ウソ?ホント?検証ウソ

「うま味調味料で頭痛がする」は本当? "中華料理店症候群"は一通の手紙から始まった

「うま味調味料で頭痛がする」は本当? "中華料理店症候群"は一通の手紙から始まった

読む前に予想してみよう!

ふつうの食事に使われる量のうま味調味料で、頭痛が起きることが証明されている

研究カード(どんな研究?)
対象
「MSGで症状が出る」と訴える人など
規模
130人ほか複数の試験
研究の種類
二重盲検プラセボ対照試験・系統的レビュー
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

「MSGで頭痛」は1968年の医師の手紙がきっかけ。ふつうの食事と一緒にとる量では、二重盲検試験で症状との関係は確認されていない。

ひとことで言うとふつうに食べる量のうま味調味料で頭痛が起きる証拠はなかった!

もくじ
  1. すべては一通の手紙から始まった
  2. 本物かニセモノか、わからないようにして確かめた
  3. 頭痛に絞って調べたレビューでも
  4. 米国FDAの見解
  5. なぜ「MSGで頭痛」は広まったのか
  6. まとめ

「うま味調味料を使った料理を食べると、頭が痛くなる」

海外では特に根強いこの話。アメリカのスーパーでは、今も「No MSG(うま味調味料不使用)」と書かれた食品を見かけます。日本でも「化学調味料は体に悪い」というイメージを持つ人がいるかもしれません。

でも、この話の始まりをたどると、意外なほど小さなきっかけにたどり着きます。

01すべては一通の手紙から始まった

1968年、米国の医学誌『New England Journal of Medicine』に、ある医師からの短い手紙が載りました。タイトルは「中華料理店症候群」。中華料理店で食事をしたあと、首のしびれや脱力感、動悸のような症状が出ることがある、という自分の体験を書き、原因の候補として料理酒やうま味調味料(グルタミン酸ナトリウム、MSG)などを挙げたものでした。

この手紙がきっかけで、似たような体験談が次々と寄せられ、「MSGが原因らしい」という話が一気に広まりました。でも、その多くは体験談(逸話)で、きちんとした実験ではありませんでした。

02本物かニセモノか、わからないようにして確かめた

ここで大事なのは「二重盲検」という方法です。本人が「これはMSGだ」と知っていると、思いこみだけで症状が出ることがあります。それを防ぐために、どちらを飲んだかわからないようにするのです。

03頭痛に絞って調べたレビューでも

2016年、オオバヤシとナガムラは、MSGと頭痛の関係を調べた人間の研究を系統的にまとめました。

  • 食事と一緒にMSGをとった研究(6件):ほぼすべてで、頭痛の起こりやすさに差はなし
  • 食事なしでMSGだけをとった研究(7件):4件で差あり。ただし、多くは高濃度のMSG溶液で、独特の味で本物だとわかってしまい、目隠しがきちんとできていなかった可能性

結論は「因果関係があるかどうかは、さらに研究が必要」というものでした。なお、このレビューの著者の一人は、グルタミン酸に関する業界団体に所属しています。結果を読むときは、その点も頭に入れておくとよいでしょう。

どちらが本物かわからないようにする「二重盲検」で、思いこみの影響を取り除いた
どちらが本物かわからないようにする「二重盲検」で、思いこみの影響を取り除いた

04米国FDAの見解

米国食品医薬品局(FDA)は、MSGを「一般に安全と認められる(GRAS)」食品成分に分類しています。FDAによると、一部の敏感な人が食べ物なしで3g以上とった場合に、一時的で軽い症状が出る可能性が指摘されていますが、ふつうの料理1食分に含まれるMSGは0.5g未満で、食べ物なしで一度に3g以上とることは考えにくい、としています。

また、肉や魚、トマト、チーズなどの食品には、もともとグルタミン酸がたくさん含まれています。体の中では、MSG由来のグルタミン酸も食品由来のものも、化学的には同じものです。

05なぜ「MSGで頭痛」は広まったのか

  • 有名な医学誌に載った「名前つきの症候群」は、それだけで信じられやすい
  • 食後に頭痛やだるさを感じたとき、「何か入っていたせいだ」と原因を探したくなる
  • 「化学調味料」という言葉が、なんとなく体に悪そうな印象を与える

のちに、この「症候群」の名前が特定の国の料理だけを悪者にしていた、と指摘する声も上がりました。

06まとめ

  • 「MSGで頭痛」は、1968年の一通の手紙から広まった
  • 食事と一緒にとった場合、二重盲検試験で頭痛との関係は確認されていない
  • 空腹時の大量摂取では反応が出ることもあるが、ふつうの食事では考えにくい

判定は「ウソ」。体験談がたくさん集まっても、それだけでは証拠にならない。"思いこみ"を取り除いて確かめることの大切さを教えてくれる話です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe link between MSG and headaches began in 1968, when a doctor wrote a short letter to a medical journal. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The link between MSG and headaches began in 1968, when a doctor wrote a short letter to a medical journal. He described feeling numb and weak after eating at Chinese restaurants and suggested several possible causes, including MSG. Many similar personal stories followed, but they were not scientific tests.

In 2000, researchers carried out a double-blind study with 130 people, all of whom believed they reacted to MSG. Neither the participants nor the researchers knew who received MSG and who received a placebo. Some people reported symptoms after taking large amounts of MSG without food, but the reactions were not repeated in later tests. When MSG was taken with food, no reactions were found.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

MSGと頭痛の結びつきは、1968年にある医師が医学誌に短い手紙を書いたことから始まりました。彼は中華料理店で食事をした後にしびれや脱力感を覚えたと書き、MSGを含むいくつかの原因の候補を挙げました。その後、似たような体験談が次々に寄せられましたが、それらは科学的な検証ではありませんでした。

2000年、研究者たちは130人を対象に二重盲検試験を行いました。参加者はみな、自分はMSGに反応すると信じている人たちでした。誰がMSGを受け取り、誰が偽薬を受け取ったのかは、参加者にも研究者にもわかりませんでした。食べ物なしで大量のMSGをとった後に症状を訴える人もいましたが、その反応は後のテストでくり返されませんでした。MSGを食事と一緒にとった場合は、反応は見られませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. In the 2000 study, who knew which people received MSG?

Q3. Why was it important that the study was double-blind?

重要単語

  • flavor enhancerC1
    名詞(句)うま味調味料、風味増強剤MSG is a common flavor enhancer. enhance(高める)+-er。enhance performance(能力を高める)も頻出。
  • double-blindC1
    形容詞二重盲検のA double-blind study hides who gets the real substance. 被験者も研究者もどちらが本物か知らない方法。single-blind は被験者だけが知らない。
  • placeboB2
    名詞偽薬Some people reacted to the placebo too. ラテン語で「私は喜ばせるだろう」。placebo effect(プラセボ効果)は入試頻出。
  • anecdotalC1
    形容詞逸話的なMost early reports were anecdotal. anecdote(逸話)の形容詞。anecdotal evidence=体験談レベルの証拠。
  • reproducibleC1
    形容詞再現可能なThe reactions were not reproducible. reproduce(再現する・繁殖する)+-ible。科学の信頼性を語るキーワード。
  • conflict of interestC1
    名詞(句)利益相反The author declared a possible conflict of interest. 研究者が結果に利害を持つ状態。論文の末尾に申告欄がある。

4コマでわかる

「うま味調味料で頭痛がする」は本当? "中華料理店症候群"は一通の手紙から始まったの4コマ漫画
「うま味調味料(MSG)で頭痛がする」説。始まりは1968年に医学誌に載った一通の手紙。その後の二重盲検試験では、食事と一緒にとる量なら症状との関係は確認されず。空腹時に大量に飲んだときだけ反応がまちまちに出たらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Kwok (1968) Chinese-restaurant syndrome, New England Journal of Medicinedoi.org
  2. Geha et al. (2000) Review of alleged reaction to monosodium glutamate and outcome of a multicenter double-blind placebo-controlled study, The Journal of Nutritiondoi.org
  3. Obayashi & Nagamura (2016) Does monosodium glutamate really cause headache?: a systematic review of human studies, The Journal of Headache and Paindoi.org
  4. Questions and Answers on Monosodium glutamate (MSG)(米国食品医薬品局 FDA)fda.gov