睡眠・休息ホント

寝不足の日にお菓子が止まらないのは、意志だけのせいじゃない。食欲ホルモンの“反乱”も関わっていた

寝不足の日にお菓子が止まらないのは、意志だけのせいじゃない。食欲ホルモンの“反乱”も関わっていた

読む前に予想してみよう!

寝不足になると、食欲を高めるホルモン(グレリン)が増えた実験がある

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な若年男性ほか
規模
12人の交差試験+11研究172人のメタ分析
研究の種類
ランダム化交差試験・メタ分析・観察研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

睡眠不足になると「お腹すいた」ホルモンが増え、「もう満腹」ホルモンが減った実験がある。脳も高カロリー食に反応しやすくなり、食べすぎにつながる。

ひとことで言うと寝不足だと、体が「もっと食べて!」と勘違いする!

もくじ
  1. 「お腹すいた」ホルモンと「もう満腹」ホルモン
  2. 脳も「ジャンクフード」に反応しやすくなる
  3. 実際に、どれくらい食べすぎる?
  4. ただし「ホルモンだけが犯人」とは言い切れない
  5. まとめ

テスト勉強で夜ふかしした次の日。なぜか甘いパンやポテトチップス、こってりしたラーメンが無性に食べたくなる――。そんな経験はありませんか?

「寝不足でストレスがたまってるからかな」「意志が弱いのかな」と思いがちですが、実はそこには体の中のホルモンの変化が関わっています。寝不足の体の中では、食欲をコントロールするホルモンが“反乱”を起こしているのです。

01「お腹すいた」ホルモンと「もう満腹」ホルモン

私たちの食欲は、主に2つのホルモンのバランスで調整されています。

  • グレリン:主に胃から出る「お腹がすいた!」ホルモン。食事の前に増える
  • レプチン:主に脂肪の細胞から出る「もう十分だよ」ホルモン。体にエネルギーが足りていることを脳に伝える

アクセルとブレーキのような関係です。ところが、寝不足になるとこのバランスが崩れてしまいます。

同じ年、アメリカ・スタンフォード大学のTaheriさんらも『PLoS Medicine』誌で、約1000人の調査から、ふだんの睡眠が短い人ほどレプチンが低く、グレリンが高く、BMI(肥満度)が高い傾向があると報告しています。

寝不足の体では、「空腹」のアクセルが強く、「満腹」のブレーキが弱くなる
寝不足の体では、「空腹」のアクセルが強く、「満腹」のブレーキが弱くなる

02脳も「ジャンクフード」に反応しやすくなる

ホルモンだけではありません。脳の働きも変わります。

アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校のGreerさん、Walkerさんらは2013年、『Nature Communications』誌で、23人の若者に一晩徹夜してもらい、脳をスキャンしながら食べ物の写真を見せる実験の結果を報告しました。すると、冷静に判断する脳の前の部分(前頭葉)の働きが弱まり、高カロリーな食べ物を「欲しい」と感じる傾向が強くなっていました。

つまり寝不足の脳は、「食べたい!」というアクセルが強く、「やめておこう」というブレーキが効きにくい状態なのです。

03実際に、どれくらい食べすぎる?

ロンドン大学キングス・カレッジのAl Khatibさんらが2017年にまとめたメタ分析では、睡眠を短くした人は、ふつうに眠った人に比べて1日あたり約385kcal多く食べていたと報告されています。これは、おにぎり2個分くらいに相当します。

一方で、消費するエネルギーははっきりとは増えていませんでした。つまり、食べる量だけが増えるわけです。起きている時間が長くなる分、夜食のチャンスが増えることも影響していると考えられています。

04ただし「ホルモンだけが犯人」とは言い切れない

ここで少し冷静になっておきましょう。

Spiegelさんらの実験は12人・2晩という小さく短い実験でした。その後の研究では、睡眠不足でグレリンやレプチンが変わったという結果もあれば、はっきりした変化が出なかったという結果もあり、ホルモンの変化は研究によってまちまちです。

また、Al Khatibさんらのメタ分析では、増えていたのは脂質の摂取で、炭水化物の摂取量は増えていませんでした。「食べすぎる」こと自体はかなり一貫していますが、その理由はホルモン・脳の報酬系・起きている時間の長さなどが組み合わさったものと考えるのが今の主流です。

05まとめ

寝不足の日に食べすぎてしまうのは、意志の弱さだけではなく、ホルモンと脳の“反乱”が関わっていそうです。

ダイエットや体づくりを頑張っている人こそ、睡眠も食事・運動と並ぶ「第三の柱」。今夜しっかり眠ることが、明日の食べすぎを防ぐいちばんの近道かもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people find it hard to stop eating snacks after a night of little sleep, and hormones may be partly… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many people find it hard to stop eating snacks after a night of little sleep, and hormones may be partly responsible. Our appetite is mainly controlled by ghrelin, which tells us we are hungry, and leptin, which tells the brain we have enough energy. In a 2004 study at the University of Chicago, 12 healthy young men slept four hours for two nights and, on another occasion, spent ten hours in bed for two nights.

After short sleep, leptin fell by about 18 percent and ghrelin rose by about 28 percent. The men also felt about 24 percent hungrier and especially wanted foods rich in carbohydrates. A later review found that people with restricted sleep ate about 385 extra calories a day.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

睡眠の少ない夜の後、お菓子を食べるのをやめにくいと感じる人は多く、その一因はホルモンかもしれません。私たちの食欲は、主に空腹を知らせるグレリンと、エネルギーが十分あることを脳に伝えるレプチンによってコントロールされています。2004年のシカゴ大学の研究では、12人の健康な若い男性が、2晩続けて4時間眠り、別の機会には2晩続けて10時間寝床で過ごしました。

短い睡眠の後、レプチンは約18%減り、グレリンは約28%増えました。男性たちはまた約24%空腹を強く感じ、特に炭水化物の多い食べ物を欲しがりました。後のレビューでは、睡眠を制限された人は1日に約385kcal多く食べていたことがわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What does leptin do?

Q2. By about how much did ghrelin rise after short sleep?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • appetiteB2
    名詞食欲Lack of sleep can increase your appetite. have a good appetite「食欲がある」。比喩的に an appetite for knowledge「知識欲」とも。
  • hormoneB2
    名詞ホルモンLeptin is a hormone that signals fullness. 発音は /ˈhɔːrmoʊn/(ホーモウン)。ギリシャ語「刺激する」が語源。
  • craveC1
    動詞強く欲しがるI crave sweets when I am tired. 名詞 craving「強い欲求」。have a craving for ~ の形でもよく出る。
  • calorie intakeB2
    名詞(句)摂取カロリーTheir calorie intake rose after short sleep. intake は「摂取(量)」。take in「取り入れる」から。salt intake「塩分摂取量」。
  • obesityB2
    名詞肥満Short sleep is linked to a higher risk of obesity. 形容詞 obese。overweight より医学的・深刻なニュアンス。
  • carbohydrateB2
    名詞炭水化物Bread and rice are rich in carbohydrates. carbo-(炭素)+hydrate(水和物)。口語では carbs と略す。
  • restrictionB2
    名詞制限Sleep restriction can make people eat more. 動詞 restrict「制限する」。restrict A to B「AをBに制限する」。

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4コマでわかる

寝不足の日にお菓子が止まらないのは、意志だけのせいじゃない。食欲ホルモンの“反乱”も関わっていたの4コマ漫画
寝不足の日、なぜかポテチやラーメンが無性に食べたくなるアレ。意志の問題だけじゃなく、食欲ホルモンも関わっているらしい。2晩4時間睡眠にしただけで「空腹ホルモン」が約3割増えたという実験もある。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Spiegel et al. (2004) Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite, Annals of Internal Medicinedoi.org
  2. Taheri et al. (2004) Short sleep duration is associated with reduced leptin, elevated ghrelin, and increased body mass index, PLoS Medicinedoi.org
  3. Greer et al. (2013) The impact of sleep deprivation on food desire in the human brain, Nature Communicationsdoi.org
  4. Al Khatib et al. (2017) The effects of partial sleep deprivation on energy balance: a systematic review and meta-analysis, European Journal of Clinical Nutritiondoi.org