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ツタンカーメンの死因は暗殺?事故? CTとDNAが見つけた「もう1つの答え」

ツタンカーメンの死因は暗殺?事故? CTとDNAが見つけた「もう1つの答え」

読む前に予想してみよう!

ツタンカーメンのお墓からは、100本を超える杖が見つかっている

研究カード(どんな研究?)
対象
ツタンカーメンと王家のミイラ
規模
新王国時代の王家のミイラ16体(うち近親候補11体)
研究の種類
CT・古代DNA解析
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

頭の骨片から広まった「暗殺説」は、CTで死後の損傷とされた。DNAとCTの調査ではマラリアの痕跡や足の病気が報告され、複数要因説が浮上。決着はまだ。

ひとことで言うとツタンカーメンの死の理由は、暗殺じゃなくて病気やケガの組み合わせかも?

もくじ
  1. 1922年、ほぼ手つかずの墓が見つかった
  2. 「暗殺説」はどこから?
  3. CTが見つけた「足の骨折」
  4. DNAが明かした「病気」の数々
  5. でも、まだ「決着」ではない
  6. まとめ

黄金のマスクで知られる古代エジプトの少年王、ツタンカーメン。わずか18〜19歳ほどで亡くなったと考えられています。

若すぎる死。しかも王様。そこから、「誰かに暗殺されたのでは?」という説がささやかれてきました。

でも、現代の医療技術で調べてみると、見えてきたのはもっと地味で、でも切実な「別の答え」でした。今日は、3300年前の王様の「死因ミステリー」を追いかけます。

011922年、ほぼ手つかずの墓が見つかった

ツタンカーメンが王位にあったのは、紀元前14世紀。在位はおよそ10年と考えられています。

彼が世界的に有名になったのは、1922年、イギリスの考古学者ハワード・カーターが、エジプトの「王家の谷」でほぼ盗掘されていない王墓を発見したからです。多くの王墓が古代に荒らされてしまった中、黄金の棺や宝物がほぼそのまま残っていたのです。

02「暗殺説」はどこから?

暗殺説のきっかけは、1968年にイギリス・リバプール大学の解剖学者ロナルド・ハリソンらが行ったX線撮影でした。ミイラの頭の中に骨のかけらが写っていたのです。

「頭を殴られたのでは?」――この発見から、ツタンカーメンは誰かに殺されたのではないか、という説が一気に広まりました。若い王の死と権力争い。物語としては、とても魅力的ですよね。

03CTが見つけた「足の骨折」

2005年のCT調査では、別の手がかりも見つかりました。左の太ももの骨折です。

調査チームは、この骨折が亡くなる少し前にできたものかもしれず、傷口から感染が広がった可能性を指摘しました。一方で、これもミイラづくりの過程でできた傷だとする意見もあり、専門家の間でも見方が分かれています。

04DNAが明かした「病気」の数々

壊死とは、血のめぐりが悪くなって組織が死んでしまうことです。つまりツタンカーメンは、足の病気で歩くのが不自由だった可能性があります。

これを裏づけるように、ツタンカーメンのお墓からは、130本ほどの杖が見つかっています。中には、実際に使われたような跡があるものもあるといわれます。

研究チームは、「足の病気で弱っていたところに、マラリアにかかり、さらに骨折が重なった」というように、いくつもの要因が重なって命を落とした可能性を提案しました。

お墓からはたくさんの杖が見つかった。王は杖を手放せなかったのかもしれない
お墓からはたくさんの杖が見つかった。王は杖を手放せなかったのかもしれない

05でも、まだ「決着」ではない

ただし、この2010年の研究にも、反論や疑問が寄せられています。

たとえばドイツの研究者からは、「足の骨の病気は、鎌状赤血球症という血液の病気のせいではないか」という意見が同じ医学誌に寄せられました。また、デンマークの古代DNAの専門家らからは、高温のエジプトで3000年以上保存されたミイラのDNAは壊れていたり、現代の人のDNAがまじっていたりしやすく、使われた分析法(マイクロサテライト)では確かめきれない、という疑問も示されています。

ほかにも、太ももの骨折を手がかりにした戦車からの転落事故説など、さまざまな説が今も議論されています。ただし、ツタンカーメンの墓からは戦車も見つかっていて、足が不自由だったとすれば戦車に乗れたのか、という点も含めて意見は分かれています。

06まとめ

  • ツタンカーメンは18〜19歳ほどで亡くなったと考えられている
  • 「頭を殴られて暗殺された」説は、CT調査で根拠が弱まった
  • DNAとCTの調査では、マラリアの痕跡や足の骨の病気が報告された(ただしDNA分析の確かさには疑問の声も)
  • 複数の要因が重なった可能性があるが、最終的な決着はまだついていない

3300年前の少年王の死は、今も科学者たちが新しい技術で挑み続けるミステリーです。わかりやすい「暗殺」の物語よりも、杖をついて歩いていたかもしれない若い王の姿のほうが、どこか人間らしく感じられませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTutankhamun became famous in 1922, when Howard Carter found his tomb almost untouched. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Tutankhamun became famous in 1922, when Howard Carter found his tomb almost untouched. Because the king died young, at about 18 or 19, many people believed he was murdered. This idea began in 1968, when an X-ray showed bone pieces inside his skull.

However, a CT scan in 2005 suggested that the damage likely happened after death, during mummification or when his body was examined in 1925. In 2010, a DNA and CT study reported signs of severe malaria and a bone disease in his left foot. About 130 walking sticks were found in his tomb. The researchers suggested that several problems together may have caused his death.

108 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ツタンカーメンが有名になったのは1922年、ハワード・カーターがほとんど手つかずの彼の墓を見つけたときです。王は18〜19歳ほどと若くして亡くなったので、多くの人は彼が暗殺されたと信じていました。この考えは1968年、X線写真で頭蓋骨の中に骨のかけらが写ったことから始まりました。

しかし2005年のCTスキャンは、その損傷はミイラづくりの間や、1925年に遺体が調べられたときなど、死後に生じた可能性が高いことを示しました。2010年には、DNAとCTを用いた研究が重いマラリアの痕跡と左足の骨の病気を報告しました。墓からは約130本の杖が見つかっています。研究者たちは、いくつかの問題が重なって死に至ったのかもしれないと提案しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What started the murder theory?

Q3. Why might so many walking sticks have been in the tomb?

重要単語

  • mummyB1
    名詞ミイラThe mummy was examined with a CT scanner. mummification(ミイラ化)。イギリス英語の mummy「ママ」と同じつづりなので文脈で判断する。
  • pharaohB2
    名詞ファラオ(古代エジプトの王)Tutankhamun became pharaoh as a child. 発音は /ˈfeəroʊ/。ph は f の音になる。
  • malariaB2
    名詞マラリアDNA from the malaria parasite was found in the mummy. イタリア語 mala aria(悪い空気)が語源。実際は蚊が媒介する寄生虫(parasite)による病気。
  • fractureC1
    名詞骨折A fracture was found in his left thigh bone. fract(壊す)が語源。fraction(分数・一部分)、fragile(壊れやすい)と同じ仲間。
  • cause of deathB2
    名詞(句)死因His cause of death is still a mystery. the leading cause of death「死因の第1位」は健康系長文の定番表現。
  • embalmC1
    動詞(遺体に)防腐処理をするEgyptians embalmed the bodies of their kings. balm(香油)を塗ることが原義。名詞 embalming。発音は /ɪmˈbɑːm/(l は発音しない)。

動画でもっと知る

ツタンカーメンの死因、「暗殺された」説が有名だけど、CTやDNAで調べたらマラリアの痕跡や足の病気が見つかったらしい。お墓に杖が大量に入ってた理由も見えてくる。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Hawass et al. (2010) Ancestry and Pathology in King Tutankhamun's Family, JAMAdoi.org
  2. Timmann & Meyer (2010) King Tutankhamun's Family and Demise(レター:鎌状赤血球症説), JAMAdoi.org
  3. Lorenzen & Willerslev (2010) King Tutankhamun's Family and Demise(レター:古代DNA分析への疑問), JAMAdoi.org