【検証】ホメオパシーの「薄めるほど効く」を計算したら、成分が1分子も残らなかった

読む前に予想してみよう!
ホメオパシーの「30C」のレメディには、元の成分がわずかに残っている
100倍うすめを30回くり返すと、元の成分の分子は計算上ほぼ確実に1個も残らない。
- 対象
- さまざまな病気の患者
- 規模
- 110件のホメオパシー試験と110件の通常医療の試験
- 研究の種類
- 比較メタ分析
- 確かさ
- ★★★★☆
よく使われる「30C」は100倍うすめを30回。計算すると元の成分は1分子も残らない。質の高い研究をまとめても、効果はプラセボと区別できなかった。
ひとことで言うと薄めすぎて、ただの水と砂糖玉。効いた気がするのは「思い込み」の力!
「ホメオパシー」という言葉を聞いたことはありますか? ヨーロッパを中心に、200年以上前から続く代替医療(=病院でふつうに行われる医療とは別の方法)のひとつです。
使われるのは「レメディ」と呼ばれる小さな砂糖玉。ある成分をとことん薄めた水を、砂糖玉にしみこませたものです。そして、こう説明されます。「薄めれば薄めるほど、効き目が強くなる」。
この不思議なルールを、理科の計算で確かめてみましょう。
01ホメオパシーの2つのルール
ホメオパシーは、18世紀末にドイツの医師ハーネマンが考え出しました。基本の考え方は2つです。
- 似たものが似たものを治す:健康な人に飲ませると、ある症状を起こす物質を、その症状の治療に使う
- 薄めるほど効く:その物質を水で何度も薄め、そのたびによく振る
当時の医療は、血を抜いたり強い薬を大量に使ったりと、かなり荒っぽいものでした。それに比べれば「ほとんど何もしない」ホメオパシーのほうが、患者さんにとって安全だった――という歴史的な事情もあったと考えられています。
02「30C」を計算してみる
レメディによく書かれている「30C」という表示。これは、100倍に薄める作業を30回くり返したという意味です。
- 1回目:100分の1
- 2回目:1万分の1
- 30回目:100を30回かけた分の1(1の後ろに0が60個つく数分の1)
ここで登場するのがアボガドロ数(約6×10の23乗)。これは「物質の決まった量の中に、分子が何個あるか」を表す、とてつもなく大きな数です。

計算すると、12C(100倍うすめを12回)くらいで、元の成分の分子が1個でも残っている見込みはほぼゼロになります。これは、薬を数十滴、地球の海全部に溶かしたのと同じくらいの薄さ。30Cは、それよりさらに途方もなく薄いのです。
つまり30Cのレメディは、成分的には「ただの水をしみこませた砂糖玉」ということになります。
もし水が、触れたものの「記憶」を残すなら、水道水はこれまで触れてきた無数の物質の記憶でいっぱいのはず。この「水の記憶」を、信頼できる方法で確かめた研究はありません。
03試験をまとめると、プラセボと区別できなかった
「理屈はともかく、実際に効いているなら」という考え方もあります。そこで、実際の効果も確かめられてきました。
2002年には、それまでの系統的レビューをさらにまとめ直した研究でも、ホメオパシーがプラセボを上回るという確かな証拠は見つからないと報告されました。その後、オーストラリアの国の研究機関なども、病気に効くという信頼できる証拠はないという見解を公表しています。日本でも2010年、日本学術会議の会長が、ホメオパシーの治療効果は科学的に否定されているという談話を出しました。
04それでも「効いた」と感じる理由
実際に使った人が「よくなった」と感じることは、珍しくありません。その理由は、主に3つ考えられます。
- プラセボ効果:「効く」と信じるだけで、つらさがやわらぐ
- 自然に治る力:風邪などは、何もしなくても数日でよくなることが多い
- ていねいな対話:ホメオパシーの相談はじっくり時間をかけることが多く、それ自体が安心につながる
最後の点は、ふつうの医療にとっても学ぶところがあるかもしれません。
05まとめ
- 「30C」は100倍うすめを30回。計算上、元の成分は1分子も残らない
- 質の高い試験をまとめると、効果はプラセボと区別できなかった
- 「効いた」と感じるのは、プラセボ効果・自然治癒・ていねいな対話のおかげかも
「薄めるほど効く」は、理科の計算ひとつでほころびが見える話。計算は、ときにどんな宣伝より正直です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHomeopathy was developed by a German doctor, Samuel Hahnemann, more than 200 years ago.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Homeopathy is a kind of alternative medicine from Germany. It uses small sugar balls called remedies. People make them by adding water to a substance again and again. They say, "The more you dilute it, the stronger it becomes."
But a common remedy, 30C, is diluted 100 times, thirty times over. After that, not one molecule of the substance is left. Big studies found it works no better than a fake pill.
72 words ・ CEFR A2
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ホメオパシーはドイツで生まれた代替医療の一種です。それはレメディと呼ばれる小さな砂糖玉を使います。人々はある物質に何度も何度も水を加えてレメディを作ります。彼らは「薄めれば薄めるほど強くなる」と言います。
しかし、よく使われる30Cというレメディは、100倍に薄める作業を30回くり返したものです。その後には、物質の分子は1つも残っていません。大規模な研究では、それは偽の薬と比べて効果が変わらないことがわかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
成分が1分子も残らず、効果も偽薬と同じという内容なので B。
Q2. What does "30C" mean?
diluted 100 times, thirty times over とあるので D。
Q3. In this passage, a "fake pill" is ...
fake は「偽の」。薬効成分の入っていない錠剤(プラセボ)のことなので A。
Homeopathy was developed by a German doctor, Samuel Hahnemann, more than 200 years ago. It is based on two ideas: a substance that causes certain symptoms can treat them, and the more the substance is diluted, the stronger it becomes. Many remedies are labeled "30C," which means they were diluted one hundred times, thirty times in a row.
Calculations show that by about 12C, it is very unlikely that even one molecule of the original substance remains. In 2005, Swiss researchers compared 110 homeopathy trials with 110 trials of conventional medicine. When they looked at large, high-quality trials, the effects of homeopathy could not be distinguished from those of a placebo. People may still feel better because of the placebo effect or because they recover naturally.
126 words ・ CEFR B1
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ホメオパシーは200年以上前にドイツの医師サミュエル・ハーネマンによって考え出されました。それは2つの考えに基づいています。ある症状を引き起こす物質がその症状を治療できるということと、物質を薄めれば薄めるほど強くなるということです。
多くのレメディには「30C」と表示されており、これは100倍に薄める作業を30回連続で行ったという意味です。計算によると、12C程度で元の物質の分子が1つでも残っている可能性はきわめて低くなります。2005年、スイスの研究者たちは、ホメオパシーの試験110件と通常医療の試験110件を比較しました。規模が大きく質の高い試験を見ると、ホメオパシーの効果はプラセボの効果と区別できませんでした。それでも人々が良くなったと感じるのは、プラセボ効果や自然に回復するためかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. Which is one of the basic ideas of homeopathy?
the more the substance is diluted, the stronger it becomes とあるので D。
Q2. What did the 2005 study compare?
compared 110 homeopathy trials with 110 trials of conventional medicine とあるので A。
Q3. According to the passage, why might people feel better after using homeopathy?
最終文 because of the placebo effect or because they recover naturally より C。
Homeopathy, devised by the German physician Samuel Hahnemann in the late eighteenth century, rests on two principles: "like cures like," and the claim that repeated dilution, combined with vigorous shaking, increases a remedy's potency. The second principle collides with basic chemistry. A remedy labeled 30C has been diluted a hundredfold thirty times, and Avogadro's number implies that by around 12C the chance of a single molecule of the original substance remaining is close to zero.
Supporters therefore appeal to a supposed "memory of water," an idea that has never been reliably demonstrated. Clinical evidence points the same way. In a 2005 Lancet study, Shang and colleagues compared 110 placebo-controlled homeopathy trials with 110 conventional-medicine trials. Smaller, lower-quality studies tended to show larger effects, but once the analysis was restricted to large, rigorous trials, homeopathy was indistinguishable from placebo. The study's selection of trials drew criticism, yet later reviews have reached broadly similar conclusions.
Why, then, do users report improvement? The placebo effect, the natural course of illnesses such as colds, and long, attentive consultations all play a part. The greatest danger lies not in the sugar pills themselves but in using them instead of effective treatment.
196 words ・ CEFR B2
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18世紀後半にドイツの医師サミュエル・ハーネマンが考案したホメオパシーは、2つの原則に基づいています。「似たものが似たものを治す」ことと、激しく振りながら希釈をくり返すとレメディの効力が増すという主張です。2つ目の原則は基本的な化学と衝突します。
30Cと表示されたレメディは100倍の希釈を30回受けており、アボガドロ数から考えると、12C程度で元の物質の分子が1つでも残っている確率はほぼゼロになります。そのため支持者は「水の記憶」なるものを持ち出しますが、この考えは信頼できる形で実証されたことがありません。臨床的証拠も同じ方向を示しています。2005年の『ランセット』の研究で、シャンらはプラセボ対照のホメオパシー試験110件と通常医療の試験110件を比較しました。小規模で質の低い研究ほど大きな効果を示す傾向がありましたが、分析を大規模で厳密な試験に限ると、ホメオパシーはプラセボと区別できませんでした。この研究の試験の選び方は批判を受けましたが、その後のレビューもおおむね同様の結論に達しています。
では、なぜ使用者は改善を報告するのでしょうか。プラセボ効果、風邪のような病気の自然な経過、そして時間をかけた丁寧な相談がすべて関わっています。最大の危険は砂糖玉そのものではなく、有効な治療の代わりにそれを使うことにあります。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does the author say the second principle "collides with basic chemistry"?
12C程度で元の分子が残る確率がほぼゼロになる、と化学の計算で説明しているので B。
Q2. What pattern did Shang and colleagues find?
Smaller, lower-quality studies tended to show larger effects とあるので C。これは出版バイアスなどの典型的なパターン。
Q3. According to the author, what is the greatest danger of homeopathy?
最終文 The greatest danger lies ... in using them instead of effective treatment より A。
重要単語
- diluteC1動詞薄めるThe remedy is diluted again and again.
名詞は dilution。di-(離れて)+lute(洗う)。化学・環境の長文で頻出。 - moleculeB2名詞分子Not a single molecule is likely to remain.
atom(原子)とセットで。形容詞は molecular。 - placeboC1名詞偽薬The effects were no better than a placebo.
ラテン語で「私は喜ばせるだろう」。placebo effect(プラセボ効果)は入試の超頻出テーマ。 - clinical trialC1名詞(句)臨床試験Large clinical trials gave no support to the claim.
clinical は clinic(診療所)の形容詞。conduct a clinical trial「臨床試験を行う」。 - alternative medicineB2名詞(句)代替医療Homeopathy is a type of alternative medicine.
alternative は「代わりの」。conventional medicine(通常医療)と対比される。 - potencyC1名詞効力、効き目Dilution does not increase a drug's potency.
potent(強力な)の名詞形。potential(潜在的な)と同じ pot=力。 - indistinguishableC1形容詞区別できないThe results were indistinguishable from placebo.
in-(否定)+distinguish(区別する)+-able。be indistinguishable from ~ の形で使う。
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- Homeopathy(米国立補完統合衛生センター NCCIH)nccih.nih.gov
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ホメオパシーでよく使う「30C」は100倍うすめを30回くり返したもの。計算すると、元の成分は地球の海に1滴たらしたよりずっと薄く、1分子も残らない。それでも「効く」と言われる理由とは。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Shang et al. (2005) Are the clinical effects of homoeopathy placebo effects? Comparative study of placebo-controlled trials of homoeopathy and allopathy, The Lancetdoi.org
- Ernst (2002) A systematic review of systematic reviews of homeopathy, British Journal of Clinical Pharmacologypubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- 日本学術会議 (2010) 「ホメオパシー」についての会長談話scj.go.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











