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おなかの細菌が「気分」に口出ししている? 腸と脳をつなぐホットラインの正体

おなかの細菌が「気分」に口出ししている? 腸と脳をつなぐホットラインの正体

読む前に予想してみよう!

腸と脳は、神経で直接つながっている

研究カード(どんな研究?)
対象
無菌マウス/ベルギーの成人
規模
マウス実験/約1000人
研究の種類
動物実験・横断的観察研究
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

腸と脳は神経やホルモンでつながり、腸内細菌がストレス反応に関わることが動物で示された。人での因果関係はまだ研究途中。

ひとことで言うとおなかと脳は電話でつながってる。細菌もその会話に参加してるかも!

もくじ
  1. 腸と脳をつなぐ「ホットライン」
  2. 無菌マウスはストレス反応が大きかった
  3. 人でもヒントは見つかっている
  4. 「ヨーグルトでうつが治る」わけではない
  5. まとめ

緊張するとおなかが痛くなる。テスト前にトイレが近くなる。誰でも一度は経験がありますよね。

これは「気のせい」ではありません。腸と脳は、ちゃんと会話をしているんです。そして最近の研究では、その会話におなかの細菌まで参加しているかもしれないことがわかってきました。

この関係は「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」と呼ばれています。

01腸と脳をつなぐ「ホットライン」

腸と脳は、主に3つのルートでつながっています。

  • 迷走神経:脳から首を通って、おなかまで伸びる長い神経。腸と脳を直接つなぐ「専用電話」のようなもの
  • ホルモン:血液に乗って届く「手紙」
  • 免疫の物質:炎症などの情報を伝える「警報」

腸は神経細胞がとても多く、「第2の脳」と呼ばれることもあります。

おもしろいのは、迷走神経を流れる情報は、脳→腸より、腸→脳の向きのほうが多いと考えられていること。腸は命令を受けるだけの部下ではなく、脳にせっせと報告を送る情報通でもあるんです。緊張でおなかが痛くなるのとは逆に、おなかの状態が気分に影響する、というルートもありえるわけですね。

02無菌マウスはストレス反応が大きかった

つまり、腸内細菌はストレスに反応する体のしくみの「育ち方」に関わっている可能性があるということ。この研究は、腸脳相関の分野で世界的によく引用されています。

細菌がいない環境で育ったマウスは、ストレス反応が大きくなった
細菌がいない環境で育ったマウスは、ストレス反応が大きくなった

03人でもヒントは見つかっている

2019年、ベルギーのバリェス=コロメール(Valles-Colomer)さんらは科学誌『Nature Microbiology』で、1000人以上の腸内細菌を調べた結果を発表しました。うつ症状のある人では、特定の細菌のグループが少ない傾向があったそうです。

また、「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、体の中の大部分が腸で作られていることも知られています。2015年の『Cell』の研究では、腸内細菌が腸でのセロトニン作りに関わることがマウスで示されました。

04「ヨーグルトでうつが治る」わけではない

ここが大事なポイント。人の研究の多くは「細菌のちがいと気分に関連がある」ところまで。細菌が原因で気分が変わるのか、気分が落ちて食生活が変わったから細菌が変わったのか、どちらが先かはまだはっきりしていません。

05まとめ

腸と脳は、迷走神経などのホットラインでつながっていて、細菌もその会話に参加している可能性がある。少なくとも動物実験では、その手がかりが得られてきました。

一方で「何を食べればメンタルが良くなるか」は、まだ研究の真っ最中。おなかの声に、ちょっと耳をすませてみる。それくらいの距離感がちょうどいいのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen you feel nervous, your stomach may start to hurt. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When you feel nervous, your stomach may start to hurt. This happens because the gut and the brain are linked by the vagus nerve, hormones and the immune system. More information is thought to travel from the gut to the brain than the other way. Recent research suggests that gut bacteria may also take part in this conversation.

In 2004, a Japanese team found that germ-free mice, which had no gut bacteria, showed a stronger hormonal response to stress. In 2019, a Belgian study of more than 1,000 people found that some groups of bacteria were less common in people with depression. But do bacteria change our mood, or does our mood change the bacteria? So far, nobody knows which one comes first.

123 words ・ CEFR B1

和訳を見る

緊張すると、おなかが痛くなってくることがあります。これは、腸と脳が迷走神経、ホルモン、そして免疫のしくみによってつながっているからです。情報は脳から腸へよりも、腸から脳へのほうが多く流れていると考えられています。最近の研究では、腸内細菌もこの会話に参加しているかもしれないことがわかってきました。

2004年、日本のチームは、腸内細菌をまったく持たない無菌マウスが、ストレスに対してより強いホルモン反応を示すことを発見しました。2019年には、ベルギーの1000人以上を対象にした研究で、うつ症状のある人では一部の細菌のグループが少ないことがわかりました。では、細菌が気分を変えるのでしょうか、それとも気分が細菌を変えるのでしょうか。どちらが先なのかは、今のところだれにもわかりません。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What did the 2004 Japanese study find?

Q3. What does the last sentence suggest?

重要単語

  • gut microbiotaC1
    名詞(句)腸内細菌叢The gut microbiota differs from person to person. micro(小さい)+biota(生物相)。gut microbiome もほぼ同じ意味で使われる。
  • vagus nerveC1
    名詞(句)迷走神経The vagus nerve links the gut and the brain. vagus はラテン語で「さまよう」。体中をさまようように長く伸びることから。vague(あいまいな)と同語源。
  • germ-freeC1
    形容詞無菌のGerm-free mice have no bacteria in their bodies. -free は「~のない」。sugar-free, tax-free, smoke-free と同じ作り。
  • serotoninC1
    名詞セロトニンMost of the body's serotonin is made in the gut. 気分や睡眠に関わる神経伝達物質。「幸せホルモン」と呼ばれることもあるが、ホルモンというより神経伝達物質。
  • depressionB2
    名詞うつ病、抑うつ/不況Depression is a common but treatable illness. de-(下へ)+press(押す)。経済では the Great Depression「世界恐慌」。多義語として入試頻出。
  • axisC1
    名詞軸The Earth rotates on its axis. 複数形は axes。gut-brain axis「腸脳軸(腸脳相関)」のように、つながりの「ルート」を表す。
  • exaggeratedB2
    形容詞過剰な、誇張されたThe mice showed an exaggerated stress response. 動詞 exaggerate(誇張する)から。発音は /ɪɡˈzædʒəreɪtɪd/。g が2つ続くつづりに注意。

動画でもっと知る

無菌で育てたマウスは、ストレスへの反応が大きくなったという研究がある。腸と脳は「迷走神経」というホットラインでつながっていて、腸内細菌もその会話に参加しているらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Sudo et al. (2004) Postnatal microbial colonization programs the hypothalamic–pituitary–adrenal system for stress response in mice, Journal of Physiologydoi.org
  2. Valles-Colomer et al. (2019) The neuroactive potential of the human gut microbiota in quality of life and depression, Nature Microbiologydoi.org
  3. Yano et al. (2015) Indigenous Bacteria from the Gut Microbiota Regulate Host Serotonin Biosynthesis, Celldoi.org
  4. Cryan et al. (2019) The Microbiota-Gut-Brain Axis, Physiological Reviewsdoi.org