散らかった部屋はストレスのもと? 「散らかった方がアイデアが斬新」という実験は追試で再現されず

読む前に予想してみよう!
散らかった部屋にいると創造性が上がることは、追試でもはっきり確かめられている
2013年の実験では独創的なアイデアが増えたが、2019年のより大人数の追試では、散らかった机と片付いた机で創造性に差は出なかった。
- 対象
- 共働き夫婦・大学生・北米の大人
- 規模
- 実験は数十〜100人ほど、ほかにネット調査
- 研究の種類
- 観察研究・実験室実験・追試・調査
- 確かさ
- ★★☆☆☆
共働き夫婦の妻のうち、家を「散らかっている」と語る人ほどストレスホルモンが1日を通して下がりにくかった(ただし相関)。一方、「散らかった部屋でアイデアが斬新になった」という有名な実験は、より大人数の追試で再現されなかった。
ひとことで言うと散らかりとストレスは関係がありそう。でも「散らかった方がひらめく」は追試で確かめられなかった!
床に積まれた服、机の上の書類の山、いつか読むつもりの本。
「片付けなきゃ」と思いながら、つい見て見ぬふり……。そんな部屋にいると、なんとなく気持ちが落ち着かないこと、ありませんか?
実は散らかった部屋とストレスの関係は、心理学や脳科学で調べられてきました。でも、結論は意外と一筋縄ではいかないんです。
01自分の家をどう言い表すかで、ストレスが分かる?
この分野でよく紹介されるのが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のダービー・サックスビーとリーナ・レペッティの研究です。
コルチゾールは、ふつう朝に多く、夜に向けて下がっていくのが健康的なパターンとされています。
ところが、家を「散らかっている」「片付いていない」「やりかけ」といった言葉で多く表現した妻たちは、
- 1日を通してコルチゾールが下がりにくいパターンを示した
- 気分の落ち込みが、1日の中でだんだん強くなる傾向があった
という結果でした。
ただしこれは「散らかり」と「ストレス」が同じ人にそろって見られたという研究で、散らかりが原因でストレスが増えたとまでは言えません。忙しくてストレスが多いから片付けられない、という逆の可能性もあります。また、関連がはっきり見られたのは妻たちで、夫たちでははっきりしませんでした。調べたのは30組(60人)と少人数です。
アメリカとカナダの大人へのネット調査(Roster ら、2016年)でも、家のモノの散らかりが多い人ほど、「ここが自分の家だ」と感じる心地よさや、暮らしの満足感が低い傾向が報告されています。こちらも調査なので、どちらが原因かまでは分かりません。
02目に入るモノは、脳の処理を奪い合う
もう少し脳の仕組みに近い研究もあります。
プリンストン大学のマクメインズとカストナーは、2011年の研究で、視界に多くのものがあると、それらが脳の中で処理の容量を奪い合い、互いの反応を弱め合うことを示しました。
この研究は、画面に映した図形を見ているときの、目からの情報を処理する脳の部分(視覚野)の活動を調べた実験です。散らかった部屋や勉強の成績を直接調べたものではありません。なので「散らかった机は頭の働きを奪う」とまでは言えませんが、目に入るモノが多いと脳の処理が忙しくなる、という手がかりにはなります。

03「散らかった部屋の方が独創的」という実験と、その追試
一方で、散らかった部屋にもいいところがある、という研究も話題になりました。
2013年、ミネソタ大学のキャスリーン・ヴォースらは、きれいに片付いた部屋と散らかった部屋で参加者に課題をしてもらいました。
- 片付いた部屋の人は、おやつにリンゴを選びやすく、寄付もしやすかった
- 散らかった部屋の人は、ピンポン玉の新しい使い道を考える課題で、より独創的なアイデアを出した
研究チームは、整った環境は「決まりを守ろう」という気持ちを、散らかった環境は「型を破ろう」という気持ちを引き出すのではないか、と考えました。
ところが2019年、別の研究チーム(Manzi ら)が、片付いた机と散らかった机を用意し、元の実験より多い人数で確かめ直しました。物の新しい使い道を考える課題など、2種類の創造性テストを使いましたが、創造性に差は出ませんでした。注意の切り替えなど、頭の働きをコントロールする力(実行機能)にも違いはありませんでした。
今のところ、「散らかっているとアイデアが斬新になる」は、確かな事実とは言えません。
04まとめ
家が散らかっていると感じている人ほど、ストレスが多い、暮らしの満足感が低いという傾向が報告されています。ただし、どちらが原因かはまだ分かっていません。
そして「散らかった方がひらめく」という話は、追試では確かめられませんでした。片付けで悩みすぎず、まずは作業する机の上だけを空けてみるくらいが、ちょうどいいのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCan a cluttered home affect your stress level?
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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この研究を英語で読もう
Does a messy room cause stress? In one study, couples showed researchers around their homes. Wives who used words like "messy" had a less healthy pattern of a stress hormone during the day.
But the study does not prove that the mess caused the stress. Busy, stressed people may simply have no time to clean. In one famous experiment, people in a messy room had more creative ideas, but a later test did not find this.
76 words ・ CEFR A2
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散らかった部屋はストレスの原因になるのでしょうか。ある研究で、夫婦が研究者に自分の家を案内しました。「散らかっている」のような言葉を使った妻たちは、1日を通してストレスホルモンの変化があまり健康的でないパターンを示しました。
しかし、この研究は散らかりがストレスの原因だと証明してはいません。忙しくてストレスの多い人は、単に掃除する時間がないのかもしれません。ある有名な実験では、散らかった部屋にいた人の方が、より独創的なアイデアを出しましたが、のちの追試ではこの結果は見られませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
散らかった部屋とストレス、そして創造性との関係がテーマなので B。
Q2. Who had a less healthy pattern of the stress hormone?
Wives who used words like "messy" had a less healthy pattern とあるので C。
Q3. In this passage, "creative" means ...
creative は「創造的な・独創的な」。new and original が最も近いので A。
Can a cluttered home affect your stress level? In a 2010 study, Darby Saxbe and Rena Repetti asked working couples to give a tour of their homes and analyzed the words they used. They also measured cortisol, a stress hormone that normally drops from morning to evening. Wives who often described their homes as messy or unfinished showed a flatter cortisol pattern and a more depressed mood as the day went on.
However, this was a correlation, and the link was not clear for husbands. It is also possible that stress makes people too busy to tidy up. A 2013 experiment found that people in a messy room came up with more creative uses for ping-pong balls, but a larger study in 2019 found no difference.
126 words ・ CEFR B1
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散らかった家は、ストレスの度合いに影響するのでしょうか。2010年の研究で、ダービー・サックスビーとリーナ・レペッティは共働きの夫婦に自宅を案内してもらい、彼らが使った言葉を分析しました。また、通常は朝から夜にかけて下がっていくストレスホルモン、コルチゾールも測定しました。自分の家を散らかっている、やりかけだと表現することが多かった妻たちは、コルチゾールの変化がより平らなパターンを示し、1日の中でだんだん気分が落ち込んでいきました。
しかし、これは相関であり、夫たちでは関連がはっきりしませんでした。また、ストレスのせいで忙しすぎて片付けられない、という可能性もあります。2013年の実験では、散らかった部屋にいた人の方が、ピンポン玉のより独創的な使い道を思いつきましたが、2019年のより大規模な研究では差が見られませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What does cortisol normally do during the day?
a stress hormone that normally drops from morning to evening とあるので C。
Q2. Which statement about the 2010 study is true?
the link was not clear for husbands とあるので B。相関であり因果の証明ではない。
Q3. What does the author suggest by saying "stress makes people too busy to tidy up"?
散らかり→ストレスではなく、ストレス→散らかりという逆の可能性を示しているので D。
Clutter is often blamed for stress. In a 2010 study, Darby Saxbe and Rena Repetti recorded working couples as they gave tours of their homes and then tracked their cortisol levels over several days. Normally, this stress hormone falls steadily from morning to evening. Wives who frequently used words such as "cluttered" or "unfinished" showed a flatter daily cortisol slope and a worsening mood as the day went on.
The design, however, was correlational: busy, stressed people may simply lack time to tidy, and the link was not clear among husbands. Neuroscience offers a possible mechanism. In 2011, researchers at Princeton showed that multiple objects in the visual field compete for the brain's processing power, though they tested shapes on a screen, not messy desks.
But disorder is not purely harmful. In a 2013 experiment, Kathleen Vohs and colleagues found that people in a tidy room were more likely to choose an apple and donate money, whereas those in a messy room generated more original ideas. However, when another team repeated the idea in 2019 with more participants and messy desks, creativity did not differ. For now, it seems wiser not to blame yourself for every bit of mess.
199 words ・ CEFR B2
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散らかりはしばしばストレスの原因だとされます。2010年の研究で、ダービー・サックスビーとリーナ・レペッティは、共働きの夫婦が自宅を案内する様子を記録し、その後数日間にわたってコルチゾールの値を追跡しました。通常、このストレスホルモンは朝から夜にかけて着実に下がっていきます。「散らかっている」「やりかけ」といった言葉をよく使った妻たちは、1日のコルチゾールの傾きがより平らで、日が進むにつれて気分が悪化しました。しかし、この研究は相関的な設計でした。
忙しくてストレスの多い人は単に片付ける時間がないのかもしれず、また夫たちでは関連がはっきりしませんでした。神経科学は一つの仕組みを示しています。2011年、プリンストン大学の研究者たちは、視界にある複数の物体が脳の処理能力を奪い合うことを示しました。
ただし、調べたのは画面の図形で、散らかった机ではありません。しかし、散らかりは害しかないわけではありません。2013年の実験で、キャスリーン・ヴォースらは、片付いた部屋にいた人はリンゴを選んだりお金を寄付したりしやすい一方、散らかった部屋にいた人はより独創的なアイデアを生み出すことを発見しました。しかし2019年に別のチームが、より多くの参加者と散らかった机を使ってこの考えを確かめ直したところ、創造性に差はありませんでした。今のところは、少しの散らかりのたびに自分を責めない方が賢明なようです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
ストレスとの関連は相関にとどまり、創造性の効果も追試で確かめられなかったという内容なので A。
Q2. What did the 2011 Princeton research show?
multiple objects in the visual field compete for the brain's processing power とあるので B。
Q3. Why should the 2013 findings be viewed cautiously?
when another team repeated the idea in 2019 with more participants ..., creativity did not differ とあるので C。
重要単語
- clutterC1名詞散らかり、ガラクタClutter on my desk distracts me.
動詞としても使い、be cluttered with ~「~で散らかっている」。declutter「片付ける」も最近よく使われる。 - cortisolC1名詞コルチゾール(ストレスホルモン)Cortisol usually drops toward evening.
副腎(cortex)から出るホルモン。stress hormone と言い換えられることが多い。 - correlationC1名詞相関Correlation does not prove causation.
co-(共に)+relation(関係)。相関は因果ではない、という指摘は科学系長文の頻出ポイント。 - distractionB2名詞気が散るものMy phone is my biggest distraction.
動詞 distract A from B「AをBから気をそらす」。dis-(離れて)+tract(引く)。 - creativityB2名詞創造性Can a messy room really boost creativity?
形容詞 creative。動詞 create。boost creativity「創造性を高める」のコロケーションで覚える。 - tidyB1形容詞・動詞きちんとした/片付けるI tidy up my desk every evening.
tidy up「片付ける」。反対語 messy / untidy。イギリス英語でよく使う。 - drainB2動詞(力などを)消耗させる、流出させるLong meetings drain my energy.
原義は「排水する」。brain drain「頭脳流出」も入試頻出。
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共働き夫婦の妻では、自分の家を「散らかってる」と話す人ほど、ストレスホルモンが1日を通して下がりにくかったという研究がある(ただし相関)。一方「散らかった部屋の方がアイデアが斬新になる」という有名な実験は、大人数の追試で再現されなかったらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Saxbe & Repetti (2010) No place like home: Home tours correlate with daily patterns of mood and cortisol, Personality and Social Psychology Bulletindoi.org
- McMains & Kastner (2011) Interactions of top-down and bottom-up mechanisms in human visual cortex, The Journal of Neurosciencedoi.org
- Vohs, Redden & Rahinel (2013) Physical order produces healthy choices, generosity, and conventionality, whereas disorder produces creativity, Psychological Sciencedoi.org
- Roster, Ferrari & Jurkat (2016) The dark side of home: Assessing possession 'clutter' on subjective well-being, Journal of Environmental Psychologydoi.org
- Manzi, Durmysheva, Pinegar, Rogers et al. (2019) Workspace disorder does not influence creativity and executive functions, Frontiers in Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













