おなかの細菌が「気分」に口出ししている? 腸と脳をつなぐホットラインの正体

読む前に予想してみよう!
腸と脳は、神経で直接つながっている
迷走神経という太い神経が、腸と脳を行き来する情報を運んでいる。
- 対象
- 無菌マウス/ベルギーの成人
- 規模
- マウス実験/約1000人
- 研究の種類
- 動物実験・横断的観察研究
- 確かさ
- ★★☆☆☆
腸と脳は神経やホルモンでつながり、腸内細菌がストレス反応に関わることが動物で示された。人での因果関係はまだ研究途中。
ひとことで言うとおなかと脳は電話でつながってる。細菌もその会話に参加してるかも!
緊張するとおなかが痛くなる。テスト前にトイレが近くなる。誰でも一度は経験がありますよね。
これは「気のせい」ではありません。腸と脳は、ちゃんと会話をしているんです。そして最近の研究では、その会話におなかの細菌まで参加しているかもしれないことがわかってきました。
この関係は「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」と呼ばれています。
01腸と脳をつなぐ「ホットライン」
腸と脳は、主に3つのルートでつながっています。
- 迷走神経:脳から首を通って、おなかまで伸びる長い神経。腸と脳を直接つなぐ「専用電話」のようなもの
- ホルモン:血液に乗って届く「手紙」
- 免疫の物質:炎症などの情報を伝える「警報」
腸は神経細胞がとても多く、「第2の脳」と呼ばれることもあります。
おもしろいのは、迷走神経を流れる情報は、脳→腸より、腸→脳の向きのほうが多いと考えられていること。腸は命令を受けるだけの部下ではなく、脳にせっせと報告を送る情報通でもあるんです。緊張でおなかが痛くなるのとは逆に、おなかの状態が気分に影響する、というルートもありえるわけですね。
02無菌マウスはストレス反応が大きかった
つまり、腸内細菌はストレスに反応する体のしくみの「育ち方」に関わっている可能性があるということ。この研究は、腸脳相関の分野で世界的によく引用されています。

03人でもヒントは見つかっている
2019年、ベルギーのバリェス=コロメール(Valles-Colomer)さんらは科学誌『Nature Microbiology』で、1000人以上の腸内細菌を調べた結果を発表しました。うつ症状のある人では、特定の細菌のグループが少ない傾向があったそうです。
また、「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、体の中の大部分が腸で作られていることも知られています。2015年の『Cell』の研究では、腸内細菌が腸でのセロトニン作りに関わることがマウスで示されました。
04「ヨーグルトでうつが治る」わけではない
ここが大事なポイント。人の研究の多くは「細菌のちがいと気分に関連がある」ところまで。細菌が原因で気分が変わるのか、気分が落ちて食生活が変わったから細菌が変わったのか、どちらが先かはまだはっきりしていません。
05まとめ
腸と脳は、迷走神経などのホットラインでつながっていて、細菌もその会話に参加している可能性がある。少なくとも動物実験では、その手がかりが得られてきました。
一方で「何を食べればメンタルが良くなるか」は、まだ研究の真っ最中。おなかの声に、ちょっと耳をすませてみる。それくらいの距離感がちょうどいいのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen you feel nervous, your stomach may start to hurt.
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When you are nervous, your stomach may hurt. This shows that the gut and the brain talk to each other. A long nerve called the vagus nerve connects them. Gut bacteria may join this talk too.
In a Japanese study, mice with no gut bacteria showed a bigger stress reaction. But in humans, we still do not know if gut bacteria change our mood. Scientists are still studying this.
69 words ・ CEFR A2
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緊張すると、おなかが痛くなることがあります。これは、腸と脳がおたがいに話をしていることを示しています。迷走神経という長い神経が、腸と脳をつないでいます。腸内細菌も、この会話に加わっているかもしれません。
日本のある研究では、腸内細菌がいないマウスは、ストレスへの反応が大きくなりました。でも人間では、腸内細菌が気分を変えるのかどうかは、まだわかっていません。科学者たちは今もこれを研究しています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
腸と脳がつながっていて、細菌もその会話に関わるかもしれないという話なので C。
Q2. What happened to the mice with no gut bacteria?
mice with no gut bacteria showed a bigger stress reaction とあるので B。
Q3. In this passage, "connects" means ...
connect は「つなぐ」。迷走神経が腸と脳をつないでいるという意味なので D。
When you feel nervous, your stomach may start to hurt. This happens because the gut and the brain are linked by the vagus nerve, hormones and the immune system. More information is thought to travel from the gut to the brain than the other way. Recent research suggests that gut bacteria may also take part in this conversation.
In 2004, a Japanese team found that germ-free mice, which had no gut bacteria, showed a stronger hormonal response to stress. In 2019, a Belgian study of more than 1,000 people found that some groups of bacteria were less common in people with depression. But do bacteria change our mood, or does our mood change the bacteria? So far, nobody knows which one comes first.
123 words ・ CEFR B1
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緊張すると、おなかが痛くなってくることがあります。これは、腸と脳が迷走神経、ホルモン、そして免疫のしくみによってつながっているからです。情報は脳から腸へよりも、腸から脳へのほうが多く流れていると考えられています。最近の研究では、腸内細菌もこの会話に参加しているかもしれないことがわかってきました。
2004年、日本のチームは、腸内細菌をまったく持たない無菌マウスが、ストレスに対してより強いホルモン反応を示すことを発見しました。2019年には、ベルギーの1000人以上を対象にした研究で、うつ症状のある人では一部の細菌のグループが少ないことがわかりました。では、細菌が気分を変えるのでしょうか、それとも気分が細菌を変えるのでしょうか。どちらが先なのかは、今のところだれにもわかりません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
腸と脳のつながりと、腸内細菌の関わりについての文章なので A。
Q2. What did the 2004 Japanese study find?
germ-free mice ... showed a stronger hormonal response to stress とあるので D。
Q3. What does the last sentence suggest?
細菌が気分を変えるのか、気分が細菌を変えるのかについて nobody knows which one comes first とあり、因果の向きがわかっていないので B。
A nervous stomach before a big exam reflects a real two-way connection known as the gut-brain axis. The gut and the brain communicate through the vagus nerve, hormones and immune signals, and more traffic appears to run from the gut to the brain than in the opposite direction.
Researchers increasingly suspect that gut bacteria take part in this exchange. A widely cited 2004 study by Sudo and colleagues in Japan found that germ-free mice, raised without any gut bacteria, showed an exaggerated hormonal response to stress, and that introducing certain bacteria early in life reduced it.
But germ-free animals develop abnormally in many ways, so results from them are hard to apply to normal animals, let alone people. In humans, a 2019 Belgian study of over 1,000 people reported that particular bacterial groups were less common among those with depression. That study was observational. Low mood and changes in diet could alter the bacteria just as easily as the bacteria could alter mood. Most of the body's serotonin is produced in the gut, although this serotonin is not thought to enter the brain directly.
184 words ・ CEFR B2
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大事な試験の前に緊張しておなかが痛くなるのは、「腸脳相関」と呼ばれる本物の双方向のつながりがあるからです。腸と脳は迷走神経、ホルモン、免疫の信号を通じてやりとりしており、情報の流れは脳から腸へよりも腸から脳へのほうが多いようです。
研究者たちは、腸内細菌もこのやりとりに加わっているのではないかと、ますます考えるようになっています。2004年に日本の須藤さんらが発表し、広く引用されている研究では、腸内細菌をまったく持たずに育てた無菌マウスは、ストレスに対して過剰なホルモン反応を示し、幼いうちに特定の細菌を入れるとその反応が小さくなることがわかりました。
しかし、無菌動物はさまざまな点で異常な発達をするので、その結果をふつうの動物に当てはめるのは難しく、人間ならなおさらです。人では、2019年にベルギーで1000人以上を対象にした研究が、うつ症状のある人の間で特定の細菌のグループが少ないことを報告しました。この研究は観察研究でした。細菌が気分を変えるのと同じくらい、気分の落ち込みや食生活の変化が細菌を変えることもありえます。体内のセロトニンの大部分は腸で作られますが、このセロトニンは直接脳に入るとは考えられていません。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, in which direction does more information travel between the gut and the brain?
more traffic appears to run from the gut to the brain than in the opposite direction とあるので A。
Q2. What does the passage say about serotonin made in the gut?
Most of the body's serotonin is produced in the gut, although this serotonin is not thought to enter the brain directly とあるので C。
Q3. Which is given as a limitation of the evidence?
germ-free animals develop abnormally in many ways とあり、ヒトの研究についても That study was observational. と述べているので B。
重要単語
- gut microbiotaC1名詞(句)腸内細菌叢The gut microbiota differs from person to person.
micro(小さい)+biota(生物相)。gut microbiome もほぼ同じ意味で使われる。 - vagus nerveC1名詞(句)迷走神経The vagus nerve links the gut and the brain.
vagus はラテン語で「さまよう」。体中をさまようように長く伸びることから。vague(あいまいな)と同語源。 - germ-freeC1形容詞無菌のGerm-free mice have no bacteria in their bodies.
-free は「~のない」。sugar-free, tax-free, smoke-free と同じ作り。 - serotoninC1名詞セロトニンMost of the body's serotonin is made in the gut.
気分や睡眠に関わる神経伝達物質。「幸せホルモン」と呼ばれることもあるが、ホルモンというより神経伝達物質。 - depressionB2名詞うつ病、抑うつ/不況Depression is a common but treatable illness.
de-(下へ)+press(押す)。経済では the Great Depression「世界恐慌」。多義語として入試頻出。 - axisC1名詞軸The Earth rotates on its axis.
複数形は axes。gut-brain axis「腸脳軸(腸脳相関)」のように、つながりの「ルート」を表す。 - exaggeratedB2形容詞過剰な、誇張されたThe mice showed an exaggerated stress response.
動詞 exaggerate(誇張する)から。発音は /ɪɡˈzædʒəreɪtɪd/。g が2つ続くつづりに注意。
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無菌で育てたマウスは、ストレスへの反応が大きくなったという研究がある。腸と脳は「迷走神経」というホットラインでつながっていて、腸内細菌もその会話に参加しているらしい。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Sudo et al. (2004) Postnatal microbial colonization programs the hypothalamic–pituitary–adrenal system for stress response in mice, Journal of Physiologydoi.org
- Valles-Colomer et al. (2019) The neuroactive potential of the human gut microbiota in quality of life and depression, Nature Microbiologydoi.org
- Yano et al. (2015) Indigenous Bacteria from the Gut Microbiota Regulate Host Serotonin Biosynthesis, Celldoi.org
- Cryan et al. (2019) The Microbiota-Gut-Brain Axis, Physiological Reviewsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











