睡眠・休息ホント

10代が朝起きられないのは「怠け」じゃない。思春期の体内時計は後ろにズレていた

10代が朝起きられないのは「怠け」じゃない。思春期の体内時計は後ろにズレていた

読む前に予想してみよう!

思春期になると、体内時計が夜型にズレやすい

研究カード(どんな研究?)
対象
子ども〜高齢者/シアトルの高校2年生
規模
大規模アンケート/2校の生徒(約180人)
研究の種類
横断調査+始業時刻変更の前後比較(観察研究)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

思春期になると体内時計が夜型にズレ、眠気もたまりにくくなる。夜型のピークは20歳前後。始業を遅らせたら睡眠と成績が改善した学区もある。

ひとことで言うと中高生が夜ふかし型になるのは、体の時計のせい!

もくじ
  1. 思春期、体内時計が「後ろにずれる」
  2. 夜型のピークは「20歳前後」
  3. 学校の始まりを遅らせたら、どうなった?
  4. まとめ

「早く寝なさい!」「なんで朝起きられないの!」。中高生なら、毎日のように言われているセリフかもしれません。

でも、ちょっと待ってください。10代が夜ふかし型になって朝が弱くなるのは、気合いや性格の問題ではなく、体の仕組みの変化だということが、研究でわかってきています。

01思春期、体内時計が「後ろにずれる」

私たちの体には、約24時間のリズムを刻む体内時計があります。夜になると、脳からメラトニンという「そろそろ寝る時間だよ」の合図ホルモンが出て、眠くなる仕組みです。

ところが思春期になると、このメラトニンが出始める時刻が遅くなることが、アメリカ・ブラウン大学のCarskadonさんらの研究グループによって長年調べられてきました。つまり、体のほうが「まだ寝る時間じゃないよ」と言っている状態。小学生のころと同じ時刻に布団に入っても、体内時計的には眠る準備がまだ整っていないことがあるのです。

さらに、Carskadonさんらの実験では、思春期が進むと起きている間に眠気がたまるスピードがゆっくりになることも示唆されています。眠気を砂時計にたとえると、子どものころより砂が落ちるのが遅い。だから夜になっても、なかなか眠くならないのです。

体内時計が後ろにずれること、眠気がたまりにくくなること。この「2つのブレーキ」が重なって、10代は自然と夜型になりやすいと考えられています。そこに夜のスマホの光や部活・塾・宿題といった生活の事情が加わると、ズレはさらに大きくなります。

思春期の体内時計は、ちょっぴり「後ろ」に引っ張られている
思春期の体内時計は、ちょっぴり「後ろ」に引っ張られている

02夜型のピークは「20歳前後」

つまり「最近の若い者は夜ふかしだ」と言う大人も、かつては同じように夜型だった可能性があります。

03学校の始まりを遅らせたら、どうなった?

体内時計が夜型なのに、学校は朝早く始まる。このズレのせいで、多くの10代が慢性的な寝不足になっています。

アメリカ小児科学会は2014年、中学・高校の始業を朝8時30分より前にしないよう勧める声明を出しました。

そして実際に始業を遅らせた例もあります。アメリカ・シアトルの学区は2016年、高校の始業を7時50分から8時45分へ(55分)遅らせました。ワシントン大学のDunsterさんらは、2校の高校2年生に、変更前の2016年と変更後の2017年にそれぞれ腕時計型の活動量計をつけてもらい比べました(2018年、『Science Advances』誌)。

その結果、登校日の睡眠時間は中央値で34分増え(約6時間50分→約7時間24分)、成績(中央値)も4.5%上がりました。さらに、経済的に厳しい家庭の生徒が多い1校では、1時間目の遅刻や欠席も減ったと報告されています。

ただし、これは変更の前後で別の年の高校2年生を比べた研究で、くじ引きで分けた実験ではありません。成績の伸びには、先生や授業内容など、ほかの要因が混ざっている可能性もあります。

04まとめ

10代の夜ふかしは、「怠け」ではなく体内時計のしわざでした。とはいえ、学校のスケジュールはすぐには変わりません。

だからこそ、「朝の光を浴びる」「休日の寝坊はほどほどに」という小さな工夫で、体内時計を少しだけ味方につけていきましょう。そして大人のみなさん、10代を「怠け者」と叱る前に、この記事をそっと思い出してください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTeenagers who cannot get up in the morning are often called lazy, but research shows that their bodies are… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Teenagers who cannot get up in the morning are often called lazy, but research shows that their bodies are changing. During adolescence, the brain starts releasing melatonin, the hormone that signals bedtime, later at night. In addition, sleep pressure seems to build up more slowly during the day, so teens do not feel sleepy until late.

A 2004 survey in Germany found that people become more and more of a night owl through their teens and reach a peak around the age of 20. After that, they gradually become morning types again. In 2016, high schools in Seattle moved their start time from 7:50 to 8:45. Students then slept a median of 34 minutes more, and their grades improved.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

朝起きられない10代はよく怠け者と呼ばれますが、研究は彼らの体が変化していることを示しています。思春期には、脳が寝る時間を知らせるホルモンであるメラトニンを夜遅くに出し始めます。さらに、日中に睡眠圧がたまるのがゆっくりになるようで、10代は夜遅くまで眠くなりません。

ドイツの2004年の調査では、人は10代を通じてどんどん夜型になり、20歳ごろにピークに達することがわかりました。その後、人はしだいに再び朝型になっていきます。2016年、シアトルの高校は始業時刻を7時50分から8時45分に変更しました。すると生徒たちの睡眠は中央値で34分増え、成績も向上しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What happens to melatonin during adolescence?

Q2. At around what age do people reach the peak of being a night owl?

Q3. What can we infer from the Seattle example?

重要単語

  • adolescenceC1
    名詞思春期Sleep patterns change a lot during adolescence. 形容詞・名詞 adolescent「思春期の(若者)」。puberty は「(身体的な)思春期」。
  • melatoninC1
    名詞メラトニン(眠りを促すホルモン)Bright screens at night may delay the release of melatonin. the release of melatonin「メラトニンの分泌」の形でよく出る。
  • delayB1
    動詞・名詞遅らせる/遅れThe school decided to delay its start time by an hour. delay A by B「AをBだけ遅らせる」。by は「差」を表す前置詞。
  • chronicallyC1
    副詞慢性的にMany students are chronically short of sleep. 形容詞 chronic「慢性の」。be short of ~「~が不足している」とセットで。
  • attendanceB2
    名詞出席Attendance improved after the change. attend「出席する」は他動詞なので attend the meeting(to は不要)が入試頻出。
  • pubertyC1
    名詞思春期(第二次性徴期)The body clock shifts later during puberty. reach puberty「思春期を迎える」。adolescence より身体の変化に焦点。
  • night owlB2
    名詞(句)夜型の人My brother is a night owl who studies until 2 a.m. 反対は early bird / morning lark「朝型の人」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

10代が朝起きられないのは「怠け」じゃない。思春期の体内時計は後ろにズレていたの4コマ漫画
「中高生が朝起きられないのは気合いが足りないから」じゃなかった。思春期は体内時計そのものが夜型にズレるらしい。アメリカでは始業を約1時間遅らせたら、睡眠が30分以上増えて成績も上がった学区まである。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Roenneberg et al. (2004) A marker for the end of adolescence, Current Biologydoi.org
  2. Carskadon et al. (2004) Regulation of adolescent sleep: implications for behavior, Annals of the New York Academy of Sciencesdoi.org
  3. Crowley et al. (2007) Sleep, circadian rhythms, and delayed phase in adolescence, Sleep Medicinedoi.org
  4. Dunster et al. (2018) Sleepmore in Seattle: later school start times are associated with more sleep and better performance in high school students, Science Advancesdoi.org
  5. Adolescent Sleep Working Group et al. (2014) School start times for adolescents, Pediatricsdoi.org