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「人体自然発火」の真相。燃えたのは体だけで部屋は無傷、その謎を豚肉で再現した法科学者

「人体自然発火」の真相。燃えたのは体だけで部屋は無傷、その謎を豚肉で再現した法科学者

読む前に予想してみよう!

人体が外部の火なしに自然に発火することは、科学的に確認されている

研究カード(どんな研究?)
対象
動物組織(豚)の燃焼実験と法医学的事例
規模
実験複数+症例報告
研究の種類
燃焼実験・法医学的事例分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

体の一部だけが灰になり、周囲は燃えていない奇妙な火災。実験で、外部の火と「ろうそくの芯」の役割をする布があれば、脂肪がゆっくり燃え続けることが示された。

ひとことで言うと人が勝手に燃え出すわけではない。小さな火と布があれば、ゆっくり燃え続ける。

もくじ
  1. 事例に共通する特徴
  2. 豚肉で「ろうそく効果」を確かめた
  3. 「火の元は、たいてい外にある」
  4. どんでん返し:それでも「なぜ胴体だけ?」
  5. まとめ

「部屋の中で人の体だけが灰になり、すぐ横のソファやカーテンは燃えていなかった」

こうした不思議な火災は17世紀から報告され、「人体自然発火(spontaneous human combustion)」と呼ばれてきました。小説にも登場し、「体の中から突然燃え出す」という説明がくり返されてきました。

でも、法科学(犯罪や事故を科学で調べる分野)の研究者たちは、もっと地味で、物理的な説明にたどり着いています。

01事例に共通する特徴

ポイントは③と⑤です。つまり、先に亡くなった人の体に、外から火がついたという順番なのです。

02豚肉で「ろうそく効果」を確かめた

なぜ、体だけがゆっくり燃えるのか。鍵は「ろうそく」です。

ろうそくは、ろう(燃料)が溶けて芯を伝い、炎を小さく保ったまま長時間燃えます。体でも、同じことが起こりえます。溶けた脂肪が燃料になり、衣服や布が芯の役をするのです。

2002年には、別の研究者が人の組織の燃えやすさを実験的に調べた報告も発表されています。

脂肪が燃料、布が芯。「ろうそく効果」は実験で確かめられた
脂肪が燃料、布が芯。「ろうそく効果」は実験で確かめられた

03「火の元は、たいてい外にある」

事例報告では、たばこ、暖房器具、暖炉、ろうそくなど、近くに火の源が見つかっています。

亡くなった人や意識を失った人は、服に火がついても逃げたり消したりできません。そのまま長い時間をかけて、ゆっくり燃え続けてしまうのです。

04どんでん返し:それでも「なぜ胴体だけ?」

ろうそく効果は多くの特徴を説明しますが、すべてを計算どおりに再現できるわけではありません。

たとえば、燃え方の広がりは、服の素材、姿勢、床の材質(カーペットは芯になりやすい)、部屋の空気の流れなど、多くの条件に左右されます。同じ条件を再現するのは難しく、個々の事例では不明な点が残ります。

アルコールの血中濃度が高い事例が多いという報告もありますが、これは「アルコールが燃料になる」のではなく、意識が低下して逃げられなかったことの反映と考えられています。

05まとめ

  • 人体自然発火と呼ばれる火災は、外部の火が原因と考えられている
  • 脂肪が燃料、布が芯となる「ろうそく効果」で、小さな炎でゆっくり燃え続ける
  • 炎が小さいため、周囲の家具が燃え残る
  • 体内から勝手に燃え出す仕組みは、確かめられていない

「説明できない現象」の多くは、ていねいに実験すると、意外と地味な物理に落ち着きます。でもその地味さこそ、防火に役立つ本物の知識なのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFor centuries, there have been reports of fires in which part of a person's body was destroyed while the… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

For centuries, there have been reports of fires in which part of a person's body was destroyed while the furniture around it was barely damaged. This was called "spontaneous human combustion," meaning a body catching fire by itself. Forensic scientists, however, have found a simpler explanation.

In 1999, DeHaan and his colleagues burned pig fat and skin in experiments. They found that the tissue needed outside heat to start burning and a piece of cloth to act like a candle wick. Melted fat then fed a small, slow flame for a long time. Because the flame stayed small, nearby objects often did not catch fire. In real cases, a source of fire, such as a cigarette, was usually found nearby.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

何世紀にもわたって、人の体の一部が失われる一方で、周りの家具はほとんど傷ついていなかったという火災の報告がありました。これは「人体自然発火」、つまり体がひとりでに燃え出すことだと呼ばれました。しかし、法科学者たちはもっと単純な説明を見つけています。

1999年、デハーンと同僚たちは実験で豚の脂肪と皮を燃やしました。その結果、組織が燃え始めるには外からの熱が必要で、ろうそくの芯のようにはたらく布が必要だとわかりました。すると溶けた脂肪が、小さくゆっくりした炎に長い間燃料を与え続けたのです。炎が小さいままだったので、近くの物には火が燃え移らないことが多かったのです。実際の事例では、たばこのような火の源が近くで見つかるのが普通でした。

4択リーディングクイズ

Q1. What did DeHaan and his colleagues use in their experiments?

Q2. According to the experiments, what was needed for the tissue to keep burning?

Q3. Why was the furniture often not burned?

重要単語

  • combustionC1
    名詞燃焼Combustion needs fuel, heat and oxygen. 動詞 combust。internal combustion engine「内燃機関」。spontaneous は「自然発生的な」。
  • wickC1
    名詞(ろうそくの)芯Clothing can act like a wick. wick effect「芯効果」。動詞で「(水分を)吸い上げる」の意味も(吸汗速乾素材の説明など)。
  • fatA2
    名詞脂肪Body fat can burn slowly in a small fire. 形容詞「太った」より名詞「脂肪」の意味が科学文では多い。body fat「体脂肪」。
  • forensicC1
    形容詞法科学の・法医学のForensic scientists studied these fires. ラテン語 forum(公開の場・法廷)から。forensic science「法科学」。
  • igniteC1
    動詞発火する・火をつけるA dropped cigarette can ignite clothing. 比喩で ignite a debate「議論に火をつける」。名詞 ignition「点火」。
  • mythB2
    名詞神話・作り話The idea is now treated as a myth. a common myth「よくある誤解」は説明文の定番。形容詞 mythical。

動画でもっと知る

「人体自然発火」は体の一部だけが灰になり周囲は無傷。実験では、外から火がつき布が“ろうそくの芯”になれば、脂肪がゆっくり燃え続けると示された。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. DeHaan, Campbell & Nurbakhsh (1999) Combustion of animal fat and its implications for the consumption of human bodies in fires, Science & Justicedoi.org
  2. Christensen (2002) Experiments in the Combustibility of the Human Body, Journal of Forensic Sciencesdoi.org
  3. Levi-Faict & Quatrehomme (2011) So-called Spontaneous Human Combustion, Journal of Forensic Sciencesdoi.org
  4. Byard (2016) The mythology of "spontaneous" human combustion, Forensic Science, Medicine, and Pathologydoi.org