東京大学

【2026年】東大英語を徹底解剖── “What does it mean to be strong?”フロイトから能楽まで、今年の東大が問うた「知の本質」とは?!

🏛️ TODAI ENTRANCE EXAM 2026

【2026年】東大英語を
徹底解剖──
フロイトから能楽まで、
今年の東大が問うた「知の本質」

令和8年度 東京大学前期日程・英語
全大問の傾向分析+過去問比較+来年の受験生への戦略ガイド

2026年2月25日・26日──東京大学本郷キャンパス。
約9,500名の受験生が、120分間の英語試験に挑みました。
フロイトの精神分析、人間の認知特性、能楽の美学、そして「強さとは何か」という哲学的問い。
──今年の東大英語は、受験生の「知の総合力」を根底から試す問題セットでした。

12026年東大英語──全体像と難易度速報

2026年度(令和8年度)の東京大学前期日程・英語は、例年通りの5大問構成で出題されました。試験時間120分、配点120点という「1分1点」のシビアな時間設計は健在です。

大問 出題内容 素材テーマ 難易度
1(A) 英文要約(70〜80字) フロイトの著作が読者に与える影響 やや難
1(B) 長文読解(空所補充+語句整序) 人間の認知特性と「もの」の関係性 標準
2(A) 自由英作文(60〜80語) 「What does it mean to be strong?」 やや難
2(B) 和文英訳+内容理解 休息と抵抗(grind culture批判) 標準
3 リスニング(A・B・C) ドイツの教育制度/刑務所建築/地衣類の生態学 標準
4(A) 文法・語法(誤り指摘) 能楽に関するイギリス人の観察記 やや難
4(B)・5 和訳+英文和訳+総合読解 imaginationの快楽/Amy Hempel短篇小説 やや難
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全体の印象:2025年度からやや難化。特に第1問(A)の素材(フロイト論)は抽象度が高く、要約に苦戦した受験生が多いと予想されます。一方、自由英作文のテーマ「強さとは何か」は一見シンプルながら、哲学的深みを持たせられるかどうかで差がつく良問でした。

2第1問:フロイトの精神分析+人間の認知特性

1(A) 英文要約──フロイトはなぜ読者を虜にするのか

Adam Phillipsの The Penguin Freud Reader 序文からの出題。フロイトという作家が読者に引き起こす独特の反応──愛憎入り混じった、やめられない読書体験──を論じた英文でした。

出題の指示は「70〜80字の日本語で要約せよ。句読点も字数に含め、『フロイトの著作』から記述を開始すること」というもの。冒頭の書き出しが指定されている点は、受験生を正しい方向にガイドする親切な設計です。

KEY POINT

英文の核心構造

本文は大きく3つの論点で構成されています: フロイトを嫌いな人は「読むのをやめられず、意見を述べずにはいられない」という特殊な反応を示す。通常、嫌いな作家は単に読まなくなるだけなのに。

フロイトの文章は「回心体験(conversion experience)」に近い読書体験を与える。トーマス・マンの言葉を借りれば、精神分析的啓示は「一度目覚めると二度と眠りにつけない革命的な力」である。

フロイトの著作が持つ力は「控えめな表現(understatement)」にある。大袈裟な言葉ではなく、むしろ抑制された言葉で語ることで、読者の反応を過剰なまでに引き出す感染力がある。

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解答例(78字):

フロイトの著作は、読者を愛憎の対象として強く惹きつけ、無関心でいることを許さない。控えめな表現を通じて自己認識への欲望と無知への情熱を喚起する、感染力を持つ革命的な文章である。

受験生へのポイント:この問題の難しさは、素材の抽象度の高さにあります。”conversion experience” “understatement” “infectious energy” といった概念をいかに的確な日本語に変換するかが勝負。「段落ごとのキーワード拾い」ではなく、文章全体の論理構造を把握してから一気に圧縮する力が求められました。

1(B) 長文読解──人間はなぜ「関係性」を見出すのか

Keith J. Holyoakの The Human Edge からの出題。赤と緑のボールの運動に「因果関係」を見出し、青と黄色の三角形の追跡に「意図」を読み取る──人間の認知が最小限の情報から豊かな関係性を創り出すメカニズムを論じた知的好奇心を刺激する素材でした。

🔴🟢
ボールの実験
赤いボールが緑のボールに到達すると止まり、緑が同じ軌道で動き出す → 人間は「赤が緑を動かした(caused)」と報告する
🔵🟡
三角形の実験
青い三角形が黄色に近づくと黄色が逃げる → 人間は「青が黄色を捕まえたい(wants to catch)」と報告する。生命や意図を読み取る

空所補充問題の正解は以下の通り:

(1) d (2) g (3) f (4) a (5) c

語句整序問題(イ)の答え:noticing that two things are unrelated creates a kind of relation(2つのものが無関係であると気づくこと自体が、一種の関係性を生み出す)

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この整序問題のポイントは、「無関係だと気づく行為」が主語になっていること。”noticing that two things are unrelated” が主語、”creates” が動詞、”a kind of relation” が目的語。関係がないと認識すること自体が新たな関係性を生む──という逆説的な認知の構造を、正しい語順で表現できるかが問われました。

3第2問:自由英作文「What does it mean to be strong?」超絶解説

今年の東大自由英作文は、「What does it mean to be strong?」(強いとはどういうことか?)という問い。60〜80語の英語で答えるという設定です。

What does it mean to be strong?

──強いとは、どういうことか。60〜80語の英語で答えよ。

── 2026年 東京大学前期 第2問(A)

なぜこの問題は「やや難」なのか

一見シンプルに見えるこの問いが難しい理由は3つあります。

難しさ① 「定義」を求められている

“What does it mean to…?” は「〜するとはどういう意味か」を問う形式。単なる意見文ではなく、概念の再定義が求められています。「I think being strong is important because…」のような浅い答えでは高得点は望めません。

難しさ② 「strong」の多義性

strong には身体的な強さ、精神的な強さ、立場の強さ、意志の強さなど複数の意味があります。どの「強さ」について書くかを自分で決め、その選択に説得力のある理由を添える必要があります。

難しさ③ 抽象的すぎて「型」にはめにくい

東大の過去の自由英作文には「賛成/反対」型や「絵の説明」型が多く、対策しやすいものもありました。しかし今年の問いは完全にオープンエンド。TEFLの定番テーマとの類似性はあるものの、60〜80語で哲学的深みを出すのは容易ではありません。

高得点を狙う解答の「型」

東大の自由英作文で高得点を取るには、以下の3段階構造が効果的です。

STEP 1:定義(Thesis)

「強さ」を自分なりに再定義する一文。常識を超えた視点を入れると印象的。

“Being strong does not necessarily mean having physical power or never showing weakness.”

STEP 2:展開(Development)

具体例や対比で肉付け。抽象論だけでなく、実感のある例を入れるのがコツ。

“True strength, I believe, lies in the ability to face one’s own vulnerabilities honestly. For example, admitting that you need help requires far more courage than pretending everything is fine.”

STEP 3:着地(Conclusion)

テーマを広げて終わる。「だから〜」で読者に余韻を残す。

“In this sense, strength is not about dominance but about resilience — the quiet determination to keep going even when the world feels overwhelming.”

模範解答例3パターン

解答例① 精神的強さ(vulnerability路線)

Being strong does not mean never falling down. Rather, it means having the courage to stand up again after failure and to face one’s own weaknesses honestly. In my view, the strongest people are those who can ask for help when they need it, because admitting vulnerability requires more bravery than pretending to be invincible. Strength, at its core, is about resilience and the willingness to grow through adversity. (71語)

解答例② 他者との関係性(empathy路線)

People often associate strength with independence and self-sufficiency. However, I believe true strength lies in the ability to empathize with others and support them even when you yourself are struggling. A person who can listen to a friend in pain without turning away, or who speaks up for someone being treated unfairly, demonstrates a deeper kind of strength than any physical power. Being strong means using your energy to lift others, not just yourself. (78語)

解答例③ 知的強さ(intellectual courage路線)

To be strong, in my opinion, means having the intellectual honesty to question your own beliefs. It is easy to cling to familiar ideas, but changing your mind when presented with better evidence requires genuine strength of character. Furthermore, strong people can tolerate uncertainty without rushing to simplistic answers. In a world full of complex problems, the courage to say “I don’t know yet” may be the greatest form of strength. (75語)

採点で差がつくポイント:
①「常識の裏返し」が入っているか(strong ≠ physical power のような逆説)
②具体例が抽象論を支えているか
③文法・語彙のミスがないか
④語数が指定範囲内か(60〜80語)
──この4点をクリアすれば、確実に高得点圏に入れます。

2(B) 和訳+内容理解──「休息は抵抗である」

Tricia Herseyの *Rest Is Resistance* からの出題。資本主義の「働き続けなければならない」という価値観を批判し、「休むこと自体が抵抗の一形態である」と論じた英文です。

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注目ポイント:Tricia Herseyの “grind culture” 批判は、現代社会論のトピックとして非常にタイムリー。「休息は怠惰ではなく抵抗である」という逆説的な主張をどう英語で読み解くかが問われました。和訳問題では “accept knowing as concrete evidence” の二重構造や、資本主義が「働き続けること」を当然視する仕組みをどう読み取るかが鍵です。

4第3問:リスニング──知的教養が問われる3題

今年のリスニングは、ドイツの教育制度、イギリスの刑務所建築、地衣類の生態学という、いずれもアカデミックで専門性の高いテーマ。各パート5問×3=計15問(マークシート)の構成でした。

パート テーマ 形式 注目の設問
A ドイツの教育制度(エリート校 vs 平等主義) 講義形式 トラッキング制度と社会階層の関係
B イギリスの刑務所建築と更生 ポッドキャスト(インタビュー) 「分離制度」「沈黙制度」の区別
C 地衣類(lichen)の生態学と共生 講義形式 Schwendenerの二重仮説と進化論の衝突

特にパート(C)の地衣類の話は、Simon Schwendenerの「二重仮説」(地衣類は菌類と藻類の2つの生物で構成される)が提唱された経緯と、それがダーウィンの進化論の「分岐」モデルと衝突した歴史を扱っています。そして、ここから「共生(symbiosis)」という概念が生まれた──という知的に美しいストーリーです。

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リスニング攻略のカギ:東大リスニングは「予備知識」が大きな武器になります。ドイツのHauptschule/Realschule/Gymnasium、刑務所建築の歴史、進化生物学の基本概念──これらを日本語でも知っていた受験生は、聞き取りの負荷が大幅に下がったはずです。リスニング力=英語力×教養という公式を忘れないでください。

5第4問+第5問:能楽と短篇小説──日本文化と文学の深い読み

4(A) 20世紀初頭のイギリス人が見た「能」

Marie C. Stopesの Plays of Old Japan, the Nō からの出題。20世紀初頭のイギリス人女性研究者が、能の音楽・演技・舞台装置について詳細に記した文章です。各段落に文法上または文脈上の誤りが1つずつ含まれ、それを指摘する形式。

注目すべきは、東大が日本文化を「英語で書かれた外国人の視点」を通じて出題するという伝統的手法です。受験生は、自国文化を異文化の目線で見直す知的経験を試験中にすることになります。

4(B) 和訳問題──「休息は抵抗である」Tricia Hersey

Tricia Herseyの *Rest Is Resistance* からの出題。資本主義が私たちの生活をいかに「生産性の呪縛」に閉じ込めているかを論じ、休息を「抵抗の行為」として位置づけた思想書です。

💡

和訳のポイント:(ウ)の “accept knowing as concrete evidence” の処理が最大の難所。「確かな証拠として知ることを受け入れる」という二重構造を日本語でどう自然に表現するか。また “grind culture” の文脈理解──資本主義が「働き続けること」を当然視する仕組みをどう読み取るかが鍵でした。

第5問 Amy Hempel「When It’s Human Instead of When It’s Dog」

今年の第5問は、アメリカのミニマリスト小説家Amy Hempelの短篇。家政婦Mrs. Hatanoが雇い主の家で、妻が亡くなった場所のカーペットの染みを見つけるというストーリー。

LITERARY ANALYSIS

この短篇が東大入試に適している理由

Amy Hempelはレイモンド・カーヴァーの系譜に連なる「ミニマリスト」作家。登場人物の感情を直接描写せず、行動や細部の描写だけで読者に推測させるスタイルが特徴です。これはまさに東大が問いたい力──行間を読む力、言語化されていない情報を文脈から推論する力──と完璧に合致しています。

「じゅうたんの染み」が「妻の死」を暗示するという読みは、直接的には書かれていない情報。「閉ざされていた扉が今は開いている」も、病から死への移行を扉の開閉だけで表現する、Hempelらしい抑制された描写。「何が書かれていないか」を読む力──それが東大第5問の真の試金石です。

6過去5年の傾向分析──東大英語はどこへ向かっているのか

年度 1A 要約テーマ 自由英作文テーマ 第5問素材
2022 言語と身体性 写真描写型 小説
2023 集団の知性 友人へのアドバイス 小説
2024 記憶と忘却 意見陳述型 小説
2025 脳死と死の定義 正直さの是非 小説+和訳
2026 フロイトと読者の関係 「強さとは何か」 Amy Hempel短篇
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傾向のまとめ:
過去5年を通覧すると、①要約問題の抽象度が年々上昇(言語→集団知性→記憶→脳死→フロイト)、②自由英作文が「哲学的問い」へシフト(正直さの是非→強さの定義)、③第5問の小説は一貫して「ミニマリスト系」が選ばれている傾向が明確です。東大は「英語で思考する力」を年々強く求めています。

7来年の受験生へ──東大英語攻略の7つの鉄則

鉄則①

「1分1点」の時間管理を体に染み込ませよ
120分で120点。大問ごとの時間配分を決め、本番では「捨てる勇気」も戦略の一部。要約に15分以上かけるなら、他の大問に移るべき。

鉄則②

要約は「一言要約」から始めよ
70〜80字にまとめる前に、まず20字で核心を言い切る練習を。今年なら「フロイトの文章は読者を虜にする感染力がある」。ここから膨らませる。

鉄則③

自由英作文は「哲学的テーマ」に慣れよ
TOEFLの過去問(”Do you agree that…” 型)に加え、“What does it mean to…?” 型の抽象的問いにも対応できるようネタをストックしておくこと。強さ、自由、公平、幸福、成功──こうした概念の「自分なりの定義」を日頃から考えておく。

鉄則④

リスニングは「教養の幅」が武器になる
今年のテーマ(ドイツ教育、刑務所建築、生態学)が示すように、東大リスニングは学際的な知識が前提。BBC Podcast、TED Talks、Academic English を日常的に聞きつつ、幅広いジャンルの知識を蓄えること。

鉄則⑤

文法問題は「文脈力」で解け
第4問Aの誤り指摘は、単なる文法知識だけでは太刀打ちできない。「この文脈でこの表現は不自然か」を判断する語感が必要。多読で英語の自然なリズムを体に入れること。

鉄則⑥

小説読解は「書かれていないこと」を読め
東大第5問の小説は毎年「ミニマリスト」的作風。直接的な感情描写が少なく、行動や物の描写から登場人物の心理を推測させる。レイモンド・カーヴァー、Alice Munro、Amy Hempelなどの英語短篇を普段から読んでおくと強い。

鉄則⑦

過去問は「10年スパン」で俯瞰せよ
大問ごとの難易度は毎年変動する。2024年に難化した大問が2025年に易化し、2026年にまた変化する。1年分だけ見て「傾向」を語るのは危険。最低10年分の過去問を解き、東大英語部会の「設計思想」を理解すること。

8英語力だけでは解けない──東大が本当に求める「教養」とは

2026年の問題セットを通覧して、改めて痛感するのは東大英語が「英語の試験」であると同時に「知性の試験」であるという事実です。

フロイトの精神分析、人間の認知心理学、ドイツの教育社会学、イギリスの刑務所設計思想、進化生物学における共生概念、日本の能楽、アメリカ文学のミニマリズム、そして「強さとは何か」という哲学的問い──。

東京大学の入学試験は、文系・理系にとらわれず幅広く学習し、国際的な広い視野と外国語によるコミュニケーション能力を備えていることを重視します。

── 令和8年度 東京大学入学者募集要項より

この公式のメッセージを、今年の問題は忠実に体現しています。「英語ができる」だけではなく、「英語で知的に思考できる」人材を東大は求めているのです。

これは英語学習者にとって、非常に重要な示唆を含んでいます。東大英語の対策は、英語の勉強だけでは完結しない。日本語でも英語でも、幅広い分野に知的好奇心を持ち、「なぜ?」と問い続ける姿勢──それこそが、東大英語を攻略する最も確実な道筋なのです。

まとめ──「考える英語」の時代へ

2026年の東大英語は、受験生に問いました。
「あなたは英語で、何を考えられるのか?」と。

要約問題はますます抽象的に──「一言で言い切る力」が命
自由英作文は「定義型」にシフト──哲学的思考力が問われる
リスニングは「教養×英語力」の掛け算──幅広い知識が助けになる
小説読解は「行間を読む力」──ミニマリスト文学への感度を磨け
過去問は10年スパンで──年ごとの難易度変動に振り回されるな
最終的に問われるのは「知的好奇心」──それが最強の武器になる

東大英語は、日本の大学入試における最高峰の英語試験。
その攻略は、英語力と教養と思考力の三位一体でしか成し得ない。