地球・歴史・物理

雷1発のエネルギーは家庭の電気約1か月分。なのに電気に使えない3つの理由

雷1発のエネルギーは家庭の電気約1か月分。なのに電気に使えない3つの理由

読む前に予想してみよう!

世界では、1秒間に40回以上も雷が光っている

研究カード(どんな研究?)
対象
地球全体の雷と1回の放電のエネルギー
規模
人工衛星による全球観測+放電の物理推定
研究の種類
観測研究・物理的推定
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

雷1回のエネルギーはよく約10億ジュール(約280kWh)と見積もられ、家庭の電気約1か月分。ただし一瞬で、場所も読めず、貯めるのはほぼ不可能。

ひとことで言うと雷1発は、おうちの電気1か月分くらいのパワー!でも一瞬で消える

もくじ
  1. そもそも雷ってなに?
  2. 地球では1秒に約40〜50回、雷が光っている
  3. 雷で発電できない3つの理由
  4. 雷が近づいたら、どうする?
  5. まとめ

ピカッ、ゴロゴロ…ドーン! 夏の夕立といっしょにやってくる雷。あの一瞬の光には、いったいどれくらいのエネルギーがつまっているのでしょう?

よく使われる見積もりでは、雷1回のエネルギーは約10億ジュール。電気代の明細でおなじみの単位になおすと、約280キロワット時です(研究によって1億〜100億ジュールほどの幅があり、雷の大きさによっても大きく変わります)。

これは、日本の一般家庭が使う電気のおよそ1か月分に近い量。「じゃあ雷を集めれば電気代タダじゃん!」…と思いたくなりますが、そうはいかない理由があるのです。

01そもそも雷ってなに?

雷は、空で起きる超巨大な静電気です。

冬にドアノブを触ってバチッとくるのは、体にたまった電気が一気に流れるから。雷も同じで、積乱雲の中で「あられ」と小さな氷の結晶がぶつかり合うことで電気が分かれ、雲の上と下にプラスとマイナスの電気がたまっていきます。

たまりにたまった電気が限界をこえると、空気の中を無理やり突き抜けて流れます。これが稲妻です。

  • 電流:数万アンペア(家のブレーカーの1000倍前後)
  • 電圧:1億ボルト級とも言われる
  • 温度:約3万℃(太陽の表面の約5倍)
  • 光の筋の太さ:数センチほど

あまりに熱いので、まわりの空気が一瞬で膨らみ、その衝撃が音となって届きます。それが「ゴロゴロ」の正体です。

雲の中で氷のつぶがぶつかり合い、電気がたまっていく
雲の中で氷のつぶがぶつかり合い、電気がたまっていく

02地球では1秒に約40〜50回、雷が光っている

つまり、あなたがこの1文を読んでいる間にも、地球のどこかで何十回も雷が光っているわけです。

日本では、気象庁が全国の雷を監視するシステムを持ち、「雷ナウキャスト」で1時間先までの雷の可能性を地図で発表しています。日本の雷は夏の内陸だけでなく、冬の日本海側にも多いのが特徴です。冬の雷は回数こそ少ないものの、1回のエネルギーが大きいものがあることで知られています。

03雷で発電できない3つの理由

これだけ頻繁に、しかも1回1か月分ものエネルギー。なのに雷発電所がないのはなぜでしょう?

理由1:一瞬すぎる雷のエネルギーは、1秒よりずっと短い時間に一気に流れます。コップに注ぐ水で例えるなら、1か月分の水がほんの一瞬でドバッと降ってくるようなもの。これを受け止めて貯められる電池やコンデンサーは、とてつもない大きさと頑丈さが必要です。

理由2:どこに落ちるか読めない雷が落ちる場所は予測できません。高い塔や避雷針でも、1本に落ちる回数は年に数回〜数十回程度。巨大な設備を作っても、ほとんど出番がないのです。

理由3:エネルギーの大半は空気を温めて消える雷のエネルギーの多くは、地面に届く前に、光や熱、音として空気中で使われてしまいます。仮にうまく受け止めても、取り出せるのは全体の一部だけです。

そもそも、地球上のすべての雷を合計しても、1秒あたり約44回×10億ジュールで、平均すると数百億ワット程度。人類が使っている電力(平均で数兆ワット)の数十分の一にすぎません。夢はあるけれど、割に合わないのです。

04雷が近づいたら、どうする?

エネルギーがすごいということは、それだけ危ないということでもあります。

05まとめ

  • 雷1回のエネルギーは、家庭の電気約1か月分という見積もりがある
  • 温度は約3万℃、電流は数万アンペア
  • 地球全体では1秒に約40〜50回も雷が光っている
  • 一瞬・場所が読めない・大半が空気中で消える、という理由で発電にはむかない

空がピカッと光ったら、数を数えてゴロゴロまでの秒数を測ってみましょう。音は1秒に約340m進むので、3秒なら約1km先。近いと感じたら、迷わず屋内へ逃げてくださいね。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerLightning is a huge spark of static electricity. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Lightning is a huge spark of static electricity. Inside storm clouds, small pieces of ice crash into each other, separating positive and negative charges until electricity suddenly flows through the air. One flash is often estimated to carry about one billion joules, close to a month of electricity for a Japanese home.

The channel can reach about 30,000°C, and the heated air expands so quickly that we hear thunder. Satellites show that lightning flashes about 44 times per second worldwide. However, we cannot use it as a power source, because the energy arrives in a split second, strikes in unpredictable places, and is mostly lost as heat, light, and sound.

110 words ・ CEFR B1

和訳を見る

雷は巨大な静電気の火花です。積乱雲の中で小さな氷のつぶがぶつかり合い、プラスとマイナスの電気が分かれていき、やがて電気が一気に空気中を流れます。1回の雷は約10億ジュールのエネルギーを運ぶとよく見積もられ、これは日本の家庭の電気の1か月分に近い量です。稲妻の通り道は約3万℃に達し、熱せられた空気があまりに急に膨らむので、私たちには雷鳴が聞こえます。

人工衛星の観測によると、世界では1秒間に約44回雷が光っています。しかし、雷を電源として使うことはできません。エネルギーがほんの一瞬で届き、予測できない場所に落ち、その大部分が熱・光・音として失われるからです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What causes thunder?

Q3. Why would a "lightning power station" be used very rarely?

重要単語

  • lightningB1
    名詞雷(稲妻)Lightning flashes about 44 times every second worldwide. lightening(明るくすること)とつづりを混同しやすいので注意。a bolt of lightning「一筋の稲妻」。
  • thunderB1
    名詞雷鳴We heard thunder a few seconds after the flash. 光が lightning、音が thunder。thunderstorm は「雷雨」。
  • static electricityB2
    名詞(句)静電気Lightning is a giant spark of static electricity. static は「静止した」。反対は dynamic。static は「雑音」の意味でも使う。
  • dischargeC1
    名詞放電A lightning discharge lasts less than a second. dis-(離す)+charge(電荷・積み荷)。動詞で「退院させる・解雇する」の意味もある多義語。
  • harvestB2
    動詞(エネルギーを)取り出す、収穫するIt is very hard to harvest energy from lightning. 本来は「作物を収穫する」。energy harvesting「環境発電」という言い方もある。
  • dissipateC1
    動詞(熱・エネルギーが)散逸する、消散するMost of the energy dissipates as heat and light. 「(不安や霧が)消える」の意味でも使う。名詞 dissipation。

動画でもっと知る

雷1発のエネルギーって、家庭の電気約1か月分くらいらしい。じゃあ雷で発電すれば…と思ったら、そう簡単にいかない理由がちゃんとあった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Christian et al. (2003) Global frequency and distribution of lightning as observed from space by the Optical Transient Detector, Journal of Geophysical Research: Atmospheresdoi.org
  2. Cecil, Buechler & Blakeslee (2014) Gridded lightning climatology from TRMM-LIS and OTD: Dataset description, Atmospheric Researchdoi.org
  3. Krider, Dawson & Uman (1968) Peak power and energy dissipation in a single-stroke lightning flash, Journal of Geophysical Researchdoi.org
  4. Rakov & Uman (2003) Lightning: Physics and Effects, Cambridge University Pressdoi.org