原田先生の英語とっておきの話

【インド英語70選】Prepone, Do the needful…辞書に載っていない「13億人の英語」完全辞典

🇮🇳 INDIAN ENGLISH DICTIONARY

辞書に載っていない
インド英語完全辞典
── 13億人が使う「もう一つの英語」

Prepone, Do the needful, Kindly revert…
同僚のインド人が使う謎の英語、全部わかります

「Prepone the meeting to 2 PM, please.」
──インド人同僚からのメールに、あなたは固まったことがありませんか?
Postpone(延期する)の反対? そんな単語、辞書にないけど……?
実は、13億人が毎日使っている「正式なインド英語」なのです。

1そもそも「インド英語」とは何か?──世界最大の英語話者国の真実

「インド英語」と聞くと、「訛りの強い英語」「間違った英語」と思う人もいるかもしれません。しかしそれは大きな誤解です。インド英語(Indian English)は、言語学的に認められた英語の変種(variety)であり、アメリカ英語やイギリス英語と同列に扱われるべき存在です。

13億+
インドの人口
1.3億+
英語を日常的に使用する人口
22
インド憲法が認める公用語の数

インドでは英語は「外国語」ではなく「準公用語(Associate Official Language)」です。連邦政府の公用語はヒンディー語ですが、南インドを中心にヒンディー語を母語としない州が多く、州をまたぐコミュニケーションでは英語が共通語として機能しています。つまりインド英語は、200年以上の歴史を持つ生きた英語変種なのです。

💡

インドの英語話者数は、アメリカに次いで世界第2位。一説では、第二言語話者を含めるとアメリカを超えるとも言われています。つまり「世界で最も多くの人が使う英語」はインド英語である可能性すらあるのです。

インド英語の特徴は、ヒンディー語やタミル語、ベンガル語などの現地語の影響を強く受けていること。文法構造、語彙、慣用表現、さらには「丁寧さの表現方法」まで、独自の進化を遂げています。

これからご紹介する表現の多くは、Oxford辞書やMerriam-Websterには載っていません。しかしインドのビジネスメール、会議、日常会話では「標準表現」として完全に定着しています。グローバルビジネスの現場でインド人と仕事をするなら、これらを知っていることは大きなアドバンテージになります。

2【ビジネス編】オフィスで飛び交うインド英語30選

インド人と仕事をしたことがある人なら、「え、この英語なに?」と戸惑った経験があるはず。ここでは、ビジネスシーンで頻出するインド英語を辞書形式で完全網羅します。

🔥 超頻出!まず覚えるべき10語

prepone

★★★ 最重要

動詞 /priːˈpoʊn/
意味:予定を前倒しにする(postpone の反対語)
例文:“Can we prepone the meeting to 2 PM instead of 4 PM?”
(会議を4時ではなく2時に前倒しできますか?)
📌 米英での言い換え:move up, bring forward, reschedule to an earlier time
📌 豆知識:postpone(post- = 後)の対義語として pre-(前)+ pone で造語。論理的には完璧だが、米英の辞書には未掲載。2010年代にOxford Advanced Learner’s Dictionaryのインド版に収録された。
do the needful

★★★ 最重要

慣用句
意味:必要な対応をしてください(依頼の定番表現)
例文:“Please find the attached document and do the needful.”
(添付書類をご確認の上、必要な対応をお願いします)
📌 米英での言い換え:please take the necessary action / please handle this accordingly
📌 豆知識:実は19世紀のイギリス英語では普通に使われていた表現。本国では廃れたが、インドでは生き残った「化石表現」。Shakespeare時代の英語の面影を残す。
revert (back)

★★★ 最重要

動詞(インド英語独自用法)
意味:返信する、返答する(reply / get back to の意味で使用)
例文:“Please revert at the earliest.”
(できるだけ早くご返信ください)
📌 米英での言い換え:please reply / please get back to me
📌 注意:米英では revert は「元の状態に戻る」の意味。”Please revert” と言われてアメリカ人が「何を元に戻すの?」と困惑するのはあるある。
kindly

★★★ 最重要

副詞(多用傾向)
意味:どうか〜してください(please の代わりに極めて高頻度で使用)
例文:“Kindly do the needful and revert back at the earliest.”
(どうぞ必要な対応をし、早急にご返信ください)
📌 ポイント:インド英語の典型文 “Kindly do the needful and revert back at the earliest” は、インド英語の三大要素が凝縮された「黄金文」。これ一文でインド英語がわかると言っても過言ではない。
at the earliest

★★★ 最重要

副詞句
意味:できるだけ早く(= as soon as possible / ASAP
例文:“Please share the report at the earliest.”
(できるだけ早くレポートを共有してください)
📌 米英での言い換え:at your earliest convenience / as soon as possible
📌 ニュアンス:“at your earliest convenience” よりも urgency が強い。ASAPに近いが、よりフォーマル。
updation

★★ 重要

名詞 /ʌpˈdeɪʃən/
意味:更新、アップデート(update の名詞形として使用)
例文:“The updation of the database is pending.”
(データベースの更新が保留中です)
📌 米英での言い換え:update(名詞としてそのまま使う) / updating
📌 豆知識:英語では update が名詞・動詞兼用だが、ヒンディー語の造語パターンに影響され -tion を付けて名詞化。
intimate

★★ 重要

動詞(インド英語独自用法)
意味:通知する、知らせる(inform の意味)
例文:“Please intimate the team about the schedule change.”
(スケジュール変更についてチームに通知してください)
📌 米英での言い換え:inform / notify / let someone know
📌 注意:米英では intimate は形容詞「親密な」が主な意味。ビジネスメールで “Please intimate me” と言われると一瞬ドキッとするが、「知らせてね」の意味。
out of station

★★ 重要

形容詞句
意味:出張中、街を離れている(= out of town / away)
例文:“Sorry, the manager is out of station this week.”
(すみません、マネージャーは今週不在です)
📌 語源:イギリス植民地時代、鉄道の「駅(station)」が拠点を意味していた名残り。駐屯地 = station。
same to same

★★ 重要

形容詞句
意味:まったく同じ、そっくりそのまま(= exactly the same)
例文:“This design is same to same as what the client wanted.”
(このデザインはクライアントの要望とまったく同じです)
📌 由来:ヒンディー語の「bilkul waisa hi(まったく同じ)」の直訳的表現。
pass out

★★ 重要

句動詞(インド英語独自用法)
意味:卒業する(= graduate)
例文:“I passed out from IIT Delhi in 2019.”
(私は2019年にIITデリーを卒業しました)
📌 注意:米英では pass out = 気絶する! “I passed out from college” と言うと「大学で気絶した」に聞こえる。要注意表現No.1。

📧 メール・チャットで頻出する20語

インド英語 意味 米英での言い換え 注意点
the same それ、同件 it / this / the matter “Please find the same attached” = 「添付をご確認ください」
today morning 今朝 this morning yesterday night, today evening なども同様に使う
discuss about 〜について議論する discuss(aboutなし) discuss は他動詞なので本来 about 不要だが定着
cope up with 対処する cope with(upなし) 余分な up が追加されるパターン
on the same page 同意見 (同じだが多用) インドのビジネスで異常に頻出する
do one thing こうしてください here’s what you should do “Do one thing, just email him directly” のように提案の前置き
revert back 返信する reply / respond revert + back で二重表現だが定着
please be informed お知らせします please note / FYI 非常にフォーマルで官僚的な響き
co-brother 義兄弟(妻の姉妹の夫) brother-in-law(厳密にはなし) インドの親族関係の細かさを反映した造語
timepass 暇つぶし、時間つぶし killing time / pastime “Just timepass” = 暇つぶしてるだけ
sitting on my head しつこくプレッシャーをかける breathing down my neck ヒンディー語 “sir pe baithna” の直訳
doubt 質問(questionの意味) question / query “I have a doubt” = 「質問があります」(疑いではない)
would be 将来の〜(婚約者など) future / fiancé(e) “my would-be wife” = 「婚約者」
years back 〜年前 years ago “Ten years back, I was in Bangalore”
shifted 引っ越した moved “I shifted to Mumbai last year”
paining 痛い hurting / aching “My head is paining” = 頭が痛い
mugging (up) 丸暗記する memorizing / cramming 米英では mugging = 強盗なので要注意
expired 亡くなった passed away / died “His grandfather expired last month” = 祖父が先月亡くなった
backside 裏側、後ろ behind / at the back 米英ではお尻の意味! “Go to the backside” は大誤解の元
rubber 消しゴム eraser 英国英語と同じだが、米国ではコンドームの俗語なので注意

3【日常会話編】知らないと会話が止まるインド英語25選

インド英語の真骨頂は日常会話にあります。ヒンディー語やその他のインド諸語から生まれた、ユニークすぎる表現の数々をご覧ください。

🍛 食・生活にまつわる表現

non-veg
形容詞 / 名詞
意味:肉料理、肉食の(vegetarianの反対として広く使用)
例文:“Are you veg or non-veg?”
(ベジタリアンですか、肉も食べますか?)
📌 インドではベジタリアンが人口の約30-40%。食品パッケージにも🟢(veg)🔴(non-veg)のマークが義務化されている。
hotel
名詞(インド英語独自用法)
意味:レストラン、食堂(宿泊施設に限らない)
例文:“Let’s go to that hotel for lunch.”
(あの食堂に昼ごはん食べに行こうよ)
📌 特に南インドで顕著。”Saravana Bhavan Hotel” のように、レストランの店名に hotel がつく。
tiffin
名詞
意味:お弁当、軽食(特にランチボックス)
例文:“Don’t forget to bring your tiffin to school.”
(学校にお弁当持っていくの忘れないでね)
📌 ムンバイの「ダッバーワーラー(tiffin delivery system)」は世界的に有名な弁当配達システム。
cousin brother / cousin sister
名詞
意味:いとこ(男性)/ いとこ(女性)
例文:“My cousin brother is getting married next month.”
(いとこ(男)が来月結婚します)
📌 英語の cousin は性別不問だが、インドの言語では性別を区別するため、brother/sister を付けて明確化。

🗣️ 会話で飛び出す独特の表現

インド英語 意味・使い方 米英での言い換え
What is your good name? お名前は?(丁寧な聞き方) What’s your name?
Tell me どうぞ話してください(電話の挨拶) Go ahead / How can I help you?
I have a doubt 質問があります I have a question
only 強調の助詞(「〜だよ」) (対応する英語なし)
itself 強調(「まさにそこで」) right there / exactly
na / no? 〜でしょ?(付加疑問文の代わり) right? / isn’t it?
yaar 友達、おい(親しい呼びかけ) dude / buddy / mate
acha / accha OK、なるほど、へー OK / I see / really?
lakh / crore 10万 / 1,000万 hundred thousand / ten million
godown 倉庫 warehouse
eve-teasing セクハラ、痴漢行為 sexual harassment
freeship 奨学金(授業料免除) scholarship / tuition waiver
cent percent 100パーセント、完全に one hundred percent / absolutely
Anna / Bhai / Didi 兄さん / 兄弟 / 姉さん(敬称) (英語に対応する表現なし)
biodata 履歴書 résumé / CV
batch-mate 同期、同級生 classmate / cohort member
preponed 前倒しされた moved up / brought forward
loose motion 下痢 diarrhea
convent-educated 英語教育を受けた(ステータス表現) (対応する英語なし)
native place 出身地、実家のある場所 hometown / place of origin
💡

“only” と “itself” の使い方は要注目。これらはヒンディー語の助詞「ही(hi)」の翻訳で、英語に存在しない「強調マーカー」として機能します。
例:“I told you only!”(言ったでしょ!)/ “He is here itself.”(まさにここにいるよ)
米英の英語話者が最も困惑する表現の一つ。

4【文法・構文編】インド英語特有の文法パターン15選

インド英語の「文法の違い」は、単なる「間違い」ではありません。ヒンディー語やドラヴィダ語族の文法構造が英語に影響を与えた結果、独自の文法体系が形成されているのです。

① 進行形の多用(Stative verbs in progressive)
米英では使わない動詞にも進行形を適用する
🇮🇳 インド英語
“I am having two cars.”
“She is knowing the answer.”
“I am understanding your point.”
🇺🇸 米英英語
“I have two cars.”
“She knows the answer.”
“I understand your point.”
📌 ヒンディー語では状態動詞にも進行形が自然に使われるため。
② 付加疑問文の万能化(Universal tag questions)
複雑な付加疑問文の代わりに “no?” “na?” “isn’t it?” を万能タグとして使用
🇮🇳 インド英語
“You are coming tomorrow, no?
“He went to Delhi, na?
“They will finish it, isn’t it?
🇺🇸 米英英語
“You are coming tomorrow, aren’t you?
“He went to Delhi, didn’t he?
“They will finish it, won’t they?
📌 日本語の「〜でしょ?」と似た機能。実は合理的な簡略化。
③ “Would” の丁寧用法の拡張
丁寧さを表すために would を多用する
🇮🇳 インド英語
“I would like to know your good name.”
Would you be having lunch?”
🇺🇸 米英英語
“What’s your name?”
“Are you having lunch?”
④ 前置詞の独自パターン
ヒンディー語の後置詞の影響で、前置詞の使い方が異なる
🇮🇳 discuss about order for accompany with
🇺🇸 discuss ∅ order ∅ accompany ∅
🇮🇳 stress on comprise of request for
🇺🇸 stress ∅ comprise ∅ request ∅
⑤ “Itself” を強調に使う
例:“I will do it today itself.”(今日中にやります)
例:“The answer is here itself.”(答えはまさにここにある)
ヒンディー語の「ही(hi)」の機能を itself に翻訳。英語にない「強調の助詞」。
⑥ 冠詞の省略・追加パターン
省略:“I am going to the office.” → “I am going to office.”
追加:“She has the fever.” (米英では She has ∅ fever.)
ヒンディー語に冠詞がないため、使い分けが独自化。
⑦ Yes/No の逆転現象
否定疑問文への答え方がヒンディー語式になることがある。
Q:“You don’t like coffee?”
🇮🇳:“Yes.”(= はい、好きではありません)← ヒンディー語の「ハーン(はい、その通り)」
🇺🇸:“No.”(= いいえ、好きではありません)
日本語と同じ現象! インドの人と日本人は否定疑問文で同じ混乱を起こす。
⑧ 数字の表記体系が独自
インドでは万・億の代わりに独自の位取りシステムを使用:
1 lakh = 1,00,000 = 10万
1 crore = 1,00,00,000 = 1,000万
カンマの位置も独自:1,00,000(インド式)vs 100,000(米英式)

“Indian English is not broken English. It is English that has been enriched by the linguistic genius of a multilingual civilization.”

「インド英語は壊れた英語ではない。多言語文明の言語的才能によって豊かにされた英語だ」

── 言語学者たちの共通見解

5なぜインド英語は独自進化したのか?──言語学的背景

インド英語が独自の変種として成立した背景には、歴史的・言語学的な複数の要因が絡み合っています。

📜 歴史的要因:200年のイギリス植民地支配

1600年の東インド会社設立から1947年の独立まで、約350年にわたってイギリスとの関係が続いたインド。特に19世紀の Thomas Macaulay のMinute on Education(1835年)が転換点でした。これにより、インドのエリート教育は英語で行われるようになり、「英語を話すインド人知識層」が形成されました。

重要なのは、彼らが学んだのが19世紀のイギリス英語だったこと。その後、イギリス本国では言葉が変化していきましたが、インドでは植民地時代の英語表現がそのまま保存されました。これが “do the needful” や “intimate”(通知する)のような「化石表現」が生き残った理由です。

🧠 言語学的要因:母語干渉(L1 Transfer)

インドには22の公用語と数百の方言が存在し、大きく分けてインド・アーリア語族(ヒンディー語、ベンガル語など)ドラヴィダ語族(タミル語、テルグ語など)の二大語族があります。

母語干渉の例
SOV語順の影響
ヒンディー語はSOV(主語+目的語+動詞)。日本語と同じ語順! そのため “I office to am going” のような語順の揺れが起きることがある。
冠詞の不在
ヒンディー語にもタミル語にも冠詞(a/an/the)がない。これは日本語とまったく同じ状況。インド人と日本人は同じ苦労を共有している。
敬語体系の反映
ヒンディー語には “tum”(君)、”aap”(あなた様)のような敬語の段階があり、英語でも “kindly” “would” を多用して丁寧さを出そうとする。日本語話者と同じ傾向。
否定疑問文の答え方
ヒンディー語の Yes/No は「質問の内容が正しいかどうか」に対する答え。英語は「自分の答えが肯定か否定か」で答える。日本語もヒンディー語と同じロジック!
🇯🇵

日本語話者にとっての朗報:ヒンディー語と日本語は驚くほど多くの言語特徴を共有しています(SOV語順、冠詞なし、敬語体系、否定疑問の答え方)。つまりインド人が英語で「間違える」ポイントと、日本人が「間違える」ポイントはかなり重なるのです。インド英語を学ぶことは、自分自身の英語の弱点を客観視することにもつながります。

🔄 コードスイッチング:Hinglishの台頭

現代のインド都市部では、ヒンディー語と英語を自在に混ぜる「Hinglish(ヒングリッシュ)」が日常言語として定着しています。これは「英語力が足りないから」ではなく、バイリンガルならではの高度な言語運用です。

Hinglish の実例:
“Yaar, that meeting was so boring, na? Boss kept going on and on. Chal, let’s grab chai.”
(ねえ、あの会議めちゃ退屈だったでしょ? 上司がずっと話し続けてさ。さあ、チャイ飲みに行こう)

Accha, so you’re saying the deadline is tomorrow only? That’s bahut tight, yaar.”
(え、デッドラインは明日なの? それはかなりキツイよ、おい)

このHinglishは、Bollywood映画やインドのSNS、広告でも主流。Googleも「Hinglish入力」に対応しています。

6インド英語 vs アメリカ英語 vs イギリス英語──三つ巴比較表

同じ英語でも、表現がここまで違う。一目でわかる三つ巴比較表をご覧ください。

場面 🇮🇳 インド英語 🇺🇸 アメリカ英語 🇬🇧 イギリス英語
予定を前倒し prepone move up bring forward
対応してください do the needful handle this deal with this
返信してください kindly revert please reply please respond
至急 at the earliest ASAP at your earliest convenience
卒業する pass out graduate graduate
出張中 out of station out of town away / out of office
10万 one lakh a hundred thousand a hundred thousand
1,000万 one crore ten million ten million
〜でしょ? …, no? / …, na? …, right? …, isn’t it?
履歴書 biodata résumé CV
質問があります I have a doubt I have a question I have a question
今朝 today morning this morning this morning
丁寧な依頼 Kindly… Please… Could you…
💡

面白いのは、インド英語にはイギリス英語の古い表現が多く残っていること。”do the needful” はシェイクスピア時代の英語、”out of station” は植民地時代の軍事用語。つまりインド英語は、17〜19世紀のイギリス英語のタイムカプセルでもあるのです。

7IT業界で必須!インド人エンジニアとの英語コミュニケーション術

インドはIT大国。Infosys、TCS、Wipro、HCLなどのインド系IT企業は世界中にサービスを提供しており、日本のIT企業でもインド人エンジニアとの協業は日常的です。ここでは、IT現場特有のインド英語と、スムーズなコミュニケーションのコツを紹介します。

💻 IT特有のインド英語表現

“Please do the needful and revert.”
IT業界で最も多い定型文。バグ報告、タスク依頼、あらゆるメールの締めくくりに登場。
受け取った時の理解:「この件を処理して、終わったら連絡ください」
“The code is working fine at my end.”
「私の環境では動いています」──デバッグ時の定番。”at my end” = on my side / in my environment
⚠️ 注意:これを聞いたら環境差異の問題を疑いましょう。
“Let me come back on this.” / “Will revert shortly.”
「確認して折り返します」──即答できない時の表現。shortly は数時間〜翌日の場合も。
“This is a showstopper.” / “It’s a blocker.”
「これは致命的な問題です」──優先度を上げてほしい時に使われる。blocker は開発の進行を止める問題。
“Please raise a ticket.”
「チケットを起票してください」──インドのIT企業はチケット管理が徹底。口頭依頼は通らないことが多い。

🤝 円滑なコミュニケーションのための5つのコツ

コツ① “Yes” の意味を深読みする
インド文化では、目上の人や顧客に “No” と言うことを避ける傾向があります。”Yes” が必ずしも「はい、できます」を意味しないことも。“Yes, but…” が来たら要注意。具体的な確認質問をフォローアップしましょう。
例:”Just to confirm, the delivery date is March 15, correct?”
コツ② 「head nod(首振り)」の謎
インド人の独特な首振り(頭を左右に揺らす動作)は「理解しました」「同意します」「続けてください」など複数の意味を持ちます。“No” ではありません!ビデオ会議で初めて見ると戸惑いますが、ほぼポジティブな意味です。
コツ③ メールの長文・形式的表現に慣れる
インドのビジネスメールは非常にフォーマル。”I hope this email finds you well” “Kindly note” “Please be informed” などの定型表現が多く、米英のカジュアルなメールスタイルとは別世界。形式的であること自体が敬意の表現と理解しましょう。
コツ④ 時差と「IST(Indian Standard Time)」
インドの時差はGMT+5:30(日本との時差は-3時間30分)。「30分刻み」なので注意。また、冗談で “IST = Indian Stretchable Time”(インドの伸縮自在な時間)と言われるほど、時間感覚は柔軟。会議の開始が5〜10分遅れるのは普通です。
コツ⑤ 「sir / madam」文化を理解する
インドでは上司や年長者を “sir” “madam” と呼ぶのが一般的。ファーストネームで呼ぶ欧米文化とは対照的。日本人が「〜さん」と呼ぶ感覚に近い。これを「卑屈」と誤解しないこと。敬意の表現です。

8発音の特徴──聞き取れない理由と攻略法

インド英語の発音は、米英英語に慣れた耳には最初かなりハードルが高い。しかし、いくつかのパターンを知っておくだけで、聞き取り力は劇的に向上します。

🔊 知っておくべき7つの発音パターン

特徴 具体例 攻略ポイント
th → t/d に変化 think → “tink”
this → “dis”
three → “tree”
最も顕著な特徴。/θ/ と /ð/ がインド諸語にないため。
v → w に変化 very → “wery”
village → “willage”
ヒンディー語では v と w の区別が曖昧。
r の巻き舌(Retroflex) right → 強い巻き舌の “right”
car → “カール” に近い
インド諸語は巻き舌音が豊富。英語の r も巻き舌で発音。
t/d の反り舌音化 today → 舌先が上あごの奥に当たる
data → “ダータ” に近い
インド諸語の反り舌音(ṭ, ḍ)がそのまま英語に適用される。
母音の平坦化 about → “アバウト”(二重母音が単母音化)
face → “フェース”
英語の曖昧母音 /ə/(シュワー)が明確な母音になる傾向。
音節タイミング comfortable → 全音節均等に発音
(米英では “COMF-ter-ble”)
米英は強勢タイミング(stress-timed)、インド英語は音節タイミング(syllable-timed)の傾向。
スペル発音(Spelling pronunciation) Wednesday → “ウェドネスデイ”
schedule → “シェジュール”(英国式)
スペル通りに発音する傾向。サイレントレターも発音されがち。

聞き取りの最強攻略法:YouTube や Netflix でインド人が出演するコンテンツを観ること。おすすめは Bollywood映画(英語字幕付き)、TEDxインド、インド人YouTuber(Technical Guruji, Tanmay Bhat など)。1週間で耳が慣れ始めます。日本人がアメリカ英語に慣れたのと同じプロセスです。

PRONUNCIATION HACK

日本語話者がインド英語を聞き取りやすい理由──

実は、日本語話者はアメリカ人よりもインド英語を聞き取りやすいかもしれません。その理由は:

① 音節タイミング(syllable-timed)が共通:日本語もインド英語も、各音節をほぼ均等に発音する。アメリカ英語の「強弱リズム」よりも耳に馴染みやすい。

② 巻き舌の r :日本語のラ行も舌先を使うので、インドの巻き舌 r はアメリカの r より聞き取りやすい。

③ 母音が明確:インド英語の母音はアメリカ英語の曖昧な /ə/ より明確で、日本語の5母音に近い部分がある。

まとめ──「正しい英語は一つではない」という世界標準

インド英語は「間違った英語」ではありません。
13億人が使う、歴史と文化が詰まった「もう一つの正統な英語」です。

prepone は postpone の論理的な対義語。辞書にないだけで「正しい」造語
“do the needful” はシェイクスピア時代から残る「化石表現」
revert = reply、doubt = question、intimate = inform と覚えるだけで困らない
文法の違いの多くはヒンディー語の母語干渉──日本人と同じ構造
IT業界ではインド英語は事実上の「業界標準語」の一つ
発音は7パターンを押さえれば聞き取りが劇的に改善
日本語とヒンディー語は驚くほど共通点が多い──仲間意識を持とう

世界の英語は「アメリカ英語」と「イギリス英語」だけではありません。

13億人の英語を理解できる人は、
世界のビジネスで一歩先を行く。

Kindly do the needful and share this article at the earliest. 🙏

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