カレイにも毒魚にもウミヘビにも化けるタコがいた。でも「13種類にモノマネ」は盛りすぎ?

読む前に予想してみよう!
ミミックオクトパスは、体の色だけを変えて別の生き物になりすます
色だけでなく、腕の並べ方や泳ぎ方まで変えて、形と動きごとまねしている。
- 対象
- ミミックオクトパス(Thaumoctopus mimicus)など
- 規模
- 9個体の観察〜約500回の擬態エピソード
- 研究の種類
- 野外でのダイビング観察・動画解析
- 確かさ
- ★★☆☆☆
インドネシアの海にすむミミックオクトパスは、腕の形と泳ぎ方を変えて毒のある生き物に化ける。ただし、じっくり観察すると一番多いのは「カレイのまね」だった。
ひとことで言うと体の形と動きを変えて、ほかの生き物になりすますタコがいる!
タコが体の色を変えて岩にとけこむのは有名です。でも、インドネシアの海には、ほかの生き物そのものになりすますタコがいます。
その名もミミックオクトパス(ミミック=ものまね)。カレイ、毒のとげを持つミノカサゴ、そして猛毒のウミヘビにまで化けると話題になりました。
ただ、話題になればなるほど、話は大きくなりがちです。研究者たちの観察を、順番に見てみましょう。
01見つかったのは1990年代の終わり
このタコが科学者の目にとまったのは、インドネシアのスラウェシ島周辺の、黒っぽい火山性の砂地です。
ほかの多くのタコは、昼間は穴に隠れ、夜に出歩きます。ところがこのタコは、明るい昼間に、隠れる場所のない砂の上を堂々と歩き回っていました。魚に狙われ放題のはずなのに、です。
02名前がついたのは2005年
このタコは2005年に正式に新種として記載され、Thaumoctopus mimicus(タウモクトプス・ミミクス)という学名がつきました。
記載したノーマンさんとアメリカのエリック・ホックバーグさんによると、このタコはインドネシアやマレーシア、フィリピンからニューカレドニアにかけての海に分布し、紅海でも写真の記録があります。すんでいるのは水深0.5〜37mほどの浅い砂泥の海底。昼間に活動して、小さな魚やエビ・カニの仲間を探して食べます。背中の白い「しずく形の輪」や「U字の模様」が、ほかのタコと見分けるポイントです。

03どんでん返し:一番多いのは「カレイ」だった
その後、「ミミックオクトパスは13種類の生き物をまねる」といった話まで広まりました。
これに対し、アメリカ・ウッズホール海洋生物学研究所のロジャー・ハンロンさんたちは、もっと長くじっくり観察しました。タコがダイバーに慣れるのを待ってから、5日間、2種類のタコが砂地でエサを探す様子を撮り続けたのです。
その結果、カレイのまねが約500回も記録されました。体の形、泳ぐ動き、速さ、時間、ときには色まで、地元のカレイにそっくりでした。
大事な発見は、いつまねをするかでした。タコはふだん、色を砂地や小さな海綿などに合わせてじっと隠れています。でも移動すると、どうしても目立ってしまう。そこで動くときだけ、砂地でよく見かける「カレイ」になりすましていたのです。
一方、魚にちょっかいを出されたときは、墨を吐く・逃げるといった、ふつうのタコの防御をしていました。
04まとめ
ミミックオクトパスは、本当に形と動きごと別の生き物になりすますタコでした。ただし「何にでも化ける万能選手」というより、動くときにカレイになりきる名人というのが、いま確かに言える姿です。
「すごい」の中身を確かめていくと、生き物の工夫はもっとリアルに、もっと面白く見えてきます。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMost octopuses hide during the day, but the mimic octopus of Indonesia walks openly across sandy sea floors…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
The mimic octopus lives in the sea near Indonesia. It can change its shape and the way it moves. It can look like a flatfish, a lionfish, or a sea snake. Some people say it can copy thirteen animals, but this may be too much.
Scientists watched the octopus for a long time. Most often, it swam like a flatfish. It did this when it moved across open sand, where fish could see it easily.
75 words ・ CEFR A2
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ミミックオクトパスはインドネシア近くの海にすんでいます。体の形や動き方を変えることができます。カレイやミノカサゴ、ウミヘビのように見せることができます。13種類の動物をまねできると言う人もいますが、それは言いすぎかもしれません。
科学者たちはこのタコを長い時間観察しました。いちばん多かったのは、カレイのように泳ぐことでした。タコがこれをしたのは、魚から見つかりやすい開けた砂地を移動するときでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
形や動きを変えて他の生き物のように見せるタコの話なので A。
Q2. What did the octopus copy most often?
Most often, it swam like a flatfish. とあるので D。
Q3. In this passage, "copy" means ...
copy は「まねる」。ほかの動物のように見せたり動いたりすることなので B。
Most octopuses hide during the day, but the mimic octopus of Indonesia walks openly across sandy sea floors in daylight. In 2001, Mark Norman and his team described nine of these animals changing their arms and movements to resemble a flatfish, a venomous lionfish, and a sea snake. When a small fish attacked one octopus, it took the shape of a sea snake, which is an enemy of that fish.
Later, however, Roger Hanlon's team filmed the octopuses for five days and recorded about 500 cases of flatfish mimicry. The octopus usually stayed hidden by matching the color of its surroundings, but when it had to move, it pretended to be a flatfish, a common animal on the sand.
119 words ・ CEFR B1
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ほとんどのタコは昼間は隠れていますが、インドネシアのミミックオクトパスは、明るい昼間に砂地の海底を堂々と歩き回ります。2001年、マーク・ノーマンさんのチームは、このタコ9匹が腕や動きを変えて、カレイや毒を持つミノカサゴ、ウミヘビに似せる様子を報告しました。小さな魚が1匹のタコを攻撃したとき、タコはその魚の天敵であるウミヘビの姿をとりました。
しかしその後、ロジャー・ハンロンさんのチームは5日間タコを撮影し、カレイの擬態を約500回記録しました。タコはふだん周りの色に合わせて隠れていましたが、移動しなければならないときには、砂地でよく見かける動物であるカレイになりすましていたのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What makes the mimic octopus different from most octopuses?
第1文で、多くのタコは昼に隠れるが、このタコは in daylight に堂々と歩くとあるので C。
Q2. What did Hanlon's team record?
recorded about 500 cases of flatfish mimicry とあるので A。9匹はノーマンさんの研究。
Q3. Why did the octopus pretend to be a flatfish when it moved?
ふだんは色で隠れるが、動くと隠れられないので砂地によくいるカレイのふりをした、という流れなので D。
In 2001, Mark Norman and colleagues described an octopus that seemed to impersonate other animals. Nine individuals took on postures resembling flatfish, lionfish and sea snakes. One octopus, harassed by a damselfish, displayed a sea-snake shape, and the researchers wondered whether it chose its disguise to match the threat. The animal had first been noticed in Indonesia in the late 1990s and was formally named Thaumoctopus mimicus in 2005.
Its fame grew quickly, and popular accounts later claimed it could copy thirteen species. Roger Hanlon's team took a more careful approach. Over five days of filming, they recorded about 500 episodes of flatfish mimicry and concluded that the octopus mainly relies on ordinary camouflage. It switches to a flatfish disguise when moving would otherwise make it conspicuous.
When fish actually bothered it, it used standard octopus defenses such as ink and escape. No experiment has yet checked whether predators are fooled by the lionfish or sea-snake forms, so the idea of threat-specific mimicry rests on anecdotes. There is also a human factor. Deciding which animal a twisted posture resembles may depend on who is looking.
185 words ・ CEFR B2
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2001年、マーク・ノーマンさんらは、ほかの動物になりすましているように見えるタコについて報告しました。9個体が、カレイやミノカサゴ、ウミヘビに似た姿勢をとったのです。スズメダイにつつかれた1匹のタコはウミヘビの形を見せ、研究者たちは、タコが脅威に合わせて変装を選んでいるのではないかと考えました。このタコは1990年代の終わりにインドネシアで初めて注目され、2005年に正式に Thaumoctopus mimicus と名づけられました。
その名はすぐに広まり、のちに一般向けの話では13種類をまねできるとまで言われるようになりました。ロジャー・ハンロンさんのチームは、より慎重な方法をとりました。5日間の撮影でカレイの擬態を約500回記録し、このタコは主にふつうのカモフラージュに頼っていると結論づけたのです。移動すると目立ってしまうときに、カレイの変装に切り替えるというわけです。
魚に実際にちょっかいを出されたときは、墨や逃走といった標準的なタコの防御を使いました。捕食者がミノカサゴやウミヘビの姿にだまされるのかを確かめた実験はまだなく、脅威に応じた擬態という考えは逸話にもとづいています。人間の側の問題もあります。体をくねらせた姿勢がどの動物に似ているかの判断は、見る人によって変わるかもしれないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. Which best summarizes the passage?
なりすましは本当だが、確かに示されているのは「動くときのカレイ擬態」という全体の流れなので D。
Q2. According to the passage, what did the octopus do when fish actually bothered it?
it used standard octopus defenses such as ink and escape とあるので B。
Q3. Why does the writer call the idea of threat-specific mimicry uncertain?
No experiment has yet checked whether predators are fooled ... rests on anecdotes とあるので C。
重要単語
- mimicryC1名詞擬態Mimicry helps animals avoid predators.
動詞 mimic は「まねる」。過去形は mimicked と k が入る点に注意。 - impersonateC1動詞なりすます、まねるThe octopus can impersonate a sea snake.
im-(中に)+person(人)。他人になりすます詐欺にも使う。名詞は impersonation(ものまね)。 - venomousC1形容詞毒を持つ(かんだり刺したりして毒を入れる)Lionfish have venomous spines.
venomous はかむ・刺すことで毒を入れる。食べると毒なのは poisonous と区別される。 - camouflageB2名詞・動詞隠ぺい、迷彩Most of the time, the octopus relies on camouflage.
フランス語由来で発音は /ˈkæməflɑːʒ/。周囲にとけこむのが camouflage、別の生き物になりすますのが mimicry。 - conspicuousC1形容詞目立つSwimming in the open makes an animal conspicuous.
反意語は inconspicuous(目立たない)。難関大の語彙問題で頻出。 - anecdotalC1形容詞逸話的な、事例にもとづくThe evidence for this idea is still anecdotal.
anecdote(逸話)の形容詞。anecdotal evidence「体験談レベルの証拠」は研究の限界を言うときの定番。
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インドネシアの海には、カレイ、毒のあるミノカサゴ、ウミヘビにまで「なりすます」タコがいるらしい。しかも相手を見て変装を選んでいる可能性まで。ただ、500回近い観察で一番多かったのは地味な「カレイのまね」だった。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Norman, Finn & Tregenza (2001) Dynamic mimicry in an Indo-Malayan octopus, Proceedings of the Royal Society Bdoi.org
- Norman & Hochberg (2005) The "Mimic Octopus" (Thaumoctopus mimicus n. gen. et sp.), a new octopus from the tropical Indo-West Pacific, Molluscan Researchdoi.org
- Hanlon, Conroy & Forsythe (2007) Mimicry and foraging behaviour of two tropical sand-flat octopus species off North Sulawesi, Indonesia, Biological Journal of the Linnean Societydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












