心理学ホント

「最高の選択」を探し続ける人ほど、給料は高いのに満足度は低かった。就活の心理学

「最高の選択」を探し続ける人ほど、給料は高いのに満足度は低かった。就活の心理学

読む前に予想してみよう!

選択肢をとことん比べて「最高」を選ぶ人ほど、選んだ結果に満足しやすい

研究カード(どんな研究?)
対象
大学4年生(米国)
規模
約550人
研究の種類
縦断調査(就職活動の追跡)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

就活で「最高の選択」を追い求める学生は、初任給が約20%高かったのに、選んだ仕事への満足度は低く、就活中も不安やストレス、落ち込みを感じやすかった。

ひとことで言うと「一番」を探しすぎると、選んだあとに満足しにくくなる。

もくじ
  1. 「マキシマイザー」と「サティスファイサー」
  2. 就活生を1年間追いかけた
  3. なぜ「最高」を探すと不満が残るのか
  4. 10代の進路選択に、どう活かす?
  5. まとめ

志望校選び、部活選び、そしていつか来る就職活動。人生は選択の連続です。そして多くの人は、「どうせ選ぶなら、一番いいものを」と考えます。

でも心理学には、こんな不思議な研究結果があります。「最高」を追い求めて選んだ人ほど、条件は良いのに、満足度は低かった。いったいどういうことでしょうか。

01「マキシマイザー」と「サティスファイサー」

アメリカ・スワースモア大学の心理学者Schwartzさんらは、選び方のタイプを2つに分けました。

  • マキシマイザー(最大化する人):全部の選択肢を比べ、最高のものを選ばないと気がすまない
  • サティスファイサー(満足化する人):自分の基準を満たす「十分に良いもの」が見つかったら、そこで決める

2002年の研究で、Schwartzさんらは、マキシマイザー傾向が強い人ほど、幸福感や楽観性が低く、後悔や落ち込みを感じやすい傾向があることを報告しています。

02就活生を1年間追いかけた

客観的には「より良い結果」を手に入れたのに、主観的には「より悪い気分」。論文のタイトルは、まさにこの矛盾を表しています。

03なぜ「最高」を探すと不満が残るのか

研究チームは、マキシマイザーの学生が、

  • 他人の意見や世間の評価(ランキング、友達の内定先など)に頼りがちだった
  • 選ばなかった選択肢や、手に入らなかった選択肢のことをずっと考えていた

ことが、満足度の低さにつながっていたと分析しています。選択肢が多いほど、「もっと良いものがあったかも」という後悔の種も増えるのです。

選ばなかった道ほど、輝いて見えてしまう
選ばなかった道ほど、輝いて見えてしまう

0410代の進路選択に、どう活かす?

中高生の進路選びにも、同じことが言えそうです。偏差値、評判、友達の志望先…。比べる材料はいくらでもあります。

ただし、ここにもどんでん返しがあります。「マキシマイザー」を測るアンケートには、「高い目標を持つ」「迷いやすい」「とことん探す」といった別々の要素が混ざっている、という批判が出てきたのです。Schwartzさん自身も2016年、Cheekさんとの論文で、測り方が10以上も乱立している現状を整理し直しています。

高い目標を持つこと自体は悪いことではない。問題になりやすいのは、「迷い続けること」や「選ばなかった道を振り返り続けること」の方かもしれません。

05まとめ

「最高」を追い求める人は、条件の良い結果を手に入れやすい。でも、その結果に満足しにくい。就活の追跡研究は、そんな皮肉な姿を描き出しました。

進路選びで大切なのは、「世界で一番の選択」ではなく、「自分の基準で、納得できる選択」。迷ったら、まず自分の基準を紙に書き出すところから始めてみましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen choosing a school or a job, many of us want the best option. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When choosing a school or a job, many of us want the best option. Psychologist Schwartz and his colleagues described two styles of choosing. "Maximizers" compare every option to find the very best, while "satisficers" choose the first option that meets their own standards. In 2006, Iyengar and her colleagues followed about 550 graduating students during their job search. Students with strong maximizing tendencies found jobs that paid about 20 percent more.

However, they were less satisfied with the jobs they accepted and felt more anxiety, stress and depression during the search. The researchers found that maximizers relied more on other people's opinions and kept thinking about the options they did not choose.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

学校や仕事を選ぶとき、私たちの多くは最高の選択肢を求めます。心理学者Schwartzさんらは、2つの選び方のスタイルを示しました。「マキシマイザー」は最高のものを見つけるためにすべての選択肢を比べ、「サティスファイサー」は自分の基準を満たす最初の選択肢を選びます。2006年、Iyengarさんらは、卒業を控えた約550人の学生を就職活動の間追跡しました。最大化の傾向が強い学生は、給料が約20%高い仕事を見つけました。

しかし、彼らは受け入れた仕事にあまり満足しておらず、就活中に不安、ストレス、落ち込みをより多く感じていました。研究者たちは、マキシマイザーが他人の意見により頼り、選ばなかった選択肢のことを考え続けていたことを発見しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the difference between maximizers and satisficers?

Q2. How many students did Iyengar's team follow?

Q3. Why were maximizers less satisfied, according to the passage?

重要単語

  • maximizerC1
    名詞最高を追い求める人A maximizer wants to find the best possible option. maximize(最大化する)+-er。maximum(最大)と同じ語源。
  • satisficerC1
    名詞十分良ければ満足する人A satisficer stops searching when something is good enough. satisfy(満足させる)+suffice(足りる)を合わせた造語 satisfice から。経済学者サイモンの用語。
  • regretB1
    名詞・動詞後悔(する)Maximizers tend to feel more regret. regret doing「~したことを後悔する」と regret to do「残念ながら~する」の違いは入試頻出。
  • optionB1
    名詞選択肢Too many options can make choosing hard. 形容詞 optional は「任意の・選択できる」。opt for ~「~を選ぶ」も覚えたい。
  • criteriaC1
    名詞基準(criterion の複数形)Decide your criteria before you start looking. 単数形は criterion。phenomenon → phenomena と同じギリシャ語由来の複数形。
  • satisfactionB1
    名詞満足Job satisfaction matters more than salary for many people. job satisfaction「仕事の満足度」。形容詞 satisfied(満足した)/satisfying(満足のいく)の区別に注意。

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4コマでわかる

「最高の選択」を探し続ける人ほど、給料は高いのに満足度は低かった。就活の心理学の4コマ漫画
就職活動で「最高の会社」を探し続けるタイプの学生は、そうでない学生より初任給が約20%高かったらしい。なのに選んだ仕事への満足度は低く、就活中も不安や落ち込みが多かった。「ベスト」を探すほど幸せが逃げていく?

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Iyengar, Wells & Schwartz (2006) Doing Better but Feeling Worse: Looking for the "Best" Job Undermines Satisfaction, Psychological Sciencedoi.org
  2. Schwartz et al. (2002) Maximizing versus satisficing: Happiness is a matter of choice, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  3. Cheek & Schwartz (2016) On the meaning and measurement of maximization, Judgment and Decision Makingdoi.org