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「マイナスイオンで健康に」はどこまで本当? あのブームを論文で確かめた

「マイナスイオンで健康に」はどこまで本当? あのブームを論文で確かめた

読む前に予想してみよう!

マイナスイオンには、気分や睡眠を良くする効果がしっかり確認されている

研究カード(どんな研究?)
対象
成人(季節性うつの人を含む)
規模
33件の研究
研究の種類
メタ分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

研究では、ごく高濃度の負イオンで季節性うつの気分が軽くなった報告はある。でも「家電で健康に」を支える確かな証拠はほぼない。

ひとことで言うと滝で気持ちいいのは本当。でも「イオンで体が元気に」はまだナゾ!

もくじ
  1. そもそも「マイナスイオン」って何?
  2. 論文を集めてみたら…
  3. 「思い込み」の力も大きい
  4. 「半分ホント」の線引き
  5. まとめ

2000年代の初めごろ、日本中が「マイナスイオン」に夢中になった時期がありました。ドライヤー、エアコン、扇風機、さらには靴下や下着まで、「マイナスイオン配合」の文字が躍っていました。

「滝のそばは空気がおいしい。それはマイナスイオンのおかげ。だから家でもマイナスイオンを浴びれば健康に!」

この話、どこまでが本当で、どこからが盛りすぎなのでしょうか? 論文を頼りに、ていねいに仕分けしてみます。

01そもそも「マイナスイオン」って何?

空気中の分子は、ときどき電気を帯びます。マイナスの電気を帯びた小さな粒を、研究の世界では負の空気イオンと呼びます(「マイナスイオン」は主に日本の宣伝で広まった呼び方です)。

滝のしぶきが細かく砕けると、マイナスの電気を帯びた粒ができやすくなります。これはレナード効果と呼ばれ、19世紀末から知られている本物の物理現象。だから「滝のそばに負イオンが多い」こと自体は本当です。

問題は、それが体に良い効果をもたらすのか、です。

02論文を集めてみたら…

ただし、例外がひとつ。季節性うつ(冬に日照が減ると気分が落ち込む状態)などの人に、非常に高濃度の負イオンを浴びてもらった研究をまとめると、うつの評価点が下がる傾向が見られたのです。

ここで大事なのは「非常に高濃度」という条件。こうした研究で使われたのは専用の装置で、家電の「イオン放出モード」とは別物と考えたほうがよさそうです。

研究で使われたのは、専用装置による「かなりの高濃度」だった
研究で使われたのは、専用装置による「かなりの高濃度」だった

03「思い込み」の力も大きい

2018年に報告された季節性うつの比較実験では、高濃度の負イオンが偽の装置より効果的だった一方で、偽の装置のグループでもかなりの改善が見られました。

これはプラセボ効果(=「効くはず」と思うだけで実際に楽になる現象)。気持ちよさそうな機械を毎日使う、という行為そのものにも力があるのです。

また、動物実験をまとめた2018年のレビューでも、質の高い研究ほど健康への一貫した影響は見られないという結論でした。

森や滝の心地よさには、涼しさ、緑の景色、水の音、空気のきれいさ、日常からの解放感など、たくさんの要素が重なっています。そのうち「イオンの分」だけを取り出して証明するのは、とても難しいのです。

04「半分ホント」の線引き

ここまでをまとめると、こうなります。

  • ホント:滝のそばに負イオンが多いこと(物理現象)
  • ちょっとホント:ごく高濃度で、季節性うつの気分がやわらいだ報告
  • まだナゾ・根拠薄:家電や衣類の「マイナスイオンで健康に」

05まとめ

マイナスイオンは「まったくのウソ」ではありません。でも、「浴びれば健康に」と言えるほどの証拠はない、が今の正直な答えです。

滝や森に行きたくなったら、イオンのためではなく、景色と空気と散歩のために出かけましょう。それだけで、たぶん十分に気持ちいいはずです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAround 2000, "negative ions" became a huge trend in Japan. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Around 2000, "negative ions" became a huge trend in Japan. Hair dryers, air conditioners and many other products claimed to release them. Negative air ions do exist. When water from a waterfall breaks into tiny drops, it produces a lot of them.

But do they make people healthier? In 2013, American researchers combined 33 studies on people and found no consistent effect on anxiety, mood, relaxation or sleep. There was one exception.

Very high levels of negative ions seemed to reduce symptoms in people with seasonal depression. These studies used special machines, though, and not ordinary home appliances. In a 2018 experiment, people who used a fake device also felt quite a lot better. So belief alone seems to do much of the work.

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

2000年ごろ、日本で「マイナスイオン」が大流行しました。ドライヤーやエアコンなど、多くの商品がそれを出すとうたいました。負の空気イオンは実際に存在します。滝の水が細かいしずくに砕けると、それがたくさん作られます。

では、それは人を健康にするのでしょうか。2013年、アメリカの研究者たちは人を対象にした33件の研究をまとめ、不安、気分、リラックス、睡眠に対する一貫した効果は見つかりませんでした。例外が一つありました。

非常に高濃度の負イオンは、季節性うつの人の症状を軽くするようでした。ただし、これらの研究で使われたのは専用の装置で、ふつうの家電ではありませんでした。2018年の実験では、偽の装置を使った人もかなり気分が良くなりました。どうやら、信じる気持ちだけで多くの効果が生まれているようです。

4択リーディングクイズ

Q1. Why are there many negative ions near waterfalls?

Q2. What was the one exception in the 2013 review?

Q3. What does the 2018 experiment suggest?

重要単語

  • ionB2
    名詞イオンNegative ions form near waterfalls. 英語の発音は「アイオン」。研究では negative air ions と呼び、「マイナスイオン」は和製表現。
  • concentrationB2
    名詞濃度/集中The study used a very high concentration of ions. 「集中(力)」の意味とあわせて多義語。concentrate on ~「~に集中する」。
  • seasonal depressionC1
    名詞(句)季節性うつSeasonal depression often starts in winter. 正式には seasonal affective disorder(SAD)。日照時間との関係で長文に出る。
  • consistentB2
    形容詞一貫したThe results were not consistent across studies. be consistent with ~「~と一致する」は内容一致問題で頻出。反対は inconsistent。
  • applianceB2
    名詞家電製品Many appliances claimed to release healthy ions. home appliances / household appliances「家電」。apply(適用する)と同語源。
  • caveatC2
    名詞注意書き、但し書きThere is one important caveat to these results. ラテン語「用心せよ」。研究紹介で with one caveat「ただし一点注意」の形で使う。
  • shamC1
    形容詞・名詞偽の(もの)Some participants used a sham device. 医学研究では sham treatment「偽の処置」として placebo と並ぶ重要語。

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4コマでわかる

「マイナスイオンで健康に」はどこまで本当? あのブームを論文で確かめたの4コマ漫画
「マイナスイオンで健康に」、論文を調べると「ものすごく高濃度なら、冬のうつっぽさが軽くなったかも」という報告はあるけど、不安・睡眠・リラックスへの一貫した効果は見られなかったらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Perez, Alexander & Bailey (2013) Air ions and mood outcomes: a review and meta-analysis, BMC Psychiatrydoi.org
  2. Bowers et al. (2018) Controlled trial evaluation of exposure duration to negative air ions for the treatment of seasonal affective disorder, Psychiatry Researchpubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  3. Bailey et al. (2018) Exposure of laboratory animals to small air ions: a systematic review of biological and behavioral studies, BioMedical Engineering OnLinedoi.org
  4. Jiang et al. (2018) Negative Air Ions and Their Effects on Human Health and Air Quality Improvement, International Journal of Molecular Sciencesdoi.org