ウソ?ホント?検証ホント

「台風の目の中は静か」はホント。でも"つかの間の青空"で外に出てはいけない理由

「台風の目の中は静か」はホント。でも"つかの間の青空"で外に出てはいけない理由

読む前に予想してみよう!

台風の目に入って風がやんだら、台風は通り過ぎたと考えてよい

研究カード(どんな研究?)
対象
台風・ハリケーン
規模
航空機・気球観測の蓄積
研究の種類
観測研究・公的解説
確かさ
★★★★★
3秒でわかる

台風の目では空気がゆっくり下降して雲が消え、風も弱まる。でもすぐ外側は最も風が強い「壁」。目が過ぎると反対向きの暴風が吹き返す。

ひとことで言うと台風の目は本当に静か。でもそれは"折り返し地点"!

もくじ
  1. 目の中で、空気は"下りて"いる
  2. 目のすぐ外は、台風でいちばん危ない場所
  3. 目が過ぎると「吹き返し」が来る
  4. なぜ「静か」だけが広まったのか
  5. まとめ

暴風雨のまっただ中、急に風がやんで、空に青い穴があいた――。

台風が真上を通った地域では、こんな不思議な体験をした人がいます。「台風の目の中は静か」という話は、学校でも習う有名な知識です。

これはホントです。でも同時に、この「静けさ」は台風でもっとも誤解されやすい、危ない瞬間でもあります。

01目の中で、空気は"下りて"いる

台風は、暖かい海から水蒸気をもらって発達する巨大な空気の渦です。まわりから中心に向かって吹きこんだ風は、中心のまわりで激しく上昇し、高い雲の壁を作ります。これが壁雲(アイウォール)です。

米国海洋大気庁(NOAA)の解説によると、目の直径は8〜190kmほどと幅がありますが、多くは30〜65km程度。だいたい台風がハリケーン並みの強さになるころに、はっきりした目ができ始めます。弱い台風では、目がはっきりしないことも多いのです。

気象衛星の画像で、白い渦の中心にぽっかりと穴があいて見えるのは、この雲のない部分です。目がくっきり見えるのは、台風がかなり発達しているサインの一つと言えます。

02目のすぐ外は、台風でいちばん危ない場所

静かな「目」のすぐ外には、最も風の強い「壁雲」がそびえている
静かな「目」のすぐ外には、最も風の強い「壁雲」がそびえている

気象庁の解説では、中心のごく近くの「眼」は比較的風の弱い領域ですが、その周辺は最も風の強い領域になっています。NOAAも、目を取り囲む壁雲に地上で最も強い風が吹くと説明しています。

つまり台風の目は、「暴風の壁に囲まれた、小さな静かな部屋」のようなもの。部屋の外は、台風の中でも最強クラスの風が吹いているのです。

03目が過ぎると「吹き返し」が来る

台風の中心が真上を通るとき、風はこんなふうに変化します。

  1. 台風が近づくにつれ、ある向きの風がどんどん強くなる
  2. 目に入ると、風が急に弱まり、ときには青空が見える
  3. 目が通り過ぎると、反対向きの強い風が吹き返す

気象庁はこれを「つかの間の平穏」と呼び、決して台風が去ったわけではないと注意しています。目に入って静かになったのを「台風が過ぎた」と勘違いして外に出ると、吹き返しの暴風にさらされることになります。

04なぜ「静か」だけが広まったのか

「台風の目は静か」という知識自体は正しいので、間違って広まったわけではありません。ただ、

  • 「静か」という言葉が、安全と結びつきやすい
  • 目のまわりの壁雲や、吹き返しの話がセットで語られにくい

ために、「目に入った=峠を越えた」という危ない思いこみにつながりやすいのです。

05まとめ

  • 台風の目は、空気がゆっくり下りてくるので雲が消え、風が弱い。ホント
  • でも目のすぐ外の壁雲は、台風で最も風が強い場所
  • 目が過ぎると、反対向きの強い風が吹き返す

判定は「ホント」。ただし、目の静けさは"折り返し地点"の静けさ。晴れ間が見えても、台風はまだ半分残っています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe eye of a typhoon really is calm. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The eye of a typhoon really is calm. Air around the center rises strongly and forms a tall wall of clouds called the eyewall. Inside the eye, however, air slowly sinks and becomes warm and dry, so clouds cannot form easily. As a result, the sky can be clear and the wind becomes weak. According to NOAA, most eyes are about 30 to 65 km across.

But this calm is dangerous. The strongest winds blow in the eyewall right next to the eye, and after the eye passes, violent winds return from the opposite direction. Japan's weather agency calls it a "brief moment of peace" and warns people not to think the storm is over.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

台風の目は本当に静かです。中心のまわりでは空気が激しく上昇し、「壁雲」と呼ばれる高い雲の壁を作ります。しかし目の中では、空気がゆっくり下降して暖かく乾燥するため、雲ができにくくなります。その結果、空が晴れて風が弱くなることがあります。NOAA(米国海洋大気庁)によると、ほとんどの目は直径30〜65kmほどです。

しかし、この静けさは危険です。目のすぐ隣の壁雲では最も強い風が吹き、目が通り過ぎると反対方向から猛烈な風が戻ってきます。日本の気象庁はこれを「つかの間の平穏」と呼び、台風が終わったと思わないよう注意を呼びかけています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. Why do clouds rarely form in the eye?

Q3. If the wind suddenly stops during a typhoon, what should you probably do?

重要単語

  • eyeA2
    名詞(台風の)目The eye of the typhoon passed over the island. the eye of the storm は比喩で「騒ぎの中心にある静かな場所」の意味にもなる。
  • eyewallC1
    名詞壁雲(目を囲む雲の壁)The strongest winds are found in the eyewall. eye+wall。目を取り囲む背の高い積乱雲の壁。
  • sinkB1
    動詞沈む、下降するAir slowly sinks in the center of the storm. 活用は sink-sank-sunk。反対は rise(上昇する)。
  • calmB1
    名詞・形容詞静けさ、無風/穏やかなThe calm did not last long. l は発音しない(カーム)。the calm before the storm「嵐の前の静けさ」は定番表現。
  • storm surgeC1
    名詞(句)高潮A storm surge can flood coastal towns. surge は「急な高まり・殺到」。a surge in demand(需要の急増)でも使う。
  • lullC1
    名詞小康状態、一時的な静けさThere was a short lull before the wind returned. 動詞では「(子どもを)寝かしつける」。lullaby(子守歌)と同語源。

4コマでわかる

「台風の目の中は静か」はホント。でも"つかの間の青空"で外に出てはいけない理由の4コマ漫画
「台風の目の中は静か」はホント。空気がゆっくり下りてくるので雲が消え、青空が見えることも。でも目のすぐ外は台風で一番風が強い場所で、目が過ぎると反対向きの暴風が吹き返す。"晴れたから終わり"は危険らしい。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. 台風に伴う風の特性(気象庁)jma.go.jp
  2. Hurricane FAQ(NOAA Atlantic Oceanographic and Meteorological Laboratory)aoml.noaa.gov
  3. Willoughby (1998) Tropical cyclone eye thermodynamics, Monthly Weather Reviewdoi.org