まずはこの3つ
- 設問文は先に読む。選択肢は先に読まない
- 先に問いを持つと問われた所は残りやすい。他は研究で分かれる
- 先読みの深さは「戻れるかどうか」で決める
教育心理学では、文章の前に置く質問(事前質問)の効果が昔から調べられてきた。まとめると、問われた情報の記憶は上がりやすい。一方、問われていない情報は研究によって結果が分かれ、下がった研究(Peeck 1970 など)も、上がった研究(動画を使った Carpenter & Toftness 2017 など)もある。質問を文章の前に置くか後に置くかでは、問われた情報への効果は同程度で、問われていない情報は「後に置く」ほうが有利だったとするレビューもある(Hamaker 1986 など。Latimier et al. 2019 の整理による)。
これらは「文章から学んで覚える」研究で、時間制限のある入試の得点を直接比べたものではない。下の形式別のおすすめは、研究の傾向をふまえた経験則として読む。
先読みのメリット・デメリット
「根拠」の列で、研究に沿う所と経験則を区別した。
| 内容 | 根拠 | |
|---|---|---|
| 長所 | 探す物が決まり、該当箇所で目が止まる | 研究(問われた情報は残りやすい) |
| 長所 | 設問は本文の予告。話題が先に分かる | 経験則 |
| 長所 | 根拠を探して読み直す時間が減る | 経験則 |
| 短所 | 答え探しの飛ばし読みで、全体の流れを失う | 研究(問われない情報が下がる例) |
| 短所 | 選択肢のダミーの内容が頭に残る | 経験則 |
| 短所 | 先読みそのものに時間がかかる | 経験則 |
どこまで先読みする?4段階
時間はあくまで目安。おすすめは段階2。
| 段階 | やること | 目安 | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| 0 先読みなし | 本文の1行目から読む | 0秒 | 設問が主旨・要約だけの時 |
| 1 種類だけ | 内容一致か、下線部か、タイトルかを確認 | 10秒 | どの長文でも最低限 |
| 2 設問文まで | 疑問詞とキーワードに丸。何を探すか決める | 30秒〜1分 | 基本はここ |
| 3 選択肢まで | 選択肢を全部読んでから本文へ | 数分 | 原則しない(短い英問・告知文は例外) |
形式別のおすすめ(経験則)8
物語・論説は本文を頭から通して読む(広告・告知文は探し読み)。先読みは「何を探すか」を決めるだけ。
- 1下線部・指示語・語彙番号と位置だけ確認すれば十分。下線部まで読み進めたら、その場で前後を見て解く。
- 2空所補充先読みはほぼ不要。空所に来たら前後の論理と品詞から入る物を予想し、それから選択肢を見る。
- 3内容一致(段落ごと)設問文の主語・キーワードに丸。選択肢は、該当する段落を読み終えてから照合する。
- 4内容一致(全体から選ぶ)選択肢は先に読まない。各段落の要点を余白にメモし、最後にまとめて照合する。
- 5主旨・タイトル「全体を読む前提」と決めるためにだけ見る。段落ごとに要点を一言でメモしながら進む。
- 6英問英答疑問詞で求められる情報と答えの形を予想しておく(Why → 理由・目的で because / to do、How(方法)→ by doing など)。該当箇所の文型まで予想できる。Why did she quit the team?→「やめた理由」を探しながら読む
- 7広告・メール・告知文設問を先に読み、日時・金額・条件など探す情報を決めてからスキャン(拾い読み)。短い設問なら選択肢まで見てよい。
- 8NOT・EXCEPT 問題先読みの段階で NOT に大きく印。逆を選ぶ事故を防ぐのが、先読みのいちばん確実な得点効果。Which is NOT mentioned as a reason?→ 理由として「書かれていない」ものを探す
60秒でやる先読みの手順5
- 1設問の数と種類を数える内容一致・下線部・タイトルなど。最終問が全体型かどうかを確認。
- 2疑問詞とキーワードに丸固有名詞・数字・年号は本文で見つけやすい目印になる。
- 3NOT・EXCEPT に印読み違えると答えが全部逆になる。
- 4設問を段落に割り振る設問は本文の順に並ぶことが多い。問1は前半、最終問は後半と見当をつける。
- 5タイトルと第1段落から読むここからは本文を通して読み、段落ごとに該当する設問を解く。
実演:設問文だけで本文が見える
オリジナルの設問例。設問文は本文の「予告編」になっている。
| 設問文 | 先読みで分かること |
|---|---|
| What problem did the town face in the 1990s? | 前半に「昔の問題」。昔⇔今の対比で進む文章と予想 |
| Why did Dr. Lee change her mind? | 途中で考えが変わる。逆接の後に新しい主張が来る |
| What does "a double-edged sword" in paragraph 4 mean? | 第4段落に長所と短所の両方が書かれている |
| Which of the following is NOT true about the app? | アプリの特徴が複数並ぶ。NOT に印 |
| Which is the best title for the passage? | 全体型。段落ごとの要点メモが必要 |
やりがちな先読みミス5
- ✕選択肢まで全部読み込んでから本文へ○設問文だけ読み、選択肢は該当箇所を読んだ後にダミーの内容が頭に残り、本文を「確かめ読み」してしまう
- ✕先読みしたキーワードの所だけ拾い読み○本文は頭から通して読み、キーワードで減速する問われていない所を飛ばすと、論理の流れを失う
- ✕先読みした設問の内容を全部覚えようとする○「何を探すか」だけ頭に置く覚えきれず、本文を読む集中が削られる
- ✕設問のキーワードが本文に出たら即答する○その段落の最後と、直後の逆接まで読んでから解く直後の However でひっくり返ることがある
- ✕時間切れ寸前でも本文を頭から読み続ける○残り数分なら設問→該当箇所だけを探して読む非常手段。読み切れないなら探し読みのほうが点になる
リスニングでは選択肢まで先読みするのが基本だ。音声は自分で戻して聞き直せないので、何を聞き取るかを先に決めておく(2回流れる問題もある)。長文は時間内なら読み返せるので、先読みは軽く、本文の理解に時間を回す。「戻れるかどうか」が先読みの深さを決める。
確認テスト
- 1長文の先読みで基本となる深さは?正解は 設問文まで。何を探すかを決めるだけ
- 2事前質問の研究で、比較的はっきりしている結果は?正解は 問われた情報の記憶が上がりやすい。問われない情報は結果が分かれる
- 3Why did Dr. Lee change her mind? を先読みした。本文で特に注意するのは?正解は 逆接の後。考えが変わる=逆接で転換
- 4最終問がタイトル選択の時、先読みで決めることは?正解は 全体を読む前提で要点をメモする。全体型は段落ごとのメモで解く
- 5リスニングで選択肢まで先読みするのが基本な理由は?正解は 音声は戻って聞き直せないから。長文は戻れるので軽くてよい
参考にした資料
- Latimier, A. et al. (2019). Does pre-testing promote better retention than post-testing? npj Science of Learning, 4(事前質問研究の整理)
- The Learning Scientists「Are Prequestions Useful?」(Peeck 1970、Carpenter & Toftness 2017 の紹介)
- Carpenter, S. K. & Toftness, A. R. (2017). The effect of prequestions on learning from video presentations. Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 6(1)
- Hamaker, C. (1986). The effects of adjunct questions on prose learning. Review of Educational Research, 56(2)
設問の先読みを一覧にまとめ、A4 2枚で印刷できる無料PDFにしました。Web版は赤シート・覚えたチェック・カード・4択テストつき。