ウソ?ホント?検証ウソ

「人は死ぬと21グラム軽くなる」の元ネタは、たった6人の1907年の実験だった

「人は死ぬと21グラム軽くなる」の元ネタは、たった6人の1907年の実験だった

読む前に予想してみよう!

人が亡くなる瞬間に、毎回きっちり21グラム体重が減ることが確かめられている

研究カード(どんな研究?)
対象
死期の近い患者
規模
6人(+犬15匹)
研究の種類
単発の観察実験(1907年)
確かさ
★☆☆☆☆
3秒でわかる

「魂の重さは21グラム」の元は、1907年に医師が6人の患者で行った実験。21グラム減ったのは1人だけで、結果はバラバラ。再現した研究もない。

ひとことで言うと「魂は21グラム」の元は、100年以上前の小さな実験。結果はバラバラだったんだ。

もくじ
  1. 1907年、ベッドごと体重計に乗せた医師
  2. 「21グラム」は1人だけだった
  3. 体重は「何もしなくても」減っていく
  4. 科学の基本「再現できるか」
  5. なぜ「21グラム」は語り継がれたのか
  6. まとめ

「人は死ぬと、21グラム軽くなる。それが魂の重さだ」

映画のタイトルにもなった、とても有名な話です。ロマンチックで、ちょっと神秘的。でも、この「21グラム」がどこから来たのか、知っている人は多くありません。

元をたどると、100年以上前の、たった6人の実験に行き着きます。

011907年、ベッドごと体重計に乗せた医師

この実験を行ったのは、アメリカ・マサチューセッツ州の医師、ダンカン・マクドゥーガルです。

彼は「魂に重さがあるなら、死ぬ瞬間に体重が減るはずだ」と考えました。そこで、ベッドごと乗せられる大きな精密ばかりを用意し、結核などで死期が近づいた患者さんを乗せて、息を引き取る前後の体重を測ったのです。

1907年、その結果が医学雑誌などで報告され、新聞でも大きく取り上げられました。

02「21グラム」は1人だけだった

マクドゥーガルが報告した最初の患者さんでは、亡くなった瞬間に約4分の3オンス(約21グラム)体重が減ったとされます。これが「21グラム」の由来です。

ところが、ほかの患者さんの結果はバラバラでした。

  • 体重が減ったあと、さらに減った人
  • 一度減ったのに、元に戻った人
  • 測定がうまくいかず、使えなかった人

マクドゥーガル自身も、すべての結果が使えるわけではないと認めていました。6人のうち、きちんと「21グラム」だったのは1人だけだったのです。

彼はさらに15匹の犬でも同じ実験をして、犬では体重の変化がなかったと報告しました。そして「犬には魂がないからだ」と考えたのです。現代の目で見ると、さまざまな意味で問題の多い実験と言わざるをえません。

03体重は「何もしなくても」減っていく

では、なぜ体重が減ったように見えたのでしょうか。いくつもの可能性があります。

息を引き取る前後は、呼吸や体温、汗の状態が大きく変わる時期です。そのタイミングで水分の出方が変われば、体重の変化が出ても不思議ではありません。

体からは、目に見えない水分が常に逃げている
体からは、目に見えない水分が常に逃げている

さらに、100年以上前のはかりの精度、ベッドや患者さんが動いたときの揺れ、亡くなる瞬間を正確に決める難しさなど、測定の誤差が入りこむすきまはたくさんありました。

04科学の基本「再現できるか」

科学で何より大事なのは、ほかの人が同じ実験をして、同じ結果が出るか(再現性)です。

マクドゥーガルの実験は、対象がたった6人で、結果もそろっていません。そして100年以上たった今も、この結果を再現した信頼できる研究はありません。科学的には「根拠なし」と言わざるをえないのです。

05なぜ「21グラム」は語り継がれたのか

それでも、この話は消えませんでした。理由はシンプルで、「魂に重さがあったらいいな」という人々の願いにぴったりだったからでしょう。

具体的な数字があると、それだけで「本当っぽく」聞こえます。そして映画や小説が、このロマンあふれる数字をさらに広めました。

06まとめ

  • 「21グラム」は、1907年のたった6人の実験が元ネタ
  • 21グラム減ったのは1人だけで、ほかの結果はバラバラ
  • 体からは常に水分が逃げており、測定の誤差も大きかった。再現した研究はない

魂に重さがあるかどうかは、科学では答えが出せない問いかもしれません。でも少なくとも「21グラム」という数字は、科学の答えではありませんでした。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe famous claim that the human soul weighs 21 grams comes from a 1907 experiment by an American doctor… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The famous claim that the human soul weighs 21 grams comes from a 1907 experiment by an American doctor named Duncan MacDougall. He placed dying patients on a large scale and measured their weight before and after death.

However, he tested only six patients, and only one of them lost about 21 grams. In other cases, the weight dropped and then returned, or the measurements could not be used. He also tested 15 dogs, found no change, and claimed that dogs have no souls. Today, scientists point out that the body constantly loses water through the skin and breath, and that old scales were not very accurate.

107 words ・ CEFR B1

和訳を見る

人間の魂の重さは21グラムだという有名な主張は、アメリカの医師ダンカン・マクドゥーガルが1907年に行った実験から来ています。彼は死期の近い患者を大きなはかりに乗せ、亡くなる前と後の体重を測りました。

しかし、調べた患者はわずか6人で、約21グラム減ったのはそのうち1人だけでした。ほかのケースでは、体重が減ってから元に戻ったり、測定結果が使えなかったりしました。彼は15匹の犬でも実験をして、変化がなかったため、犬には魂がないと主張しました。今日、科学者たちは、体は皮ふや息からたえず水分を失っていること、そして昔のはかりはあまり正確ではなかったことを指摘しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What happened in the other patients' cases?

Q3. Why might the patients' weight have changed?

重要単語

  • soulB1
    名詞魂Many cultures believe in the soul. sole(唯一の・靴底)と同じ発音。soulmate「心の友」、body and soul「身も心も」。
  • replicateC1
    動詞(実験を)再現するOther scientists could not replicate the result. 名詞 replication(追試)。replica(複製)と同語源。科学論の長文で「再現性」の話とセットで出る。
  • sample sizeB2
    名詞(句)標本の大きさ、調べた人数Six people is a very small sample size. a small sample size は研究の限界の代表例。英作文で研究を批判するときに使える。
  • measurement errorC1
    名詞(句)測定誤差The change was within measurement error. measure(測る)の名詞形+error。within the margin of error「誤差の範囲内」も覚えたい。
  • perspirationC1
    名詞発汗、汗We lose water through perspiration all the time. sweat の硬い言い方。per-(通して)+spirare(呼吸する)。動詞は perspire。
  • admitB1
    動詞認めるHe admitted that some results could not be used. admit (that) ~「~を認める」。admit doing のように動名詞をとる点は文法問題の頻出ポイント。

4コマでわかる

「人は死ぬと21グラム軽くなる」の元ネタは、たった6人の1907年の実験だったの4コマ漫画
「人は死ぬと21グラム軽くなる=魂の重さ」の元ネタは、1907年にアメリカの医師が6人の患者で行った実験らしい。しかも21グラム減ったのは1人だけ。他の人は結果がバラバラで、その後だれも再現できていない。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Benedict et al. (1926) Insensible perspiration: its relation to human physiology and pathology, Archives of Internal Medicinedoi.org
  2. McCutchan & Taylor (1951) Respiratory Heat Exchange with Varying Temperature and Humidity of Inspired Air, Journal of Applied Physiologydoi.org
  3. Pinnagoda et al. (1990) Guidelines for transepidermal water loss (TEWL) measurement, Contact Dermatitisdoi.org