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イルカは「名前」で呼び合っていた。20年会っていない友だちの名前も忘れない

イルカは「名前」で呼び合っていた。20年会っていない友だちの名前も忘れない

読む前に予想してみよう!

イルカの「名前の口笛」は、声の質ではなく、音の高さの変化のパターンで個体がわかる

研究カード(どんな研究?)
対象
野生・飼育下のバンドウイルカ
規模
十数頭〜43頭(各研究)
研究の種類
音声再生(プレイバック)実験
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

バンドウイルカは一頭ずつちがう「自分の笛の音」を持ち、仲間の音をまねて呼びかける。20年ぶりでも覚えていた。

ひとことで言うとイルカは自分だけの「名前の口笛」を持っていて、友だちの名前も呼ぶ!

もくじ
  1. 一頭ずつちがう「名前の口笛」
  2. 「声の質」ではなく「メロディ」で聞き分ける
  3. 仲間の「名前」をまねて呼びかける
  4. 20年会っていなくても覚えていた
  5. 人間の「名前」と同じなの?
  6. まとめ

「おーい、〇〇!」

私たちは毎日、名前で人を呼んでいます。名前は、人間だけが持つ特別なもの——と思っていませんか?

実は海の中にも、名前のようなもので呼び合っている動物がいます。バンドウイルカです。

01一頭ずつちがう「名前の口笛」

イルカは、「ピュイ〜ッ」という口笛のような音(ホイッスル)をよく出します。その中に、一頭ずつ形がちがう、自分専用のホイッスルがあります。

これをシグネチャー・ホイッスルと呼びます。シグネチャーは英語で「サイン(署名)」のこと。つまり「自分の署名代わりの口笛」です。

音の高さが上がったり下がったりするパターンが、イルカごとにちがいます。赤ちゃんイルカは、生まれてから数か月のうちに自分のパターンを作り、その後は長く使い続けると考えられています。

02「声の質」ではなく「メロディ」で聞き分ける

ここで疑問がわきます。人間だって声で誰かわかります。イルカも、ただ「声の質」で仲間を見分けているだけでは?

つまり、イルカの「名前」の情報は、声の質ではなくメロディそのものに入っていたのです。これは、人間が名前の「音の並び」で誰のことかわかるのとよく似ています。

合成した「名前の口笛」を流すと、イルカは反応した。
合成した「名前の口笛」を流すと、イルカは反応した。

03仲間の「名前」をまねて呼びかける

さらに、ヤニクさんとステファニー・キングさんは2013年に『PNAS』で、もう一歩ふみこんだ結果を発表しました。

野生のイルカに、そのイルカ自身のシグネチャー・ホイッスルをまねた音を聞かせると、イルカは自分のホイッスルで答え返すことが多かったのです。顔見知りや知らないイルカなど、自分以外のホイッスルを聞かせても、同じ音で答え返すことはほとんどありませんでした。

これは「〇〇さん?」と呼ばれて「はーい」と返事をするのに近いもの。実際、仲のよいイルカどうしが、相手のホイッスルをまねて出すことも観察されています。研究チームは、イルカがこの音を相手を呼ぶ「ラベル」として使っていると考えています。

0420年会っていなくても覚えていた

05人間の「名前」と同じなの?

もちろん、イルカのホイッスルが人間の名前とまったく同じとは言えません。人間のように、その場にいない相手についての「うわさ話」に名前を使っているかどうかは、まだわかっていないからです。

それでも、自分を表す決まった音を持ち、それを相手が覚えてまねして呼ぶ——この仕組みは、人間以外の動物ではとても珍しいものです。

06まとめ

バンドウイルカは、一頭ずつちがう「名前の口笛」を持ち、仲間の口笛をまねて呼びかけ、20年たっても昔の仲間を覚えていました。

広い海の向こうから、今日も誰かが誰かの名前を呼んでいる。そう思うと、海の見え方が少し変わってきませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHumans use names to call each other, but bottlenose dolphins seem to have something similar. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Humans use names to call each other, but bottlenose dolphins seem to have something similar. Each dolphin develops its own "signature whistle," a whistle with a unique pattern of rising and falling sounds. In 2006, researchers removed the voice quality from these whistles and kept only the pattern.

Wild dolphins still reacted more strongly to the whistles of close relatives than of other familiar dolphins. In a 2013 study, when dolphins heard a copy of their own whistle, they often answered with their own whistle, just like answering to a name. Another study found that captive dolphins reacted to the whistles of former companions even after more than 20 years apart.

111 words ・ CEFR B1

和訳を見る

人間は名前を使っておたがいを呼びますが、バンドウイルカにも似たものがあるようです。イルカは一頭ずつ、音が上がったり下がったりする独自のパターンを持つ「シグネチャー・ホイッスル」を作ります。2006年、研究者たちはこの口笛から声の質を取り除き、パターンだけを残しました。

それでも野生のイルカは、ほかの顔見知りのイルカよりも、近い親族の口笛により強く反応しました。2013年の研究では、イルカが自分の口笛をまねた音を聞くと、名前を呼ばれて答えるように、自分の口笛で答えることがよくありました。別の研究では、飼育下のイルカが、20年以上離れていた昔の仲間の口笛にも反応することがわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What did the researchers keep in the whistles in 2006?

Q3. What does the 2006 result suggest?

重要単語

  • signature whistleC1
    名詞(句)個体ごとに決まった口笛音Each dolphin has its own signature whistle. signature は「署名」。sign(署名する)の名詞形で、サインは和製英語的な使い方。signature dish「看板料理」も同じ発想。
  • imitateB2
    動詞まねるDolphins sometimes imitate a friend's whistle. 名詞 imitation は「模倣・偽物」。copy, mimic と言い換え可能。
  • labelB1
    名詞ラベル、呼び名The whistle may work as a vocal label. 発音は /ˈleɪbəl/(レイベル)。「ラベル」ではない点に注意。動詞で「レッテルを貼る」。
  • companionB2
    名詞仲間It remembered a companion it had not seen for 20 years. com-(共に)+pan(パン)=「パンを分け合う人」。company(会社・仲間)も同語源。
  • playback experimentC1
    名詞(句)音声再生実験The team ran a playback experiment in the bay. 録音した音を流して動物の反応を見る実験。動物行動学の基本手法。
  • addressB2
    動詞(人に)呼びかける、話しかけるDolphins may use whistles to address each other. 「住所」以外に「呼びかける」「(問題に)取り組む」の意味が入試頻出。address the problem「問題に取り組む」。
  • captiveB2
    形容詞飼育下の、捕らわれたCaptive dolphins remembered former companions. capture(捕まえる)と同語源。in captivity「飼育下で」⇔ in the wild「野生で」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

イルカは「名前」で呼び合っていた。20年会っていない友だちの名前も忘れないの4コマ漫画
イルカには一頭ずつ自分だけの「名前の口笛」があり、仲間の口笛をまねて呼びかけることもあるらしい。しかも20年以上会っていない昔の仲間の口笛にも反応したという研究まである。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Janik, Sayigh & Wells (2006) Signature whistle shape conveys identity information to bottlenose dolphins, PNASdoi.org
  2. King & Janik (2013) Bottlenose dolphins can use learned vocal labels to address each other, PNASdoi.org
  3. King et al. (2013) Vocal copying of individually distinctive signature whistles in bottlenose dolphins, Proceedings of the Royal Society Bdoi.org
  4. Bruck (2013) Decades-long social memory in bottlenose dolphins, Proceedings of the Royal Society Bdoi.org
  5. Pardo et al. (2024) African elephants address one another with individually specific name-like calls, Nature Ecology & Evolutiondoi.org