まずはこの3つ
- 由来の物語を知れば、初見の比喩も意味が推理できる
- 神話・聖書・シェイクスピアが英語の比喩の三大供給源
- 固有名詞は大文字のまま。a Trojan horse のように a が付く
由来を知ると長文の比喩が一発で読める
評論で The new app could be a Trojan horse. と出たら「内部に入り込んで害をなすもの」。英語圏の書き手は、読者が神話・聖書・シェイクスピアを知っている前提で比喩を使う。由来の物語=意味のヒントになる。
1ギリシャ・ローマの神話と歴史1212
英雄・王・将軍の物語がそのまま比喩になった
- Achilles' heel★★★(強い人・物の)弱点/泣き所英雄アキレウスはかかとだけが不死身でなかったという伝承からMath is my Achilles' heel.数学が私の弱点だ。
- open Pandora's box★★★災いの元を開けるパンドラが開けた入れ物から災いが飛び出した。元は「つぼ」とされるThe new law may open Pandora's box.新しい法律は災いの種になりかねない。
- a Trojan horse★★★内部から害をなすものトロイア戦争で兵を潜ませた木馬。無害を装う不正プログラム名にもThe free app was a Trojan horse.その無料アプリは中に罠を仕込んでいた。
- the Midas touch★★★何をやっても成功させる才能触れる物すべてが金になったミダス王からShe has the Midas touch in business.彼女は商売で何をやっても当てる。
- a Herculean task★★★非常に骨の折れる仕事英雄ヘラクレスの「12の功業」からCleaning the gym alone was a Herculean task.1人で体育館を掃除するのは大仕事だった。
- the sword of Damocles★★★身に迫る危険髪の毛1本でつるした剣の下に座らされたダモクレスの話(キケロが伝える)The exam hung over me like the sword of Damocles.試験がいつも頭上にのしかかっていた。
- a Pyrrhic victory★★★犠牲が大きすぎる勝利大損害を出してローマ軍に勝ったピュロス王からWinning the case was a Pyrrhic victory.裁判に勝ったが代償が大きすぎた。
- cross the Rubicon★★★後戻りできない一線を越える前49年、カエサルがルビコン川を渡りローマへ進軍Once you sign, you've crossed the Rubicon.サインしたらもう後には引けない。
- The die is cast.★★★賽は投げられたルビコン川を渡る時のカエサルの言葉と伝えられる。die=さいころThe die is cast — there's no going back.賽は投げられた。もう引き返せない。
- Rome wasn't built in a day.★★★ローマは1日にして成らず中世の格言とされる。大事業には時間がかかるKeep practicing. Rome wasn't built in a day.練習を続けよう。すぐには上達しない。
- When in Rome, do as the Romans do.★★★郷に入っては郷に従え聖アンブロジウスの助言が元とされるWhen in Rome, do as the Romans do — take off your shoes.郷に入っては郷に従え。靴を脱ごう。
- All roads lead to Rome.★★★すべての道はローマに通ず方法は違っても行き着く所は同じThere are many study methods — all roads lead to Rome.勉強法はいろいろ。どれでも目的は果たせる。
2聖書から1313
欧米の文章の「共通の教科書」。評論・スピーチの定番
- the writing on the wall★★★破滅の前兆宴の壁に謎の手が王国の滅亡を書いた話(ダニエル書)Sales kept falling. The writing was on the wall.売上は落ち続けた。終わりの前兆だった。
- a good Samaritan★★★困っている人を助ける親切な人倒れた旅人を助けたサマリア人のたとえ(ルカ伝)A good Samaritan returned my wallet.親切な人が財布を届けてくれた。
- a scapegoat★★★身代わり/他人の罪をかぶる人人々の罪を負わせて荒野に放った山羊(レビ記)He was made a scapegoat for the team's loss.彼はチームの敗戦の身代わりにされた。
- turn the other cheek★★★やり返さずに耐える「右の頬を打たれたら左も」(マタイ伝)She chose to turn the other cheek.彼女はやり返さないことを選んだ。
- the salt of the earth★★★善良で頼りになる人塩は欠かせない物=社会に欠かせない人(マタイ伝)My grandparents are the salt of the earth.祖父母は本当に善良な人たちだ。
- a prodigal son★★★放蕩息子(悔い改めて戻った人)財産を使い果たして帰った息子を父が迎えたたとえ(ルカ伝)The prodigal son returned to the band.出て行ったメンバーがバンドに戻ってきた。
- an eye for an eye★★★目には目を(同じ仕返し)旧約の律法から。ハンムラビ法典にも似た規定An eye for an eye only leads to more violence.仕返しはさらなる暴力を生むだけだ。
- a doubting Thomas★★★疑い深い人復活したイエスを見るまで信じなかった弟子トマス(ヨハネ伝)Don't be a doubting Thomas. It's true!疑うなよ。本当だって!
- forbidden fruit★★★禁断の木の実/禁じられて余計ほしくなる物エデンの園の実。聖書に「りんご」とは書かれていないFor kids, sweets are forbidden fruit.子どもにとってお菓子は禁断の果実だ。
- at the eleventh hour★★★土壇場で/ぎりぎりに日の出から数えて第11時(夕方5時ごろ)に雇われた労働者のたとえ(マタイ伝)The deal was saved at the eleventh hour.交渉は土壇場で救われた。
- a wolf in sheep's clothing★★★羊の皮をかぶった狼偽預言者への警告(マタイ伝)That friendly salesman is a wolf in sheep's clothing.あの愛想のいい営業マンは羊の皮をかぶった狼だ。
- Man shall not live by bread alone.★★★人はパンのみにて生きるにあらず物質だけでなく心の糧も必要(申命記・マタイ伝)Art matters, because man shall not live by bread alone.人はパンのみにて生きるにあらず、だから芸術は大切だ。
- a labor of love★★★好きでやる仕事(報酬目当てでない)新約聖書の言葉から。英つづり labourRunning the website is a labor of love for him.サイトの運営は彼にとって好きでやっていることだ。
3寓話・童話・伝説88
イソップ・アンデルセン・アーサー王
- cry wolf★★★うそで騒ぐ(本当の時に信じてもらえない)イソップ「オオカミ少年」If you cry wolf, no one will believe you later.うそで騒ぐと、いざという時信じてもらえない。
- kill the goose that lays the golden eggs★★★目先の欲で大事な利益の元を失う金の卵を産むガチョウを殺した男(イソップ)Raising prices too much would kill the goose that lays the golden eggs.値上げしすぎは金の卵を産むガチョウを殺すようなものだ。
- Slow and steady wins the race.★★★ゆっくり着実が最後に勝つイソップ「ウサギとカメ」の教訓Study a little every day. Slow and steady wins the race.毎日少しずつ。ゆっくり着実が最後に勝つ。
- a dog in the manger★★★意地悪な人(自分は使わないのに人にも使わせない)イソップ寓話とされる。飼い葉おけを占領した犬Don't be a dog in the manger — lend him the book.意地悪しないで本を貸してあげなよ。
- bell the cat★★★危険な役目を買って出る「誰が猫の首に鈴をつけるか」と相談するネズミの寓話Who will bell the cat and tell the boss?誰が上司に言うという危ない役をやる?
- a Cinderella story★★★無名からの大成功物語シンデレラの物語から。スポーツ報道で多いThe small school's win was a Cinderella story.小さな学校の優勝はシンデレラ物語だった。
- the emperor's new clothes★★★誰も「おかしい」と言えないものアンデルセン『裸の王様』The plan is like the emperor's new clothes.その計画は裸の王様のようなものだ。
- the holy grail★★★究極の目標/夢の品アーサー王伝説の騎士たちが探した聖杯A cure for cancer is the holy grail of medicine.がんの治療法は医学の究極の目標だ。
4シェイクスピアから66
400年以上前のセリフが今も日常語
- It's Greek to me.★★★ちんぷんかんぷんだ『ジュリアス・シーザー』のセリフで広まったThis tax form is all Greek to me.この税の書類はさっぱりわからない。
- the green-eyed monster★★★嫉妬『オセロ』で嫉妬を「緑の目の怪物」と呼んだShe was bitten by the green-eyed monster.彼女は嫉妬にかられた。
- All that glitters is not gold.★★★光る物がすべて金とは限らない『ヴェニスの商人』で有名(格言自体はもっと古い)The job sounds great, but all that glitters is not gold.いい仕事に聞こえるが、見かけにだまされるな。
- A rose by any other name would smell as sweet.★★★名前が変わっても中身は同じ『ロミオとジュリエット』のセリフからCall it what you like — a rose by any other name would smell as sweet.呼び名は何でもいい。中身は同じだ。
- the be-all and end-all★★★最も大切なもの/すべて『マクベス』のセリフから。否定文で多いGrades aren't the be-all and end-all.成績がすべてではない。
- vanish into thin air★★★跡形もなく消える『テンペスト』の一節から広まったとされるMy keys seem to have vanished into thin air.鍵がこつぜんと消えたようだ。
5近代文学から77
小説の登場人物・題名が一般名詞に
- a Catch-22★★★どうしても抜け出せない矛盾した状況ヘラーの小説『キャッチ=22』(1961)からNo job without experience, no experience without a job — it's a Catch-22.経験がないと職がなく、職がないと経験も積めない。八方ふさがりだ。
- Big Brother★★★国民を監視する権力オーウェル『1984年』の独裁者からCameras everywhere — Big Brother is watching.どこにもカメラ。監視社会だ。
- a Jekyll and Hyde★★★表と裏で正反対の顔をもつ人スティーヴンソン『ジキル博士とハイド氏』He's a real Jekyll and Hyde.彼は表と裏がまるで違う。
- a Scrooge★★★けちな人ディケンズ『クリスマス・キャロル』の守銭奴Don't be such a Scrooge!そんなにけちけちするな!
- go down the rabbit hole★★★不思議な世界・調べ物に深くはまり込む『不思議の国のアリス』でアリスがウサギの穴に落ちるI went down a rabbit hole of cat videos.猫動画の沼にはまった。
- a Frankenstein's monster★★★生みの親の手に負えなくなった物Frankenstein は怪物ではなく造り主ヴィクターの姓(シェリー作)Social media has become a Frankenstein's monster.SNSは手に負えない怪物になった。
- tilt at windmills★★★架空の敵・見当違いの相手と戦う風車を巨人と思い込んで突撃したドン・キホーテからHe's tilting at windmills — no one is actually against him.彼は架空の敵と戦っている。誰も反対などしていない。
6歴史・戦争から44
戦い・習わしが比喩として残った
- meet one's Waterloo★★★決定的な敗北を喫する1815年、ナポレオンがワーテルローの戦いで大敗The champion finally met his Waterloo.王者はついに決定的な敗北を喫した。
- burn one's bridges★★★退路を断つ/関係を絶つ退却できないよう橋を焼く戦術から、とされるDon't burn your bridges when you quit.辞める時に関係を壊すな。
- bury the hatchet★★★仲直りする北米先住民の和平の習わし(手おのを埋める)から、とされるThe two rivals finally buried the hatchet.ライバル同士がついに和解した。
- carry coals to Newcastle★★★余計なことをする英国の炭鉱の町ニューカッスルに石炭を運ぶBringing sand to the beach is like carrying coals to Newcastle.砂浜に砂を持って行くのは無駄なことだ。
おまけ:神話・物語から生まれた単語1010
語意味由来
mentorよき指導者『オデュッセイア』の助言者メントール
narcissismうぬぼれ・自己愛水に映る自分に恋したナルキッソス
panicパニック人々を恐怖させた牧神パン
echoこだま声だけになったニンフのエコー
odyssey長い冒険の旅オデュッセウスの10年の放浪
tantalizeじらす水も果物も届かない罰を受けたタンタロス
marathonマラソンマラトンから走った伝令の伝説
spartan質素で厳しい古代スパルタの厳しい教育
draconian非常に厳しい厳罰の法を定めたドラコン
utopia理想郷トマス・モアの造語(1516年)
確認テスト6問
- 1Spelling is my heel.正解は Achilles'。弱点・泣き所=Achilles' heel
- 2The company's money problems were the writing on the .正解は wall。破滅の前兆
- 3He has signed the contract. He has crossed the .正解は Rubicon。後戻りできない=cross the Rubicon
- 4A kind stranger, a real good , helped me fix my tire.正解は Samaritan。親切な人=a good Samaritan
- 5The plan was rescued at the hour.正解は eleventh。土壇場で=at the eleventh hour
- 6After years of fighting, the brothers buried the .正解は hatchet。和解=bury the hatchet
参考にした資料
教養イディオムを一覧にまとめ、A4 3枚で印刷できる無料PDFにしました。Web版は赤シート・覚えたチェック・カード・4択テストつき。