人生で一番つらいのは「中年」じゃなくなった? 幸福のU字カーブが消えた理由

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最新のデータでも、心の不調がいちばん多いのは40〜50代の中年だった
米英や44か国のデータでは、今は若い世代ほど不調が多く、年齢とともに減る形に変わっていた。
- 対象
- 米英の成人(くり返し調査)+44か国の成人
- 規模
- 大規模(各国の公的調査・国際オンライン調査)
- 研究の種類
- くり返し横断調査の分析
- 確かさ
- ★★★☆☆
「中年が一番不幸」というU字カーブが、米英と44か国のデータで消えていた。原因は若者のメンタルの悪化。
ひとことで言うと前は「中年がいちばんつらい」だったけど、今は「若者がいちばんつらい」に。
「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」という言葉を聞いたことはありますか?
経済学や心理学では長い間、人の幸福度は年齢とともにU字を描くと言われてきました。若いころは幸せで、40〜50代で底を打ち、年をとるとまた上がっていく。逆に「心の不調」は、中年でピークになる山型(ハンプ)です。
ところが2025年、このU字カーブを世界に広めた研究者の一人が、共同研究者とともに、「その形はもう消えた」と発表しました。
01定説を作った研究者が、定説の崩壊を報告
ブランチフラワーさんは、2008年に「幸福度は人生を通じてU字型か?」という論文で、この有名なパターンを示した研究者のひとりです。その本人が、データを更新したら形が変わっていた、と報告したのです。
02今は「若いほど不調、年とともに減る」
新しいデータで見えた形は、山型ではなく右肩下がり。
つまり、心の不調は若い世代でいちばん多く、年齢が上がるにつれて減っていくという形になっていました。中年の「山」が消えたのは、中年が元気になったからではありません。若者の心の状態が大きく悪化し、山の位置が若い方へずれたためです。
44か国のデータでも同じ傾向が確認され、これは一部の国だけの話ではないと考えられています。

03なぜ若者がつらくなったのか?
この論文自体は原因を突き止めたものではありません。ただ、研究者たちの議論や関連する研究では、考えられる背景として
- リーマンショック以降の、若者の仕事や将来への不安
- 心のケアを受けられる仕組みの不足
- コロナ禍の影響
- スマホやSNSの利用の広がり
などが候補に挙がっています。アメリカの同じ研究者たちの別の分析では、特に若い働き手で絶望感の高まりが目立っていました。どれか1つが犯人、というより、いくつもの要因が重なっている可能性があります。
04「U字カーブ」はどうやって見つかった?
2008年、ブランチフラワーさんとオズワルドさんは、アメリカやヨーロッパなど多くの国の大規模な調査データを分析し、幸福度は中年で底を打ち、その後また上がるというU字型のパターンを報告しました。このパターンはその後も多くの国で確認され、「中年の危機」を裏づける有名なデータとして広く知られるようになりました。
それが、わずか十数年で形を変えてしまった。それだけ若い世代の変化が大きかった、ということです。
05まとめ
「若いうちは悩みがなくていいね」は、もう通用しない時代なのかもしれません。
大人の側は、若い人のしんどさを「気のせい」で片づけないこと。そして若い人は、つらいときに「自分だけじゃない」と知っておくこと。それだけでも、少し呼吸がしやすくなるはずです。つらさが続くときは、学校の相談室や専門の窓口を頼ってください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFor a long time, researchers believed that happiness follows a U-shaped curve over a lifetime: people are…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
For many years, experts said that people feel the least happy in middle age, around their 40s and 50s. On a chart, happiness made a U shape. But in 2025, economists found that this shape has disappeared. They used data from the US, the UK, and 44 countries.
Now, young people have the most mental health problems, and these problems become fewer as people get older. This is because young people's mental health has become worse.
76 words ・ CEFR A2
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長い間、専門家たちは、人は40代や50代ごろの中年でいちばん幸せを感じにくいと言ってきました。グラフにすると、幸福度はU字の形になりました。しかし2025年、経済学者たちは、この形が消えてしまったことを見つけました。彼らはアメリカ、イギリス、そして44か国のデータを使いました。
今では若者が最も多く心の不調を抱え、その不調は年をとるにつれて少なくなっていきます。これは、若者の心の健康が悪くなったからです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「中年がいちばん不幸」というU字の形が消えた、という内容なので B。
Q2. Who has the most mental health problems now?
Now, young people have the most mental health problems とあるので C。
Q3. In this passage, "disappeared" means ...
disappear は「消える」(dis-+appear 現れる)。U字の形がもう見られなくなったという意味なので D。
For a long time, researchers believed that happiness follows a U-shaped curve over a lifetime: people are fairly happy when young, least happy in middle age, and happier again when old. One of the economists who made this idea famous in 2008 is Blanchflower of Dartmouth College. In 2025, he and his colleagues reported that the pattern has disappeared.
Using repeated surveys from the United States and the United Kingdom, as well as data from 44 countries, they found that mental ill-health is now highest among young people and declines with age. The middle-age peak did not vanish because middle-aged people became happier. It vanished because young people's mental health became much worse.
113 words ・ CEFR B1
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長い間、研究者たちは、幸福度は一生を通じてU字型の曲線を描くと信じてきました。若いころはそれなりに幸せで、中年でいちばん幸せを感じにくくなり、年をとるとまた幸せになる、というものです。2008年にこの考えを有名にした経済学者のひとりが、ダートマス大学のブランチフラワーさんです。2025年、彼と同僚たちは、このパターンが消えてしまったと報告しました。
アメリカとイギリスでくり返し行われた調査と、44か国のデータを使い、心の不調は今では若者で最も多く、年齢とともに減っていくことを見つけたのです。中年のピークが消えたのは、中年の人が幸せになったからではありません。若者の心の健康がずっと悪くなったから消えたのです。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the old idea, when are people least happy?
least happy in middle age とあるので A。
Q2. Why did the middle-age peak disappear?
最終文 It vanished because young people's mental health became much worse. とあるので D。直前の文で A は否定されている。
Q3. What is surprising about who reported this change?
2008年にU字の考えを有名にした本人の一人(Blanchflower)がその消失を報告したので B。
Since the late 2000s, one of the best-known results in happiness research has been a U-shaped curve. Well-being falls from youth to a low point in middle age and then climbs again, while mental ill-being forms a hump that peaks in midlife. Blanchflower of Dartmouth College helped make the pattern famous in 2008.
In 2025, he and other economists reported in PLOS One that the hump is gone. They analyzed repeated large-scale surveys from the United States and the United Kingdom, plus data from 44 countries collected between 2020 and 2025. Ill-being is now highest among the young and falls steadily with age.
Middle-aged people are not doing any better than before. What changed is that young people's mental health has sharply deteriorated. The surveys were cross-sectional, so the effects of age, period, and generation cannot be fully separated. Distress was self-reported, and today's young people may simply be more willing to admit it.
The 44-country figures also came from online surveys that do not represent everyone equally well. The study does not pin down a cause. Among the possibilities the authors discuss are economic insecurity, difficulty getting mental health care, the pandemic, and smartphone use.
196 words ・ CEFR B2
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2000年代後半以降、幸福研究で最もよく知られた結果の一つは「U字カーブ」でした。幸福度は若いころから中年の底に向かって下がり、その後また上がる一方、心の不調は中年でピークを迎える山型を描く、というものです。ダートマス大学のブランチフラワーさんは、2008年にこのパターンを広めた一人です。
2025年、ブランチフラワーさんとほかの経済学者たちは、この山が消えたと『PLOS One』で報告しました。アメリカとイギリスでくり返し行われてきた大規模調査に加え、2020〜2025年に集められた44か国のデータを分析したのです。心の不調は今や若者で最も多く、年齢とともに着実に減っていきます。
中年の人たちが以前より元気になったわけではありません。変わったのは、若者の心の健康が急激に悪化したことです。調査は横断的なので、年齢・時代・世代の効果を完全には切り分けられません。不調は自己申告で、今の若者は以前よりつらさを認めやすくなっているだけかもしれません。
また44か国の数字は、すべての人を同じようには代表していないオンライン調査によるものでした。この研究は原因を特定していません。著者らが論じている可能性としては、経済的な不安、心のケアを受けにくい状況、コロナ禍、スマホの利用などがあります。
4択リーディングクイズ
Q1. What does the study report?
he and other economists reported in PLOS One that the hump is gone とあるので C。かつてU字が確認されていたことは否定していないので D は誤り。
Q2. According to the passage, why did the midlife hump disappear?
Middle-aged people are not doing any better than before. What changed is that young people's mental health has sharply deteriorated. とあるので A。
Q3. Which of the following is NOT given as a limitation of the study?
アメリカの調査データは使われているので D は限界ではない。A〜C は中盤の3文で挙げられている限界。
重要単語
- well-beingB2名詞幸福、心身の健康Sleep is important for your well-being.
well(良く)+being(あること)。happiness より広く、心と体の良い状態全体を指す。wellbeing とも書く。 - middle ageB1名詞(句)中年Many people feel stressed in middle age.
形容詞は middle-aged。midlife crisis「中年の危機」もセットで覚える。 - declineB2動詞・名詞低下(する)、減少(する)His health began to decline last year.
「断る」の意味もある(decline an invitation)。グラフ問題では decrease / drop / fall と並ぶ「下がる」の言い換え。 - despairC1名詞絶望Rising despair among young workers is a concern.
de-(離れて)+spair(希望)。in despair「絶望して」。形容詞 desperate(必死の・絶望的な)と同語源。 - surveyB1名詞(アンケート)調査The survey asked people how they felt.
名詞はアクセントが前(SUR-vey)、動詞「調査する」は後ろ(sur-VEY)。conduct a survey「調査を行う」。 - deteriorationC1名詞悪化Doctors noticed a deterioration in her condition.
動詞 deteriorate(悪化する)。worsen の硬い言い方で、難関大の長文によく出る。
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「人生の幸福度はU字型で、中年が底」という定説が崩れたらしい。米英や44か国のデータでは、今は若いほど心の不調が多く、年をとるほど減っていく形に。原因は若者のメンタルの悪化。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Blanchflower, Bryson & Xu (2025) The declining mental health of the young and the global disappearance of the unhappiness hump shape in age, PLOS Onedoi.org
- Blanchflower & Oswald (2008) Is well-being U-shaped over the life cycle?, Social Science & Medicinedoi.org
- Twenge et al. (2019) Age, period, and cohort trends in mood disorder indicators and suicide-related outcomes in a nationally representative dataset, 2005–2017, Journal of Abnormal Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













