長文読解No.180確認問題集あり

速読の科学とトレーニング(WPM・チャンク・返り読み)

「1分で数千語」の速読術は科学的には疑わしい。読む速さの本当の決め手と、研究に裏づけのある伸ばし方だけをまとめる。

速読の科学とトレーニング(WPM・チャンク・返り読み) の1ページ目

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まずはこの3つ

  1. 英語ネイティブの黙読は平均約240語/分(説明文)
  2. 速さを決めるのは目の動きより語彙と言語の力
  3. 返り読みは悪ではない。減らすのは「迷子の返り読み」

読む速さの目安(WPM=1分あたりの語数)

ネイティブの数値は190の研究をまとめたメタ分析(Brysbaert 2019)による。

誰が・何をWPM出どころ
英語の大人の黙読(説明文)平均 約238Brysbaert 2019
英語の大人の黙読(物語)平均 約260Brysbaert 2019
多くの大人の範囲(説明文)175〜300Brysbaert 2019
英語の大人の音読平均 約183Brysbaert 2019
共通テストのリーディングを読み切る目安約150原田英語の試算(総語数と読みに使える時間から逆算。語数は年度で変わる)

WPMの測り方3

  1. 1計算式
    WPM=読んだ語数÷かかった秒数×60。例:600語を4分(240秒)で読めば 600÷240×60=150 WPM。
    450 words in 3 minutes → 150 WPM450語を3分で読むと150 WPM
  2. 2理解度とセットで測る
    速く目を動かすだけなら誰でも速くなる。内容を確認する問題を必ず解き、理解が落ちていないかを見る。
  3. 3同じ難しさの英文で比べる
    易しい英文と難しい英文ではWPMが大きく変わる。記録は同じレベルの教材でとる。

目の動きの科学5

目は文字の上をなめらかに滑っていない。止まる→跳ぶ→止まる のくり返し。

  1. 1停留と跳躍
    目が止まっている間(停留)に文字を取り込み、跳躍(サッカード)の間はほぼ何も見えていない。英語の熟達した読み手で停留は平均200〜250ミリ秒、跳躍は7〜9文字ほど(Rayner 1998)。
  2. 2返り読みは誰でもする
    熟達した読み手でも、跳躍の10〜15%ほどは前に戻る動き(Rayner 1998)。返り読みは理解を確かめる自然な動きでもある。
  3. 3返り読みを禁じると理解が落ちる
    読み直しが必要な紛らわしい文で、戻った先の語を見えなくすると、理解が下がった(Schotter, Tran & Rayner 2014)。減らすべきは、意味を取れずに何度も戻る「迷子の返り読み」。
  4. 4一度に読める範囲は狭い
    はっきり読み取れるのは見ている点のまわりの狭い範囲だけ。「1行を一目で」「ページを写真のように」読む訓練には科学的な裏づけがない(Rayner et al. 2016)。
  5. 5頭の中の声は自然
    黙読でも頭の中で音が響く(内声)のは普通のことで、理解を支えている面がある。無理に消そうとするより、英語の処理そのものを速くするほうがいい(Rayner et al. 2016)。
なぜ効く?

「速読術」の科学的な結論:読書の研究を総まとめしたレビュー(Rayner et al. 2016)は、今の力を超えて速さだけを上げると理解が落ちる(速さと理解のトレードオフ)とし、理解を保ったまま速さを何倍にもするのは難しいと結論づけた。語彙や知識が伸びれば、速さは少しずつ上がる。速く読める人の強みは、目の特殊な技術ではなく、語彙・言語の力と、その話題への知識にある。

その速読法、本当?4

  • ✕1分に数千語読める速読術で長文も楽勝
    ○理解を保ったまま何倍にもするのは難しい
    速さだけ上げると理解が落ちる(Rayner et al. 2016)
  • ✕1語ずつ高速表示するアプリで速読力がつく
    ○高速にすると理解が落ちやすく、戻って読み直せない
    返り読みは理解を支えている(Schotter et al. 2014)
  • ✕返り読みは一切しない
    ○目的のない返り読みだけを減らす
    熟達者も返り読みをする(Rayner 1998)
  • ✕頭の中の音を消せば速くなる
    ○語彙と処理の自動化で速くする
    内声は理解を支える面がある

研究に裏づけのある伸ばし方6

  1. 1語彙を「見た瞬間」にする
    単語を見た瞬間に意味が出る(自動化)ほど、頭の容量を内容の理解に回せる(LaBerge & Samuels 1974 の自動性理論)。単語は「知っている」から「速く分かる」まで仕上げる。
  2. 2易しい英文をたくさん読む
    多読の研究を統合したメタ分析で、読む力へのプラスの効果が報告されている(Nakanishi 2015)。日本の大学生を対象に、多読で読む速さが伸びたという研究もある(Beglar, Hunt & Kite 2012)。
  3. 3同じ英文を繰り返し読む
    一度読んだ英文を何度も読むと、読みの流暢さが上がる(repeated reading:Samuels 1979。もとは児童の音読練習の研究)。精読して意味が分かった英文で行う。
  4. 4チャンクで前から読む
    後ろから訳し上げる癖は、返り読みを増やす一因。意味のかたまり(チャンク)ごとに英語の語順で理解する練習をする(→スラッシュリーディング)。
  5. 5音読は「意味が分かった英文」で
    モデル音声をまねて音読すると、英語の語順のまま処理する練習になる。意味の分からない英文の音読は効果が薄い(効果の大きさは研究によって幅がある)。
  6. 6時間を計って読む
    毎回WPMと理解度を記録する。数字で伸びが見えると、速さと正確さのバランスを自分で調整できる。

読み方の使い分け

いつも同じ速さで読まない。目的に合わせてギアを変えるのが本当の「速読」。

読み方目的入試での出番
スキミング大意をつかむ(各段落の要点の文・くり返される語を拾う)時間がない時の全体把握、タイトル問題
スキャニング特定の情報を探す(数字・固有名詞)設問のキーワード探し、図表・広告
流暢読み理解しながらふつうの速さで読む本文の通読(基本のギア)
精読構造を確かめて正確に読む逆接の後、下線部、和訳問題

4週間トレーニングの例5

研究で示された方法を組み合わせた一例。量は自分に合わせて調整する。

  1. 1
    今のWPMを測る共通テストレベルの英文1題を時間を計って読み、WPMと正答数を記録する。
  2. 2
    毎日、易しい英文を多読知らない単語がほとんどない英文を、止まらずに読む。辞書は引かず、話の流れを楽しむ。
  3. 3
    精読済みの英文を繰り返し読む授業や問題集で意味を確認した英文を、黙読・音読で3〜5回。回ごとに少し速く。
  4. 4
    週1回、WPMと理解度を記録同じレベルの英文で測る。速さだけ伸びて正答が落ちたら、速度を少し戻す。
  5. 5
    仕上げは過去問を時間内で本番の時間で解き、どの大問で時間を使いすぎたかを確認する。

確認テスト

  1. 1
    900語の英文を6分で読んだ。WPMは?
  2. 2
    熟達した読み手の返り読みについて正しいのは?
  3. 3
    読む速さを上げる方法として研究の裏づけが最も弱いのは?
  4. 4
    大問の中から日付だけを探す読み方は?

参考にした資料

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