ウソ?ホント?検証ウソ

「モーツァルトで頭が良くなる」はウソだった。元論文はそんなこと言っていない

「モーツァルトで頭が良くなる」はウソだった。元論文はそんなこと言っていない

読む前に予想してみよう!

モーツァルトを聴かせると、赤ちゃんのIQが長期的に上がると実証されている

研究カード(どんな研究?)
対象
主に大学生
規模
数十件の研究(合計数千人)
研究の種類
メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

1993年の論文は「大学生がモーツァルトを10分聴いた直後、空間の問題が少し解けた。効果は15分ほど」という控えめな話。赤ちゃんが賢くなるとは言っていない。

ひとことで言うと好きな音楽で気分が上がると、ちょっとだけ集中できる。それが正体かも!

もくじ
  1. 元の論文が本当に言っていたこと
  2. 伝言ゲームで話がふくらんだ
  3. その後の研究で見えた“正体”
  4. じゃあ音楽は意味がないの?
  5. まとめ

「胎教にはモーツァルト」「モーツァルトを聴かせると頭のいい子に育つ」――。

CDショップには「赤ちゃんのためのモーツァルト」が並び、アメリカのある州では1998年、生まれた赤ちゃんの家庭にクラシック音楽のCDを配る予算まで提案されました。

この大ブームのきっかけは、1993年に科学誌『ネイチャー』に載ったたった1ページの論文です。ところが中身を読むと……赤ちゃんの話も、「ずっと頭が良くなる」話も、どこにも書いていなかったのです。

01元の論文が本当に言っていたこと

つまり元の主張は「大学生が、聴いた直後の短い時間だけ、特定の種類の問題が少し解けた」という、とても控えめなものでした。

02伝言ゲームで話がふくらんだ

この論文がニュースになると、話はどんどん変わっていきます。

  • 大学生 → いつの間にか「赤ちゃん」に
  • 空間の問題が少し解けた → 「頭が良くなる」に
  • 15分で消える → 「ずっと賢くなる」に

研究者自身が言っていないことまで、世の中が勝手に付け足してしまったのです。悪意があったわけではなく、「わかりやすくて夢のある話」は広まりやすい、ということでしょう。

03その後の研究で見えた“正体”

追試はたくさん行われました。1999年、心理学者チャブリスは『ネイチャー』で複数の研究をまとめ、効果はあったとしてもごく小さい(知能指数に換算すると1〜2ポイント程度)と報告しました。2010年のウィーン大学の研究者らによるメタ分析(=たくさんの研究をまとめて全体の傾向を見る方法)でも、モーツァルトだけが特別とは言えない、という結論でした。

気分が上がる音なら、モーツァルトでなくても「直後の小さな効果」が出るのかもしれない
気分が上がる音なら、モーツァルトでなくても「直後の小さな効果」が出るのかもしれない

では、なぜ最初の実験で差が出たのでしょう? カナダの研究者たちが2001年に報告した実験がヒントになります。

明るくテンポのいいモーツァルトを聴いた後は成績が上がりましたが、ゆっくりで悲しげな曲を聴いた後は上がりませんでした。そして、成績の差は「聴いた後の気分の高まり」でほぼ説明できたのです。

つまり正体は、音楽で気分やシャキッと感(覚醒度)が上がり、直後の作業がちょっとはかどること。モーツァルトの魔法ではなく、「楽しい気分」の力だったと考えられます。

04じゃあ音楽は意味がないの?

そんなことはありません。好きな音楽で気分を上げてから勉強を始める、というのは理にかなっています。

また、「聴く」こととは別に、楽器を長く習うことが子どもの力にどう影響するかは、今も研究が続いているテーマです。

05まとめ

  • 元論文は「大学生・聴いた直後・空間の問題・効果は15分ほど」という控えめな話
  • 「赤ちゃんが賢くなる」は、伝言ゲームでふくらんだ部分
  • 正体は「気分が上がると、直後の作業が少しはかどる」効果らしい

だから「モーツァルトで頭が良くなる」の判定は「ウソ」。ただ、音楽で気分が上がること自体はムダではありません。モーツァルトにこだわらず、あなたがアガる曲を1曲かけてから机に向かってみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn the 1990s, many parents played Mozart to their babies, hoping to make them smarter. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In the 1990s, many parents played Mozart to their babies, hoping to make them smarter. The idea came from a one-page paper published in Nature in 1993. That study tested 36 college students and no babies at all.

After ten minutes of a Mozart sonata, the students did slightly better on spatial reasoning tasks than after silence or relaxation instructions. The effect disappeared within about 10 to 15 minutes. As the news spread, the story grew. The students turned into babies, and a short effect turned into lasting intelligence.

Later reviews found that the effect was small and not special to Mozart. A 2001 study offered a likely reason. Cheerful, fast music improved scores, but slow, sad music did not, so the boost seemed to come from a better mood.

130 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1990年代、多くの親が赤ちゃんを賢くしたいと願って、モーツァルトを聴かせました。この考えは、1993年に『ネイチャー』に掲載された1ページの論文から来ていました。その研究が調べたのは36人の大学生で、赤ちゃんは1人もいませんでした。

モーツァルトのソナタを10分間聴いた後、学生たちは無音やリラックスの指示の後と比べて、空間的推論の課題の成績がわずかに良くなりました。その効果は約10〜15分以内に消えました。ニュースが広まるにつれて、話はふくらんでいきました。学生は赤ちゃんに変わり、短い効果は長続きする知能に変わったのです。その後のレビューでは、効果は小さく、モーツァルトに特有のものでもないことがわかりました。

2001年の研究が、ありそうな理由を示しました。明るく速い音楽は成績を上げましたが、ゆっくりした悲しい音楽は上げませんでした。つまり、成績の伸びは気分が良くなったことから来ていたようなのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Which is true about the 1993 study?

Q3. What does the 2001 study suggest?

重要単語

  • spatial reasoningC1
    名詞(句)空間的推論The test measured spatial reasoning. spatial は space の形容詞(つづりに注意)。spatial awareness「空間認識」も。
  • temporaryB1
    形容詞一時的なThe effect was temporary. tempo(時)と同語源。反意語は permanent(永続的な)。入試の対義語問題で頻出。
  • arousalC1
    名詞覚醒度、気分の高まりUpbeat music can increase arousal. arouse(呼び起こす)の名詞形。心理学では「興奮・活性化の度合い」。
  • exaggerateB2
    動詞誇張するThe media exaggerated the study's results. g が2つ。名詞 exaggeration。It is no exaggeration to say that ~「~と言っても過言ではない」。
  • replicateC1
    動詞再現する、追試するOther researchers could not replicate the large effect. 名詞 replication。replication crisis(再現性の危機)は心理学の重要テーマ。
  • hypeC1
    名詞・動詞誇大宣伝(する)The Mozart effect became a case of media hype. hyperbole(誇張法)の短縮とも言われる。hype up ~「~をあおる」。
  • modestB2
    形容詞控えめな、ささやかなThe original claim was quite modest. 人について「謙虚な」、量について「ささやかな」。a modest increase「わずかな増加」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

「モーツァルトで頭が良くなる」はウソだった。元論文はそんなこと言っていないの4コマ漫画
「モーツァルトを聴くと頭が良くなる」の元論文、実は大学生が10分聴いた直後に空間パズルの成績が少し上がり、効果は15分ほどで消えたという話だったらしい。赤ちゃんの話はどこにもない。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Rauscher, Shaw & Ky (1993) Music and spatial task performance, Naturedoi.org
  2. Chabris (1999) Prelude or requiem for the 'Mozart effect'?, Naturedoi.org
  3. Thompson, Schellenberg & Husain (2001) Arousal, Mood, and The Mozart Effect, Psychological Sciencedoi.org
  4. Pietschnig, Voracek & Formann (2010) Mozart effect–Shmozart effect: A meta-analysis, Intelligencedoi.org