要約の3ステップ ― 「消す・まとめる・自分の言葉で」で英文を短くまとめる
「本文を要約しなさい」と言うと、大事そうな文を抜き出してつなげるだけ……。例や細部を消す、似た情報をまとめる、自分の言葉で書き直す。3つの手順を順番に踏ませると、要約が「写し」から「理解の証拠」に変わります。
- ⏱ 時間
- 40-50分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 個人→ペア
- 🎯 技能
- ライティング・リーディング
- 📶 CEFR
- A2-B2

- 英文の中心となる考えと、それを支える主な情報を区別して読み取る。
- 例や細部を省き、似た情報をまとめて、自分の言葉で短く書き直す。
- 要約を通して、読んだ内容を自分がどこまで理解しているかを確かめる。
要約ライティングってなに?
ひとことで言うと、英文を読んで、①例や細部を消し、②似た情報を1つの言葉にまとめ、③本文を見ずに自分の言葉で短く書き直す、という3つの手順で「筆者の言いたいこと」を短い英文にする活動です。
「要約しなさい」とだけ言うと、大事そうな文を抜き出してつなげただけのものになりがちです。3つの手順を順番に踏ませると、何を残して何を捨てるかを自分で判断することになり、要約が「本文の写し」から「わかったことの証拠」に変わります。長さは目的や課題に応じて語数で指定します(この授業例では約150語を40〜50語に)。
映画の予告編を作るようなものです。2時間の映画を全部流すのではなく、名場面の細かいセリフは切り、似た場面はまとめ、「どんな話か」が伝わるように自分で編集し直します。大事なのは切る(消す)・まとめる・つなぎ直すの3つを、この順番でやることです。
似た活動とのちがい
| 要約ライティング | 1文要約 | ニュース・リテリング | |
|---|---|---|---|
| 長さ | 課題に応じて指定(この例では40〜50語) | 20語以内の1文 | 1分で話す |
| 書く?話す? | 書く | 書く | 話す(メモから) |
| 時間 | 40〜50分 | 帯活動で短く | 10分ほどの帯活動 |
やり方を3ステップで
- 消す:具体的な例、くり返し、小さな脇道に二重線を引く。
- まとめる:似た情報を1つの上位の言葉にまとめる(buses, trains, subways → public transportation)。複数の情報から、筆者の結論を表す言い方にまとめることもある。
- 自分の言葉で書く:本文を伏せて下書きし、最初の文で「何についての文章か+中心の内容(論説文なら筆者の主張)」を書き、主な理由と結論を続ける。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜5:00 | 「悪い要約」と「良い要約」を比べて見せる | 違いを3つ見つける |
| 5:00〜12:00 | 英文を読ませる(概要→細部の順で2回) | 黙読・内容の確認問題 |
| 12:00〜18:00 | Step 1:消す(例・細部・くり返しに線) | 個人で線を引き、ペアで比べる |
| 18:00〜23:00 | Step 2:まとめる(似た情報を上位の言葉に) | 表に「まとめた言い方」を書く |
| 23:00〜35:00 | Step 3:自分の言葉で書く(本文を伏せて) | 40〜50語で書く |
| 35:00〜42:00 | ペアで読み合い、セルフチェック表で確認 | 交換・コメント |
| 42:00〜50:00 | 要約例との比較・全体で良い要約を共有 | 自分の要約を1か所直す |

- 比べて見せる:同じ英文の「悪い要約」(本文の文をつないだだけ・例が入っている・長い)と「良い要約」を並べて投影し、違いを見つけさせる。要約のゴールを先に見せる。
- 読む:まず1分で概要(何についての文章か)、次に細部を確認しながら読む。語彙の確認や内容理解の問題は、ここで済ませておく。理解していない文章は要約できません。
- Step 1 消す:具体的な例、くり返し、本筋から外れた小さな話に二重線を引く。迷ったら「これがなくても筆者の言いたいことは伝わる?」と自問させる。
- Step 2 まとめる:残った情報のうち、似たものを1つの上位の言葉にまとめる(街の例2つ → many cities / buses, trains → public transportation)。また、いくつかの効果をまとめて、筆者の結論を表す言い方にする方法もあります(cleaner air と quieter, safer streets → better places to live)。これは上位の言葉への言いかえではなく、複数の情報から結論をまとめる別のやり方です。表に書かせる。
- Step 3 自分の言葉で:まず本文を伏せて(裏返して)下書きする(苦手な生徒は伏せなくてもよい)。最初の文で「何についての文章か+中心となる内容(このような論説文なら筆者の主張)」、次に主な理由、最後に条件や結論。本文の文や節をそのまま長く写さず、大事なキーワードは残して、文の組み立てを変える、をルールにする。書き終えたら本文を開き、中心の情報・条件・原因と結果が抜けたり、意味が変わったりしていないかを確かめる。
- ペアで確認:交換して、セルフチェック表の項目を相手の要約でも確かめる。「要約だけ読んで本文の内容がわかったか」を一言伝える。
- 共有と書き直し:要約例を配り、自分の要約と比べて1か所直す。良い要約を2〜3本匿名で投影し、どこが良いかを確認する。
要約の書き出し(話題と主張)
- This text is about ... .
- The writer argues that ... .
- According to the article, ... .
- The main point of the text is that ... .
つなぐ・まとめる言い方 5. There are two main reasons: ... and ... . 6. This is because ... . 7. However, ... must also ... . 8. As a result, ... .
上位の言葉にまとめる練習(下の語をまとめる言葉は?) 9. Paris, Seoul, London → many cities 10. cleaner air, less noise, safer streets → a better environment 11. buses, trains, subways → public transportation 12. apples, carrots, rice → food 13. smartphones, tablets, laptops → digital devices
要約に入れない物
- 具体的な人名・地名・数字の例(話題そのものでない限り)
- 筆者の体験談やたとえ話
- くり返しの部分
- 自分の意見(要約は筆者の考えを伝えるもの)
- 小学校:扱わない。絵本を読んだ後に「誰が、何をした?」を一言で言う程度。
- 中学:本文の各段落の「一番大事な文に下線」→ 下線の文を1つずつ短くする、の2ステップで。要約は日本語でもよい(読解の確認として)。
- 高校:慣れたら、発展課題の一例として語数をさらに少なく(たとえば本文の5分の1ほど)する。授業のはじめに短く行うなら、1パートを20語以内の1文にまとめる One-Sentence Summary が手軽です。大学入試の要約問題や、英語で要約してから自分の意見を述べる統合型の課題につなげる。
- 大人数クラス:ステップ1・2はペア作業にして時間を短縮。要約例を配ってセルフチェックさせ、先生は数人分だけ詳しく見る。
- 苦手な生徒が多いクラス:Step 3 の要約の「型」(This text is about ___. The writer says ___ because ___ .)を配り、空所を埋める形から始める。要約は日本語で書いてから英語にしてもよい。
- タブレット:マーカーツールで Step 1 の消す作業を色分け(残す=黄、消す=灰)。要約を共同編集の文書に書かせ、匿名で並べて比べる。
- 知識・技能:要約の書き出し・つなぎの表現を使い、語数内で書ける。
- 思考・判断・表現:中心となる考えと主な情報を選び、例や細部を省いて、自分の言葉でまとまりのある文章にしている。
- 主体的に学習に取り組む態度:要約のめあて(話題と主張を入れる・例を入れない など)をふまえて、ペアのコメントや要約例をもとに要約のしかたを調整しながら、粘り強く書き直そうとしているか。1時間の活動だけで総括せず、何回かの要約とふり返りで見ます。
| 観点 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| 内容の選択 | 主題・中心の内容(論説文では筆者の主張)・主な理由がすべて入り、例や細部がない | 主題と主張は入るが、理由が欠ける/細部が混じる | 主題が書かれていない、または細部ばかり |
| 言いかえ | ほぼ自分の言葉で書き、意味が本文と一致している | 一部本文の文をつないでいる | 本文の文の書き写しが中心 |
| 形式 | 指定語数内で、書き出しで話題を示している | 語数が少しはみ出る | 語数が大きくずれる |
定期テストでは、授業で扱っていない短い英文(初見)で要約させると、読む力と書く力の両方を見られます。
- 本文の文をつなげただけになる → Step 3 で本文を伏せる。「文や節をそのまま長く写さない(キーワードは残してよい)」をルールにし、ペアチェックで確認させる。
- 例や数字まで全部入れてしまう → Step 1 の「なくても筆者の言いたいことは伝わる?」の問いを板書。迷ったら、その情報が「主張・理由・大事な条件」のどれかに当たるかを確かめさせる。判断できなければ残しておき、あとでまとめたり短くしたりする。however のあとの内容や条件、反対の例は、筆者の主張を正しく伝えるのに必要なことが多いので、安易に消さない。
- 自分の意見が混ざる(I think this is good.) → 要約は「筆者の考えを伝える」もの。自分の意見は要約の後に別の段落で、と分ける。
- 語数を大幅に超える → まず日本語で「3文で言うと?」と考えさせる。3文の骨組みができてから英語にする。
- そもそも内容を理解していない → 要約できない生徒には、段落ごとに「一言で言うと?」を日本語で答えさせ、どこでつまずいているかを見る。
高校の学習指導要領の解説では、外国語科全体で、事実・情報を伝える言語の働きの例として「要約する」が挙げられています。さらに、英語に関する専門学科の科目「エッセイライティングⅡ」の解説では、書く活動で、資料の文章を要約して理由や根拠として使うことや、要約して引用する際に原典と食い違いがないかに注意させることにも触れています 1。要約は、読む・書く・考えるをつなぐ技能として位置づけられています。
要約の活動一般には、研究の裏づけがあります(ただし、このページの3ステップそのものを日本の高校英語で確かめた研究ではありません)。主に英語を母語とする小学生から高校生を対象に、読むことと書くことの関係を調べた実験・準実験のメタ分析では、読んだ内容について書くと、その内容の理解が深まることが示されました 2。4〜12年生の作文指導のメタ分析でも、要約の指導(5〜12年生を対象にした4つの効果量)は、読んだ内容を簡潔かつ正確に要約して書く力を大きく高めていました(平均効果量0.82)3。一般的な作文の質への効果という意味ではありません。外国語の研究では、大学生80人を対象にした6か月の準実験で、読んだ英文の要約を書き続けたグループは、選択式や正誤問題などのふつうの読解問題に取り組んだグループより読解力が伸びました。要約の質と読解の伸びは相関せず、読むのが苦手な学生ほど効果が大きかったと報告されています 4。
要約の質と読解の伸びが相関しなかったことから、上手な要約が書けなくても、要約しようと取り組むこと自体が読み方を変えている可能性があります 4。ただし、相関がなかったことだけから、効果の仕組みまでは特定できません。そのうえで、苦手な生徒ほど「どうせうまく書けない」と避けがちなので、完成度だけで評価せず、必要な手助けをしながら3ステップで本文と向き合う時間を確保しましょう。ただし、この研究は大学生対象の1つの準実験なので、高校生に同じ効果があるかは確かめられていません。
❓ よくある質問
Q. 英文の要約は、どんな手順で教えればいいですか?
Step 1 で具体的な例・くり返し・本筋から外れた小さな話に二重線を引いて消し、Step 2 で似た情報を1つの上位の言葉にまとめ(buses, trains, subways → public transportation)、Step 3 で本文を伏せて自分の言葉で書きます。最初の文には「何についての文章か+中心の内容(論説文なら筆者の主張)」を書き、書き終えたら本文と見比べて意味が食い違っていないか確かめます。
Q. 本文の文をつなげただけの要約になってしまいます。
Step 3 では本文を伏せ、「本文の文や節をそのまま長く写さない(キーワードは残してよい)」をルールにして、ペアチェックで確認させます。授業のはじめに、本文の文をつないだだけの「悪い要約」と「良い要約」を並べて見せ、ゴールを先に示しておくのも効果的です。
Q. 要約を書くと、読解力も伸びますか?
主に英語を母語とする小学生から高校生の研究をまとめたメタ分析で、読んだ内容について書くと理解が深まることが示されています 2。大学生80人の6か月の準実験では、英文の要約を書き続けたグループの読解力が、ふつうの読解問題のグループより伸び、読むのが苦手な学生ほど効果が大きかったと報告されています 4。
Q. 要約に自分の意見が混ざってしまいます。
要約は「筆者の考えを伝える」ものです。I think this is good. のような自分の意見は、要約の後に別の段落で書く、と分けさせます。語数を大幅に超えるときは、まず日本語で「3文で言うと?」と骨組みを考えさせます。
Q. 中学生にも、要約は教えられますか?
中学では、各段落の「一番大事な文に下線」→ 下線の文を1つずつ短くする、の2ステップで行います。読解の確認としてなら、要約は日本語で書かせてもかまいません。高校で慣れてきたら、発展課題として語数をさらに少なく(たとえば本文の5分の1ほど)していく方法もあります。
🎁 玉手箱で使えるツール
原田英語の「英語の先生の玉手箱」の無料ツール。登録なしで授業にそのまま使えます。
📑 出典(4件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2018). 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編 公式ページ ✔ リンク確認済高校の科目構成(英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲ・論理・表現Ⅰ〜Ⅲ)、「支援」の考え方、語数、授業は英語での趣旨を説明した公式の解説
- Graham, S., & Hebert, M. (2011). Writing to read: A meta-analysis of the impact of writing and writing instruction on reading. Harvard Educational Review, 81(4), 710-744. doi:10.17763/haer.81.4.t2k0m13756113566 ✔ DOI照合済読んだ内容について書く(要約など)と読解が深まることを示したメタ分析(英語を母語とする児童生徒が中心)
- Graham, S., & Perin, D. (2007). A meta-analysis of writing instruction for adolescent students. Journal of Educational Psychology, 99(3), 445-476. doi:10.1037/0022-0663.99.3.445 ✔ DOI照合済4〜12年生の作文指導のメタ分析。文の結合(sentence combining)は 0.50、文法の単独指導は -0.32
- Marzec-Stawiarska, M. (2016). The influence of summary writing on the development of reading skills in a foreign language. System, 59, 90-99. doi:10.1016/j.system.2016.04.006 ✔ DOI照合済ポーランドの大学生80人・6か月の準実験。英語で要約を書き続けたグループは、選択式などの読解問題を解いたグループより読解が伸び、読むのが苦手な学生ほど効果が大きかった
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





