英語の語彙指導のコツ|教科書の新出語を定着させる扱い方
新出単語を「発音して、意味を確認して、次へ」で終わらせていませんか。単語は一度出会っただけでは定着しません。**何度も、少しずつ形を変えて出会わせる**設計が大切です。この記事では、教科書の新出語を授業の中でどう扱えばよいか、流れと具体例で紹介します。

01新出語は全部同じ重さで扱わない
教科書の新出語リストには、数十語が並ぶこともあります。そのすべてを同じ時間をかけて扱うのは現実的ではありません。
まず、新出語を次の2つに分けてみましょう。
- 発信語彙(話す・書くで使えるようにしたい語):日常的でよく使う語、今後の単元でも繰り返し出る語
- 受信語彙(読んで分かればよい語):本文の内容上必要だが、使う場面が限られる語
たとえば、ある単元の新出語が「volunteer, collect, garbage, community, recycle, plastic, environment, local」だったとします。collect や local は今後も自分のことを話すときに使えるので発信語彙に。garbage や plastic は意味が分かれば十分な場面も多いので、受信語彙として軽く扱う、といった判断ができます。
ポイント:時間をかけるのは発信語彙に絞る。受信語彙は本文の中で意味が取れればOKと割り切ると、授業に余裕が生まれます。
02新出語の扱い方:1時間の中の流れ
ここでは、本文に入る前の語彙パートを12分で行う例を紹介します。
0〜3分:音と文字の確認
フラッシュカードやスライドで、教師の後に続いて発音します。
- "Listen and repeat."
- "Only the girls / Only the boys / Only this row."
同じ語を3回ほど繰り返しますが、読む人を変えると単調になりません。
3〜6分:意味の確認
日本語訳を与えるだけでなく、絵・ジェスチャー・既習語での言い換えを使います。
- "Collect means 'take many things and put them together.' For example, I collect stamps."
- "Local means 'near your home or in your town.'"
6〜9分:スピード確認
カードを英語→日本語、日本語→英語の順で素早く見せ、全員で答えます。後半は一瞬だけ見せる、半分隠すなど、難易度を上げます。
9〜12分:ペアで使う
発信語彙を使って短い文を言い合います。
- "Use 'collect' and tell your partner one thing you collect or want to collect."
- "Tell your partner about one local place you like."
このあと本文を読むと、生徒は「さっきの単語だ」と気づきながら読めます。
使い方:新しい語彙の導入の工夫を紹介する教師向けの回です。この節の「意味の確認」で、日本語訳以外の示し方を1語につき1つ準備します。
使い方:フラッシュカードを効果的に使うアイデアの紹介です。この節の「スピード確認」に、思い出させる工夫を1つ加えて、3分の流れを組み直します。
03定着のカギは「再会」の回数
単語が定着するには、時間をあけて何度も出会うことが大切だといわれています。1回の授業で完璧にしようとするより、次の授業、その次の授業で再び出会わせるほうが効果的です。
再会のさせ方の例です。
- 次の授業の導入:前回の新出語から5語を選び、意味を隣の人とクイズし合う
- 本文の音読のとき:新出語だけ空欄にしたプリントで音読する
- 小テストの1問:前の単元の語を1〜2問混ぜる
- 教師の英語の中で:Teacher Talk の中で意図的に使う(例:"Please collect your worksheets.")
自作の復習用ミニ活動例
"I say the Japanese. You say the English. Ready? 集める。" → "Collect!"
"Now, make a sentence with 'local.' Start with 'In my town…'"
このような短い活動なら1〜2分でできるので、毎時間の冒頭や終わりに組み込みやすいです。
04「再会」を仕組みにするデジタル道具と、教師向けの語彙指導動画
再会の回数を増やすには、授業の外でも単語に出会える仕組みがあると便利です。次の道具は、教師が一度作れば単元のあいだくり返し使えます。
| 道具 | 特徴 | 使い方 |
|---|---|---|
| Quizlet | 単語カードを作って共有できる。無料版は広告あり、一部の学習モードは有料 | 発信語彙だけのセットを作り、例文つきで生徒に共有する |
| Wordwall | 単語や文法のゲームを作って遊べる。作成数などは有料プランで増える | 前時の新出語5語の並べ替えゲームを作り、次の授業の導入で使う |
| Kahoot! | 大きな画面のクイズに手元の端末で早押しで答える。13歳未満がアカウントを作るときは保護者や先生の管理が必要 | 単元末の復習で、今回の語と前単元の語をまぜた10問を出す |
| YouGlish | その単語を話している YouTube の場面を探せる | 多義語の別の意味が使われている場面を探し、授業で1つ見せる |
単元1つ分の準備(30分)
- 新出語を発信語彙と受信語彙に分ける
- 発信語彙だけで Quizlet のセットを作り、自作の例文を入れる
- 同じ語で Wordwall の短いゲームを1つ作る(2時間目の導入用)
- 4時間目の小テストに、前単元の語を2問入れる
アプリを使うかどうかは学校の端末の方針によります。端末が使えない日は、同じ語のペア用カードで代わりにできるようにしておきましょう。
使い方:語彙の復習を動きのあるゲームに変える工夫の紹介です。2時間目の導入の「前時の語5語クイズ」を、動画の形に置きかえた案を1つ作ります。
05高校では「意味の広がり」と「組み合わせ」を教える
高校の教科書では、中学で習った単語が別の意味で出てくることが増えます。たとえば "run" は「走る」だけでなく「経営する」、"cover" は「覆う」だけでなく「扱う・取材する」という意味でも使われます。
こうした多義語は、新出語リストには載らないことも多いため、本文の中で意識的に取り上げたいところです。
多義語の扱い方の例
- "You know 'run' means 'move fast.' But look at line 5: 'She runs a small café.' What does 'run' mean here?"
- 核となるイメージ(run=止まらずに動き続ける)を示し、「店を動かし続ける=経営する」とつなげる
コロケーション(語の組み合わせ)
単語を単体で覚えるより、よく一緒に使われる組み合わせで覚えると、書くときに使いやすくなります。
- make a decision / take a break / pay attention to
- heavy rain / strong coffee / a high price
"Which verb goes with 'a decision'? make, do, or take?" のような選択クイズは、1〜2分でできる復習活動として便利です。
新出語を扱う際に、本文中のコロケーションを1〜2個だけ抜き出して板書しておくと、ライティングの時間にそのまま活用できます。
使い方:コロケーションを身につけさせる活動の紹介です。本文から抜き出したコロケーション2つを使い、この節の選択クイズを授業用に作ります。
0640人クラスでの工夫
人数が多いと、一斉に言わせても「口を動かしていない生徒」に気づきにくくなります。
- 読む人を細かく切り替える:「窓側の2列」「メガネをかけている人」「今月誕生日の人」など、グループを変えながら発音させると、全員が当事者になります。
- ペアで役割を決める:A がカードを持って出題、B が答える。1分で交代。教師用のカードを縮小印刷した「ペア用カード」を用意しておくと便利です。
- ミニテストはペア採点:単語テストを隣同士で交換して採点すると、40人分の採点時間を減らせます。答えは教師が読み上げます。
- 苦手な生徒には「最初の2語」から:全部覚えようとして挫折する生徒には、「今日は発信語彙のうち2つだけ使えるようにしよう」と目標を小さくします。
使い方:意味を本当に理解したかを確かめる質問(CCQs)の短い解説です。40人に「分かった?」と聞く代わりに使う確認の質問を、発信語彙ごとに1つ作ります。
07よくある失敗
- 日本語訳の一対一対応で終わる:collect=集める、だけを覚えると、使い方が分かりません。→例文を1つセットで示す。
- 新出語の説明が長くなる:語源や派生語まで全部話すと時間が足りなくなります。→発信語彙の中でも特に大事な1〜2語に絞る。
- 授業後に二度と出てこない:定着しないまま次の単元へ。→次の授業の導入や小テストで必ず再会させる。
- 発音練習が教師のコピーだけ:意味を考えずにリピートするだけでは記憶に残りにくいです。→意味確認のあとに、もう一度発音させる。
ポイント:「教える」より「出会わせる回数を増やす」。語彙指導は、1回の完成度より再会の仕組みで決まります。
081週間の語彙サイクル例
単元の中で、次のようなサイクルを回すと無理なく定着につなげられます。
- 1時間目:新出語の導入(音・意味・ペアで使う)、本文を読む
- 2時間目:導入で前時の語を5語クイズ、本文の音読で再会
- 3時間目:新出語を使った自己表現(2〜3文を書く)
- 4時間目:小テスト(今回の語+前単元の語を少し)
- 翌週:新しい単元の導入時に、前単元の語を2〜3語だけ再び使う
このサイクルを意識するだけで、同じ時間でも単語への「接触回数」が増えます。まずは次の単元で、発信語彙と受信語彙を分けるところから始めてみてください。
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よくある質問
新出語は本文の前と後、どちらで扱うのがよいですか?
内容理解に欠かせない語は本文の前に、推測させたい語は本文の後に扱う、という使い分けができます。すべてを前に出すと、推測しながら読む機会が減る点に注意が必要です。
フラッシュカードは紙とデジタルのどちらがよいですか?
どちらでも効果的に使えます。デジタルは表示速度や順番を変えやすく、紙はペア活動に配りやすいという特徴があります。目的に合わせて併用するのがおすすめです。
単語テストの頻度はどのくらいが適切ですか?
週に1回程度の短いテストを継続するほうが、単元末にまとめて大量に出すより再会の機会が増えます。前の範囲を少し混ぜると、復習のきっかけにもなります。
読了ボーナス


