地球・歴史・物理

ライデンフロスト効果とは? 熱すぎるフライパンで水玉が踊る理由は「蒸気のじゅうたん」だった

ライデンフロスト効果とは? 熱すぎるフライパンで水玉が踊る理由は「蒸気のじゅうたん」だった

読む前に予想してみよう!

フライパンは熱ければ熱いほど、落とした水滴はすぐに蒸発する

研究カード(どんな研究?)
対象
水やさまざまな液体の液滴
規模
実験室での物理実験
研究の種類
実験研究・総説
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

ライデンフロスト効果とは、とても熱い面に落とした水滴の下に蒸気の膜ができて浮き、すぐ蒸発せず転がる現象。ギザギザの面では水滴が自分で走り出す。

ひとことで言うと熱すぎる鉄板では、水玉が自分の湯気の上に乗ってスイスイすべる!

もくじ
  1. ライデンフロスト効果の仕組み:水玉は「浮いて」いた
  2. なぜ「熱いほうが長持ち」するの?
  3. ギザギザの面で、水滴が勝手に走り出した
  4. どんでん返し:蒸気の膜を「消さない」技術
  5. まとめ

熱したフライパンに水をたらしたら、「ジュッ」と消えずに、丸い水玉がコロコロと踊りまわった――料理中に見たことがある人も多いはず。

この現象がライデンフロスト効果です。ひとことで言うと、とても熱い面に水滴が触れた瞬間、水滴の底がいっきに蒸発して「蒸気のじゅうたん」ができ、水滴がその上に浮いてしまう現象。蒸気の膜が熱を伝えにくくするため、水滴は100℃を少し超える程度の面に落としたときより長生きし、摩擦もほとんどなく滑りまわります。

01ライデンフロスト効果の仕組み:水玉は「浮いて」いた

名前の由来は、18世紀のドイツの医師ヨハン・ゴットロープ・ライデンフロスト。1756年に、熱した鉄のスプーンに落とした水滴がなかなか蒸発しないことを記録しました。

フライパンの温度がそこまで高くないとき(100℃を少し超えるくらい)、水滴は面にべったり触れて、泡を立てながらジュワッと激しく沸騰し、すぐに消えます。ところが温度をどんどん上げていくと、ある温度を境に様子が一変。水滴の底が触れた瞬間に蒸発し、その蒸気が水滴を下から支えるクッションになるのです。

この境目の温度をライデンフロスト点と呼びます。水の場合はおおむね200℃前後と言われますが、面の素材やザラザラ具合、汚れによって大きく変わります。

水滴の下にできた蒸気の膜が、クッションと断熱材の役割をする
水滴の下にできた蒸気の膜が、クッションと断熱材の役割をする

02なぜ「熱いほうが長持ち」するの?

直感に反するのがここ。ライデンフロスト点を超えるほど熱い面のほうが、100℃を少し超える程度の面より、水滴は長く生き残るのです。

理由は、蒸気が熱を伝えにくいから。水が直接鉄に触れていれば熱はどんどん流れ込みますが、薄い蒸気の層をはさむと、熱の伝わり方がぐっと悪くなります。おかげで水滴は、底から少しずつ蒸発しながら、数十秒から数分も転がり続けることがあります。

フランスの物理学者ケレらは、この「浮かぶ水滴」を詳しく調べ、水滴の大きさには上限があること、蒸気の膜の厚さが水滴の大きさや蒸発とともに変わることなどを明らかにしてきました。

03ギザギザの面で、水滴が勝手に走り出した

実験映像では、液滴がまるで坂道を登っていくようにも見え、大きな話題になりました。摩擦がほとんどない「浮いた水滴」だからこそ、わずかな力で動かせるのです。

04どんでん返し:蒸気の膜を「消さない」技術

ライデンフロスト効果は、料理の豆知識だけではありません。

たとえば、熱い金属を水で冷やす「焼き入れ」では、蒸気の膜が邪魔をして冷え方がムラになることがあります。逆に、2012年のNature 誌の研究では、表面を超はっ水性に加工した熱い金属球を水に入れると、温度が下がっても蒸気の膜が壊れず、爆発的な沸騰が起きなかったと報告されています。蒸気の膜を「消す」技術と「保つ」技術、どちらも研究が続いているのです。

05まとめ

ライデンフロスト効果とは、熱すぎる面の上で水滴が「自分の蒸気のじゅうたん」に乗って浮く現象。だから熱いほうが長持ちし、摩擦なくスイスイ転がります。

次に料理をするとき、フライパンの上で踊る水玉を見かけたら、その下にある見えない蒸気のクッションを想像してみてください。台所は、いつだって物理の実験室です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Leidenfrost effect is named after a German doctor who described it in 1756. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The Leidenfrost effect is named after a German doctor who described it in 1756. When a drop of water falls on a pan that is only a little above 100°C, it boils noisily and disappears quickly.

But when the pan is much hotter, the bottom of the drop turns into vapor at once, and this vapor lifts the drop. The temperature where this starts is called the Leidenfrost point, which is around 200°C for water, although it depends on the surface. Since vapor does not carry heat well, the drop can survive for tens of seconds or even minutes. In 2006, scientists found that drops on a saw-tooth surface move by themselves in one direction.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ライデンフロスト効果は、1756年にこの現象を記録したドイツの医師にちなんで名づけられました。100℃を少し超えるくらいのフライパンに水滴が落ちると、音を立てて沸騰し、すぐに消えてしまいます。

しかしフライパンがずっと熱いと、水滴の底が一瞬で蒸気に変わり、その蒸気が水滴を持ち上げます。これが始まる温度はライデンフロスト点と呼ばれ、水の場合は約200℃ですが、面の状態によって変わります。蒸気は熱をあまり伝えないので、水滴は数十秒、ときには数分も残ることがあります。2006年、科学者たちは、のこぎりの歯のような形の面の上では、水滴が自分で一方向に動くことを発見しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. Roughly what is the Leidenfrost point for water?

Q3. Why does a drop on a very hot pan last longer than on a warm one?

重要単語

  • levitateC1
    動詞浮かぶ、浮揚するThe drop levitates on a cushion of vapor. ラテン語 levis(軽い)から。lever(てこ)、elevator(持ち上げるもの)と同語源。名詞 levitation。
  • vaporB2
    名詞蒸気A thin layer of vapor forms under the drop. 英国式つづりは vapour。water vapor「水蒸気」。動詞 vaporize(気化させる)。
  • frictionB2
    名詞摩擦Without friction, the drop slides easily. 物理の「摩擦」のほか、「(人間関係の)あつれき」の意味でも頻出。friction between A and B。
  • evaporateB2
    動詞蒸発するWater evaporates faster when it is hot. e-(外へ)+vapor(蒸気)。名詞 evaporation。「(希望などが)消えうせる」という比喩でも使う。
  • ratchetC1
    名詞のこぎり歯状の仕組みThe ratchet surface pushes the drop in one direction. 一方向にだけ回る歯車の仕組み。ratchet up は「(少しずつ)引き上げる」という動詞句でニュースにも出る。
  • boiling pointB1
    名詞(句)沸点The pan was far above the boiling point of water. melting point(融点)、freezing point(凝固点)とセットで。比喩で「我慢の限界」の意味もある。
熱したフライパンに水を落とすと、ジュッと消えずに水玉がコロコロ踊ることがある。あれが「ライデンフロスト効果」。水玉は自分の蒸気の上に浮いていて、ギザギザの面に置くと坂を“登る”ように走り出すことまで確かめられていた。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Quéré (2013) Leidenfrost Dynamics, Annual Review of Fluid Mechanicsdoi.org
  2. Biance, Clanet & Quéré (2003) Leidenfrost drops, Physics of Fluidsdoi.org
  3. Linke, Alemán, Melling et al. (2006) Self-Propelled Leidenfrost Droplets, Physical Review Lettersdoi.org
  4. Vakarelski, Patankar, Marston, Chan & Thoroddsen (2012) Stabilization of Leidenfrost vapour layer by textured superhydrophobic surfaces, Naturedoi.org