心理学

時間を忘れて没頭する「フロー」には3つの条件があった。ゲームが止まらない理由も

時間を忘れて没頭する「フロー」には3つの条件があった。ゲームが止まらない理由も

読む前に予想してみよう!

フロー状態は、簡単すぎる作業をしているときにいちばん起こりやすい

研究カード(どんな研究?)
対象
働く大人・大学生
規模
78人(経験サンプリング)ほか
研究の種類
経験サンプリング調査・実験・メタ分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

没頭状態「フロー」は、はっきりした目標・すぐ返る手応え・難しさと実力のつり合いがそろうと起こりやすい。意外にも余暇より仕事中に多いという調査も。

ひとことで言うと「ちょっと難しいけど、できそう」がいちばん夢中になれる!

もくじ
  1. フローが起こる3つの条件
  2. ゲームの難易度を変えて確かめた実験
  3. どんでん返し:フローは「仕事中」に多かった
  4. 今日からフローに入りやすくするには
  5. まとめ

ゲームをしていたら、気づけば夜中の2時。絵を描いていたら、ごはんを食べるのを忘れていた。

こんなふうに、時間の感覚がなくなるほど何かに没頭する状態を、心理学ではフローと呼びます。スポーツ選手が「ゾーンに入る」と言うのも、これに近い状態です。

名づけ親は、ハンガリー出身の心理学者ミハイ・チクセントミハイ。彼は、画家やロッククライマー、チェスプレーヤーなどに話を聞き、「最高に夢中なとき」の共通点を探りました。

01フローが起こる3つの条件

チクセントミハイらの研究から、フローが起こりやすい条件として、よく次の3つが挙げられます。

  1. 目標がはっきりしている:何をすればいいか迷わない(例:「このステージをクリアする」)
  2. 手応えがすぐ返ってくる:うまくいったかどうかがすぐわかる(例:ゲームのスコア、楽器の音)
  3. 難しさと実力がつり合っている:簡単すぎず、難しすぎない

3つ目がとくに大事です。簡単すぎると退屈、難しすぎると不安。その間の「ちょっと背伸びすればできる」帯に、フローの入り口があります。ゲームが止まらないのは、まさにこの3つがそろうよう設計されているからかもしれません。

退屈と不安のあいだ、「ちょっと背伸び」の坂道にフローがある
退屈と不安のあいだ、「ちょっと背伸び」の坂道にフローがある

02ゲームの難易度を変えて確かめた実験

この「つり合い」の大切さは、実験でも確かめられています。

2015年には、フローに関する多くの研究をまとめたメタ分析も行われ、「難しさと実力のつり合い」とフローの間にははっきりした関連があると確認されました。ただし関連の強さは、測り方や文化、活動の種類によってばらつきがあり、「つり合いさえとれれば必ずフローになる」わけではありません。

03どんでん返し:フローは「仕事中」に多かった

チクセントミハイの研究で面白いのが、「経験サンプリング法」という調査方法です。参加者にポケベル(当時の呼び出し機)を持たせ、1日に何度かランダムに鳴らして「今、何をしていて、どんな気分?」を記録してもらいました。

1989年の研究では、アメリカの働く大人78人を1週間調べたところ、フローの状態は余暇よりも仕事中の方が多かったのです。テレビを見ているような余暇の時間は、むしろ退屈やぼんやりした状態が多めでした。

ところが不思議なことに、人々は仕事中、「できればほかのことをしていたい」と答えがちでした。夢中になっていても、「仕事=つらいもの」というイメージが邪魔をしていたのかもしれません。研究者はこれを「仕事のパラドックス」と呼んでいます。

04今日からフローに入りやすくするには

なお、フローに似た「やめられない没頭」は、ギャンブルや長時間のゲームでも起こりえます。生活や睡眠に支障が出るほどなら、使い方を見直してみてください。

05まとめ

フローは、才能のある人だけに訪れる特別な状態ではありません。目標・手応え・ちょうどいい難しさがそろえば、勉強や仕事、家事の中にも生まれやすくなります。

退屈だと感じたら「少しだけ難しく」。しんどいと感じたら「少しだけ簡単に」。そのつまみを回すのは、あなた自身です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFlow is the state of being so absorbed in an activity that you lose track of time. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Flow is the state of being so absorbed in an activity that you lose track of time. The idea was developed by the psychologist Mihaly Csikszentmihalyi, who interviewed painters, rock climbers, and chess players. Flow tends to occur when goals are clear, feedback is immediate, and the challenge matches your skill. If a task is too easy, you get bored; if it is too hard, you become anxious.

In a 2008 experiment, people played a falling-block puzzle game at three levels. They felt most absorbed when the difficulty adjusted to their skill. Csikszentmihalyi also found something surprising. In a 1989 study, workers who recorded their activities several times a day experienced flow more often at work than during leisure, yet they often wished they were doing something else.

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

フローとは、ある活動に夢中になりすぎて時間の感覚を失う状態です。この考えは心理学者ミハイ・チクセントミハイによって生み出されました。彼は画家、ロッククライマー、チェスプレーヤーに話を聞きました。フローは、目標がはっきりしていて、手応えがすぐに返り、難しさが実力に見合っているときに起こりやすくなります。課題が簡単すぎると退屈し、難しすぎると不安になります。

2008年の実験では、人々は落ち物パズルゲームを3つのレベルで遊びました。難易度が自分の腕前に合わせて調整されるときに、最も没頭していると感じました。チクセントミハイは驚くべきことも発見しました。1989年の研究では、1日に何度か自分の活動を記録した働く人々は、余暇よりも仕事中のほうがフローを経験することが多かったのですが、それでもしばしば何か別のことをしていたいと思っていたのです。

4択リーディングクイズ

Q1. Which is NOT one of the conditions for flow mentioned in the passage?

Q2. In the 2008 experiment, when did people feel most absorbed?

Q3. What was surprising about the workers in the 1989 study?

重要単語

  • absorbedB2
    形容詞夢中になった、没頭したShe was so absorbed in the book that she missed her stop. be absorbed in ~「~に夢中になる」。absorb は本来「吸収する」。
  • challengeB1
    名詞難しさ、やりがいのある課題This puzzle is a good challenge for beginners. 日本語の「チャレンジ(挑戦)」より「難題・課題」の意味が中心。challenging「やりがいのある」。
  • feedbackB1
    名詞手応え、結果の知らせQuick feedback helps you learn faster. 不可算名詞。immediate feedback「即時のフィードバック」。
  • leisureB2
    名詞余暇What do you do in your leisure time? 発音は「レジャー/リージャー」。at one's leisure「暇なときに」。
  • paradoxC1
    名詞逆説、矛盾して見えることIt is a paradox that rest can make you tired. 形容詞 paradoxical。para-(反して)+dox(意見)。
  • anxietyB2
    名詞不安A task that is too hard can cause anxiety. 形容詞 anxious。boredom(退屈)とセットでフロー理論の説明に出る。
  • lose track ofB2
    動詞(句)~を見失う、~がわからなくなるI lost track of time while reading. lose track of time「時間を忘れる」が定番。keep track of ~「~を把握しておく」と対。

動画でもっと知る

時間を忘れるほど没頭する「フロー」状態。人に1日数回ランダムに「今なにしてる?」と聞く調査をしたら、フローは余暇より仕事中の方が多かったのに、本人たちは仕事中「ほかのことをしたい」と答えていたらしい。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Csikszentmihalyi & LeFevre (1989) Optimal experience in work and leisure, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Keller & Bless (2008) Flow and regulatory compatibility: An experimental approach to the flow model of intrinsic motivation, Personality and Social Psychology Bulletindoi.org
  3. Fong, Zaleski & Leach (2015) The challenge–skill balance and antecedents of flow: A meta-analytic investigation, The Journal of Positive Psychologydoi.org