歩く速さで寿命が予測できる? 3万4000人のデータが示した「歩行速度」というサイン

読む前に予想してみよう!
ふだんの歩く速さは、高齢者の将来の健康状態と関係がある
多くの研究で、歩く速さが遅い人ほど死亡リスクが高い傾向が見られる。ただし歩く速さは「原因」より「サイン」と考えられている。
- 対象
- 65歳以上の地域住民
- 規模
- 3万4485人(9研究の統合)
- 研究の種類
- 前向きコホート研究の統合解析
- 確かさ
- ★★★★☆
65歳以上の約3万4000人の分析で、歩く速さが秒速0.1m速いごとに死亡リスクが約12%低かった。ただし「速く歩けば長生きする」と証明されたわけではない。
ひとことで言うと歩く速さは、体全体の元気さをうつす「鏡」みたいなもの!
駅まで歩くとき、あなたは周りの人を追い抜くタイプ? それとも追い抜かれるタイプ?
何気ない「歩く速さ」ですが、実は医学の世界では健康状態を映す重要なサインとして注目されています。ある研究者は、歩く速さを血圧や脈拍に続く「第6のバイタルサイン(生命の兆候)」と呼ぶほどです。
ただし、その意味を正しく読むには、ちょっとしたコツがいります。
013万4000人のデータが示したこと
さらに、年齢と性別に歩く速さを組み合わせるだけで、持病や血圧などをたくさん使った予測と同じくらいの精度で、その後の生存を予測できたといいます。
測り方はとても簡単です。数メートルの直線を、ふだんどおりのペースで歩いてもらい、かかった時間を測るだけ。特別な機械はいりません。
02早足の人は「体型に関係なく」長生き傾向
イギリスの約47万5000人の大規模データ(UKバイオバンク)を使った2019年の研究では、自分で「早足」と答えた人は、やせ型でも太め体型でも、「ゆっくり」と答えた人より平均余命が長い傾向がありました。
早足の人の平均余命は、45歳時点の推計で、女性では86.7〜87.8歳、男性では85.2〜86.8歳。体型(BMI)による差は小さく、早足の人はどの体型でも長い平均余命を保っていたのです。
2022年には同じデータで、早足の人ほど、細胞の老化の目安とされる「テロメア」が長いという関連も報告されました。遺伝子を使った解析では、歩く速さがテロメアの長さに影響している可能性が示されています。

03「速く歩けば長生き」とは限らない理由
ここで注意したいのは、歩く速さは結果であって、原因とは限らないということです。
速く歩くには、心臓と肺が十分な酸素を送り、脚の筋肉が力を出し、神経がバランスを保ち、関節が痛まないことが必要です。つまり歩く速さは、体のたくさんの仕組みがまとめて元気かどうかを映す「鏡」のようなもの。
病気が隠れていれば、自然と歩くのは遅くなります。だから「遅い人は寿命が短い」という関係には、そうした隠れた病気が関わっていると考えられます。無理に速く歩いても、隠れた病気が治るわけではありません。
それでも、日ごろからややきびきびと歩く習慣は、心肺の力や脚の筋力を保つ運動になります。歩く速さの研究は、「体の元気を保つことの大切さ」を数字で見せてくれていると考えるとよいでしょう。
アジアの筋肉の衰え(サルコペニア)の診断基準では、歩く速さが秒速1.0m未満であることが、体の機能が落ちているサインの一つとされています。横断歩道の青信号の間に渡りきれるかどうかも、身近な目安になります。
04まとめ
歩く速さは、寿命を決める「原因」というより、体全体の元気さを映す「サイン」と考えられています。
だからこそ、日ごろから体を動かして、気持ちよくきびきび歩ける体を保つこと。それが、サインを良い方向に保ついちばんの方法です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSome doctors call walking speed the "sixth vital sign" because it says a lot about our health.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Do you walk fast or slowly? Your walking speed may tell doctors about your health. Researchers looked at data from about 34,000 people aged 65 or older. People who walked faster usually lived longer. It is easy to test.
You just walk a few meters at your normal speed. But walking fast may not make you live longer. A fast walk is a sign that your body is healthy.
69 words ・ CEFR A2
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あなたは速く歩きますか、それともゆっくり歩きますか。歩く速さは、医師にあなたの健康について教えてくれるかもしれません。研究者たちは、65歳以上の約3万4000人のデータを調べました。速く歩く人ほど、たいてい長生きしていました。
調べるのは簡単で、ふだんの速さで数メートル歩くだけです。でも、速く歩けば長生きできるとは限りません。速く歩けることは、体が健康だというサインなのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
歩く速さが健康や寿命のサインになるという話なので A。
Q2. How old were the people in the study?
about 34,000 people aged 65 or older とあるので D。34は人数(約3万4000人)の数字。
Q3. In this passage, "sign" means ...
sign は「しるし・兆候」。速く歩けることは体が健康だと示すもの、なので B。
Some doctors call walking speed the "sixth vital sign" because it says a lot about our health. In a 2011 study, researchers combined data from nine studies of 34,485 people aged 65 or older, who were followed for 6 to 21 years. For every 0.1 meters per second faster that people usually walked, their risk of death was about 12% lower.
A British study of about 475,000 people also found that people who said they were brisk walkers tended to live longer, whether they were thin or heavy. However, walking speed is probably a sign rather than a cause. Fast walking needs a healthy heart, lungs, muscles and nerves, so slow walking may simply show hidden illness.
117 words ・ CEFR B1
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歩く速さは私たちの健康について多くを語るため、「第6のバイタルサイン」と呼ぶ医師もいます。2011年の研究では、研究者たちが65歳以上の3万4485人を対象とした9つの研究のデータをまとめました。参加者は6〜21年間追跡されていました。ふだんの歩く速さが秒速0.1m速いごとに、死亡リスクは約12%低くなっていました。
イギリスの約47万5000人の研究でも、自分は早足だと答えた人は、やせていても太めでも、長生きする傾向があることがわかりました。しかし、歩く速さはおそらく原因ではなくサインです。速く歩くには健康な心臓、肺、筋肉、神経が必要なので、ゆっくり歩くことは単に隠れた病気を示しているのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
歩く速さと死亡リスクの関連を示しつつ、原因ではなくサインだろうとまとめているので C。
Q2. What was linked to an about 12% lower risk of death?
For every 0.1 meters per second faster ..., their risk of death was about 12% lower とあるので B。
Q3. Why might slow walking be linked to a shorter life?
最終文 slow walking may simply show hidden illness とあるので D。
A tenth of a meter per second does not sound like much. But a 2011 pooled analysis of nine cohorts, covering 34,485 adults aged 65 or older, followed for 6 to 21 years, found that each 0.1 meter-per-second increase in usual gait speed was linked to about a 12 percent lower risk of death.
Age, sex and gait speed together predicted survival about as accurately as models built on many chronic conditions and clinical measurements. Results like these support calling walking speed the "sixth vital sign." In the UK Biobank, self-described brisk walkers had a longer estimated life expectancy than slow walkers, whatever their body mass index. A 2022 genetic analysis went further, proposing that a brisker pace may help preserve telomeres, a marker of cellular aging.
The UK figures rest on self-reported pace, though, and the studies pooled in 2011 measured speed in different ways. Speed also works more like a summary than a cause. It reflects how well the heart, lungs, muscles, nerves and joints work together, and hidden disease slows people down on its own. Walking faster on purpose will not cure it. A habit of moderately brisk walking does keep those systems in use.
198 words ・ CEFR B2
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秒速0.1メートルと聞いても、たいした差には思えません。しかし、9つのコホートをまとめた2011年の統合解析は、65歳以上の成人3万4485人を6〜21年追跡したもので、ふだんの歩行速度が秒速0.1m上がるごとに死亡リスクが約12%低いという関連を見いだしました。
年齢、性別、歩行速度の3つを合わせると、多くの持病や臨床的な測定値をもとにしたモデルとほぼ同じ精度で生存を予測できました。こうした結果は、歩く速さを「第6のバイタルサイン」と呼ぶ根拠になっています。UKバイオバンクでは、自分は早足だと答えた人は、BMIにかかわらず、ゆっくり歩く人より推定平均余命が長くなっていました。2022年の遺伝学的な解析はさらに踏みこみ、きびきびした歩き方が、細胞の老化の目安であるテロメアを保つ助けになるかもしれないと提案しました。
ただし、イギリスの数字は自己申告のペースにもとづいており、2011年にまとめられた研究はそれぞれ異なる方法で速さを測っていました。また、速さは原因というより、まとめの指標のような働きをします。心臓、肺、筋肉、神経、関節がどれだけうまく連携しているかを反映しており、隠れた病気があればそれだけで人は遅くなります。わざと速く歩いても、その病気が治るわけではありません。それでも、ややきびきびと歩く習慣は、それらの体の仕組みをしっかり使い続けることになります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
歩行速度が全身の健康を映す指標であること、そして原因ではないことや測定の限界を述べているので A。
Q2. What did the 2011 analysis show about age, sex and gait speed?
predicted survival about as accurately as models built on many chronic conditions and clinical measurements とあるので C。
Q3. Which is mentioned as a limitation of the evidence?
The UK figures rest on self-reported pace とあるので B。A・D は本文の数字(65歳以上、6〜21年)と矛盾する。
重要単語
- gait speedC1名詞(句)歩行速度Gait speed is easy to measure in a clinic.
gait は「歩き方・足取り」。gate(門)と同じ発音 /ɡeɪt/ なので注意。 - briskC1形容詞きびきびした、早足のWe took a brisk walk after dinner.
a brisk walk「早歩き」の形で頻出。brisk business は「繁盛している商売」。 - life expectancyB2名詞(句)平均余命Life expectancy has increased in many countries.
expect(期待する・予期する)の名詞形 expectancy。average life expectancy=平均寿命。 - predictorC1名詞予測因子Age is a strong predictor of health.
predict(予測する)+-or。pre(前もって)+dict(言う)。 - frailtyC1名詞虚弱、フレイルSlow walking can be a sign of frailty.
frail(もろい・虚弱な)の名詞形。日本の介護分野でも「フレイル」として定着。 - longevityC1名詞長寿Exercise is linked to longevity.
long(長い)+aevum(年齢・時代)。難関大の長文で健康テーマとともに頻出。
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65歳以上の約3万4000人のデータで、ふだんの歩く速さが秒速0.1m速いごとに死亡リスクが約12%低かったらしい。英国の約47万人の研究でも、早足の人は体型に関係なく寿命が長い傾向。ただ、速く歩けば長生きとは限らない。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Studenski S et al. (2011) Gait Speed and Survival in Older Adults, JAMAdoi.org
- Zaccardi F et al. (2019) Comparative Relevance of Physical Fitness and Adiposity on Life Expectancy: A UK Biobank Observational Study, Mayo Clinic Proceedingsdoi.org
- Dempsey PC et al. (2022) Investigation of a UK biobank cohort reveals causal associations of self-reported walking pace with telomere length, Communications Biologydoi.org
- Chen LK et al. (2020) Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment, Journal of the American Medical Directors Associationdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










