語学・英語学習ホント

英語のつづりはヨーロッパの中でも難しかった。欧州13言語の比較で英語だけ2倍以上遅れた

英語のつづりはヨーロッパの中でも難しかった。欧州13言語の比較で英語だけ2倍以上遅れた

読む前に予想してみよう!

英語を母語とする子どもは、他のヨーロッパの言語の子どもと同じくらいの速さで、文字を読めるようになる

研究カード(どんな研究?)
対象
ヨーロッパ13言語の小学1〜2年生など
規模
人数は研究ごとに異なる
研究の種類
国際比較研究・脳画像研究・総説
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

欧州13言語の子どもの読み始めを比べると、多くは1年目で正確に読めたのに英語は2倍以上かかった。つづりと音の対応の複雑さが原因とされる。

ひとことで言うと英語のつづりは、ネイティブの子どもにも難しい。あなたが苦労するのは当然!

もくじ
  1. 13言語の子どもで「読み始め」を比べた
  2. 原因は「つづりの深さ」
  3. 脳の使い方まで変わる
  4. 日本人学習者へのヒント
  5. まとめ

「through」「though」「thought」「tough」。似たつづりなのに、発音はバラバラ。英語を勉強していると、つづりと発音の関係がめちゃくちゃだと感じる瞬間がありますよね。

実はこれ、日本人学習者だけの悩みではありません。ヨーロッパの研究で、英語のつづりは、英語を母語とする子どもにとっても「別格に難しい」ことが示されていたのです。

0113言語の子どもで「読み始め」を比べた

この差は、学校に入る年齢や、文字の知識の差では説明できなかったとされています。

02原因は「つづりの深さ」

研究者たちは、原因を「正書法の深さ(つづりの深さ)」にあると考えました。

  • 浅い正書法:つづりと音の対応がほぼ1対1。イタリア語やフィンランド語など。文字を見れば読み方がわかる
  • 深い正書法:同じつづりでも読み方が違ったり、同じ音に何通りものつづりがあったりする。英語はその代表

例えば英語の「ea」は、read、bread、great で全部違う音になります。逆に「イー」という音は、see、sea、piece、me、key など、いくつものつづりで書けます。

さらに英語は、「str」「ngths」のような子音の重なりが多いことも、読み始めの難しさにつながっていると考えられています。

規則的なつづり(左)と、英語のような複雑なつづり(右)
規則的なつづり(左)と、英語のような複雑なつづり(右)

03脳の使い方まで変わる

つづりのしくみの違いは、脳の使い方にも影響していました。

パウレズらの2000年の研究では、イタリア語の読み手と英語の読み手の脳の活動を比べました。すると、規則的なつづりのイタリア語を読む人は音の処理に関わる領域をより強く使い、英語を読む人は単語の形をまとまりで認識したり、意味を引き出したりする領域をより強く使っていたのです。

ジーグラーとゴスワミの2005年の総説は、これを「粒の大きさ」の違いとして説明しています。規則的な言語では1文字=1音の小さな粒で読めるが、英語では1文字では読み方が決まらないため、「ight」や単語まるごとのような大きな粒も使い分ける必要がある。その分、身につけるのに時間がかかるのです。

04日本人学習者へのヒント

この研究から、日本人学習者が受け取れるメッセージは2つあります。

  1. 英語のつづりが難しいのは、あなたのせいではない。英語圏の子どもも読みの基礎を身につけるのに時間がかかっている
  2. それでも、規則性はゼロではない。英語にも、ある程度予測できるパターン(「-ight」「-tion」など)がある

05まとめ

英語のつづりは、ヨーロッパの言語の中では特に難しい部類でした。ヨーロッパの子どもの比較では、英語の子どもは、読みの基礎を身につけるまでに、つづりが規則的な言語の子どもの2倍以上の時間がかかっていたのです。

だから、つづりで苦労するのは当然。よく出る文字のかたまりを覚え、例外は割り切る。この2つで、英語のつづりとうまく付き合っていきましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy do "through," "though" and "tough" sound so different? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Why do "through," "though" and "tough" sound so different? English spelling is famously irregular, and research shows it is hard even for native speakers. In 2003, Seymour and his colleagues tested children learning to read in 13 European languages.

In most languages, children could read familiar words and simple made-up words accurately before the end of their first school year. English was the clearest exception. English-speaking children took more than twice as long to build basic reading skills.

Researchers explain this with "orthographic depth." In languages such as Italian, each letter usually has one sound, but in English, letters like "ea" can be read in several ways. English also has many consonant clusters, which make early reading harder.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「through」「though」「tough」はなぜこんなに違う音になるのでしょうか。英語のつづりは不規則なことで有名で、研究によると、それはネイティブスピーカーにとってさえ難しいのです。2003年、シーモアらは、ヨーロッパの13の言語で読み方を学ぶ子どもたちをテストしました。

ほとんどの言語では、子どもたちは学校の1年目が終わる前に、よく知っている単語や簡単な作られた単語を正確に読めるようになっていました。英語は最も明らかな例外でした。英語を話す子どもたちは、読みの基礎的な力を身につけるのに2倍以上の時間がかかったのです。

研究者たちはこれを「正書法の深さ」で説明します。イタリア語のような言語では、1つの文字にはふつう1つの音しかありませんが、英語では「ea」のような文字がいくつもの読み方をされます。英語にはまた子音の連続が多く、それが読み始めをさらに難しくしています。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Seymour and his colleagues study?

Q2. According to the passage, what is true about Italian?

Q3. What does "orthographic depth" most likely refer to?

重要単語

  • orthographyC1
    名詞正書法(つづりのしくみ)English orthography is very irregular. ortho-(正しい)+ graphy(書くこと)。orthographic depth「正書法の深さ」はつづりと音の対応の複雑さを表す言語学用語。
  • spellingA2
    名詞つづりEnglish spelling does not always match the sound. spelling bee「つづり大会」は英語圏ならでは。アメリカでは全国大会も開かれている。
  • decodeC1
    動詞(文字を音に)解読するChildren learn to decode letters into sounds. de-(反対)+ code。読み研究では「文字列を音に変換すること」。反対の encode は「符号化する」。
  • consistentB2
    形容詞一貫したItalian spelling is very consistent. 反対語 inconsistent。be consistent with ~「~と一致する」は研究英語の頻出表現。
  • phonicsB2
    名詞フォニックス(つづりと音の対応を教える方法)Phonics helps children read new words. phone(音)から。英語圏の小学校で読み方の基礎として教えられる。日本人学習者の発音・つづり学習にも有効。
  • irregularB1
    形容詞不規則なMany common English words have irregular spellings. irregular verb「不規則動詞」でおなじみ。ir-(否定)+ regular。
  • lag behindC1
    動詞(句)遅れをとるEnglish-speaking children lagged behind in early reading. lag は「遅れ」。time lag「時間のずれ」、jet lag「時差ぼけ」も同じ語。

4コマでわかる

英語のつづりはヨーロッパの中でも難しかった。欧州13言語の比較で英語だけ2倍以上遅れたの4コマ漫画
ヨーロッパ13言語の子どもで「読みの基礎」が身につく速さを比べたら、多くの国は1年生のうちに正確に読めるようになったのに、英語の子は2倍以上かかったらしい。英語のつづりが難しいのは、英語圏の子どもにとっても同じだった。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Seymour, Aro & Erskine (2003) Foundation literacy acquisition in European orthographies. British Journal of Psychologydoi.org
  2. Ziegler & Goswami (2005) Reading acquisition, developmental dyslexia, and skilled reading across languages: A psycholinguistic grain size theory. Psychological Bulletindoi.org
  3. Paulesu et al. (2000) A cultural effect on brain function. Nature Neurosciencedoi.org