原田先生の英語とっておきの話

【海外の卒業ソング15選】アメリカ・韓国・中国・ヨーロッパの定番曲と日本との違いを徹底解説!

GRADUATION SONGS × WORLD CULTURE

海外にも「卒業ソング」はあるのか?
世界10カ国の”涙腺崩壊ソング”を調べてみた

― 日本の「3月9日」に匹敵する曲は、あの国にもあった ―

🎓 この記事で分かること

「3月9日」「旅立ちの日に」「仰げば尊し」…日本には定番の卒業ソングがたくさんあるけど、海外にもそういう曲ってあるの? 答えはYES。しかも調べてみたら、国ごとに全然キャラクターが違って面白すぎたので、世界の卒業ソング文化を一挙まとめました。

3月。日本全国の学校で、卒業式が行われる季節です。

「3月9日」を聴けば条件反射で泣ける。「旅立ちの日に」のイントロが流れた瞬間、体育館の空気が変わる。日本人にとって「卒業ソング」は、もはや人生の一部とも言える文化です。

でも、ふと思いませんか?

「海外の人たちは、卒業式で何を聴いて泣いてるんだろう?」

結論から言うと、海外にも卒業ソングはしっかり存在します。ただし、日本の卒業ソング文化が世界的に見てかなりユニークだということも分かりました。順番に見ていきましょう。

🇺🇸 アメリカ ― 120年続く「あの行進曲」の正体

アメリカの卒業式といえば、まずこれを避けて通れません。

♪ “Pomp and Circumstance”

エドワード・エルガー作曲(1901年)

▶ YouTubeで聴く

あの「タータータ、タータータ♪」という荘厳なメロディ。アメリカの映画やドラマで卒業式のシーンがあれば、ほぼ確実に流れます。ハリウッド映画で刷り込まれているので、日本人でも「あ、聴いたことある!」と思うはずです。

面白いのはこの曲の誕生秘話。作曲したのはイギリス人のエルガーで、もともとは英国王エドワード7世の戴冠式のために書かれた曲。それが卒業式で初めて使われたのは、1905年、イェール大学での出来事でした。エルガーが名誉博士号を受け取る式典で演奏されたのがきっかけで、プリンストン(1907年)、シカゴ大学(1908年)と次々に広がり、今やアメリカの卒業式の「国歌」のような存在になっています。

ちなみに、タイトルの “Pomp and Circumstance” はシェイクスピアの『オセロ』からの引用。“Pride, pomp, and circumstance of glorious war!”(輝かしき戦の誇り、威厳、そして壮麗さよ!)が元ネタです。卒業式で「戦の誇り」を歌ってるって、よく考えるとなかなかロックですよね。

そして、セレモニーの行進曲とは別に、アメリカには「卒業パーティーで流す曲」文化があります。日本との大きな違いです。

🎵 アメリカの卒業ポップソング定番

Vitamin C “Graduation (Friends Forever)”(2000年)― 2000年代に卒業した世代のアンセム。”As we go on, we remember all the times we had together” というサビは、まさにアメリカ版「3月9日」

▶ YouTube(公式MV)

Green Day “Good Riddance (Time of Your Life)”(1997年)― 卒業式の定番だが、実はタイトルは「せいせいした」。失恋ソングが卒業ソングに転生した奇跡の一曲

▶ YouTube(公式MV)

Wiz Khalifa ft. Charlie Puth “See You Again”(2015年)― 映画『ワイルド・スピード』の挿入歌。友との別れを歌い、卒業式の新定番に

▶ YouTube(公式MV・69億回再生)

Natasha Bedingfield “Unwritten”(2004年)― “The rest is still unwritten”(残りはまだ書かれていない)。未来は白紙だ、という卒業にぴったりのメッセージ

▶ YouTube(公式MV)

🇪🇺 ヨーロッパ ― 13世紀から歌い継がれるラテン語の学生歌

ヨーロッパの大学の卒業式には、700年以上の歴史を持つ壮大な一曲があります。

♪ “Gaudeamus Igitur”

(ガウデアムス・イジトゥル = 「さあ、楽しもう」)

原型は1287年のラテン語写本にまで遡る

▶ YouTubeで聴く

ドイツ、オーストリア、オランダ、スペイン、さらにはインドネシアやブラジルの大学でも卒業式で歌われている、世界で最も多くの国で使われている卒業ソングです。国際大学スポーツ連盟(FISU)の公式アンセムにもなっています。

歌詞の内容は「若いうちに楽しもう、いずれ私たちは土に還るのだから」。……ちょっと待って、これ、実はもともと「飲み会ソング」なんです。中世ヨーロッパの大学生が、宴会で酒を片手に歌い継いできたのが起源。卒業式で厳かに歌われる格式高い曲の正体が「乾杯ソング」だったという衝撃の事実。ブラームスが『大学祝典序曲』のクライマックスにこのメロディを使ったのも、この「飲んで騒ぐ学生」の伝統を知っていたからです。

▶ ブラームス「大学祝典序曲」(YouTubeで聴く)

ヨーロッパの卒業ソングが「さあ飲もう、若さを楽しもう」なのに対して、日本の卒業ソングは「別れが辛い、ありがとう先生」。この温度差、面白すぎませんか?

🇰🇷 韓国 ― K-POPスターが歌う卒業バラード

日本のすぐ隣、韓国にもしっかり卒業ソング文化があります。しかも日本との共通点が驚くほど多い。

韓国の卒業式で最も歌われてきた定番は、J.Y. Park(パク・ジニョン)の「졸업(卒業)」(1998年)。TWICEやStray Kidsを輩出したJYPエンターテインメントの創設者その人が歌うバラードで、韓国の小中高で長年歌われてきた「国民的卒業ソング」です。

注目すべきは歌詞のテーマ。「さようならは永遠の別れではないでしょう。また会うための約束でしょう」――これ、まるで日本の「また逢う日まで」の世界観と同じですよね。

🎵 韓国の卒業ソング・注目曲

IU「졸업하는 날(Graduation Day)」(2009年)― 国民の妹IUの初期の名曲。ポップで前向きな卒業ソング

▶ YouTube

BTS(J-HOPE, ジョングク, ジミン)「졸업」(2013年)― デビュー前に公開された卒業カバー。今見ると泣ける

▶ YouTube

SEVENTEEN「Campfire」(2017年)― 仲間との思い出をキャンプファイヤーに例えた卒業ソング

▶ YouTube

Paul Kim「이별(別れ)」 ― 韓国人が「本気で泣ける卒業ソング」として挙げる一曲

▶ YouTube

日本と韓国の卒業ソングが似ている理由は、卒業式の「形式」が似ているから。どちらも式典で合唱があり、送辞・答辞があり、涙を流すのが「文化」として根付いている。実はこの形式自体、明治時代の日本の教育制度が韓国に影響を与えた歴史的背景があります。台湾でも同じ旋律の卒業歌が歌われていたという証言があり、東アジアの「卒業式で泣く文化」は、ひとつの大きな文化圏を形成しているのです。

🇨🇳 中国 ― 1934年の映画主題歌から始まった伝統

中国にも卒業ソングの伝統があります。その歴史の起点は1934年の映画『桃李劫(Plunder of Peach and Plum)』。この映画の主題歌「畢業歌(卒業の歌)」が、中国で最初の「卒業ソング」とされています。

作詞は田漢、作曲は聶耳。実はこのコンビ、中国の国歌「義勇軍進行曲」を作った二人。国歌を書いた人が卒業ソングも書いていたという事実は、中国人にとって特別な意味を持っています。

もうひとつの伝統的名曲は「送別(Farewell)」。原曲はアメリカの作曲家ジョン・ポンド・オードウェイの “Dreaming of Home and Mother” ですが、1915年に中国の芸術家・李叔同が中国語の歌詞をつけました。東洋的な情緒を見事に表現したこの歌は、今でも卒業式の「鉄板」です。

🎵 現代中国の卒業ソング人気曲

朴樹(Pu Shu)「那些花儿(Those Flowers)」 ― 美しく切ないフォークソング。友との別れと再会できない寂しさを歌う

▶ YouTube

陳奕迅(Eason Chan)「十年(Ten Years)」 ― 香港のスター歌手による大ヒット曲。時間の流れと人間関係の変化を描いた名曲

▶ YouTube

李叔同「送別」 ― 1915年作。100年以上歌い継がれる中国の卒業式の「蛍の光」的存在

▶ YouTube

🇯🇵 比較用:日本の定番卒業ソングも聴いてみよう

海外の曲と聴き比べると、日本の卒業ソングの「泣かせ力」の凄さが改めて分かります。

🌍 世界の卒業ソング・比較マップ

定番ソング 雰囲気 特徴
🇯🇵 日本 3月9日 / 旅立ちの日に / 仰げば尊し 涙・感謝・切なさ 合唱文化が深く根付く。J-POP卒業ソングが年代ごとに存在
🇺🇸 アメリカ Pomp and Circumstance / Good Riddance 祝祭・前進・パーティー 式典では行進曲、パーティーではポップス。「泣く」より「祝う」
🇪🇺 ヨーロッパ Gaudeamus Igitur 格式・伝統・享楽 13世紀起源のラテン語歌。実は飲み会ソングが起源
🇰🇷 韓国 J.Y.Park「卒業」/ IU「Graduation Day」 涙・友情・再会の約束 日本と最も近い卒業ソング文化。K-POPスターの卒業曲が豊富
🇨🇳 中国 畢業歌 / 送別 / 那些花儿 別れの哀愁・時代の変遷 国歌の作者が書いた卒業歌が原点。世代で好む曲が大きく異なる
🇬🇧 イギリス Auld Lang Syne(蛍の光の原曲) 伝統・郷愁 日本の「蛍の光」はスコットランド民謡が原曲。本国では大晦日にも歌う
🇵🇭 フィリピン Aida「凱旋行進曲」/ Pomp and Circumstance 荘厳・祝福 オペラ『アイーダ』の行進曲を卒業式で使う独特の伝統
🇮🇩 インドネシア Gaudeamus Igitur / Ingatlah Hari Ini 感謝・記憶 オランダ植民地時代の名残でGaudeamusが定着。独自の卒業ポップスも

🎌 実は日本の卒業ソング文化が「世界的にレア」な3つの理由

世界中の卒業ソングを調べて浮かび上がったのは、日本の卒業ソング文化がかなり特殊だという事実です。

① 「泣くための歌」がジャンルとして確立している

アメリカの卒業ソングは「未来を祝うパーティーソング」、ヨーロッパは「伝統的な式典曲」。一方、日本は「いかに美しく泣けるか」が卒業ソングの最重要基準。レミオロメン「3月9日」、RADWIMPS「正解」、合唱曲「旅立ちの日に」…すべてが「涙腺を刺激する」ことに特化しています。

② 「合唱」が卒業式の中心にある

世界的に見ると、卒業式で生徒全員が歌う国は実は少数派。アメリカでは録音された曲に合わせて行進するだけ、ヨーロッパでは式典音楽として演奏されるだけのことが多い。全員で声を合わせて歌い、それ自体が感動のクライマックスになるという構造は、日本と韓国に特徴的です。

③ 年代ごとに「世代のアンセム」がある

40代は荒井由実「卒業写真」、30代は「3月9日」、20代はMrs. GREEN APPLE「僕のこと」、10代はRADWIMPS「正解」…。J-POPのヒット曲がそのまま「その世代の卒業の記憶」になる構造は、世界でも日本だけの現象に近いです。

🔗 つながっていた!「蛍の光」の世界旅行

ここでひとつ、鳥肌が立つ話をさせてください。

日本の卒業式の定番中の定番、「蛍の光」。この曲の原曲は、スコットランドの詩人ロバート・バーンズが書いた“Auld Lang Syne”(オールド・ラング・サイン、「遠い昔」の意)です。

同じメロディが世界を旅した結果…

🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿 スコットランド → 「Auld Lang Syne」(友との再会を歌う大晦日の歌)

🇯🇵 日本 → 「蛍の光」(卒業式・閉店の歌)

🇰🇷 韓国 → 同じメロディが国歌「愛国歌」に使われていた時期がある

🇹🇼 台湾 → 同じメロディの卒業歌が歌われていた

🇨🇳 中国 → 李叔同が別の曲の歌詞を書いたが、同時期にAuld Lang Syneも伝わる

▶ “Auld Lang Syne” 原曲をYouTubeで聴く

ひとつのスコットランド民謡が、明治維新を経由して日本に渡り、日本の教育制度を通じて東アジア各国に広がった。卒業ソングは「文化の旅」そのものなのです。

💡 「仰げば尊し」の原曲はアメリカの歌だった

もうひとつ、卒業ソングにまつわる驚きの事実。

日本の卒業式で100年以上歌われてきた「仰げば尊し」。先生への感謝を歌う、日本の卒業式を象徴する曲です。この曲、長年「作者不詳」とされてきましたが、2011年に一橋大学の研究者によって原曲がアメリカの楽曲 “Song for the Close of School”(1871年)であることが発見されました。

アメリカで生まれた曲が、明治時代に日本に渡り、日本の先生への敬意を歌う歌詞がつけられ、100年以上も歌い継がれた。原曲のアメリカではとっくに忘れ去られたのに、日本では国民的な卒業ソングとして生き続けている。これもまた、音楽が国境を越えて旅する物語です。

📖 卒業ソングで学ぶ英語表現

せっかくなので、英語の卒業ソングに出てくる表現を使って英語を学びましょう。

🎓 Graduation に関する英語表現

commencement= 卒業式(「始まり」が語源。卒業は「終わり」ではなく「始まり」という発想)

cap and gown= 角帽とガウン(アメリカの卒業式の象徴)

toss one’s cap= 帽子を投げる(卒業式の最後に全員で空に投げる儀式)

alma mater= 母校(ラテン語で「養い育ててくれた母」の意)

🎵 歌詞に出てくる名フレーズ

“The rest is still unwritten”(Natasha Bedingfield)= 残りはまだ書かれていない → 未来は白紙だ

“I hope you had the time of your life”(Green Day)= 人生最高の時間だったことを願う

“We are young”(fun.)= 私たちは若い(→ 今を全力で生きよう)

“Gaudeamus igitur, juvenes dum sumus”= さあ楽しもう、若いうちに(ラテン語)

💬 ワンポイント

英語では卒業式を “graduation ceremony” とも言いますが、アメリカでは “commencement” のほうが一般的。”commence” は「始める」という意味で、卒業を「終わり」ではなく「新しい人生の始まり」と捉えるのがアメリカ流。日本の卒業ソングが「別れ」にフォーカスするのと対照的で、文化の違いが語彙にも表れています。

✨ まとめ ― 世界の卒業ソングが教えてくれること

世界中の卒業ソングを見渡して分かったのは、こういうことです。

海外にも卒業ソングはちゃんとある。ただし国によってキャラクターが全然違う

アメリカは「祝い&パーティー」、ヨーロッパは「伝統&格式」、東アジアは「涙&感謝」

日本の「泣ける卒業ソング」文化は世界的にかなりユニーク

「蛍の光」「仰げば尊し」は海外から来た曲。卒業ソング自体が”文化の旅”の産物

英語の “commencement”(卒業式)は「始まり」の意。卒業=終わりではない

「3月9日」を聴いて泣くのは日本人の特権。でも、その涙の向こう側には、スコットランドからアメリカから中世ヨーロッパから流れてきた音楽の歴史がある。

卒業ソングは、ひとつの国に閉じていない。世界中の若者が、同じように「別れ」と「始まり」の間で揺れながら、それぞれの言葉で、それぞれのメロディで、青春に区切りをつけてきた。それを知ると、次に「3月9日」を聴いたとき、ちょっとだけ世界が広く感じるかもしれません。

📝 この記事が面白かったら、ぜひシェアしてください。「原田先生のとっておきの話」では、英語や言葉にまつわる「知って得する雑学」を発信しています。

関連記事