インフォメーション・ギャップ ― 「聞かないと埋まらない」から本気で聞き返す
A と B が別々の情報を持ち、英語でやり取りしないと課題が終わらないしくみ。聞き返しや言い直しが本当に必要になる場面を、教室の中で作りやすくなります。
- ⏱ 時間
- 10-15分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- ペア
- 🎯 技能
- やり取り・スピーキング・リスニング
- 📶 CEFR
- A1-B1

- 相手に聞かないと答えがわからない状況で、表を完成させるために必要な情報を、相手に質問して得る。
- わからないときに聞き返す・確かめる・言い直すという「意味のやり取り」を体験させる。
インフォメーション・ギャップってなに?
ひとことで言うと、課題をやりとげるのに必要な情報が人によってちがっていて、英語でやり取りして補わないと完成しない活動です。このページでは、A と B が別々の情報を持ち、ペアで聞き合って表や絵を完成させる、いちばん典型的な形(双方向・ペア型)を紹介します。
片方だけが情報を持っていて相手に伝える形(一方向型)や、グループで行う形もあります。
「ギャップ」は、2人の持っている情報の「すき間」のことです。
2枚に破れた宝の地図です。片方だけでは宝にたどり着けないので、相手に聞くしかありません。だから「Pardon?」「How do you spell it?」が、練習のためではなく、本当に必要な言葉になります。大事なのは、シートを見せ合わないことです。
似た活動とのちがい
| 答えが決まっている型練習(教科書の Q&A など) | インフォメーション・ギャップ | ジグソー | |
|---|---|---|---|
| 答えを知っているのは | 先生も相手も答えを知っている | 相手だけ | 班の1人ずつが別の部分を知っている |
| このサイトでの実施例 | ペア | ペア(グループで行う形もある) | 4人班(専門家グループ → 元の班) |
| 聞く理由 | 練習のため | 聞かないと表が埋まらない | 聞かないと全体がわからない |
相手の好みや経験をたずねる本物の質問なら、ふつうの Q&A にも自然な情報の差があります。広い意味ではジグソーもインフォメーション・ギャップの一つで、全員が別々の一部を持ち、全員が伝える人にも聞く人にもなる形です。
やり方を3ステップで
- 分ける:同じ表を A 用・B 用に作り、情報を半分ずつ書いて配る。
- 聞き合う:シートを隠したまま英語で聞き合い、空欄を埋める。わからなければ聞き返す。
- 見せ合う:最後にシートを見せ合って答え合わせし、使った聞き返し表現をふり返る。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 活動 | 先生のポイント |
|---|---|---|
| 0:00〜2:00 | 聞き返し表現の練習 | 全員で声に出す |
| 2:00〜3:00 | A・B シート配布とルール確認 | 見せ合い禁止を明確に |
| 3:00〜4:00 | 先生と代表生徒でモデル | 1行だけやって見せる |
| 4:00〜11:00 | ペアでやり取り | 机の間を回りながら、聞き返したペアをほめる |
| 11:00〜13:00 | 答え合わせ(見せ合う) | 合っていたら成功 |
| 13:00〜15:00 | ふり返り | 使った聞き返し表現を確認 |

- ワークシートを2種類作る:例「ケンの1週間」。A には月・水・金だけ、B には火・木だけ書いてある。印刷の色を A・B で変えると配布ミスが減る。
- 聞き返し表現を練習(2分):Pardon? / Could you say that again? / How do you spell it? / You mean ...? を全員で言う。
- 見せ合い禁止のルールを確認:シートは机の上に立てたファイルで隠す。机は向かい合わせにする。
- モデル(1分):先生が A、代表の生徒が B で1行だけやって見せる。
- やり取り(7分):A "What does Ken do on Tuesday?" B "He goes to cram school." を交互に。
- 答え合わせ(2分):最後にシートを見せ合って確認。合っていたら成功。
- ふり返り:「どの聞き返し表現を使った?」を確認し、次回使いたい表現を1つ決める。
- 時間割:曜日・時間ごとの教科の空欄(What do you have first period on Monday?)
- ケンの1週間:放課後の予定(What does he do on ...?)※ワークシート
- ちがいを探せ:2枚の部屋の絵のちがい7つ(Is there a cat on the bed?)
- 地図:店の位置が半分ずつ書かれた町の地図(Where is the bookstore?)
- 人物プロフィール:名前・年齢・出身・好きなもの(Where is she from?)
- 値段表:お店のメニューの値段が半分ずつ(How much is the pizza?)
- 天気予報:都市ごとの天気と気温(What's the weather like in Sapporo?)
- 誕生日カレンダー:有名人の誕生日(When is ...'s birthday?)
- 電車の時刻表:出発・到着時刻(What time does the train leave?)
- 4コマの順番:A・B が2コマずつ持ち、話の順番を決める(What happens in your picture?)
- アンケート結果のグラフ:数字が半分ずつ(How many students like soccer?)
- 小学校:「動物の絵の位置」を聞き合う。Where is the cat? / It's on the desk. の型だけで成立する。
- 中学:「ちがいを探せ」は人気が高い。There is/are や現在進行形の単元と相性がよい。
- 高校:A・B が別々の短い記事を読み、要点を伝え合って共通点を3つ見つける。読む活動とつなげられる。
- 大人数クラス:A・B の印刷色を変える。早く終わったペア用に「追加の質問カード」を用意しておく。
- 苦手な生徒が多いクラス:質問文をワークシートに印刷しておき、答えの語だけ聞き取る形から始める。答えに選択肢をつけてもよい。
- オンライン・タブレット:画面共有を禁止し、チャットではなく音声だけでやり取り。A・B のシートは個別に配信する。
- 知識・技能:疑問文と答えの形(三人称単数・時刻など)を正しく使えているか。
- 思考・判断・表現:聞き取れないとき・わからないときに、聞き返したり確かめたりして情報を正確に得ているか。
- 主体的に学習に取り組む態度:伝わらないときに、既習の表現や聞き返し方を選び直してやり取りを続けようとしているか。ふり返りで決めた「次に使いたい表現」を、次の回で試しているか。
| 観点 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| 課題の達成(ペアとしての形成的な目安。ペアで埋める15項目=A の空欄6+B の空欄9 が分母) | 14〜15項目が正しい | 10〜13項目が正しい | 9項目以下(まちがい・空欄が多い) |
| 聞き返し(伝わらない場面があったときだけ見る) | 必要な場面で自分から聞き返す・確かめる | 促されると聞き返す | 聞き返さずに推測で書く |
| 伝える工夫 | 伝わらないとき、言い直し・スペル・確認など方法を変えて伝える | 同じ言い方をくり返して伝えようとする | 伝わらないと止まってしまう |
日本語がまじる・シートを見せてしまう、といった英語の使用量そのものは評定に入れず、その場で声をかけて次の目標にする(形成的なフィードバック)として扱います。
- シートを見せ合ってしまったら → 机の上にファイルを立てて隠すことを最初に全員でやらせる。見せ合いは「答え合わせのときだけ」と板書する。
- 聞き返さずに黙ってしまうときは → 教室のペア活動では、はっきりした聞き返しは意外と少なく、学習者は完全に理解することより、なごやかに会話を続けることを優先しがちだったと報告されています 1。聞き返し表現を先に練習し、わからない場面で聞き返せたペアをほめる(回数を競わせると、わかっているのに聞き返す「形だけ」の聞き返しが増えるので注意)。
- 知らない単語で会話が止まったら → 情報の中身は既習語で作る。聞き取れたけれど書けない語は、How do you spell it? を使う練習の材料にする。意味がわからない語には What does ... mean? を使う。
- 早く終わったペアが騒ぎ出したら → 「ケンについての追加の質問を3つ考えて聞き合う」などの延長課題を用意しておく。
- 1人だけが質問するペアには → 「A は火曜・木曜、B は月・水・金を聞く」と担当を分け、交互に質問させる。
情報交換が「必須」かどうかで、やり取りの質が変わります。古典的な教室研究では、情報を交換しないと課題が終わらないタスクの方が、聞き返し・確かめ・言い直しといった会話の調整を多く生み、また先生主導の全体活動より、ペアや小グループの方が調整が多く起きました 2。こうしたやり取り(インタラクション)は、全体として第二言語の発達を助けると考えられていますが、効き目は相手やタスクの条件によって変わります 3。
日本の教室の研究もあります。日本の高校生(79人と127人)が先生の英語の指示を聞いて理解する場面を調べた研究では、わからないときに質問でき、やり取りの中で調整された英語の方が、あらかじめやさしく書き直した英語よりも理解が進み、新しい語の習得も多くなりました。ただし、やり取りの条件は課題にずっと長い時間がかかり、くり返しや英語にふれる時間も増えていたので、やり取りそのものだけの効果とは言い切れません。また、自分から積極的に聞き返した生徒が、そのやり取りを聞いていただけの生徒より理解や語の習得で上回ったわけではありませんでした 4。生徒どうしのインフォメーション・ギャップを直接調べた研究ではないので、「やり取りで調整された英語は役に立つ」ことの補助的な根拠として読んでください。さらに、日本の大学1年生67人の研究では、インフォメーション・ギャップの前に会話方略(聞き返し方など)を意識させ、手本の動画を見せたグループの方が、事前の活動をしなかったグループより、課題を正確に・効率よく達成しました。ただし、方略の意識づけと動画をセットで行った研究なので、どちらが効いたのかは切り分けられていません 5。
❓ よくある質問
Q. インフォメーションギャップのシートはどう作りますか?
同じ表を2種類作り、情報を分けて書きます。例えば「ケンの1週間」なら、A には月・水・金だけ、B には火・木だけを書きます。印刷の色を A・B で変えると配布ミスが減ります。情報の中身は既習語で作ります。
Q. シートを見せ合ってしまうときは?
机を向かい合わせにし、シートは机の上に立てたファイルで隠すことを、最初に全員でやらせます。見せ合いは「答え合わせのときだけ」と板書しておきます。1人だけが質問するペアには、聞く曜日の担当を分けて交互に質問させます。
Q. 聞き返さずに黙ってしまう生徒には?
教室のペア活動では、はっきりした聞き返しは意外と少なく、学習者はなごやかに会話を続けることを優先しがちだったと報告されています 1。Pardon? / Could you say that again? / How do you spell it? / You mean ...? を先に練習し、聞き返したらほめます。
Q. インフォメーションギャップには、どんな効果がありますか?
情報交換が任意のタスクより、交換しないと課題が終わらないタスクの方が、聞き返し・確かめ・言い直しが多く起きたという古典的な研究があります 2。日本の高校生が先生の指示を聞いて理解する場面の研究では、質問しながらやり取りの中で調整された英語の方が、あらかじめやさしく書き直した英語より理解が進みました(ただし生徒どうしの活動を直接調べた研究ではありません)4。
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📑 出典(5件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Foster, P., & Ohta, A. S. (2005). Negotiation for meaning and peer assistance in second language classrooms. Applied Linguistics, 26(3), 402-430. doi:10.1093/applin/ami014 ✔ DOI照合済教室のペア活動では意味交渉そのものは少なく、相づち・励まし・助け合い・自己修正が会話を支えていたことを示した研究
- Doughty, C., & Pica, T. (1986). "Information gap" tasks: Do they facilitate second language acquisition?. TESOL Quarterly, 20(2), 305-325. doi:10.2307/3586546 ✔ DOI照合済情報交換が「必須」のタスクほど、聞き返し・言い直しなどの会話の調整が多く起きることを示した古典的研究
- Loewen, S., & Sato, M. (2018). Interaction and instructed second language acquisition. Language Teaching, 51(3), 285-329. doi:10.1017/S0261444818000125 ✔ DOI照合済インタラクション(やり取り)研究の総説。インプット・意味交渉・アウトプットとその条件を整理
- Ellis, R., Tanaka, Y., & Yamazaki, A. (1994). Classroom interaction, comprehension, and the acquisition of L2 word meanings. Language Learning, 44(3), 449-491. doi:10.1111/j.1467-1770.1994.tb01114.x ✔ DOI照合済日本の高校生(79人・127人)で、やり取りの中で調整された英語の方が理解も語の習得も進んだことを示した教室研究
- Milliner, B., & Dimoski, B. (2024). The effects of communication strategy training on speaking task performance. RELC Journal, 55(2), 344-363. doi:10.1177/00336882221085781 ✔ DOI照合済日本の私立大学1年生67人。インフォメーション・ギャップの前にコミュニケーション方略を教えたグループの方が、正確に・効率よく課題を達成した(2022年オンライン先行公開、2024年に巻号掲載)
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら






