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森の木は地下のキノコ網で「会話」している? 大人気の説に専門家が待ったをかけた

森の木は地下のキノコ網で「会話」している? 大人気の説に専門家が待ったをかけた

読む前に予想してみよう!

森の木どうしが地下の菌のネットワークで会話し、母樹が子どもの木を優先して育てていることは、すでに証明されている

研究カード(どんな研究?)
対象
森林の樹木と菌根菌
規模
野外研究の総点検(数十件)
研究の種類
野外実験とその系統的レビュー
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

木の根と菌がつながる「菌根ネットワーク」は実在する。でも「木が助け合い、母樹が子に栄養を送る」は証拠が弱いと2023年に指摘された。

ひとことで言うと木の根とキノコがつながるのはホント。でも「会話」は言いすぎかも!

もくじ
  1. 根と菌がつながっているのはホント
  2. ブームの始まりは1997年の『Nature』
  3. 2023年、専門家たちが論文を洗い直した
  4. シマードさん側の反論もある
  5. まとめ

「森の木々は、地下に張りめぐらされたキノコのネットワークでつながっている。弱った仲間に栄養を分け、危険を知らせ合い、母親の木は自分の子どもを見守っている」

ロマンチックですよね。本やドキュメンタリー、映画の世界観にまでなった、大人気の話です。

ところが2023年、この話に専門家から大きな「待った」がかかりました。どこまでがホントで、どこからが言いすぎなのでしょうか。

01根と菌がつながっているのはホント

まず、土台の部分はホントです。

多くの木の根には、菌根菌(きんこんきん)という菌がくっついて暮らしています。菌は土の中に細い糸(菌糸)を張りめぐらせて水や栄養を集め、木に渡す。そのお礼に、木は光合成で作った糖を菌に渡す。持ちつ持たれつの関係です。

そして一つの菌が、何本もの木の根に同時につながることがあります。これが「共通菌根ネットワーク」、通称「ウッド・ワイド・ウェブ」です。

02ブームの始まりは1997年の『Nature』

2016年には、スイスの森で、目印つきの炭素を吸わせたトウヒの大木から、まわりのブナなど別の種類の木の根へ、炭素が地下でやり取りされているらしいという研究が『Science』に載りました(Klein ら)。

ここまで聞くと、「やっぱり木は助け合ってる!」と思えますよね。

根と菌のつながりは実在する。でも、どれだけ「流れて」いるかは別問題。
根と菌のつながりは実在する。でも、どれだけ「流れて」いるかは別問題。

032023年、専門家たちが論文を洗い直した

カナダ・アルバータ大学のジャスティン・カーストさん、ブリティッシュコロンビア大学のメラニー・ジョーンズさん、アメリカ・ミシシッピ大学のジェイソン・ホークセマさんは、2023年に『Nature Ecology & Evolution』で、この分野の野外研究を一つひとつ検証した論文を発表しました。

チェックしたのは、よく語られる三つの主張です。

  1. 森の中には共通菌根ネットワークが広く存在する
  2. ネットワークを通じて届いた栄養で、若木がよく育つ
  3. 大きな「母樹」が、自分の子どもの木を優先して助ける

結果は厳しいものでした。主張1と2は野外での証拠が不十分か結果がバラバラで、3にいたっては査読を経て発表された証拠が一つもない状態だったのです。炭素の移動を示した研究も、それが菌の糸を通ったのか、土の中をほかの経路で移動したのかを区別できていない場合が多い、と指摘されました。

同じ2023年には、スウェーデンを中心とする研究者たちも『New Phytologist』で「母樹仮説」の根拠を見直し、菌根ネットワークを通じた資源の分け合いを支持する証拠は弱いと結論づけています。

さらに、ほかの論文が元の研究を引用するとき、実際の結果より大げさに紹介する「引用の盛り」が年々増えていたことも明らかになりました。

04シマードさん側の反論もある

もちろん、議論は終わっていません。シマードさんたちは2025年に反論の論文を出し、ネットワークの重要性を示す研究も多いと主張しています。

科学では、こうした「ツッコミ合い」こそが前に進むエンジンです。どちらが正しいかは、これからの研究しだい。

05まとめ

木の根と菌がつながる地下のネットワークは実在します。でも「木が会話し、助け合い、母樹が子を育てる」という物語は、証拠よりもかなり先に進んでしまった話でした。

森は今も、私たちが思うよりずっと複雑で、まだ謎だらけ。ロマンは捨てずに、証拠と分けて楽しみましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA popular story says that trees in a forest are linked by an underground fungal network, often called the… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

A popular story says that trees in a forest are linked by an underground fungal network, often called the "wood wide web," and that they use it to share food and help each other. Part of this is true. Many tree roots live together with fungi, and one fungus can be connected to several trees at once. In 1997, a Canadian scientist showed that carbon moved from one tree to another in a forest.

However, in 2023, three researchers carefully checked the field studies. They found that the evidence that young trees grow better through the network, or that mother trees help their own young, was weak or mixed. They also found that many papers exaggerated the original results.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

森の木々は、しばしば「ウッド・ワイド・ウェブ」と呼ばれる地下の菌のネットワークでつながっていて、それを使って栄養を分け合い、助け合っている、という人気の話があります。その一部は本当です。多くの木の根は菌と共に暮らしており、1つの菌が同時に何本もの木につながることがあります。1997年、カナダの科学者が、森の中で炭素が木から木へ移動していることを示しました。

しかし2023年、3人の研究者が野外研究を注意深く調べ直しました。その結果、若木がネットワークを通じてよく育つことや、母樹が自分の子どもを助けることを示す証拠は、弱いか結果がバラバラであることがわかりました。また、多くの論文が元の研究結果を誇張していたこともわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. Which part of the popular story is true?

Q2. What did the 2023 review find about many papers?

Q3. What is the writer's main message?

重要単語

  • mycorrhizal fungiC1
    名詞(句)菌根菌Mycorrhizal fungi live on the roots of many trees. myco-(菌)+rhiza(根)。fungi は fungus の複数形で、発音は /ˈfʌndʒaɪ/ など。
  • networkA2
    名詞網、つながりA fungal network can link several trees. net(網)+work。social network、networking(人脈作り)など派生も多い。
  • citation biasC1
    名詞(句)引用バイアス(都合のよい引用の偏り)Citation bias can spread misinformation in science. cite(引用する)→ citation。bias は「偏り」。confirmation bias(確証バイアス)と並ぶ頻出語。
  • overinterpretC1
    動詞過大に解釈するSome authors overinterpreted the original data. over-(過度に)+interpret。overstate, exaggerate と同じく「盛る」系の語。
  • seedlingB2
    名詞苗木、若木The seedlings did not always grow better near large trees. seed(種)+-ling(小さいもの)。duckling(子ガモ)も同じ -ling。
  • exaggerateB2
    動詞誇張するMany papers exaggerated the original results. g が2つ、スペル注意。名詞 exaggeration。It is no exaggeration to say that ~ は入試頻出構文。
  • rebuttalC1
    名詞反論、反証The researchers published a rebuttal to the review. 動詞 rebut(反論する)。ディベートの「反駁(はんばく)」でも使う。

動画でもっと知る

「森の木は地下のキノコのネットでつながり、会話して助け合っている」。本や映画で大人気のこの話、2023年に専門家が論文を洗い直したら「証拠のわりに話が盛られすぎ」と指摘されていた。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Karst, Jones & Hoeksema (2023) Positive citation bias and overinterpreted results lead to misinformation on common mycorrhizal networks in forests, Nature Ecology & Evolutiondoi.org
  2. Simard et al. (1997) Net transfer of carbon between ectomycorrhizal tree species in the field, Naturedoi.org
  3. Klein, Siegwolf & Körner (2016) Belowground carbon trade among tall trees in a temperate forest, Sciencedoi.org
  4. Henriksson et al. (2023) Re-examining the evidence for the mother tree hypothesis – resource sharing among trees via ectomycorrhizal networks, New Phytologistdoi.org
  5. Simard et al. (2025) Opinion: Response to questions about common mycorrhizal networks, Frontiers in Forests and Global Changedoi.org