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推定194歳のカメ「ジョナサン」のDNAを調べたら、全体は年相応。でも一部だけ若いカメ並みだった

推定194歳のカメ「ジョナサン」のDNAを調べたら、全体は年相応。でも一部だけ若いカメ並みだった

読む前に予想してみよう!

ジョナサンの「194歳」は、生まれた日の記録から正確に分かっている

研究カード(どんな研究?)
対象
アルダブラゾウガメ(推定194歳のジョナサンが中心)
規模
ゲノムは別の2頭と比較、DNAの印はジョナサンを含む5頭
研究の種類
1頭を中心にした事例研究(ゲノムとDNAメチル化の解析)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

推定194歳のゾウガメ、ジョナサンのDNAを調べた研究。年をとると乱れていくDNAの目印は、全体では年相応に乱れていた。でも一部の遺伝子では、若いカメと同じくらい乱れが少なかった。これが長生きの理由かは、まだ仮説の段階。

ひとことで言うと194歳くらいのカメのDNAに、若いカメと似ている部分があった!

もくじ
  1. 194歳は、古い写真と「一緒に写った男性の身長」から計算した
  2. 目はほとんど見えず、においも分からない。それでも食欲は旺盛
  3. DNAに付く老化の目印を、若いカメと比べた
  4. 見つかったのは長生きの「秘密」ではなく「仮説」
  5. まとめ

1832年ごろ、日本はまだ江戸時代でした。そのころ生まれたと推定されるカメが、今も南大西洋の島で草を食べています。

名前はジョナサン。アルダブラゾウガメのオスで、推定194歳。ギネス世界記録が「生きている陸の動物で最高齢」と認めているカメです。

2026年10月7日、このジョナサンのDNAをまるごと読んだ論文が、米国の科学誌『Science Advances』に載りました。長生きの秘密は分かったのか。先に答えを言うと、見つかったのは「手がかり」と「仮説」です。DNAの大部分は年相応に年をとっていましたが、一部の遺伝子だけは若いカメと似た状態でした。

01194歳は、古い写真と「一緒に写った男性の身長」から計算した

ジョナサンには出生の記録がありません。研究チームは論文の補足資料で、年齢の根拠をこう説明しています。

  • 1894年の島の総督の手紙に、「1882年に、大人のオスのゾウガメが島に運ばれてきた」と書かれていた
  • ジョナサンと別のカメが写った古い写真がある。甲羅の模様で本人と分かる。1886年に亡くなった人が同じ写真を持っていたことなどから、撮影は1882〜1886年ごろとみられる
  • そばに立つ男性の身長を約170cmと仮定して比べると、甲羅の長さは約110cm。今のジョナサンと同じで、写真のころにはもう大人の大きさだった

では、110cmになるまで何年かかるのか。1967〜1968年にアルダブラ環礁(インド洋)で野生のカメを測ったデータから計算すると、45〜62年ほど。ただし、このデータのカメは1〜31歳で、一番大きくても95cm。その先は直線を延ばして見積もった数字で、著者は年齢を低めに出している可能性があると書いています。

チームは「写真のときに50歳」と控えめに見積もり、写真を1882年の撮影とみて、その50年前の1832年ごろの生まれとしました。194歳という数字は、ここから出ています。

著者ら自身、「正確な年齢は確実には決められない」と書き、もっと年上の可能性もあるとしています。

論文が引用した別の研究(動物園で暮らすオスの記録にもとづく推定)では、アルダブラゾウガメの寿命は平均で約80年、推定の上限でも約94年。ジョナサンは、その上限より100年ほど長く生きている計算です。なお、ギネス世界記録の2026年の記事は、ジョナサンを同じ種の中の亜種「セーシェルゾウガメ」として紹介し、「この仲間は普通150年ほど生きる」と書いています。カメの分け方も寿命の数字も、資料によって違いがあります。

02目はほとんど見えず、においも分からない。それでも食欲は旺盛

ジョナサンの家は、イギリスの海外領土セントヘレナ島にある総督の住まい「プランテーション・ハウス」の庭です。ギネス世界記録の記事(2022年・2026年)によると、白内障でほとんど目が見えず、においも分からなくなりましたが、耳はよく聞こえ、食欲も旺盛。地面に置いた餌には気づけないため、世話をする小さなチームが週に1回、手で果物や野菜を与えています。2022年の記事では、長く担当した獣医の声を聞くと、ごちそうがもらえると分かって反応すると紹介されていました。

DNAを採るのも一苦労でした。島の当局は、感染のおそれを避けるために採血を認めませんでした。そこでチームは、草のDNAが混ざらないよう、採るのは早朝にしました。餌をやるふりをすると、ジョナサンは空中をかみ始めます。そのすきに、手袋をした手で口を開けたまま、舌の下を専用の道具でこすって細胞を採ったのです。

採血の代わりに、餌をやるふりをして口の中の細胞を採った(イメージ)
採血の代わりに、餌をやるふりをして口の中の細胞を採った(イメージ)

03DNAに付く老化の目印を、若いカメと比べた

DNAを1冊の分厚いレシピ本だとすると、細胞はそこに付箋を貼って「このページは今は使わない」と印を付けています。この付箋がDNAメチル化です。年をとると、細胞ごとに付箋の貼り方がバラバラになっていくことが、人の研究で知られています。このバラバラ具合を、この記事では「乱れ」と呼びます。乱れが小さいほど、付箋がきちんと「整って」いるということです。

チームはこの付箋を、口の中の細胞で5頭分調べました。ジョナサンのほか、5歳と12歳の若いカメ、そして年齢は分からないものの1969年にはもう大人だった2頭(トカとポカ)です。

結果は2段構えでした。

まず、全体としては年相応。ジョナサンの付箋は5歳のカメより全体に少なく、貼り方の乱れも若いカメより大きくなっていました。百歳を超えた人のDNAでも、似た変化が報告されています。

次に、遺伝子のスイッチ部分(遺伝子の読み始めの場所)だけを見ました。ここは5頭とも、もともと乱れが小さい場所です。それでも、スイッチ部分の乱れの平均を1頭ずつ出して比べると、年をとったカメほど大きい傾向がありました。

チームは次に、5頭そろって比べられた2,895か所の中から、「ジョナサンと5歳・12歳のカメでは整っていて、年齢不明の大人2頭(トカとポカ)では乱れている」という条件に合う場所を探しました。見つかったのが272か所です。つまりジョナサンは、この272か所では、年齢の分からない大人2頭より若いカメに近い状態でした。ただし、偶然でもこのくらいの数が見つかるのではないか、という確かめは論文に示されていません。

この272か所の遺伝子には、細胞の「発電所」であるミトコンドリアに関わるものが35個、RNA(DNAの写し)の加工やたんぱく質づくりに関わるものが25個、DNAや染色体の端を修理するものが15個含まれていました。

04見つかったのは長生きの「秘密」ではなく「仮説」

チームはここから、「大事な遺伝子のスイッチの付箋を乱さずに保つ → エネルギーづくり・RNAの加工・DNAの修理がうまく回る → それがまた付箋を整える」という、ぐるぐる回る仕組みを長寿のモデルとして提案しました。

ただし、論文自身がはっきり書いているとおり、これは仮説です。

  • 「付箋が整っているから長生きした」という原因と結果は、このデータだけでは言えない(著者が明記)
  • 調べられたスイッチ部分は、全体のおよそ1割だけ
  • 口の細胞しか使えず、遺伝子が実際にどれだけ働いているかは測れていない
  • ほかの動物にも当てはまるかは、もっと多くの動物で調べる必要がある(著者)

287個の遺伝子に見つかった違いも「比べた相手(タンク・ロンサム・ジョージ・人)の中ではジョナサンだけ」という意味です。その違いでたんぱく質の働きが変わるかどうかは、AIでたんぱく質の形を予測した段階で、実験ではまだ確かめられていません。

05まとめ

194歳という年齢は、1枚の古い写真と体の大きさから導いた推定値でした。DNAを読んで見えたのは、全体としては年相応に年をとりながら、エネルギーづくりなどに関わる一部の遺伝子のスイッチには、若いカメ並みに整った場所もあるという姿です。

それが長生きの理由なのか、長生きした結果なのかは、まだ分かりません。チームは、DNAの付箋から年齢を割り出す「時計」をアルダブラゾウガメ用に作れれば、年齢をもっと確かに推定できると書いています。194歳は、もっと上かもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerNobody knows exactly when Jonathan was born. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Nobody knows exactly when Jonathan was born. Records show that this giant tortoise arrived on the island of St Helena in 1882, already fully grown, and a photo from the 1880s shows him at his present size. From this, scientists guess that he hatched around 1832, which would make him about 194. Jonathan is now blind and cannot smell, so a small team feeds him by hand once a week.

Because taking his blood was not allowed, a research team scraped cells from inside his mouth. They compared chemical marks on his DNA with those of four other tortoises. Across most of his DNA, the marks looked old. But near the switches of some genes linked to energy and RNA, his marks were as tidy as a young tortoise's.

129 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ジョナサンがいつ生まれたのか、正確に知る人はいない。記録によると、このゾウガメは1882年に、すでに大人の体でセントヘレナ島にやって来た。そして1880年代の写真には、今と同じ大きさの彼が写っている。ここから科学者たちは、彼が1832年ごろにふ化したと推定しており、そうだとすると約194歳になる。ジョナサンは今では目が見えず、においも分からないため、小さなチームが週に1回、手で餌を与えている。

採血が認められなかったので、研究チームは彼の口の中から細胞をこすりとった。そしてDNAについた化学的な印を、ほかの4頭のカメと比べた。DNAの大部分では、印は年をとった様子だった。しかし、エネルギーやRNAに関わる一部の遺伝子のスイッチ付近では、印が若いカメと同じくらい整っていた。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Why did the team take cells from Jonathan's mouth?

Q3. What can we infer about Jonathan's age from the passage?

重要単語

  • tortoiseB1
    名詞(陸にすむ)カメThe old tortoise moved slowly across the grass. 海や川のカメは turtle、陸のカメは tortoise と分けることが多い。発音は「トータス」で、最後は「トイズ」ではない
  • longevityC1
    名詞長生き、寿命の長さScientists study giant tortoises to learn about longevity. long(長い)+ ev-(ラテン語 aevum「時代・一生」)。形容詞は long-lived(長生きの)を使うことが多い
  • estimateB1
    名詞・動詞推定値、見積もり/推定するHis age of 194 is only an estimate. 名詞は「エスティメット」、動詞は「エスティメイト」と発音が変わる。a rough estimate(ざっくりした見積もり)
  • cataractC1
    名詞白内障A cataract makes the lens of the eye cloudy. 目のレンズ(水晶体)が白くにごる病気。cataract surgery で「白内障の手術」。別の意味に「大きな滝」もある
  • genomeB2
    名詞ゲノム(ある生き物のDNA全体)The team read the tortoise's whole genome. gene(遺伝子)+ -ome(全体)。sequence a genome で「ゲノムを解読する」
  • hatchB1
    動詞(卵から)かえる、ふ化するBaby tortoises hatch from eggs buried in the ground. カメや鳥は生まれるとき be born より hatch を使う。名詞 hatchling は「ふ化したばかりの子」
  • hypothesisC1
    名詞仮説Their idea is still a hypothesis that needs testing. 複数形は hypotheses(ハイパサシーズ)。test a hypothesis(仮説を検証する)は入試の科学英文で頻出
世界最高齢の陸の動物、推定194歳のゾウガメ「ジョナサン」。年齢は古い写真の甲羅の大きさから見積もった推定値。DNAを調べると、年をとると乱れていく目印は全体では年相応。でも一部の遺伝子では若いカメ並みに乱れが少なかった。長生きの理由かはまだ仮説。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Vaisvil et al. (2026) Epigenetic insights into extreme longevity in the world's oldest terrestrial animal, Jonathan, Science Advancesdoi.org
  2. Quesada et al. (2019) Giant tortoise genomes provide insights into longevity and age-related disease, Nature Ecology & Evolutiondoi.org
  3. da Silva et al. (2022) Slow and negligible senescence among testudines challenges evolutionary theories of senescence, Sciencedoi.org
  4. Wang et al. (2024) Methylation entropy landscape of Chinese long-lived individuals reveals lower epigenetic noise related to human healthy aging, Aging Celldoi.org