモード」に入りにくかった
お酒を飲んだ夜は、寝ている間も心臓が「休みモード」に入りにくかった

03毎晩続けると「効かなくなる」

もう一つの落とし穴が耐性です。

寝つきを良くするお酒の効果は、毎晩続けているうちに体が慣れて弱くなっていくことが報告されています。すると同じ効果を求めて量が増え、眠りはさらに乱れる——という悪循環になりかねません。

また、アルコールはのどまわりの筋肉もゆるめます。そのため、空気の通り道がせまくなり、いびきや睡眠中の呼吸の乱れが強まりやすいことも知られています。本人は「ぐっすり寝た」つもりでも、体の中では小さな目覚めがくり返されているかもしれないのです。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、眠るためにお酒を飲むこと(寝酒)は睡眠の質を悪化させる可能性があると注意をうながしています。

「でも、お酒を飲んだ夜はよく眠れた気がする」という人もいるでしょう。夜の前半に深く眠るぶん、寝入りばなの印象は良くなりがちです。一方、後半の浅い眠りや短い目覚めは、本人が覚えていないことも多いのです。

04まとめ

寝酒は、眠りへの「入り口」を早くしてくれる代わりに、夜の後半の休息を前借りしているようなものでした。

「ぐっすり眠れた気がする」と「体がしっかり休めた」は、別物かもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany adults believe that a drink before bed helps them sleep well. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many adults believe that a drink before bed helps them sleep well. It is true that alcohol helps people fall asleep faster, and the first half of the night is often deeper. However, as the body breaks down the alcohol, the brain becomes easier to wake, and sleep in the second half of the night becomes light and broken.

In 2018, researchers in Finland measured the heart rates of 4,098 working adults during sleep and compared nights with and without alcohol in the same people. Even a small amount lowered the body's recovery level in the first three hours of sleep, and larger amounts lowered it much more. In addition, people can get used to alcohol, so its sleepy effect may weaken over time.

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの大人は、寝る前の一杯がよく眠る助けになると信じています。確かにアルコールは早く眠りにつく助けになり、夜の前半はしばしばより深くなります。しかし、体がアルコールを分解するにつれて脳は目覚めやすくなり、夜の後半の眠りは浅く途切れたものになります。

2018年、フィンランドの研究者たちは、働く大人4,098人の睡眠中の心拍を測定し、同じ人で飲酒した夜と飲酒しなかった夜を比べました。少しの量でも、眠ってから最初の3時間の体の回復度が下がり、量が多いほどさらに大きく下がりました。さらに、人はアルコールに慣れてしまうことがあるので、眠気を誘う効果は時間とともに弱まるかもしれません。

4択リーディングクイズ

Q1. Why does sleep become light in the second half of the night?

Q2. How did the Finnish researchers compare sleep?

Q3. What can we infer from the last sentence?

重要単語

  • nightcapC1
    名詞寝酒He stopped having a nightcap and started sleeping better. もとは「寝るときにかぶる帽子」。そこから「寝る前の一杯」の意味に。
  • sedativeC1
    形容詞・名詞鎮静(作用のある)、鎮静剤Alcohol has a sedative effect at first. sedate「落ち着かせる」。sedentary「座りがちの」と同じ語根 sed-(座る)。
  • fragmentedC1
    形容詞細切れになった、途切れたHer sleep was fragmented after the party. fragment「破片」から。fragmented information「断片的な情報」。
  • toleranceB2
    名詞耐性(慣れて効きにくくなること)、寛容You can build up a tolerance to many drugs. tolerate「我慢する」の名詞形。社会系長文では「寛容さ」の意味で頻出。
  • recoveryB1
    名詞回復Sleep is the best time for physical recovery. recover from ~「~から回復する」。make a full recovery「完全に回復する」。
  • illusionB2
    名詞錯覚、幻想The benefit of a nightcap is largely an illusion. optical illusion「目の錯覚」。allusion(ほのめかし)とのつづりの違いに注意。
  • consumptionB2
    名詞消費、摂取Alcohol consumption was self-reported. consume「消費する」の名詞形。energy consumption「エネルギー消費」。

動画でもっと知る

寝酒でぐっすり…は錯覚かも。フィンランドの約4000人の心拍データでは、少しのお酒でも寝ている間の「体の回復度」が下がり、量が増えるほど大きく下がっていたらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Ebrahim IO et al. (2013) Alcohol and Sleep I: Effects on Normal Sleep, Alcoholism: Clinical and Experimental Researchdoi.org
  2. Pietilä J et al. (2018) Acute Effect of Alcohol Intake on Cardiovascular Autonomic Regulation During the First Hours of Sleep in a Large Real-World Sample of Finnish Employees, JMIR Mental Healthdoi.org
  3. Roehrs T, Roth T (2001) Sleep, sleepiness, sleep disorders and alcohol use and abuse, Sleep Medicine Reviewsdoi.org
  4. 厚生労働省 (2024) 健康づくりのための睡眠ガイド2023mhlw.go.jp