ツタンカーメンの死因は暗殺?事故? CTとDNAが見つけた「もう1つの答え」

読む前に予想してみよう!
ツタンカーメンのお墓からは、100本を超える杖が見つかっている
杖は130本ほど見つかったとされる。足に病気があり、杖をついて歩いていた可能性が指摘されている。
- 対象
- ツタンカーメンと王家のミイラ
- 規模
- 新王国時代の王家のミイラ16体(うち近親候補11体)
- 研究の種類
- CT・古代DNA解析
- 確かさ
- ★★☆☆☆
頭の骨片から広まった「暗殺説」は、CTで死後の損傷とされた。DNAとCTの調査ではマラリアの痕跡や足の病気が報告され、複数要因説が浮上。決着はまだ。
ひとことで言うとツタンカーメンの死の理由は、暗殺じゃなくて病気やケガの組み合わせかも?
黄金のマスクで知られる古代エジプトの少年王、ツタンカーメン。わずか18〜19歳ほどで亡くなったと考えられています。
若すぎる死。しかも王様。そこから、「誰かに暗殺されたのでは?」という説がささやかれてきました。
でも、現代の医療技術で調べてみると、見えてきたのはもっと地味で、でも切実な「別の答え」でした。今日は、3300年前の王様の「死因ミステリー」を追いかけます。
011922年、ほぼ手つかずの墓が見つかった
ツタンカーメンが王位にあったのは、紀元前14世紀。在位はおよそ10年と考えられています。
彼が世界的に有名になったのは、1922年、イギリスの考古学者ハワード・カーターが、エジプトの「王家の谷」でほぼ盗掘されていない王墓を発見したからです。多くの王墓が古代に荒らされてしまった中、黄金の棺や宝物がほぼそのまま残っていたのです。
02「暗殺説」はどこから?
暗殺説のきっかけは、1968年にイギリス・リバプール大学の解剖学者ロナルド・ハリソンらが行ったX線撮影でした。ミイラの頭の中に骨のかけらが写っていたのです。
「頭を殴られたのでは?」――この発見から、ツタンカーメンは誰かに殺されたのではないか、という説が一気に広まりました。若い王の死と権力争い。物語としては、とても魅力的ですよね。
03CTが見つけた「足の骨折」
2005年のCT調査では、別の手がかりも見つかりました。左の太ももの骨折です。
調査チームは、この骨折が亡くなる少し前にできたものかもしれず、傷口から感染が広がった可能性を指摘しました。一方で、これもミイラづくりの過程でできた傷だとする意見もあり、専門家の間でも見方が分かれています。
04DNAが明かした「病気」の数々
壊死とは、血のめぐりが悪くなって組織が死んでしまうことです。つまりツタンカーメンは、足の病気で歩くのが不自由だった可能性があります。
これを裏づけるように、ツタンカーメンのお墓からは、130本ほどの杖が見つかっています。中には、実際に使われたような跡があるものもあるといわれます。
研究チームは、「足の病気で弱っていたところに、マラリアにかかり、さらに骨折が重なった」というように、いくつもの要因が重なって命を落とした可能性を提案しました。

05でも、まだ「決着」ではない
ただし、この2010年の研究にも、反論や疑問が寄せられています。
たとえばドイツの研究者からは、「足の骨の病気は、鎌状赤血球症という血液の病気のせいではないか」という意見が同じ医学誌に寄せられました。また、デンマークの古代DNAの専門家らからは、高温のエジプトで3000年以上保存されたミイラのDNAは壊れていたり、現代の人のDNAがまじっていたりしやすく、使われた分析法(マイクロサテライト)では確かめきれない、という疑問も示されています。
ほかにも、太ももの骨折を手がかりにした戦車からの転落事故説など、さまざまな説が今も議論されています。ただし、ツタンカーメンの墓からは戦車も見つかっていて、足が不自由だったとすれば戦車に乗れたのか、という点も含めて意見は分かれています。
06まとめ
- ツタンカーメンは18〜19歳ほどで亡くなったと考えられている
- 「頭を殴られて暗殺された」説は、CT調査で根拠が弱まった
- DNAとCTの調査では、マラリアの痕跡や足の骨の病気が報告された(ただしDNA分析の確かさには疑問の声も)
- 複数の要因が重なった可能性があるが、最終的な決着はまだついていない
3300年前の少年王の死は、今も科学者たちが新しい技術で挑み続けるミステリーです。わかりやすい「暗殺」の物語よりも、杖をついて歩いていたかもしれない若い王の姿のほうが、どこか人間らしく感じられませんか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTutankhamun became famous in 1922, when Howard Carter found his tomb almost untouched.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Tutankhamun was a young king of ancient Egypt. He died at about 18 or 19 years old. Some people thought someone hit him on the head and killed him.
But CT scans showed that the damage probably happened after he died. DNA and CT tests found signs of malaria and a problem in his foot. Over 100 walking sticks were found in his tomb. No one knows for sure how he died.
72 words ・ CEFR A2
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ツタンカーメンは古代エジプトの若い王でした。彼は18〜19歳ほどで亡くなりました。誰かが彼の頭を殴って殺したと考える人もいました。
しかしCTスキャンでは、その損傷はおそらく彼が亡くなった後にできたものだとわかりました。DNAとCTの検査では、マラリアの痕跡と足の問題が見つかりました。彼の墓からは100本を超える杖が見つかりました。彼がどのように亡くなったのか、確かなことは誰にもわかっていません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
若くして亡くなったツタンカーメンの死因をめぐる話なので B。
Q2. About how old was Tutankhamun when he died?
He died at about 18 or 19 years old. とあるので A。
Q3. In this passage, "for sure" means ...
for sure は「確かに・はっきりと」。死因はまだ確実にはわからない、という意味なので C。
Tutankhamun became famous in 1922, when Howard Carter found his tomb almost untouched. Because the king died young, at about 18 or 19, many people believed he was murdered. This idea began in 1968, when an X-ray showed bone pieces inside his skull.
However, a CT scan in 2005 suggested that the damage likely happened after death, during mummification or when his body was examined in 1925. In 2010, a DNA and CT study reported signs of severe malaria and a bone disease in his left foot. About 130 walking sticks were found in his tomb. The researchers suggested that several problems together may have caused his death.
108 words ・ CEFR B1
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ツタンカーメンが有名になったのは1922年、ハワード・カーターがほとんど手つかずの彼の墓を見つけたときです。王は18〜19歳ほどと若くして亡くなったので、多くの人は彼が暗殺されたと信じていました。この考えは1968年、X線写真で頭蓋骨の中に骨のかけらが写ったことから始まりました。
しかし2005年のCTスキャンは、その損傷はミイラづくりの間や、1925年に遺体が調べられたときなど、死後に生じた可能性が高いことを示しました。2010年には、DNAとCTを用いた研究が重いマラリアの痕跡と左足の骨の病気を報告しました。墓からは約130本の杖が見つかっています。研究者たちは、いくつかの問題が重なって死に至ったのかもしれないと提案しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
CTで暗殺説の根拠が弱まり、DNAとCTの調査で病気の痕跡が見つかった、という内容なので D。
Q2. What started the murder theory?
This idea began in 1968, when an X-ray showed bone pieces inside his skull. とあるので B。
Q3. Why might so many walking sticks have been in the tomb?
左足の骨の病気が報告されていることから、歩くのに杖が必要だった可能性が推論できるので A。
Tutankhamun, who died at about 18 or 19 in the 14th century BC, has long been rumored to have been murdered. The theory arose from a 1968 X-ray revealing bone fragments inside his skull, but a 2005 CT study concluded that this damage most likely occurred after death, during embalming or Howard Carter's 1925 examination; notably, the fragments were not embedded in the hardened embalming resin. The scans also revealed a fracture in the left thigh bone, which some researchers think occurred shortly before death and may have become infected, though others attribute it to mummification.
In 2010, a team led by Zahi Hawass published DNA and CT analyses of royal mummies, reporting genetic traces of the parasite that causes severe malaria and a bone disease that had damaged part of the king's left foot. Combined with the roughly 130 walking sticks found in his tomb, this suggests a frail king whose death resulted from several factors. However, critics proposed sickle cell disease as an alternative, and ancient-DNA specialists warned that DNA kept for over 3,000 years in Egypt's heat is likely degraded or contaminated, making the methods used unreliable.
190 words ・ CEFR B2
和訳を見る
紀元前14世紀に18〜19歳ほどで亡くなったツタンカーメンには、暗殺されたといううわさが長くつきまとってきました。この説は1968年のX線写真で頭蓋骨の中に骨片が写ったことから生まれましたが、2005年のCT調査は、この損傷は死後、つまり防腐処理の間か1925年のハワード・カーターの調査の際に生じた可能性が最も高いと結論づけました。注目すべきことに、骨片は固まった防腐用の樹脂の中に埋まっていなかったのです。スキャンでは左の太ももの骨の骨折も見つかりました。
これは死の少し前に生じて感染した可能性があると考える研究者もいますが、ミイラづくりによるものとする研究者もいます。2010年、ザヒ・ハワス率いるチームは王家のミイラのDNAとCTの分析を発表し、重いマラリアを引き起こす寄生虫の遺伝的な痕跡と、王の左足の一部を傷めていた骨の病気を報告しました。墓から見つかった約130本の杖とあわせると、これは、いくつかの要因が重なって亡くなった体の弱い王の姿を示唆しています。しかし批判者たちは別の可能性として鎌状赤血球症を挙げ、古代DNAの専門家たちは、エジプトの暑さの中で3000年以上保存されたDNAは壊れていたり汚染されていたりする可能性が高く、使われた方法は信頼できないと警告しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
暗殺説は弱まったが、DNA分析にも疑問があり死因は決着していない、という内容なので C。
Q2. Why did the 2005 study conclude that the skull damage happened after death?
the fragments were not embedded in the hardened embalming resin が根拠として挙げられているので D。
Q3. What concern did ancient-DNA specialists raise?
DNA ... is likely degraded or contaminated と警告しているので B。
重要単語
- mummyB1名詞ミイラThe mummy was examined with a CT scanner.
mummification(ミイラ化)。イギリス英語の mummy「ママ」と同じつづりなので文脈で判断する。 - pharaohB2名詞ファラオ(古代エジプトの王)Tutankhamun became pharaoh as a child.
発音は /ˈfeəroʊ/。ph は f の音になる。 - malariaB2名詞マラリアDNA from the malaria parasite was found in the mummy.
イタリア語 mala aria(悪い空気)が語源。実際は蚊が媒介する寄生虫(parasite)による病気。 - fractureC1名詞骨折A fracture was found in his left thigh bone.
fract(壊す)が語源。fraction(分数・一部分)、fragile(壊れやすい)と同じ仲間。 - cause of deathB2名詞(句)死因His cause of death is still a mystery.
the leading cause of death「死因の第1位」は健康系長文の定番表現。 - embalmC1動詞(遺体に)防腐処理をするEgyptians embalmed the bodies of their kings.
balm(香油)を塗ることが原義。名詞 embalming。発音は /ɪmˈbɑːm/(l は発音しない)。
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ツタンカーメンの死因、「暗殺された」説が有名だけど、CTやDNAで調べたらマラリアの痕跡や足の病気が見つかったらしい。お墓に杖が大量に入ってた理由も見えてくる。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











